今回のスペシャリストは医事法学の第一人者である唄孝一氏。40年にわたる業績により、昨年は文化功労者に選ばれた。その顕彰式の際に、日本のインフォームド・コンセントの現状について「軽薄だ」とコメントしている。日本にインフォームド・コンセントを紹介したのは氏である。その本人からみて、一体、何が軽薄なのか。紹介当時の思いから、現在の問題点、そして今後の課題について語っていただいた。(取材日:2004年1月14日) I 紹介当時を振り返って よく考えていると、私も初めはインフォームド・コンセントの必要性が理解できませんでした。患者と医者とが診療の契約をして特別な関係になっているのだから、なぜ1つひとつの行為にまた承諾が要るのかと。しかし、少しずつわかってきました。なぜなら、患者のいわゆる自己決定とは、自分のことを自分で決めるというだけではないということ。有機的な存在としての人間の肉体にいやしくもメス