既に説明した通り、TPP反対論の内容は裏づけもなく、想像で書かれているものが多い(「TPPは日本経済にイノベーションをもたらす」参照)。その中で、特に強調されるのが、「アメリカが日本を食い散らかそうとしている」というアメリカ陰謀説である。アメリカは輸出を増大させることで雇用を拡大しようとしている。「既にTPPに参加している多くの国はGDPが小さく、アメリカ産品の市場として不十分なので、日本をTPPに加入させようとしているのだ」と主張する。アメリカは日本市場を、日本の産業から奪おうとしているというのである。この説は、オバマ政権が輸出を倍増してGDPを増やそうとしていること(というよりそれだけ)を根拠にしている。 しかし、オバマ政権がTPPに踏み込んだのは、現在交渉中の8カ国に工業分野で競争力のある国がなく、米民主党最大の支持団体である労働組合が容認したためだ。工業製品輸出国である日本を加盟国