『図書館を建てる、図書館で暮らす―本のための家づくり―』は、多くの読書家、蔵書家、あるいは積ん読家にとって、まさに憧憬の書と言えるだろう。 私はご夫妻のうち山本さんと先にお会いしているが、初対面で戴いた瀟洒な名刺には「森の図書館司書長」と刷りこまれていた。よく聞いてみると、それは公共図書館ではなく、私立の図書館でもなく、自宅だと。蔵書は約五万冊! 間取りをお聞きして、私は腰を抜かした。自宅に図書館並みの書庫をお持ちのかたは知っていたが、この森の図書館は家全体が図書館なのだ。 書架スペースが膨大にあり、その中央に、天井の高い、しかし本を保護するために陽光は入りすぎない、森の大樹の木陰のように暖かで涼しげな部屋が存在する。メインルームとなる「閲覧室」だ。「ロマネスク時代の修道院の図書室に住みたい」という理想を叶えるべく造られた夢の一室。中世西洋風の“陰影礼讃”の実践である。 しかし書物を「閲覧