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英国の新しい研究によると、ホームレス状態にある43歳の健康状態は、住まいのある85歳の健康状態に相当するという。ホームレス状態の人によくある症状は、心臓疾患、呼吸器系の問題、臓器障害、傷口からの感染症などだ。さらに昨今は、熱波も致命傷になり得る。ドイツのストリートペーパー『アスファルト』から、熱波対策の遅れを指摘する記事が届いた。 DK Media/iStockphoto 極寒対策に遅れを取る熱波対策 長年、ドイツの福祉局や公安局では、冬の厳しい寒さ対策に力を入れてきた。最悪の事態を回避できるよう、夜通し開いているカフェ、暖を取るためのバス、炊き出しなど「冬季緊急援助プログラム」を提供し、十分とはいえないものの一定の成果を上げてきた。 しかし昨今、気候危機は新たな脅威を生み出している。「暑さは寒さと同様に危険です」と話すのは、ドイツホームレス支援同盟(BAG W)の広報担当ベリット・ポンス
かつて暴力犯罪率の高さで悪名高かったスコットランド・グラスゴー。しかし15 年前に、警察が「暴力」に対する見方を変え、貧困の改善をすすめて社会福祉との連携を始めると、事件数は減少。画期的な事業のモットーは「人生の厳しいカードを引いてしまった人々に、希望と機会を提供する」ことだ。暴力の予防は感染症対策と同じ 根本的な要因を取り除く 2005年、スコットランドの最大都市グラスゴーはヨーロッパの“殺人の都”と呼ばれていた。暴力犯罪の発生率は高まるばかりで、同国ではその年だけで137件の殺人事件が発生。こうした中、対策の抜本的見直しを迫られたストラスクライド警察は「暴力抑止部隊(Violence Reduction Unit)」を立ち上げた。 彼らの部隊は暴力を“病”と捉え、その根本原因を見いだし“治療”することを目指している。貧困地域と連携し、罪を犯した人に懲罰を科すという考えを捨てた“共感的”
街角で雑誌販売をするビッグイシュー販売者は、人通りが見込める場所に立つことが多い。そのため、その場所は、選挙時には選挙活動にも使われることもよくある。 選挙期間になると、ビッグイシューを応援してくださる方の中には「選挙活動で人が集まりすぎて、販売者が販売しづらいのでは?」「候補者は販売者のことをいないものとしているのではないか?」とご心配をいただくことがあるため、実際のところを東京9名・大阪13名の販売者に聞いてみた。 Mihajlo Maricic/iStockphoto *この記事内の調査は、2021年に行われたものです。また、ビッグイシューの販売者の選挙中の状況を紹介するものであり、ビッグシューの販売が選挙活動に優先されるべきなどという主張ではありません。 「選挙活動で困った経験はあるか?」→22人中14人が「困ったことがある」 「選挙活動で困った経験はあるか?」の問いに対し、22人
今、「ひとり暮らし世帯」が世界レベルで増えている。まだ十分に注目されているとは言い難いこの事象の今と考慮すべき影響について、国連経済社会局人口部の元ディレクターで人口統計学者のジョゼフ・チャミーが解説する。 単身世帯に暮らす人がますます増えている credit: Rebecca Murray/IPS 世界的に広がる単独世帯の増加 現在、世界に20億ある世帯のうち約15%にあたる3億世帯が「単独世帯 (one-person households) 」である。 これはあくまで世界平均で、実際の単独世帯数は国によってかなりバラつきがある。 単独世帯率が最も高いのはヨーロッパだ。デンマーク、フィンランド、ドイツ、ノルウェーで40%超、スウェーデン38%、オーストリアとスイスが37%、オランダ36%、フランス35%、イタリア33%と続く。ヨーロッパ以外では、日本が32%、アメリカとカナダが28%、韓
24条の改憲を積極的に訴えてきたのは「日本会議」など、安倍政権の支持母体でもある右派運動。そうした運動の関係者に聞き取り調査を続けてきた山口智美さんは、まず改憲案の第1項に創設された「家族保護条項」に注目してほしいと話す。 「この“家族は、互いに助け合わなければならない”という一文は非常に問題です。家族が助け合うことそれ自体は悪いことでないかもしれませんが、憲法はあくまで権力者を縛るために存在する市民からの命令です。その憲法に、市民に対する命令が入ってしまうのがまずおかしい。そして、これが最高法規となることで『助け合いが基本なのだから、育児や介護などはすべて家族内で担うべき』という解釈が成り立ってしまう。生活保護の扶養義務なども、国でなく親族の負担として強化される可能性が十分に出てきます」 また、現行24条の第1項にある「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」の一文。これが改憲案では「両性
アフリカで結核やHIVの問題に取り組んだ疫学者が、米国に帰国して気づいたこと。それは、暴力が“感染症”に酷似することだった――。暴力の“予防・治療”に驚くべき効果をあげるNGO「キュア・バイオレンス」を、在米ジャーナリストの岩田太郎さんが紹介。※下記の記事は『ビッグイシュー日本版』295号(SOLD OUT)からの転載です。 米国の疫学者・内科医ゲイリー・スラットキンによって2000年に立ち上げられた「キュア・バイオレンス(暴力の完治という意味)」*は、目の付け所がユニークだ。 *Cure Violence 都市部などで先鋭化する暴力の原因を、暴力の主体である「悪党ども」や「ろくでなし」に見いだすのではなく、結核やHIV・エイズなどの感染症の広がりによく似た特徴をもつ「健康問題」として捉えなおしている。だから、暴力をふるう者への接し方も、相手を価値のない人間として見る処罰主義ではなく、「病
オンラインイベント<【緊急配信】BIG ISSUE LIVE「オリンピック期間に、誰も取り残さないために」>に、武石晶子さん(世界の医療団日本 プロジェクト・コーディネーター)、稲葉剛(一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事でNPO法人ビッグイシュー基金の共同代表)が登壇。 東京都への「東京五輪・パラ五輪期間にかかる住居喪失者支援の緊急要望書」の提出に参加した二人に、提出に至った経緯やその内容、オリンピック直前の困窮者支援の状況について話を聞いた。 この記事は、2021年7月17日にYouTubeで開催されたイベント<【緊急配信】BIG ISSUE LIVE「オリンピック期間に、誰も取り残さないために」>を元に、再構成したものです。なお、情報はイベント時のものであり、今後変更となる場合があります。 主催:ビッグイシュー日本 目前に迫った東京五輪、一時宿泊場所さえ十分に確保できない状況で
ホームレス問題に対する社会的議論を巻き起こしたテレビドラマ「キャシー・カム・ホーム」('66)から50年以上にわたり、ケン・ローチ監督は労働者や社会的弱者に寄り添う作品を撮り続けてきた。最新作『家族を想うとき』を通じて彼が憤慨しているのは、「働く貧困層」である非正規雇用の実態だ。 ※この記事は、2019-12-01 発売の『ビッグイシュー日本版』372号からの転載です。 「ゼロ時間契約」の非正規看護師 トイレ休憩さえ難しいドライバー 「これは多くの人が存在を知っているにもかかわらず、誰も語ろうとしない物語です」。83歳となったケン・ローチは、最新作『家族を想うとき』についてこう話す。ストーリーの着想を得たのは、前作『わたしは、ダニエル・ブレイク』の制作途中だったという。脚本家ポール・ラヴァティとともに取材したフードバンクで、出会った人の多くが就業していることに気づいたことがきっかけだった。
新型コロナウイルスの蔓延が雇用や収入に与える影響が明らかになるにつれ、、国民に無条件で現金を給付するユニバーサル・ベーシックインカム(UBI、以下ベーシックインカム)がすべてを解決してくれる万能薬として期待値が上がっているようだ。 もちろんベーシックインカムのアイデア自体は望ましいが、決して貧困や所得格差といった複雑かつ長期的課題への魔法の策ではない、と釘を刺す意見にも耳を傾けたい。カナダのヨーク大学公共政策・行政学部のシルヴァン・カリミ助教授の見解を紹介しよう。 カナダでも自由党の複数の国会議員が、ベーシックインカム政策を最優先課題に引き上げるようトルドー首相に要望している。しかし、財政、行政、政治、憲法の観点から実現可能性はなかなか厳しいと言えよう。 熱心な推進派は、ベーシックインカム導入により、貧困を減らし、所得格差を縮め、業務のオートメーション化がすすみ雇用が減る中での安定所得とな
知的障害や精神疾患のある人が、年間何百人も殺されているーーしかも米国警察によって。とんでもない話だ。ワシントン・ポスト紙によると、2019年に警察による発砲で命を落とした999人のうち、197人が精神疾患を患っていた*1。 photo:wademcmillan/iStockphoto 米国では、精神疾患者が暴れ出した場合は刑事的また医療的な緊急事態とされ、ほとんどの場合、真っ先に現場に駆けつけるのは警察だ。しかし、警察官たちは危険を感じたときには命令を出し実力行使するよう訓練されているだけで、精神疾患のある人々への理解や対応経験はないに等しい。精神疾患者への警察の対応について、エモリー大学ヒューマンヘルス研究センターの非常勤講師ジェニファー・サレットの見解を紹介する。 *1 警察による射殺事件数の最新データ Fatal Force(The Washington Post) 2020年3月2
「中学校でうつ病と摂食障害を発症し、なくしていた自信を取り戻せた。それが、就職にもつながったと思う」「統合失調症で人と関わるのが苦手だけど、夢中で楽しんでいる間にキャプテンを任されるようになった」精神疾患・精神障害のある人がそう話す、“自信回復の場”がある。それが“ソーシャルフットボール”。今や、全国にその競技人口は2,000人、チーム数は160にも及ぶという。この記事は、2020年12月19日に開催されたオンラインイベント「精神障がい者フットボールとは何なのか?~排除に抗するサッカー vol.2~」のレポートです。 主催:NPO法人ダイバーシティサッカー協会 ゲスト: 「インクルーシブフットボールクラブ Half Time」代表の平山惣一さん、選手の出麹早紀さん 「千葉『共に暮らす』フットボール協会(通称トモフト)」副理事長の降屋守さん、トモフトに加盟するチームのひとつ「ブルースカイ」の
日本は “すべての女性が輝く社会” を目指しているらしい。その割には、「日本の男女格差(ジェンダーギャップ)は諸外国と比べ改善が見られない」とシカゴ大学ラルフ・ルイス記念特別社会学の山口一男教授は言う。一体この国が改めるべき点はどこにあるのか、山口教授が『Inter Press Service』に語った。--- 近年の日本政府は、女性の経済活動を推進する法案可決を目指して動いている。にもかかわらず、「世界経済フォーラム2018 ジェンダーギャップ指数(*)」では149カ国中110位と大変残念な結果となった。2017年の146カ国中114位よりはわずかに改善しているものの、それ以前と比べると横ばいかさらに順位を落としている(2016年度は111位、2015年度は101位)。 *各国の社会進出における男女格差を示す指標で、4つの主要分野から算出される。 (1)経済活動の参加と機会(給与、雇用数
加速する気候危機に対し、世界で最も温室効果ガスを排出している組織「米軍」の存在はあまり知られていない。京都議定書の合意により、最も信頼される気候変動の報告書でも計算対象外とされ、米国も排出量を公開していない。米ルイス&クラーク大学のマーティン・ハートランズバーグ名誉教授(経済学)によるレポートをお届けする。 2007年、曲技飛行を行う米海軍の「ブルーエンジェルス」Photo: U.S. Navy photo 世界最大の石油消費組織、米軍 4人の研究者が推定値を算出 気候変動が起こっているのは誰の目にも明らかになってきた。天候パターンは劇的に変化し、台風や洪水、干ばつ、森林火災といった自然災害が頻発。多くの人の暮らしや命を脅かしている。化石燃料に依存した経済システムによって大気中に放出される温室効果ガス(二酸化炭素やメタンガスなど)は増え続ける一方で、政府や企業の行動を変えるべく何百万人もの
この問いについて考えさせられるトラブルはしばしば日本でも話題になる。2019年10月、関東を大型台風が襲ったときに路上生活者が避難所への入所を断られた件、そして2020年6月の支援団体による炊き出しに都が都庁敷地内からの退去を要請した件などだ。 そんななか、これらのトラブルとまさに同じテーマを持つ映画、『パブリック 図書館の奇跡』が上映されることになった。映画の舞台はアメリカ・シンシナティ。大寒波の到来によって命の危機を感じたホームレスの人々が、図書館のワンフロアを占拠するというストーリーだ。 7/17(金)公開『パブリック 図書館の奇跡』/予告編 この公開を記念して2020年7月8日、『映画を通し考える、日本の公共性を持つ空間のあり方と未来』というイベントがオンラインで開催され、NPO法人ビッグイシュー基金のスタッフ、川上が登壇した。 公共とは、パブリックとは何なのか、そして今私たちにで
日本でのビッグイシューの認知度はまだまだ低く、ひとりでも多くの方にビッグイシューの事業を知っていただくことは重要な課題のひとつです。 ビッグイシューを認知・ご理解いただくためのメディア「ビッグイシュー・オンライン」をサポートをしてくださいませんか。 ビッグイシュー・オンラインとは「ビッグイシュー・オンライン」は、ホームレスの人々にその日からできる雑誌販売の仕事を提供することで、路上脱出を応援し貧困や社会的排除の問題解決に挑戦する「有限会社ビッグイシュー日本」の事業理念や活動を知っていただくためのオンラインメディアです。 内容は貧困・格差、病気・障害・依存症、ひきこもり・若者の教育・雇用、マイノリティの生きづらさ、アート・イノベーション、地域創生、シビックエコノミー、ソーシャルビジネスについてのビッグイシュー日本版からの転載記事、オンラインオリジナル記事や、それらについて書かれた海外ストリー
「ビッグイシューを買う人見たことないけど、どんな人が買ってるんだろう」といった声を時々SNS上でお見かけします。 今回は2017年以降SNS上でお見かけした、有名人・クリエイターの皆さんのビッグイシュー&ビッグイシュー関連書籍購入のツイート&記事、15周年のお祝いメッセージ動画をまとめてみました。 羽生善治さん <ミュージシャン・俳優・女優> 白石隼也さん 「ビッグイシューのおじさん」とのエピソードをブログにアップしてくださいました! お待たせしました。ブログ書きました。月1のペースでやっていこうと思ってます。必然的に月末にアップされることになりそうです。 今回のやつは引くほど長いので、そのつもりで。https://t.co/Y1AcWUpAW2 — 白石隼也 Shunya Shiraishi (@s_shiraishikun) 2018年9月24日 TOSHI-LOWさん(BRAHMAN
ファストファッションは多くの人の犠牲の上に成り立っていることを、どのくらいの人が意識しているだろうか。近年、アパレル産業の生産拠点がアジアから東欧の旧共産圏に移す動きが起きていることを受け、セルビアのストリート誌『Liceulice』がその実態を取材した。アパレル業界の世界的労働組合「Clean Clothes Campaign(以下、CCC)」のセルビア支部、ボヤナ・タミンジヤとステファン・アレクシッチに話を聞いた。 *1989年にオランダで設立されたアパレル業界における世界的な非政府系労働組合。世界の250以上の団体と連携し、労働環境改善を働きかけている。 https://cleanclothes.org ー 近年、アパレル産業の生産拠点がアジアから東欧の旧共産圏に移す動きが強まっています。セルビアではどういった影響が見られますか? 大手スポーツ用品ブランドの生産が旧ユーゴスラビアで行
日本では「ホームレス中学生」だった芸人が有名だが、世界を見渡せば、ホームレス経験を経た後に偉業を成し遂げた著名人は決して少なくない。多くの人々から敬愛・賞賛され、世代を超えて“崇拝”されている人たちも、華やかな世界からかけ離れた路上生活やそれに近い状態を経験したことがある。その事実から言えることは、「ホームレス」という言葉はあくまで家がない「状態」を指すのであって、決してその「人」を表すことばではないということだ。 ** ロンドンの公園のベンチで眠っていたある若い男。当時、彼のことを気に留める通行人はいなかった。この青年が後に、映画『007シリーズ』で諜報員ジェームス・ボンドを演じ、映画史に名を残すことになるとは、誰も知る由もなかったのだから。 ジェームス・ボンド役で億万長者となり、世界何百万人ものファンに崇拝される存在となった英国人俳優ダニエル・クレイグにも、公園のベンチで夜を明かしてい
日本人には当たり前のように信頼されている「ハンコ」だが、ハンコが法的に意味を持つ国は稀であり、「象牙のハンコを使っている」などと言おうものなら、国際的には非難の対象になるということをご存じだろうか。象牙はワシントン条約で象牙の輸出入が禁止されているにもかかわらず、象牙目当ての密猟で、アフリカゾウが絶滅の恐れに瀕しているからだ。 それを止めようと滝田明日香さんと友人の山脇愛理さんは、2012年に任意団体「アフリカゾウの涙」を立ち上げ、現在認定NPO法人として活動を続けている。 そんな「アフリカゾウの涙」の主催で、2019年7月「ケニア&日本、アフリカゾウ保護最前線の現場から現状をとことんトーク in 渋谷」が行われた。 家族を大事にするアフリカゾウ アフリカゾウは家族を大事にする。群れはメスで構成されており、最年長のメスがリーダーとなり、乾期にどこに餌場や水があるかを把握し、群れを率いる。リ
ロナウド・ソアレスの携帯に、4年間全く音沙汰がなかった 19歳の娘から “予期せぬ” メッセージが届いたのは2018年12月のことだ。「助けて、ここから出して」 カルト宗教の拠点で監禁・強制労働させられていた娘が、他メンバーの携帯電話でこっそり連絡してきたのだ。「逃げ出したい。ここではお父さんとも話させてくれないの」 ソアレスの娘は2014年に母親と一緒に、ブラジリアの農場を拠点とする宗教団体「ラオディキア伝道アドベンチスト教会*(正式名: Igreja Adventista Remanescente de Laodiceia)」に入会していた。ソアレスはすぐに警察に届けを出すと、農場まで600キロの道のりを車で飛ばし、娘を取り返し、家に連れ帰った。 カルト団体による労働搾取についてはブラジル当局も取り締まりをすすめているが、どこまでが「宗教的慣習」でどこからが「 現代の奴隷労働」にあたる
「反ホームレス施策」なるものが、世界各地でかれこれ何十年にもわたり ”当たり前” のものになっている。徘徊禁止法、座りこみ禁止条例などあからさまなものから、街の設備や公共スペースに埋め込まれているものまで、そのかたちはさまざまだ。 所有者や考案者が意図した人以外の利用を妨げる “やさしくない” 設計 ー「排除アート」と呼ばれることもあるー が、都市デザインの潮流としていろんなかたちで見られるようになっており、その矛先は他でもないホームレスの人々に向けられている。すでに社会の片隅に追いやられ、休憩や眠れる場所を探している彼らが、公共スペースを利用しづらくなっている米国の事情についてレポートする。 ** 有名書店の店先にスプリンクラー、事例に事欠かない米国の現状 米国の主要都市でも、その悪質な事例がはっきりと目に見える形で広がっている。 2013年、ニューヨークのグリニッチビレッジにある老舗書
1919年に制定され、当時最も民主的だと言われたドイツの「ワイマール憲法」。しかし48条「大統領緊急令」が濫用されて、ヒトラー独裁が生じた。自民党改憲草案の「緊急事態条項」の危険性と併せて、ドイツ近現代史の研究者・石田勇治さん(東京大学大学院教授)に問題点を聞いた。 Photo:浅野カズヤ 授権法制定までわずか54日 ナチ差別法も乱立ヒトラー独裁がホロコースト(ユダヤ人大虐殺)へと行き着いた1933~45年のドイツ。国民主権や基本的人権が明記された「ワイマール憲法」のもとで、なぜ独裁政権が誕生し、国民の基本権が効力を失い、やがて無数の命が奪われたのだろうか。 独裁への入り口は、ワイマール憲法48条(緊急事態条項)の「大統領緊急令」(※1下図参照)だったと、石田勇治さんは話す。 (クリックで拡大できます) 「世界恐慌の影響で失業者が急増し社会不安が深まった1930年代初頭、国会では政党間の利
ビッグイシューでは、ホームレス問題や活動の理解を深めるため、高校や大学・市民団体などでの出張授業をさせていただくことがあります。出張授業では販売者がスタッフとともに現地へお伺いするパターンが多いのですが、今回初めて、広島の会場と大阪事務所をつなぐ形で販売者が「サテライト講演」を実施しました。 PHOTO: Erika Abiko 会場となったのは広島県内で唯一『ビッグイシュー日本版』をショップ販売してくださっている「Social Book Café ハチドリ舎」。広島市の平和記念公園すぐそばにあるカフェで、毎月6のつく日には、被爆者である語り部の方と対話ができる機会を設けたり、さまざまな社会問題をテーマに毎週数々のイベントを開催したりしています。 (2019年1月時点の販売の様子) 広島では2006~2012年前までビッグイシュー販売者による路上販売が行われていましたが、販売者の卒業に伴い
GNP(国民総生産)の数値からは「世界で最も裕福な国」とされているスイスだが、実のところ、貧困率は驚くほど高い。多くの人に影響を及ぼしている事実でありながら、スイスの社会においてもあまり目を向けられていないこの問題の実態を、高齢女性ロッティの経験談をもとに見てみよう。--- 「『夫に先立たれ年金だけでは暮らしていけないんです』などと言うとか、認知症のふりでもしない限り、人々の同情を引くのは難しいんです」 スイスの首都ベルンの駅地下にあるレストランでミルク入りコーヒーをすすりながら、68歳のロッティ(仮名)は語った。温かい飲み物など、通行人が小銭を恵んでくれた時にしか楽しめない贅沢だと言う。 (c)photo-ac ベルン西部に位置するビュンプリッツ在住。身長162センチ、白髪混じりのショートヘア、痩せ細った顔はしわだらけだ。茶色のズボンにグレーのコートを羽織り、足を引きずって歩く。 富裕国
ビッグイシューでは、ホームレス問題や活動の理解を深めるため、学校や団体などで講義をさせていただくことがあります。 今回の訪問先は、兵庫県・灘中学校の3年生の授業。社会科の片田先生が「同じ社会に生きるものとして、社会に出た時の“共感”の基盤をつくり、民主的な市民、行動する市民を育てていきたい」とビッグイシューに声がけいただき実現。 「怖い」「くさい」「汚い」・・・忌憚のない「ホームレスの人」へのイメージ 出張授業の前にホームルームなどの時間を利用して取っていたアンケートによると、灘中の生徒の皆さんが持っていた「ホームレスの人」のイメージは大半がネガティブなものでした。 灰色の吹き出しはネガティブ、黄色系がポジティブな色分けにしたところ、圧倒的にネガティブなイメージ まずは、「ホームレス」として「怖い」「自堕落」といったイメージでひとくくりにしがちな思い込みに対して、これまでに数百人のホームレ
SNSやブログといった個人発信のメディアが一般的になったことで、広く世に出る文章だからといって、必ずしも「校正・校閲」の工程を経ているわけではなくなった。 しかし、新聞社や出版社など、日常的に大量の文章を世に出している会社では、校正・校閲を担当する人間を数十人単位で擁するなど、出版の仕事には欠かせない工程であることには変わりない。 ©Photo-ac そんな校正・校閲の仕事だが、デジタル化が進んだ現代では体制を変更するケースも出てきている。 かつては社内に常駐したり、定期的に来社して待機したりしていたものだが、最近ではプロジェクトごとにオンラインサービスに登録している人たちにアウトソースしたり、在宅ワーカーにオンラインで校閲してもらうなどで、コスト削減につなげることも珍しくない。 オンライン校正・校閲のメリット オンラインで校正・校閲を依頼する際は、PDFなどのデータファイルを校正・校閲担
大阪市西成区、「日雇い労働者の街」として知られる釜ヶ崎。最近では「あいりん総合センター」の閉鎖をめぐる反対運動がニュースで報じられているが、そもそも近年の釜ヶ崎はどんな状況になっているのだろうか。 2019年2月下旬に実施された「釜ヶ崎ツアー」をレポートする。案内してくださったのは、釜ヶ崎に暮らして50年、この街の盛衰を知り尽くしている水野阿修羅(みずの あしゅら)さん。ご自身もかつては日雇い労働者だったが、NPOのスタッフを経て65才で定年退職、現在は生活保護で暮らしている。 「一度も正社員経験ないから年金ゼロなんです」 優しげなほほ笑みを見せる阿修羅さんだが、多少血気盛んだった頃もあったと言う。紫色に染めた髪はなかなかのインパクトだが、NHKをはじめとしたメディアが釜ヶ崎を取材する際のアテンドを何度も経験されるなど、ガイドはお手の物のようだ。 阿修羅さんの説明を聞きながら歩いていると、
ビッグイシューでは、ホームレス問題や活動の理解を深めるため、高校や大学などで出張授業をさせていただくことがあります。 今回の訪問先は、京都府にある中高一貫の男子校、洛星高校。年間を通してさまざまに機会に、「SNS利用時のリスクヘッジ」や「薬物依存症について」「犯罪被害者の声」など様々な企画を立て、教科の授業ではカバーできないことについて外部講師を招いて実施しているそう。その一環でビッグイシュー日本のスタッフと、大阪なかもずの販売者・中本さんが講師として伺いました。 「ホームレス状態になるのは努力不足、自己責任」? 今回は50分という限られた時間のため、事前に生徒の皆さんがホームレス問題についてどう考えているかのアンケートを取っていただきました。 任意のアンケートのため、回収率は1/3ほどですが、半数以上の生徒が「ホームレスの人は、もっと努力ができたのではないか」と考えていることが伺えます。
日本では「ホームレスの人と対等にビジネスをする」「路上でモノを売る」ということになじみがないためか、販売者本人やビッグイシュー日本が様々な誤解や偏見、攻撃、嫌がらせに近い行為をうけることがしばしばあります。 【目次】 ・ビッグイシューは「貧困ビジネス/悪徳商法」という思い込み └ビッグイシューのしくみ └「貧困ビジネス/悪徳商法」? └「生活保護を受けさせないで路上に固定化している」? └「ホームレスの人々から搾取している」? └「ホームレスの人々にノルマを課し不当な苛酷労働させている」? └「ホームレスの人々の脱税を黙認している」? └「ビッグイシューの役員は私腹を肥やしている」? └「ホームレスの人々を雇用しないことが貧困ビジネスの証」? └「決算公告を出さないことこそが貧困ビジネスの疑惑の証」? └「赤字なんて帳簿しだいでどうにでもなる」? └「寄付や広告費は丸儲け」? ・「路上での
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