— 2 — アジア太平洋レビュー 2012 1. 問題の所在 日本に右翼はあっても極右はない―正確に いうと排外主義 (nativism) (1) を前面に掲げた社会 運動は存在しないというのが定説であった (2) 。と ころが、在日外国人を明示的な標的とする排外 主義運動が、2000年代になって現れるように なっている。これらの運動は、①外国人排斥を 訴え、②既成右翼 (街宣右翼) と独立して運動を 構築し、③若年層 (40代以下) が中心的な担い手 となる点で、西欧の極右運動と共通点が多い。 右派市民運動 (3) としては、1990年代に発生した 新しい歴史教科書をめぐる運動が、排外主義運 動の源流として存在する (4) 。このような歴史修 正主義運動は衰退し、それに代えて2000年代 後半から排外主義運動が台頭するようになっ た。 本稿では、保守主流派よりナショナリズムと 排外主義に