2016年5月、三重県での会合に臨む安倍晋三首相(左)とオバマ米大統領。14年の〝豚の決着〟は、日本側の情報共有が奏功した好例だ(代表撮影) 公に目にする記者会見の裏で、ときに一歩も譲れぬ駆け引きが繰り広げられる外交の世界。その舞台裏が語られる機会は少ない。ピアニスト、ワイン愛好家として知られ、各国に外交官として赴任した大江博・元駐イタリア大使に異色の外交官人生を振り返ってもらった。 ミシュラン名店での攻防《米国との環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉で、日本側の密な情報共有が奏功した例は2014年の〝豚の決着〟だ》 東京・銀座にあるミシュランの三つ星名店「すきやばし次郎」で、オバマ米大統領と安倍晋三首相との間で交わされたやり取りです。 日本への米国産豚肉輸入問題で、日本側がどこまで譲歩が可能かを巡り、米国と日本の間でかなり差がありました。米通商代表部(USTR)のフロマン代表は「米側