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アメリカ大統領選
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1954年東京都生まれ。77年慶應義塾大学法学部卒業。82年同大学院法学研究科博士課程単位取得退学。法学博士。専門は政治学、政治過程論。ミシガン大学政治学部客員助教授、プリンストン大学国際問題研究所客員研究員などを経て91年慶應義塾大学法学部教授。2020年定年退職し名誉教授。著書に『政権交代 民主党政権とは何であったのか』、『選挙・投票行動』など。 著書 結局のところ最初から最後まで自民党の自滅だったようだ。 今週のマル激は計量政治学が専門で毎回幅広い有権者の投票行動調査を独自に行っている小林良彰氏と、選挙後の恒例となった投票行動分析を行うとともに、自民党の大敗と立憲民主党と国民民主党、そしてれいわ新選組の躍進が目立った先の総選挙は、国民が何を評価し何に怒った結果だったのかを読み解いた。 10月27日に行われた衆院選では、自民党は改選前議席を56減らす大敗に終わった。同じく公明党も8議席
1952年愛媛県生まれ。77年東京大学法学部卒業。同年河本敏夫衆院議員秘書。86年衆院初当選。行革担当相、規制改革担当相、党税調副会長、衆院政倫審会長などを歴任。当選12回。著書に『自民党ひとり良識派』、『宰相の羅針盤 総理がなすべき政策』など。 著書 自民党内で最後に残った『良識派』を自認する村上誠一郎衆院議員がずっと恐れていたことが、今自民党に、そして日本の政治に起きている。 村上氏はこれまで派閥文化を壊滅させた小選挙区制の導入や集団的自衛権の行使を可能にする安保法制、特定秘密保護法、そしてアベノミクスなど、その時々の政権の目玉政策にことごとく反対してきた。非業の死を遂げた安倍元首相の国葬にも反対し、同氏を「財政、金融、外交をボロボロにし、官僚機構まで壊して、旧統一教会に選挙まで手伝わせた国賊」とまで酷評して、党の執行部から厳しい懲戒処分を受けたこともある。しかし、村上氏は持論を曲げな
1966年東京都生まれ。88年日本大学経済学部卒業。89年編集プロダクション入社。豪州の邦人誌『日豪プレス』などを経て95年より現職。著書に『検証 福島原発事故・記者会見2―「収束」の虚妄』、共著に『検証 福島原発事故・記者会見―東電・政府は何を隠したのか』など。 著書 東電は8月24日、福島第一原発の汚染水の海洋放出をついに開始した。 毎日約90トンずつ発生する汚染水をどうするのかという問題はこれまで棚上げされてきたが、今回、漁業関係者などの反対を押し切って海洋放出が始まった。 東電は2013年、汚染水が海に流出していることを発表したところ、世論の激しい反発を受けた。その後、汚染水の処理方法について小委員会が議論を進め、海洋放出のほか、水蒸気にして放出する、コンクリートに固めるなどの選択肢が検討されたが最終的に一番安くて簡単にできる海洋投棄に落ち着いた。ただし、ALPS小委員会の2020
専門は海洋科学、海洋生物学。 1984年ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校にて生物学博士(Ph.D.)を取得。 スミソニアン熱帯研究所(パナマ)、グアム大学教授を経て2004年より現職。 政府は24日、福島第一原発の敷地内のタンクに貯蔵されている放射性物質を含む汚染水の海洋放出に踏み切った。 風評被害などを懸念する地元住民、とりわけ漁業関係者らの反対を押し切っての放出となったが、政府はALPS(多核種除去設備)によってほとんどの放射性物質は取り除かれており、残存するトリチウムも海水によって希釈され、国際的な安全基準はクリアされているため、人体や環境への影響は無視できるレベルにとどまるとの立場だ。 しかし、海洋生物学が専門でグアムやハワイをベースに30年以上、太平洋沿岸のエコシステムを研究し、2011年の福島第一原発事故後、来日し事故の海洋への影響を調査した経験も持つハワイ大学のロバー
こんなNHKならいらない。 NHKの受信料をスマホユーザーからも徴収できるようにする案が検討されているという。NHKは念願だったネットの同時配信を2020年に実現しているが、受信料の徴収対象はあくまでテレビユーザーに限定されていた。受信料の対象をネットユーザーやスマホユーザーにまで広げることで、NHKはテレビ番組を放送しているだけの「公共放送」から、ネットでも自由に番組を配信する「公共メディア」に変身を遂げたいのだそうだ。 確かにBBCを始めとする欧米諸国の公共放送の多くが、既にネットの同時配信を行っている。ネットで配信されれば、スマホでも視聴が可能になる。今日、テレビを保有しない世帯も増えているし、まったくテレビを見なくなったという人も珍しくない中で、ネットでテレビ番組が見られれば多くの人にとって便利だろうし、何よりも災害時の情報収集に役立つに違いない。 しかし、それは同時にNHKの事業
1974年広島県生まれ。中央大学大学院文学研究科(社会情報学専攻)博士後期課程単位取得退学。専門は文化社会学、社会情報学。著書に『SMAPはなぜ解散したのか』、共著に『文化社会学の視座』など。 著書 その月の5回目の金曜日に特別企画を無料でお送りする5金スペシャル。 3月以来3ヶ月ぶりとなる今回は、映画や芸能に詳しいジャーナリストの松谷創一郞氏をゲストに招き、5金恒例となった映画特集とジャニーズ性加害問題のダブルタイトルをお送りする。 取り上げる映画はずばり、現在ネットフリックスで配信中の『サンクチュアリ-聖域-』とカンヌでも話題となった是枝作品『怪物』の2つ。そして、それと同時に、ジャニーズ事務所の性加害問題とその背景にある日本の芸能界やスポーツ界に蔓延る人権無視の前時代的な風土とそれに平然と乗っかって商売をし続けるメディアの責任などを議論した。 BBCのドキュメンタリーをきっかけに表面
これも政治の劣化を反映する現象なのだろうか。ここのところ自民党が、もっぱら権力闘争に明け暮れている。 先週、立憲民主党の小西洋之議員が、安倍晋三元首相の補佐官だった礒崎陽輔参院議員(当時。現在は落選中)が総務省に対し、放送法の解釈変更を迫っていたことを示す文書を公開したのに対し、その当時総務相だった高市早苗経済安保担当大臣が「捏造だ」と応戦。文書が本物だったら議員辞職をするかとの問いに、「結構だ」と大見得を切った。 ところが今週になって、松本剛明総務相が小西議員が公表した文書はすべて「行政文書」だったことを認めたため、議論の焦点はもっぱら高市氏の進退問題に集中することとなった。 一方、岸田首相は、総理補佐官からの圧力にもめげずに総務省が放送法の解釈を変更しなかったことを繰り返し述べ、問題はなかったとの姿勢を取っている。しかし、本来は政権がそのような形で省庁に法解釈の変更を迫ることもあっては
1957年福岡県生まれ。81年東京大学文学部社会学科卒業。同年、東京放送(現TBS)入社。JNNワシントン支局長、報道局社会部長、ニュースキャスターなどを経て、2015年退社。16年参院初当選(参院・長野選挙区)。機関紙局長、副幹事長などを経て現在ネクスト内閣府担当大臣。参院2期(長野県選挙区)。共著に『報道される側の人権』。 著書 立憲は一体どうしてしまったんだ?! 相次ぐ閣僚の辞任や総理秘書官による酷い差別発言など、昨年来岸田政権内の不祥事が相次いでいる。しかし政権基盤はまったく揺らぐ様子が見られない。これだけスキャンダルが続いても首相が涼しい顔をしていられるのは、一つには安倍元首相の死去により党内に岸田氏を脅かす存在が不在となったこともあろうが、何よりも政権にとって野党がまったくもって脅威の存在になれていないことが大きい。そしてその責任はほぼ最大野党の立憲民主党が負っていると言っても
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新年を迎えるにあたり、誰もが今年こそは明るく前向きな方向を目指していきたいと思うところだろう。これは日本に限ったことではないが、昨年は長引くコロナ禍に加え、ウクライナ戦争、そして安倍元首相の暗殺事件などの暗いニュースが多かった。そのような状況では、目の前の問題に対応するだけで手一杯で、われわれの社会が抱える大きな問題に取り組む余裕などなかなかなかったというのが実情ではないだろうか。 しかし、そう言いながら日本は、四半世紀もの時間を浪費してしまった。まだコロナ禍も予断を許さない状況ではあるが、今年こそは、溜まりに溜まった宿題に一つずつ取り組んでいく一年にしたいではないか。 さて、状況を改善する際に大前提となるのが、何を措いてもまずは現状を正確に把握することだ。社会全体が不都合な真実から目を背けるのが当たり前となり、メディアの機能不全も手伝って、われわれは日本が今どのような状況に陥っているかに
クリスマスのイルミネーションで街は賑わっているが、世界ではクリスマスはおろかその日一日をなんとか生き延びようとしている人々が大勢いる。 その一つが戦時下にあるウクライナだ。 今日のクリスマスイブ、ウクライナはロシアがウクライナに侵攻を開始した2月24日からちょうど10か月目を迎える。発生直後は多くの人が衝撃を受け、メディアでも大きく取り上げられたこの戦争も、300日も経つうちに日本では遠い出来事のように受け取られ始めていないだろうか。 そこで2022年の最後から2番目となるマル激では、東京大学先端科学技術研究センター専任講師でロシアの軍事問題の第一人者である小泉悠氏とともに、あの日なぜウクライナで戦争が始まり、そしてなぜそれが今も続いているのかなどを、あらためて問い直してみたい。 この戦争が厄介なのは、なぜロシアのプーチン大統領がウクライナに軍事侵攻を行う決断を下したのかが、専門家にもはっ
1957年東京都生まれ。81年東京大学文学部社会学科卒業。同年、アジア経済研究所入所。専門は開発社会学、イエメン研究。イエメン・アラブ共和国サナア大学客員研究員、海外調査員(ブライトン駐在)などを経て2014年より現職。2011~14年、国際開発学会会長を務める。著書に『開発援助の社会学』、編著に『援助研究入門』など。 著書 「サプライチェーンの人権」と言われても、すぐにはピンと来ない人も多いかもしれない。 日本に住む私たちは今、世界中から集められた原材料でできている商品や製品、食品をコンビニやスーパーマーケットや通販などを通じて、いつでも簡単に、しかも驚くほど安価で、手に入れることができている。サプライチェーンとは、それらの商品や製品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費といった一連の流れのことを指している。 そのサプライチェーンにおける人権尊重の促進が、国際
国連は9月9日、日本の障害者施策に対して数々の改善勧告を出した。先月ジュネーブで開かれた国連障害者権利委員会の審査に基づいたもので、日本の障害者政策が初めて世界基準で検証されたことになる。 障害者権利条約は、女性差別撤廃条約や子どもの権利条約と同様の人権にかかわる国際条約の一つで、2006年に国連で採択され日本は2014年に批准している。今回の勧告は、国連が日本国内の実施状況について初めて審査を行い、総括所見という形で発表されたものだ。 今回の勧告は全体で75項目に及び、旧優生保護法の問題や、6年前に入所者19人が殺害され世界的なニュースとなった「やまゆり園」事件にも触れている。事件の背景には優生思想や能力主義的な考え方があることを指摘、そのような考え方を広めた法的責任の追及をするよう勧告している。 ジュネーブの会議を傍聴した日本障害者協議会代表の藤井克徳氏は、国連障害者権利委員会の委員た
暗殺された安倍晋三元首相の国葬が来週に迫る中、国内では国葬反対の声が日に日に大きくなっている。各紙の世論調査でも、当初主要メディアの中で唯一賛成が反対を上回っていた読売新聞でさえ、国葬を評価しないとする人が評価する人を大きく上回るようになり、もはや世論の過半が歓迎しない中で元首相の国葬が執り行われることが避けられない異常な事態を迎えている。 それもこれも事件直後の岸田文雄首相の拙速な決定の根拠を、その後きちんと説明できないところに原因があるが、それもそのはずだ。そもそも今回のような形で決定された「国葬」を法的に正当化することは最初から不可能なのだ。 岸田首相は安倍首相が暗殺された6日後の7月14日に国葬を実施することを表明し、22日にはそれを閣議決定しているが、なぜ国葬なのかについて首相自身が明確に説明したのは8月10日の記者会見が最初だった。首相はその会見で、自らが決断した国葬について「
長らく日本のリベラル言論をリードしてきた朝日新聞が、危機的な状況に陥っているという。1990年のピークから20年にわたり誇ってきた800万の発行部数も、ここ10年はつるべ落としのように急落を続け、2022年には約半分の400万部あまりまで激減し、2021年度にはついに400億円を超える大赤字に転落してしまった。ほぼ同時期に他の新聞社も軒並み発行部数を落としているが、その中でも朝日の凋落ぶりは群を抜いている。 朝日新聞の発行部数が激減するようになった直接のきっかけとしては、2014年に相次いで発覚した「2つの吉田問題」が挙げられることが多い。これは2011年の東日本大震災に起因する原発事故をめぐり、当時福島第一原発の所長だった吉田昌郎氏が政府事故調に対して語った調書をめぐる「吉田調書」報道と、文筆家吉田清治氏の従軍慰安婦に関する証言をめぐる「吉田証言」報道がいずれも不適切なものだったことが指
離婚後の親権について、法制審議会家族法制部会で共同親権導入をすすめるかどうか議論が行われており、8月末にも中間試案がとりまとめられる予定となっている。 先進国では共同親権を認めている国が多いとされ、日本も国際水準にすべきという意見がある一方で、DVや虐待などの事例を抱える弁護士や支援団体からは反対の声があがっている。 そもそも親権とは何か、養育費や面会交流といった問題とどうかかわるのか、きちんとした理解がされないまま表面的な議論となっていることを強く危惧しているのが、憲法学者で子どもの権利について研究を続けてきた木村草太氏だ。 婚姻時は共同親権・離婚後はどちらか片方が親権を持つ「単独親権」が日本の仕組みだが、離婚をするとき、別居親との面会交流、養育費等については民法766条に規定があり、子どもの利益を優先して協議または家裁の調停で決めることになっている。離婚後子どもと会えない別居親が子ども
1952年京都府生まれ。77年立命館大学経済学部卒業。同年新日本出版社に入社。あゆみ出版、晩聲社などを経て、86年よりフリージャーナリスト。2007年新党日本副代表就任。10年参院初当選(民主党・比例区)。当選2回。2022年の参院選で立憲民主党より出馬も落選。同年、ジャーナリスト活動を再開。 安倍元首相の銃撃事件をきっかけに統一教会に社会の注目が集まっている。犯人の山上徹也容疑者が、母親の統一教会への入信を機に家庭生活が崩壊し、その恨みの矛先を統一教会と関係が深いと思われる安倍元首相に向けたことが、蛮行の動機になったと供述していることを警察が発表したためだ。 その後、100人単位で自民党の議員と統一教会の間に協力関係があったことが明らかになり、安倍首相の暗殺劇に端を発する統一教会問題は、壮大な政治スキャンダルに発展する様相を見せ始めている。 テレビ各局で生中継された8月10日の外国特派員
霊感商法の被害者救済に取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士らが2022年7月29日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で会見を行った。 この日会見したのは、同連絡会の山口広、紀藤正樹、川井康雄の3弁護士。 川井弁護士は、安倍政権と統一教会の関係について、「第一次安倍政権が終わった時期に、霊感商法の刑事摘発が一気に増え、第二次安倍内閣が発足してからは、まったく摘発がなくなった」ことを指摘した。 紀藤弁護士は統一教会に対して金銭被害などを訴えた裁判が全国で起こり、多くの被害者が勝訴していることを紹介した上で、「統一教会の行為は組織的に行われたものだった」とした。 政治家と統一教会との蜜月関係が相次いで明らかになっていることについて、同連絡会の代表世話人を務める山口弁護士は、「信仰の自由があり、世界を見ても宗教団体の規制は難しい。だからこそ政治家には、倫理的な規範をもって旧統一教会と
安倍元首相の銃撃事件は、犯人の統一教会に対する個人的な恨みがその背景にあったことが明らかになったことで、統一教会の存在がにわかにクローズアップされることとなった。 かつて統一教会(正式には世界基督教統一神霊協会。2015年に名称を世界平和統一家庭連合に変更)が霊感商法と言われる手法で多くの被害者を出し、それが社会問題化していたことは周知の事実だ。今はかつてのような強引な資金集めは行っていないと教会幹部は主張するが、その一方で統一教会がその関連団体などを通じ、政治権力、とりわけ自民党に深く浸透していたことが、今回の事件によって期せずして明らかになった。 韓国発祥の新興宗教である統一教会は、今やアメリカを始め世界各国に支部を持つ大組織になっているが、その活動資金の大半が日本で集められたものであることが、米紙ワシントンポストなどによって報じられている。日本が食い物にされていたのは明らかだ。主に日
1931年山口県生まれ。52年慶應義塾大学法学部卒業。54年慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻修了。同年毎日新聞社入社。横浜支局、経済部を経て、政治部記者として首相官邸、自民党、外務省などを担当。72年沖縄密約取材をめぐり、国家公務員法違反容疑で逮捕・起訴。一審無罪、二審で逆転有罪、78年、最高裁で有罪確定(懲役4ヵ月、執行猶予1年)。74年毎日新聞社を退社し西山青果勤務。91年退職。著書に『沖縄密約 「情報犯罪」と日米同盟』、『記者と国家 西山太吉の遺言』など。 著書 西山太吉さんの2023年2月のご逝去を受けて、過去の番組を追悼番組として無料で放送いたします。 この5月15日で沖縄は本土返還50周年を迎える。終戦と同時に始まった米軍の4半世紀にわたる占領が解かれ、沖縄の施政権が日本に返還された記念日は、本来であれば日本にとっても沖縄にとっても祝うべきおめでたい日なのかもしれない。
ロシアによるウクライナへの武力侵攻は多くの国々を驚愕させた。それがロシアのプーチン大統領による現在の国際秩序に対するあからさまな挑戦であることが、誰の目にも明らかだったからだ。武力侵攻の結果、ウクライナでは罪のない多くの市民が命を落としたり故郷を追われ塗炭の苦しみを味わっている。その意味で今回の侵攻が到底許されざる行為であることは言うまでもない。 しかし、それが現在の国際秩序を揺るがす行為であるから許されないかどうかという点については、実は異なる視点を持つ国々が少なからず存在する。現在の「国際秩序」は西側の一握りの先進国によって都合よく作られたもので、それ自体は絶対的なものでもなければ、必ずしも正当性があるものとはいえないとする考え方を持つ国々が世界には多く存在するのだ。 その片鱗が見えたのが、2月24日に始まったロシアの軍事侵攻を受けて行われた国連総会におけるロシア非難決議の採決だった。
1947年東京都生まれ。70年東京大学教養学部卒業。同年外務省入省。ハーバード大学大学院ソ連研究センター、モスクワ大学文学部留学、外務省東欧課長、ボストン総領事、ロシア特命全権公使、駐ウズベキスタン大使兼タジキスタン大使などを経て退官。現在、東京大学客員教授、早稲田大学客員教授、東京財団上席研究員など。著書に『ロシア皆伝』、『ワルの外交』。『米・中・ロシア虚像に怯えるな』、訳書に『ロシア新戦略-ユーラシアの大変動を読み解く』など。 著書 アメリカが「いつ大規模な軍事侵攻が起きてもおかしくない」と警鐘を鳴らし続ける中、ロシア専門家の多くは、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻はまずないだろうと、やや高を括っていた。仮に軍事力で相手を圧倒したとしても、軍事侵攻はプーチンにとって決していい結果をもたらさないと考えられたからだ。また、万が一何らかの軍事衝突が起こったとしても、ウクライナ東部2州での限
生殖技術については、これまでもさまざまな課題が見え隠れしていた。 第三者の卵子や精子の提供による出生や代理出産はもとより、最近、海外で行われるようになった子宮移植について、日本でも臨床研究が始まろうとしている。これまでも生殖医療によって生まれた子どもの親子関係がどうなるのかや、安全性や倫理面に問題はないのかなどが議論されてきた。また、妊婦の血液だけで胎児の染色体異常をしらべる新型出生前検査は産婦人科以外でも容易に行われるようになっており、障害者排除の優生思想につながる危険性が障害者団体などから問題提起されてきた。 しかし、脳死や安楽死などの死をめぐるテーマと異なり、生殖技術はプライベートな事柄とされ、世論をまきこむ積極的な議論が行われないまま、当事者間で一方的に進められてきたのが現状だ。 そして、ここに来て生殖技術が大きく動く気配を見せている。 菅前政権が少子化対策として看板に掲げた「体外
1972年東京都生まれ。95年慶應義塾大学総合政策学部卒業。2001年東京大学大学院博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員、東京外国語大学大学院地域文化研究科准教授、静岡県立大学国際関係学部准教授などを経て16年より現職。博士(政策・メディア)。著書に『ハイブリッド戦争 ロシアの新しい国家戦』、『ロシア 苦悩する大国、多極化する世界』など。 著書 バイデン政権のレトリックを見る限り、今日、明日にもロシア軍のウクライナ侵攻が開始されようとしているという。東欧やロシア国内のインテリジェンスが必ずしも強いとは言えない日本では、アメリカの立場を受け売りする報道が主流を占めているようだが、実際に現在のウクライナ国境沿いに展開されているロシア軍は、いつでも軍事侵攻を開始できる布陣と臨戦態勢を敷いていることは間違いないようだ。 しかし、ロシアの軍事侵攻の可能性について、専門家の見方は大きく分かれ
1955年愛知県生まれ。80年京都大学医学部卒業。国立武蔵療養所神経センター(現・国立精神・神経医療研究センター)研究員、ハーバード大学客員研究員、国立精神・神経医療研究センター免疫研究部部長などを経て18年より現職。専門は神経内科学、神経免疫学。著書に『多発性硬化症診療のすべて』、編著に『実験医学増刊 神経免疫 メカニズムと疾患』など。 著書 新型コロナウイルスのオミクロン変異種の感染拡大によるパンデミック第6波が高止まりの様相を呈している。しかし、政府は、まん延防止等重点措置の対象地域は順次拡大しているものの、今のところそれ以上の踏み込んだ施策を実行する構えは見せていない。また、未曾有の感染拡大が続いているにもかかわらず、一般市民の反応も、どこか危機感に欠ける印象を受ける。 これまでに何度となく感染拡大が繰り返されてきたことから、ややコロナ慣れしている面もあるかもしれないが、何といって
1972年東京都生まれ。97年中央大学総合政策学部卒業。2004年同大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。専門は情報セキュリティ、ネットワーク。1999年富士総合研究所入社。2002年富士総合研究所を退職。関東学院大学経済学部講師、中央大学総合政策学部准教授を経て19年より現職。著書に『メタバースとは何か ネット上の「もう一つの世界」』、『思考からの逃走』、『ハッカーの手口 ソーシャルからサイバー攻撃まで』など。 著書 ここに来て、にわかに「メタバース」に注目が集まっている。 昨年10月、SNSのフェイスブックが、メタバースを事業の柱に据える意味を込めて、社名を「メタ」に変更し、向こう10年間、毎年1兆円超をメタバース事業に投入する方針を発表したのに続き、今年に入ってからはマイクロソフト、ソニーなどのテックジャイアントが相次いで巨額を投じ、著名なゲームメーカーを買収し
辻元清美は今何を考えているのか。 昨年の衆議院選挙で最大野党の立憲民主党は、当初大躍進が期待されながら議席を減らす結果に終わり、党の創設者である枝野幸男代表以下、執行部の引責辞任にまでつながった。新たなリーダーに選出された若い泉健太新代表の下、新体制が発足した後も、支持率の低迷は続いており、各種の世論調査でも立憲の支持率は日本維新の会の後塵を拝し、今や最大野党の地位まで危ばれている。 今の日本の状況下でなぜ維新に支持が集まるのかについては別途詳細な分析が必要だが、それにしても立憲の低迷ぶりは深刻だ。以前にマル激で紹介した早稲田大学の橋本健二教授の調査によると、日本では有権者の半数以上が自身を「リベラル」と位置づけているにもかかわらず、その大半は「支持政党なし」と答えている。旧民主党やそこから派生した立憲民主党を始めとする政治勢力が、有権者の受け皿となれていないことが、日本の政治に閉塞をもた
1977年大阪府生まれ。2001年龍谷大学社会学部卒業。06年同大学院博士課程修了。龍谷大学社会学部実習助手などを経て18年より現職。専門は観光社会学。著者に『パンクする京都オーバーツーリズムと戦う観光都市』、『日本のふしぎな夫婦同姓 社会学者、妻の姓を選ぶ』など。 著書 日本は1996年に法務大臣の諮問機関である法制審議会が、夫婦が別姓を選択できる制度の導入を答申して以来、強制的な夫婦同姓を定めた民法750条は、国連の差別撤廃委員会から繰り返し勧告を受けたり、多くの違憲訴訟が提起されるなどしてきた。しかし、政治の動きはいたって鈍く、最高裁も現行法の下での夫婦同姓の合憲判断を繰り返したため、法制審議会の答申から26年が経った今も、日本では厳然たる夫婦同姓制度が続いている。 一方で世界に目を向けると、夫婦同姓制度を維持している数少ない国の一つだったタイが2005年に、オーストリアとスイスが2
ネットメディアのChoose Life Project(CLP)が立憲民主党から資金提供を受けていたことが明らかになり、メディアの在り方があらためて問われる事態となっている。 政党から実質的な寄付を受けることはメディアにとっては、その公共性や公正性に疑義を生じさせる一因となる。そのメディアが報道機関を名乗っていたり公共的なメディアを標榜するのであれば、そのような行為は厳に慎まなければならない。また、最終的にメディアの公共性や公正性の判断は受け手に委ねられるべき問題だが、今回のCLPの場合、政党からの資金提供の事実を公表していなかった。その点からも問題があった。 しかし、とは言え、高い参入障壁と記者クラブ、再販、クロスオーナーシップなど数々の特権に護られながら「公共的な報道機関」を名乗ることが認められている既存のメディアと比べて、CLPのようなネットメディアは何の特権もない中で、収益性と公共
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