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ブラックフライデー
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2013~15年にかけて行われた生活保護基準の大規模引き下げについて、最高裁判所は25年10月、「物価下落率(デフレ)調整」手法を違法と判断した。これを受け厚生労働省は11月21日、追加支給と新たな再改定を組み合わせた対応策を公表。だが、その内実は新たな方式による「再減額決定」と「一部補償」、「原告に限定した特別給付」を併存させる複雑な構造で、司法の趣旨を損なうとの批判が広がっている。対応策は複雑で、制度に詳しくない読者には理解しづらい構造となっている。 本稿では、厚労省の方針、メディアの受け止め、法的・政策的な課題、そして今後の見通しを整理し、はじめてこの問題に触れる読者のために解説する。 最高裁判決と厚労省の対応方針 13年から15年にかけて行われた生活保護基準の引き下げについて、最高裁判所は25年10月、厚生労働大臣の判断過程が合理性を欠くとして、減額処分を違法と認定した。判決は、物
アサヒグループホールディングス(以下、アサヒGH)が9月29日にサイバー攻撃を受けたことを発表してから2カ月以上がたったが、いまだにシステムは正常に稼働していない様子だ。11月27日に行われた勝木淳志社長による記者会見では、物流が正常化するのは来年2月ということだ。 少ない対外発表情報 この会見は、今回のサイバー攻撃に関する対外発表の第4報になる。 サイバー攻撃に関する対外発表で、多くの人が期待するのは「我が社のシステムは大丈夫か」という不安に応えることだ。欲しいのは被害の端緒となった事象や原因についての説明だろう。 アサヒGHの発表はこれに応えていない。アサヒGHにはGlobal Head of IT and Transformationという肩書を与えられた執行役員がいるようだ。この執行役員がITの統括責任者として、社長に代わって説明すべきだったと思うが、記者会見の席上にその姿はなかっ
The New Yorker誌ライターのジョシュア・ヤッファが、Foreign Affairs誌のウェブサイトに‘Putins All the Way Down’と題する論文を投稿し、ウクライナ戦争の継続と西側諸国との紛争を思想的に支えるロシアの帝国主義的イデオロギーは、プーチン体制とロシア国民の間の相互作用によるものであって、単に上から押し付けられたものではない、としている。要旨は次の通り。 今日のロシアにおいては、国家と国民のいずれにおいても、イデオロギーが中心的な問題として再浮上している。ロシア人はプーチン政権下で支配体制に着実に順応し、ナショナリズムと反自由主義的な思想へと傾倒し、最終的にはロシアのウクライナ戦争を支持するようになっている。 フランスの歴史家で政治学者のマルレーヌ・ラリュエル氏は、プーチンによる新たな帝国主義的イデオロギーの構築は、上から押し付けられた価値観だけでな
米国の農業と裁判を長年揺るがしてきた除草剤「ラウンドアップ(成分名:グリホサート)」を巡る訴訟が、2025年12月、劇的な急展開を迎えた。数万人のがん患者と彼らを支援する弁護士たちが「この除草剤のせいでがんになった。バイエル社は州の規制を遵守して、危険性を警告すべきだった」と訴え、ドイツの巨大企業バイエルが「ラウンドアップは安全だから、警告など不要だ」と主張している。 これまでの裁判では「警告しなかった企業が悪い」という判決が相次ぎ、バイエルは巨額の賠償金に苦しんできた。ところが、ここに「最強の助っ人」が登場した。トランプ政権である。 「国の機関である米環境保護局(EPA)が安全と判断しているのだから、州がこれを無視して、勝手に『危険だ』と警告させるのはルール違反だ」と宣言したのだ。その結果、係争中の数万件の訴訟はすべて取り消しになる見通しだ。 これは単なる一企業の救済劇ではない。アメリカ
2024年の自民党総裁選で選択的夫婦別姓制度の導入が争点となったのは記憶に新しい。一方、25年の総裁選では各候補者とも導入には慎重な姿勢を示し、表立った議論はなかった。 選択的夫婦別姓を巡る議論では、推進派は「個人の尊厳や自由」を、反対(保守)派は「伝統的な家族観が壊れる」などとそれぞれ主張し、お互いの価値観がぶつかり合う。ただし、双方の主張は、時に「利便性」で語られたり、史実に基づかない「感情論的側面」が強く、本質的な議論がなされているとはいえない。『21世紀家族へ』(ゆうひかく選書)の著書があり、家族社会学、歴史社会学が専門の京都産業大学・落合恵美子教授は、こうした現状に警鐘を鳴らす。浮かんでは消える夫婦別姓を巡る議論を〝政争の具〟にしてはならない。日本人は、歴史から何を見つめ直すべきなのか、今一度考えるべきだ。(小誌編集部) 日本の選択的夫婦別姓の歴史的背景を振り返るのがこの論考の趣
「なんでこんなに安いのか!」。ベトナム・ハノイの庶民的スーパーで目にしたコメは、1キログラム(kg)わずか100円。日本の約1〜2割程度の価格だ。 その衝撃的な価格に、「日本のコメは高品質なので高くても海外で売れる」などと言われているが、本当なのか? という疑問が頭をよぎった。
中国が対日強硬姿勢を強めている。 訪日旅行や留学の自粛、日本映画の公開延期、アーティストのイベント中止など、怒涛のような勢いで対日”制裁”が打ち出されている。なぜ外交問題が、旅行、留学、映画、芸能イベントといった分野にまで波及するのか。この仕組みを理解しなければ、中国の対日姿勢は読み解けない。 習近平が「ゴーサイン」 改めて、問題の発端をおさらいしておこう。高市早苗首相は7日の国会答弁で、中国が武力を行使すれば、日本の存立危機事態になりうると答弁した。翌8日に薛剣・駐大阪中国総領事が「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」とSNS「X」でポストし、品位のない発言と日本国内からは反発する声が高まった。 失礼な物言いであることは明らかに思えたが、中国は逆に反応を硬化。13日に金杉憲治・駐中国日本大使を呼び出し抗議、翌14日からは旅行自粛などの制裁ラッシュが始まった
日本銀行が10月29~30日に開いた金融政策決定会合で、追加の利上げを見送った。6会合連続の据え置きに対し、「インフレが収まらず国民生活を苦しめている」「低金利は円レートを下落させ、物価をますます上昇させる」「アベノミクスはデフレ脱却のために行ったものだが、現在はインフレだから前提が違っている」「低金利が生産性の低い企業の新陳代謝を遅らせて日本の生産性を引き下げている」といった批判が出ている。 要するに、1.現在のインフレに対して金利引き上げで対応すべき、2.円安を抑えるために金利を引き上げるべき、3.低金利が生産性を低下させるから金利を上げるべき、という議論がある。これらの議論を整理したのち筆者の意見を述べたい。 現在のインフレには金利引上げで対応すべきか 図1は、生鮮食品を除く消費者物価、生鮮・エネルギーを除く消費者物価、食料・エネルギーを除く消費者物価、米類(右目盛りになっている)の
通信は私たちの暮らしの基盤であると同時に、日本の競争力を支える土台でもある。インターネットが普及した1990年代以降、社会や産業において通信の重要性は飛躍的に高まった。 2010年前後にはスマートフォン(スマホ)が登場し、個人が常時接続される生活が定着した。現在では決済や行政手続きをはじめ、医療・教育など幅広い分野で通信は不可欠なインフラであり、デジタル変革やAIの発展においても、基盤的存在である。 もはや、「情報」や「データ」のやりとりを支える通信抜きに私たちの日々の生活は考えられない。 通信は今後も進化し続ける。光サービスや無線LANの高速化、「超高速」「低遅延」「多数同時接続」が特徴の5G(第5世代移動通信システム)などに加え、30年頃には6Gが登場する。 衛星や空飛ぶ基地局とスマホとの直接通信も一般化し、災害時においても途切れない環境が実現されるだろう。自動運転やドローン物流などの
ウナギを巡り国際社会が慌ただしい。ウズベキスタンで11月末から開催されるワシントン条約締約国会議で、ニホンウナギを含む全てのウナギを附属書に掲載して条約の規制対象とする提案が欧州連合(EU)から上程されているからだ。 これに対して業界団体と水産庁は提案阻止に全力を挙げている。日本養鰻漁業協同組合の代表は「官民一体となって阻止に向かって行動する」と宣言、業界団体でつくり水産庁OBが会長を務める「全日本持続的養鰻機構」の総会の席上、水産庁は「政府全体として、掲載提案阻止に向けてあらゆる取り組みをしている」と明らかにしている。 日本政府側は8月に横浜で開催された「アフリカ開発会議(TICAD)」やマニラで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)農相会合といった会議の場で、或いは各国大使館に出向いて提案に反対するよう各国に働きかけているようだ。その中で、「ウナギが増えている」との主張も展開されて
この夏の参院選で参政党が予想外の集票をした以降、日本では急速に「外国人問題」が話題とされるようになってきた。「外国人が大勢入ってくると、日本が日本でなくなる」といった、まるで江戸末期の攘夷運動のような感情論が流行している。こうした言い方には、以前は自制心が効いていたはずなのだが、いつの間にか野放しになっている。 一番の問題は、そのような感情論の奥底に「インバウンド旅行者」の購買力により、日本の国内観光に関わる価格がアップして、日本人旅行者が「買い負け」していることへの強い憤りがあることだ。そうであるならば、まずもって憤りの方向が間違っている。 本来であれば生産性が上がらず、グローバル経済との連携ができない日本経済の構造にこそ怒りの矛先は向かうべきであり、怒りのエネルギーによって維新開国の際に実践されたような社会と産業の構造改革を進めるべきだ。 それができないばかりに、日本文化に心酔しつつ日
アサヒグループホールディングスがサイバー攻撃を受けたことを発表してから1カ月以上がたったが、いまだにシステムは正常に稼働していない様子だ。今回のサイバー攻撃を理由に、第3四半期(7月から9月)の決算発表は延期された。物流面では、受注をFAXに切り替えるなど、人海戦術で乗り切ろうとしているようだ。 同社は10月3日にランサムウェアに感染したことを第2報として公表し、個人情報を含む重要データの保護を最優先とし、被害を最小限にとどめるために障害の発生したシステムの遮断措置を講じましたとしているが、すべての対応が遅いといわざるを得ない。 今回のサイバー攻撃は、ロシア語圏のハッカー集団Qilin(キリン)の仕業とされている。Qilinは、取得したとするデータの一部をブログサイトで画像データとして公開している。サイトには、今年8月にQilinの被害にあった日産の子会社であるクリエイティブボックスの、4
前回の記事「〈衝撃体験〉ロシア入国時に私を待っていた10時間の取り調べ!丸裸にされるスマホ、パソコン、持ち物…保安局係官は何を念入りに調べたか?」で報告したとおり、6年振りにロシア渡航を敢行したところ、入国に10時間以上の時間を要し、難儀な思いをした。 さすがに「10時間超え」は想像のはるか上であったが、リスクはあらかじめ覚悟していた。それでも、ロシアへ行きたいと思ったのは、やはり「特別軍事作戦」(ロシアにおけるウクライナ侵攻の呼び名)を続ける今のロシアを、自分の目で見てみたかったからである。とりわけ、この軍事作戦が一般のロシア国民からどのように受け止められているかを観察することが、最大の目的だった。 ロシア極東・シベリアの5都市を周遊し見えてきたのは、2つの戦争に対する現下ロシアの両極端な態度である。80年前の第二次世界大戦については、まるで昨日のことのように、盛大に語り継いでいる。それ
次世代光通信技術を推進する国際組織「IOWN Global Forum」の中間メンバー会議が10月初め、米国で開かれた。毎年春に開かれる年次総会に向けた中間とりまとめを行う会議で、今回は米通信大手、AT&Tのお膝元である南部のダラスが会場となった。 オープニングセッションにはAT&T研究所の幹部や米メタ(旧フェイスブック)などが設立した国際技術標準化組織、OCP(Open Compute Project)の責任者が講演者として登壇。IOWNグローバルフォーラムの活動に対し米IT業界が強い関心を示し始めたことを印象づけた。 光接続の国際標準化組織が関心 「生成AI(人工知能)などで大量の情報通信リソースを必要とする今、AT&Tはオープンな光通信技術に力を入れていきたい。その意味ではIOWNグローバルフォーラムは重要な技術パートナーになるに違いない」。開口一番、こう語ったのはAT&T研究所でネ
かつて林野庁で民有林林道の担当をしていた。民有林行政は、何かと批判の多い補助金行政なのだが、林道事業は1番の人気だった。それは市町村からの要望が高かったからである。同じ森林土木でも治山事業は都道府県が実施主体だったので比較的上品だったが、林道はより現場に近い山村部の市町村にとっての必需品であったため、予算の奪い合いになっていた。 林道の表の顔は一応林業を実行するための道であって、そのために目標が設けられていた。林道密度と呼ばれる指標があって、森林1ヘクタール当たりすなわち100メートル四方に何メートルの林道が存在するかを示していた。その全国的目標は20メートル/ヘクタールとされていた。林道密度には、林道以外に森林内を通る市町村道などの公道もカウントされている。 森林の各所から伐採した樹木を集めて(集材)、トラックに積み込み、林道を通行して消費地へ運び出す(運材)。この集材・運材作業を効率的
2025年夏の参院選以来、日本社会で排外主義が声量を増している。1年ぶりの自民党総裁選でも、一部候補が国内の外国人を問題化し、争点の一つとした。 排外主義の政治主張は先進各国でもなされ、社会分断の要因の一つとなっている。移民流出入の長い歴史を持つ欧州の国々では、外国人排斥論は何十年と、形を変えて燻り続けている宿痾だ。 極右政党はことあるごとに過激な煽動を繰り返し、そこから生じる社会不安を政争の具にする。一方、人手不足が慢性化している分野、特に建設や医療福祉、宿泊飲食業では、外国人労働者がその維持を支えている、との認識が共有されてもいる。 筆者が住むフランスも例外ではなく、排外主義は社会問題の一つである。24年夏の国民議会(日本の衆議院に相当)の解散総選挙では、移民排斥を掲げる極右政党が伸長したが、左派の歴史的大連合により、政権奪取はからくも阻止された。それ以降も移民をめぐる厳しい政治的主張
特定の社会問題を扱った書籍や言論が、その内容を吟味されることなく、「正しさ」を振りかざす人々によって社会から排除される事態が近年相次いでいる。2024年初頭には、KADOKAWAから刊行が予定されていた書籍『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』が、類似の抗議活動によって出版中止に追い込まれた一件もあった。 本書は、性自認に疑問を持った思春期前後の女性が性転換手術やホルモン治療を受けた後に後悔した事例を取材したノンフィクションで、欧米ではベストセラーとなっていた。ところが日本語版の出版に際し、一部の団体や個人から「トランスジェンダー当事者へのヘイト」「差別を扇動する」などの抗議が殺到し、出版社は刊行中止を決定した。 後に、この書籍は産経新聞出版から『トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇』と改題されて刊行されたが、その過程
秋の風物詩であるサンマ。近年は、不漁という報道が続いていました。もともと1尾100円程度で、当たり前のようにお店に並んでいた大きなサンマが、80グラム程度の見た目がサヨリのように細くて脂がないのに、その何倍もの価格で売られるようになっていました。 ところが今年は、140~150グラムどころか200グラムあるサンマも売られるようになりました。水揚げは近年になく好調で、48時間の休漁も行われました。 それでは一体、なぜ漁が上向いているのでしょうか? その理由を理解していないと、また獲れなくなる事態を繰り返してしまいます。 要因は「黒潮大蛇行」ではない サンマが獲れるようになった原因として「黒潮大蛇行」がなくなったからという報道を見かけます。黒潮大蛇行は1985年以降で4回起きました。そして4回目が2017年から7年以上続き、今年(25年)の5月に解消しました。 様々な魚が獲れなくなっています。
個人的なことながら、先日ロシアに出かけてきた。前回のロシア訪問は、2019年秋にまで遡る。筆者にとり、ロシアでの現地調査は研究活動の肝であり、コロナ禍と戦争により中断していたそのライフワークを、6年振りに再開することにした。 とはいえ、研究費でロシアに渡航することの是非については、大学によって判断が分かれており、所属する北海道大学では現時点で業務としてのロシア出張が認められていない。埒が明かないので、もう休暇を利用して私費で行くしかないと覚悟を決め、ロシア渡航を決断した。 ただ、22年2月のウクライナ侵攻以降、ロシアは日本を「非友好国」の一つと位置付け、学者数人を含む日本人のロシア入国禁止リストを制定している。今のところ筆者はそのブラックリストには載っていないが、及ばずながら、プーチン政権のウクライナ侵攻策を批判する論陣を3年以上張ってきた。果たして自分のような人間がロシアに入国できるのだ
手鎖の刑に沈んだ喜多川歌麿、狂歌を捨てた大田南畝…江戸の出版統制と「べらぼう」蔦屋重三郎を取り巻く戯作者たちの運命 絵画のヒストリア㉖ 文化元年(1804)の初秋のことである。 日光例幣使街道の宿駅、栃木の豪商として知られた釜善こと善野伊兵衛の屋敷に、隠棲していた人気浮世絵師の喜多川歌麿を訪ねて江戸から3人の来客があった。 戯作仲間だった山東京伝、十返舎一九、そして栄松斎長喜である。 〈みなさん、ようこそお出で下さいました。ありがとう。いや、こんどの手錠50日はまったくこたえましたよ。京伝さん、あなたが私と同じ刑をお受けなさったのは寛政3年でしたね。まだお若かったから回復なさった。私はこの年だから、すっかり弱ってしまいましたよ。ま、この年でつかまらなかったのを喜ぶべきかもしれませんが〉 これは美術史家の新関公子さんが『歌麿の生涯』(展望社)のなかで、想像力豊かに描いている老境の歌麿の一景で
開封するだけ、お湯を注ぐだけで食べることができる「超加工食品」。便利な食材として利用することも多いだろうが、これが今、「健康を害する」ものとして、規制への動きが広がっている。 トランプ政権下で保健福祉長官に就任したケネディJr.氏は、超加工食品を生活習慣病の元凶である「毒」と断じ、厳しい規制を導入する姿勢を鮮明にした。世界保健機関(WHO)は超加工食品が年間800万人の死亡に関連するとして、消費に関するガイドライン策定に着手している。コロンビアは最近、超加工食品を対象とした税を導入した。 日本でも、超加工食品を懸念する声も聞こえているが、実際に何が問題なのだろうか。実態の解明と対応策を検証してみたい。 現代の病の原因「生活習慣病」 戦前の日本人が苦しんだのは結核、脚気、赤痢、コレラといった感染症や栄養不足による病気だった。それが様変わりして、現在は糖尿病、高血圧、脂質異常症、がん、心・脳血
夏の風物詩としても親しまれる「ウナギ」。前回『スーパーに並ぶ「中国産」ウナギの蒲焼きはどこから?稚魚が遡る河川のない香港からの大量輸入…ウナギ取引を覆う黒い闇』では、日本の店頭にも並ぶ中国産のウナギについての問題を指摘したが、日本のウナギも問題だらけである。 香港からの〝密輸入〟を事実上黙認し、世界からの取り締まり強化への動きに対しても、官業総出で「反対」する姿勢を見せている。今一度、トレーサビリティ強化を進める必要がある。 台湾発香港経由の「稚ウナギ密輸三角貿易」 問題の一つは、国内で採捕された稚ウナギのうち、出所が不明の「黒い」ウナギが相当量存在している点である。 水産庁の資料によると、2024年漁期(23年11月~24年5月)のニホンウナギ稚魚国内推定採捕量は7.1トンであるところ、各都道府県から報告された量は70%の5トンにとどまる。逆に言うと、残り30%は出所が不明な未報告・密漁
ただ、蒲焼きになっているこのウナギ、その取引は様々な闇が覆う。日本の水産物は一般的にトレーサビリティが法的に担保されているものは多くないのが実情だが、ウナギほど問題まみれの水産物も珍しい。まずは「中国産」と言われる輸入品の実情を見ていきたい。 ニホンウナギは4割以下・中国産のウナギ蒲焼き 店頭に並ぶウナギの蒲焼きを見ると、国産のものと、それより割安な中国産のものが並んでいることが分かる。国産の場合は静岡産や鹿児島産といった県レベルでの産地を示す表示がされている一方、筆者の周辺のスーパーを見る限り、中国産の場合は「ウナギ(中国産)」などの表示がされているものがほとんどだ。 ウナギ科ウナギ属に属する16種のうち、日本の在来種として生息しているのはニホンウナギとオオウナギ。このうち蒲焼きになるのはニホンウナギの方である。中国についても、蒲焼きとなって日本に送られるウナギのうち、在来種はニホンウナ
米国のリンドン・B・ジョンソン大統領が1967年に「偉大なる社会」実現の一環としてスタートさせた公営ラジオ放送と公営テレビ放送が、皮肉にも「米国を再び偉大に」(MAGA)のスローガンを掲げたトランプ大統領の独断で閉鎖の危機に追い込まれている。良識派の多くの市民や団体から「アメリカの良心の終焉」に対する怒りと落胆の声が挙がっている。 米国に根付く民営化に向けた起業家精神 米国には建国以来、他の国との比較においてもきわだった美徳がいくつかある。そのうちの一つが、「Do It Yourself」(DOIT)の伝統だろう。 レストラン、ガソリン・スタンドなどでのセルフサービスが生まれ、多くの事業分野でも、公営、国営ではなく、できるだけ民営化に向けた起業家精神が育っていった。 手紙や小包を届ける郵便事業でも、郵便公社に果敢に挑戦し、それまでほとんど不可能と思われていた「全米どこにでも翌日配達」を売り
7月の参院選では「外国人問題」が争点の一つとなった。欧米諸国では国論を二分して久しいテーマだが、これまで日本では選挙で争点となることはなかった。結果は周知の通り、外国人労働者や移民の受け入れの制限を主張する政党が大幅に議席を伸ばした。この選挙結果を見て、筆者には先日取材したばかりのAさん(男性・70代)のことが頭に浮かんだ。 無職のAさんは大阪府の公営団地で1人暮らしをしている。団地は50年以上前に建てられた5階建てだが、エレベーターはない。40平米の3K、家賃は月2万円少々という安さだ。Aさんによれば、団地の住民は「生活保護の日本人高齢者、もしくは外国人ばかり」なのだという。 Aさんの部屋の上の階にもしばらく前、南アジア出身の若い夫婦が入居した。夫は留学生らしく、アルバイトで帰りが遅い。帰宅後、午前0時を過ぎた頃に料理や掃除をする音がAさんの部屋に響いてくる。天井は部屋を歩くだけで振動が
中国で7月15日から、インターネット上での身分が証明できる「国家ネットワーク身分認証公共サービス」が正式に始まった。中国共産党の公式機関紙の一つである「光明日報」が運営するニュースメディアGMW.cn(光明网、Guangming Online)では「ネットショピングで実名情報を使う必要があるのに、個人情報を漏らしたくない、そんな悩みを抱えていませんか? 先日、公安部、中国サイバースペース管理局、民政部、文化観光部、国家衛生健康委員会、国家ラジオテレビ総局など6つの部門が共同で『国家ネットワーク身分認証公共サービス管理弁法』を発表し、昨日(7月15日)から施行されました」と報じている。 中国共産党系の機関紙だけあって、インターネット身分証が身元証明と個人情報漏洩防止につながる手段であると強調して、インストールの方法について詳細に解説している。 中国政府すなわち中国共産党が、インターネット身分
ここ数年の夏の暑さはとりわけ異常である。今年は北海道でも連日猛暑日を記録するなど、温暖化は異次元の領域に進んでいるとも言える。 温暖化は当然海にも影響を及ぼしているが、なかでも日本は世界の中でもその程度が大きい。気象庁によると、日本近海における2024年までの海面水温の上昇率は100年あたり1.33℃の割合で、世界全体平均の100年あたり0.62℃の倍以上、日本海中部に至っては100年あたり2.01℃と、世界平均の3倍以上だ。 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の第6次評価報告書で示された図によると、温室効果ガスの高排出が続くというシナリオの下では、日本の周辺の海域で海の動物の資源量が今世紀末に20~30%台の減少を示す朱色で塗られている。これは、高排出シナリオ下の世界全体海洋動物資源量減少率の約15%より大きい。IPCCの『海洋・雪氷圏特別報告書』によると、日本周辺の海域は、
ソ連・ロシアの研究を専門とするケナン研究所のキメージ所長他がForeign Affairs誌(電子版)に7月16日付で投稿した論説‘The Limits of Putin’s Balancing Act’で、「プーチンは政治的自由と引き換えにロシアに『均衡状態』(安定)をもたらしたが、一方で対外政策の失敗により『偉大なるロシア』は実現できておらず、ウクライナ戦争に勝利することをすべてに優先し、際限のない独裁政権となってこれまでに築いた安定を犠牲にするかも知れない」と論じている。要旨は次の通り。 四半世紀にわたり権力の座に就いたプーチンは、ロシアを一つの均衡点へと導いた。欧州は第二次世界大戦後最悪の戦争を目の当たりにしているが、プーチンはロシア国民が最も待ち望んでいた贈り物、すなわち安定を与えた。 同時にプーチンは、長年ロシア国民に対して栄光に満ちた国を約束し、ロシアを国際舞台における主要な
大手製薬会社・アステラス製薬に勤務する60代の日本人男性社員に対し、中国の裁判所は7月16日、「スパイ罪」を認定し、懲役3年6カ月の判決を言い渡した。 習近平体制下の中国はスパイ対策を年々強化している。2014年には反スパイ法を制定(2023年に改定)し、これまでに17人の日本人が拘束されている。これほど多くの事例があるにもかかわらず、何が問題となったのかはいまだによくわかっていない。というのも、スパイに関する裁判は大半が非公開で、具体的にどのような行為が違法とされたのかは明かされないためだ。
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