「寿命が縮まった気がするんです」 高見は静かに述懐する。 大げさではない。私は高見が初タイトルを獲得した2018年の叡王戦で当時主催だったドワンゴの観戦記を務めたことが縁となり、彼と交流を持つようになった。プライベートでも話をすることが増え、対局で奮闘し苦悩する高見の姿を比較的、近くで見てきた。相談——というよりは感情の吐露に近かった——を受けたこともあった。強い緊張感とストレスを常に抱えていた1年で、ある時期にひどく苦しんでいたことは間違いない。 高見はかろうじて残留を決めた。1年にもわたるB級1組の戦いをどう乗り切ったのか。改めて話を聞き、どうしても文章に残したかった。凄まじい強度の話を聞ける予感があったからだ。高見は快諾してくれ、桜の咲き始めた年度末にじっくりと向き合った。想像は間違っていなかった。 順位戦開幕前、高見はどんな目標を設定したのか 街の緑が濃くなり始めると、順位戦に参加