text by Sawako Kimijima, photograph(TOP写真のみ) by Masahiro Goda 牛が好きで好きで仕方がない。 自分の居場所を「牛といるか、枝肉といるか、(牛を)食べているか」と笑う。 東京・芝浦の食肉市場に通い、牧場で牛を飼う人々と接する中で、「(牛の価値を伝える)伝書鳩になりたい」と思った。 以来、食肉卸しまっしぐら。 牧場へ赴き、牛の顔と体を見て、一頭一頭の個性と一生を把握する。 個体に合わせて熟成を施し、適材適所となり得る店に一期一会の出会いをもたらす。 ことに高値が付きにくい経産牛やジャージー牛の価値を高めたい、彼らの花道を飾りたいと願う。 写真)設備を持たない荻澤さんは、枝肉での熟成をその道のプロに託す。黒毛和牛は吉澤畜産、短角牛は日山畜産、ジャージー牛はマルヨシ商事に。「生産者の想いは枝肉に表れます。たとえば、筋間脂肪の付き方や脂の色