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▲ 展覧会会場のエントランスを飾る「ブラック・べア」。 多くの人が幼い頃、そして親になったときにお世話になった絵本「ミッフィー(うさこちゃん)」シリーズの作家、ディック・ブルーナさんが今年2月に亡くなった。親しみを込めて、あえて「ブルーナさん」と呼びたい。現在、東京・松屋銀座で、ブルーナさんのグラフィックデザイナーとしての側面を紹介する展覧会「シンプルの正体 ディック・ブルーナのデザイン」が開かれている(5月8日まで。その後、福岡へ巡回)。 ▲ 1927年、オランダ・ユトレヒト生まれのディック・ブルーナさん。 仕事と創作のはざまで ブルーナさんは出版社「A.W.ブルーナ&ズーン」の経営者の家に生まれた。芸術家になることを夢見ていたが家業を継がねばならず、入社前の2年間だけ遊学を許されたという。ロンドンとパリで1年ずつ書店や出版社で働きながら、たくさんの美術に触れたブルーナさん。特にアンリ・
2月21日(火)に開かれた「ザ シンガポール ダイアローグ:21世紀のサスティナブルな都市のための戦略」の講演会の内容をレポートします。初回はメインスピーカーであるシンガポールの建築設計事務所WOHA(ウォン・マン・サム氏、リチャード・ハッセル氏)によるプレゼンテーション。その前に主催者であるシンガポール政府観光局 日本支局長の柴田亮平氏から主旨が語られました。 ▲ 左から、シンガポール政府観光局北アジア局長のマーカス・タン氏、建築評論家のエルウィン・ビライ氏、WOHAのリチャード・ハッセル氏、SUEP.の末光弘和氏、WOHAのウォン・マン・サム氏。 ▲ シンガポール政府観光局 日本支局長の柴田亮平氏。 「ザ シンガポール ダイアローグ」はシンガポール政府観光局が展開するプラットフォームの1つで、過去2年にわたりAXISギャラリーと共催してきました。今回の「ザ シンガポール ダイアローグ
俳優のトム・クルーズは、自らディスレクシアであると公表し、シナリオなどを読むのが辛いことを告白している。日本では失読症などと訳されるディスレクシアは、知能や理解力などに異常がないにもかかわらず、文字の読み書きに困難を覚える学習障害である。 例えば、”p” “q” “d” “b” などの形が似ていたり対象形になっている文字や、”i” “l” “j” のように字間が狭く区別のつきにくい文字などが文章内に出てくると、その部分が判別できず、誤読や意味の取り違えなどが発生する。 自らもディスレクシアに悩むデザイナーのクリスチャン・ボアーによれば、スティーブ・ジョブズやビルゲイツ、ジョン・レノンなどもディスレクシアの症状があり、にもかかわらず偉大な業績を上げた人物として紹介している。 自身を含めて、失読症が克服できれば、社会的に活躍できる人々が世の中にもっといるはずだと考えたボアーは、自らの職業を生か
11月30日、コクヨデザインアワード2016の最終審査(プレゼンによる審査)が行われ、グランプリ1点、優秀賞3点が発表された。今年は国内外から1307件の応募があり、1次審査を通過した10件の作品が最終審査の対象となった。コクヨが主催する同アワードは今年で14回目。その特徴は商品化を目的としたアワードであるということ。受賞作から検討され、これまでにも「カドケシ」(2002年佳作)「ビートルティップ」(2007年優秀賞)「和ごむ」(2013年優秀賞)といったヒット商品を生み出してきた。 今年のテーマは「HOW TO LIVE」。モノが溢れている現代に本当に必要なものは何なのかを問い、日々の生活や生き方にまで及ぶような新しい「考え方」を求めた。6年にわたって審査員を務めている田川欣哉氏は「もはや禅問答に近いテーマ。応募する人は悩むだろうなと思ったし、実際、審査も苦労しました。そのためか、最終審
AXIS180号の表紙インタビューに登場いただいた落合陽一さんは、1987年生まれの若き研究者にして、気鋭のメディアアーティスト。2015年から筑波大学助教に就任し、現在、デジタルネイチャー研究室を主宰している。研究論文はシーグラフなどの国際会議で発表し、CGやコンピュータサイエンスの学会誌にも掲載されている。メディアアーティストとして発表した作品は、アルス・エレクトロニカやシーグラフ・アート・ギャラリーをはじめとして、各地で高い評価を受けている。2015年に刊行した『魔法の世紀』では、20世紀から21世紀への情報技術の急速な変化を、「映像の世紀」から「魔法の世紀」への移行と分析。このパラダイム転換は大きな話題を呼んだ。 プレゼンテーション用の資料などでAXISフォントを使っていただいていると聞きました。 大学生の頃から愛用しています。学生時代って、自分なりに制作環境を整えていく時期じゃな
米国のデザインエージェンシー、Ziba Designのフェローであり、近年自ら立ち上げた実験会社、monogoto (米国・ポートランド)の代表を務めるビジネスデザイナーの濱口秀司氏。企業の戦略レベルから商品開発まであらゆるレベルのプロジェクトを手がける濱口氏は「プレゼン資料にAXISフォントを使っている」という。その背景と理由、さらに「百発百中で成功させる」と言われるプレゼンの秘訣も聞いた。 最近はどのようなプロジェクトを手がけられていますか。 日本って、アメリカなど海外のものをありがたがる傾向がありますよね。僕はそれが嫌で、日本で成功したものを逆にアメリカに持っていこうと思っているんです。だから今、monogotoという会社は日本の企業にフォーカスしてます。日本で面白い成功事例をつくって、アメリカ人に「日本はすごい」 と言わせたい。僕は日本人のイノベーション力を信じているのです。 プロ
上質な素材感と高い意匠性を謳う、塩化ビニール製の化粧フィルム「3M ダイノックフィルム」。耐久性とメンテナンス性に優れる同製品は、1960年代に発売されて以来、半世紀以上にわたって、建築やインテリアの現場で支持されている。 身近な空間に広く普及しているため、毎日のように目にしていながら、表立って脚光を浴びることのない建築部材。その背景にはデザインへのヒントが溢れている。 3月の新柄発表を機に、スリーエム ジャパンの谷岡 哲コンストラクションマーケット事業部長と黒崎真由デザイナーのふたりに話を聞いた。 ▲ スリーエム ジャパン コンストラクションマーケット事業部 事業部長 谷岡 哲氏 ーーダイノックフィルムは新柄157点を追加して、全928柄のラインアップになりましたが、開発期間はどれくらいでしたか。 前回の新柄の発表が2014年3月なので、ちょうど2年です。これまでは3年ほどの周期でしたか
こんにちは、コミュニケーターのなかむーです。朝晩はずいぶん冷え込むようになってきましたが、夜が長くなるほど楽しい夜更かしがしたくなり、ついつい本に手が伸びます。本好きは独り寝しないと言いますが、枕元に積まれていく本が増えていくのも困りものです。今日はそんな本好きにはぜひとも知っていただきたい、「世界を変えた書物」展をご紹介します。 現在ナレッジキャピタル「イベントラボ」で開催中の「世界を変えた書物」展では、金沢工業大学ライブラリーセンターの稀覯書(きこうしょ)コレクション「工学の曙文庫」からの蔵書が展示されています。このイベントのサブタイトルは、「人類の知性を辿る旅」です。分野や趣味が違う方でも、どなたで楽しんでいただける仕掛けがたくさんあります。 稀覯書とは、極めて少数しか残っていない、古い時代に制作された貴重な本のこと。「工学の曙文庫」には、ただ古いだけでなく、デザインや装丁が美しく、
首都大学東京 インダストリアルアート学域の授業「プロダクトデザイン特論D」において、学生の皆さんが3チームに分かれ、第一線で活躍するデザイナーの方々にインタビューを実施。インタビュー中の写真撮影、原稿のとりまとめまで自分たちの手で行いました。シリーズで各インタビュー記事をお届けします。最終回はナガオカケンメイさんです。 ナガオカケンメイさんインタビュー 正しいデザインとは? ナガオカケンメイさんは、「ロングライフデザイン」を軸に活動するデザイナーであり、プロデューサーであり、経営者の顔を持つ“デザイン活動家”である。2000年からロングライフをテーマとした「D&DEPARTMENT PROJECT」を開始し、以来、正しいデザインとは何かを世に問い続けてきた。 ずっと続いているもの どのようなきっかけで「ロングライフデザイン」に着目されるようになったのでしょうか。 ずっとグラフィックデザイナ
首都大学東京 インダストリアルアート学域の授業「プロダクトデザイン特論D」において、学生の皆さんが3チームに分かれ、第一線で活躍するデザイナーの方々にインタビューを実施。インタビュー中の写真撮影、原稿のとりまとめまで自分たちの手で行いました。シリーズで各インタビュー記事をお届けします。第2回は太刀川英輔さんです。 太刀川英輔さんインタビュー NOSIGNER 見えないものをデザインする人 ソーシャルイノベーションを軸として、空間やインテリア、グラフィック、プロダクトと幅広い領域のデザインを手がけているNOSIGNER・太刀川英輔氏。領域を超え、常に社会的な課題と向き合おうとする氏の発想の原点、未来に向けての想いを聞いた。 領域は関係ない NOSIGNERはどのようなコンセプトで活動されているのでしょうか? 空間やプロダクトなどの領域を横断すると同時に、「未だデザインが関わったことがない場所
首都大学東京 インダストリアルアート学域の授業「プロダクトデザイン特論D」において、学生の皆さんが3チームに分かれ、第一線で活躍するデザイナーの方々にインタビューを実施。インタビュー中の写真撮影、原稿のとりまとめまで自分たちの手で行いました。シリーズで各インタビュー記事をお届けします。 佐藤 卓さんに聞く「デザインとは?」 グラフィックデザイナーという肩書きながら、商品開発からプロダクトデザイン、テレビ番組のアートディレクションなど多岐にわたる活動を続けてきた佐藤 卓さん。そのエネルギー溢れるデザイン活動を支えるものは何か。佐藤卓デザイン事務所を訪れた。 アイデアは発明ではなく、発見である 佐藤さんは首都大学東京のシンボルマークをデザインされましたが、どのようなコンセプトなのでしょうか。 シンボルマークのデザインということは顔をつくることです。パッと見ただけで、「あそこの大学だ!」とわかる
デザイン誌「AXIS」のオリジナルフォントとして開発されたAXIS Fontですが、先日AXIS Font ProN(プロエヌ)が発売となりました。9,354字を収録している従来からのAXIS Font Std(スタンダード)に、「ルビ用字形」や「異体字」「イタリック」「約物・記号」などの文字を追加し、改訂常用漢字に対応することで、1万5,525字にまで拡張。日本語をはじめとした78言語にも対応しています。 ここではAXIS Font ProNとAXIS Font Stdの違いについてご紹介します。 違い その1「文字数の拡張」 ©2014 Type Project. All rights reserved. ©2014 Type Project. All rights reserved. ©2014 Type Project. All rights reserved. ©2014 Typ
現在発売中のAXIS 168号の特集は「デザイン思考の誤解」。昨今、妙な流行り方をしている“デザイン思考”について、改めて考えていきます。 特集「デザイン思考の誤解」 今、「デザイン思考」という言葉を耳にする機会が増えている。イノベーションを生み出すための思考法やメソッドのことを指すようなのだが、その意味するところが明確でないまま、それぞれが個々の認識の下で使っているようだ。ある人は「デザイナー的思考法だ」と言い、またある人は「広義のデザインであり、あらゆる分野にデザインを導入することだ」と語る……。組織において「デザイン思考を取り入れよう」と言うものの、明確な定義と説明ができないから、上層部や周囲の理解・説得も難しい。いったいデザイン思考とは何なのか? 本特集では、その整理整頓を試みる。 IDEO CEO ティム・ブラウン氏 インタビュー 「創造的自信がなければデザイン思考には臨めない」
片山正通 「デザインに挑む」 原宿のNOWHEREをはじめ、ニューヨークのユニクロ、代官山のA.P.C.など代表作は数え切れない片山正通氏。 最近では、ファッションの有名ブログサイト「The Business of Fashion」による「The People Shaping the Global Fashion Industry(世界のファッション業界を形成する500人)」のひとりにも選ばれている。そんな片山氏の、デザイナーとして、また、大学教授としての素顔に迫る。 必然的な偶然 まず、インテリアデザインの世界に入ったきっかけを教えてください。 偶然ですね。ただ、単なる偶然ではなく、必然的な偶然だったのかもしれないと思っています。 今思えば、きっかけは2つあって、まず1つ目に、サブカルチャーが好きだったこと。青春時代、ファッションや音楽、それに関わるものや空間が大好きでした。当時はそれら
デザイナー小泉誠、“せんせい”の顔 地域を駆け巡る家具デザイナー。そして武蔵野美術大学(以下、ムサビ)の教授でもある小泉 誠さん。デザインにおいて大切にしていることなど、普段は聞くことのできない話を聞いた。 つくりがいのあるものをつくっていく 小泉先生はものをつくるとき、生活ありきの道具、道具と人がどう関わるかに焦点を当ててデザインをしていると思うのですが? 生活や道具とかを考える前に、デザイナーが製造者のためにどういう役割を持つべきかが大事です。今のものづくりは、多くの場合、「これをつくりなさい」と言われてつくっている。でも、昔は違った。自分たちはこんなものつくったんだけどどうかな、いいね、それ使うから買うよ、というように、つくり手主導だった。しかし、今は「こういうものをつくりなさい」というのが商業的な流れ。そんな中でつくる人のやる気も失せて。「つくらされている」のが現状です。 自分たち
4月、デザイナーの小泉 誠さんが東京・国立に「こいずみ道具店」の新店舗をオープンさせた。家具のショールームである旧店とともに、新店舗では食器やキッチン道具といった日用品を中心に取り扱う。 場所は、旧店から1分ほどの「桜通り」と「大学通り」に面した交差点。築50年の木造2階建の靴店をリノベーションした建物で、黒壁に桜並木の新緑が映える。「桜が咲いているともっときれいですよ。季節を感じられる場所なんです」と2階から顔を出した店主の小泉さんは言う。 ▲ 新店舗は桜並木に面している絶好のロケーション ▲ 既存の店舗の構造を生かした ▲ ポストを兼ねた小さな看板。雨が入らないよう金物部分に傾斜をつけている ▲ 小泉 誠さん デザイナーのこだわりを貫いた空間 小泉さんが手がけた家具や小物を展示販売する店舗として、「こいずみ道具店」をこの地に開店したのは10年前のこと。「当時から、さまざまな産地とものづ
建築家・中村好文さんの個展がTOTOギャラリー・間で開催中だ。 「人の住まい、暮らしとは何かを突き詰めていくと小屋に近づいていく」と話す、自称「小屋好き建築家」の中村好文さん。最初の小屋体験は6歳の時。足踏みミシンの台から新聞紙を垂らして壁をつくり、なかに座ってラジオを聞くのが好きだったという。生まれ育った千葉・九十九里の防風防砂林で木のぼりに夢中になった少年時代。良さそうな枝ぶりを見つけて木の板を置き、マンガなどを持ち込んで、夕方になるまで過ごしたという。 今回の個展ではそんな中村さんのルーツである「小屋」をテーマに構成。鴨長明の方丈やル・コルビュジエの休暇小屋など、中村さんに影響を与え、学生時代から時間を見つけては訪ね歩いた7つの小屋を紹介する。同時に、2005年から仕事の合間に友人たちと手を入れ続けている長野・浅間山麓の「Lemm Hut」など小屋づくりのプロセスを公開する。 ▲ 3
『x‐DESIGN―未来をプロトタイピングするために』(慶應義塾出版会)の著者による連載第1弾の今回は、山中俊治教授と中西泰人准教授。プロダクトデザイナーでもある山中俊治と、コンピュータサイエンスの領域にも精通する中西泰人は、実は東京大学時代に教師と生徒の関係だったこともある。産業構造の変化に伴いデザイナーの役割はどう進んでいくのか。 産業構造のストーリーが変わる 山中俊治(以下、山中) 僕が東大で教え始めて1年目のとき、実は中西先生は大学三年生で授業を履修してくれていましたよね。そのときの課題で中西さんがO-productについて書いてくれた内容というのが、「機能美が機能を積み重ねていった結果、現れる美だとすると、このカメラに機能美はない。しかしこのカメラには人々が機能美だと思うところの機械美が結晶化されている」というものだった。この学生すごいな、僕はこんなに上手にO-productのこ
去る2月14日〜16日の3日間にわたって、アクシスギャラリーで開催された「SHIKKI de SHUKI 2013展」。酒好きが自らの愉悦のために、欲しい器をデザインする、というシンプルな動機のもと、漆器というモノづくりの伝統技術とのコラボレーションによって、9名のデザイナーがそれぞれの理想の酒器をデザイン。動機のユニークさだけでなく、会場ではそれぞれの器とともに、協賛酒造各社のお酒が実際に試飲できるなど、見るだけではなく、体験でき、心地良くなれる、“想い”のこもった展覧会でした。 この連載では、各デザイナーが好みの酒に思いを巡らしながら、カタチと仕上げをイメージし、デザインした作品を、それぞれのコンセプトとともに紹介していきます。第1回は内堀法孝さんによる「kakumaru」。 「kakumaru」 デザイン:内堀法孝 漆器制作:(有)伊藤寛司商店、(有)木曽漆工、未空うるし工芸、(有)
「Collective Dialogue」――社会の課題に、デザイン力を。 AXIS、IDEO、takramの3社によるワークショップが開催 エクスペリエンスデザイン、サービスデザイン、コミュニティデザイン……。かつては家具や工業製品が主流だった「デザイン」の領域は、近年凄まじいスピードで広がりを見せています。 こうした時代の変化にあって、デザイナーのあり方やデザインと社会の関わりはどう変わっていくのでしょう? AXIS、IDEO、takramの3社は、その問いに対する答えを見出すべく、デザインとデザイン領域を越えた多彩なテーマをつなぐ共創型の新たなプラットフォームが必要だと考えました。 毎回お呼びするゲストとともに、世代や専門性の壁を越えて意見を交換し、アイデアを練り上げ、今の日本社会が抱えるさまざまな課題(ソーシャルイシュー)の解決に向けたアイデアや新たな需要の創出につなげていく……。
ワタリウム美術館で、建築家でありアーティストの坂口恭平さんの個展が開催中だ。 「東京では1円もかけずに暮らすことができる」。 衝撃的なキャッチフレーズで一躍有名になった坂口さん。「建築家を目指して大学に入ったが、もうすでに建物が余っていた」世代だ。早々に建築の設計をやめ、人の住まい方に興味を向けた。お金や土地を所有しない住まいのあり方はないかと、集合住宅の屋上にあった空の貯水タンクに住むなど、都市に暮らす人とハコの関係について考えてきた。 ▲ 坂口さんにとっての建築の原体験は、小学生のときにコクヨの学習机と毛布でつくった「テント」だった。 ▲ 2階の展示より、公道のガーデニングの例。斬新なパブリックスペースの使い方に坂口さんは純粋に驚いたと綴る。 「不動産は不要だ」「(車輪のついた)家はどこにでも建てられる」など、過激な持論を展開して人々に衝撃を与える坂口さんだが、基本にあるのは都市や生活
日本を代表するグラフィックデザイナー、田中一光(1930-2002)の軌跡をたどる展覧会が21_21 DESIGN SIGHTで開催されている。 今回は、クリエイティブディレクターの小池一子さんを本展ディレクターに招聘。西武百貨店やパルコ、無印良品の企画などで、長年、田中一光とともに仕事をしてきた方である。小池さんは田中のことを「はじまりをつくった人。つながりをもたらした人」と表現する。本展のために約2年をかけてアーカイブを分析。時代背景の洞察とともに、田中の活動を体系的にまとめあげた。メイン展示室には10のテーブルが設置され、「文字」「文様」「社会」「演劇、ダンス」といった田中の活動を語るうえでの重要なキーワードとともに、作品だけでなく、試作や資料も公開している。 ▲ 「田中一光 本の世界」と題した最初の展示室では、田中がアートディレクションを務めた約150冊の本を展示。選び抜かれた紙や
10月1日、約5年半の保存・復原工事を経て東京駅丸の内駅舎が創建当時の姿に蘇る。1914年に辰野金吾が設計した煉瓦壁の建築は、1945年の東京大空襲で3階部分を焼失。工事の目的はこれを復原し、建物全体を免震構造とすることである。 そして、同時に東京ステーションギャラリーも活動を再開する。「多くの人々が行き交う駅を文化の発信地とすること」を狙いとし、1988年に丸の内駅舎の2階を改造して開館。これまでにジャンルを問わず105本の展覧会を開催してきた場だ。 復原工事完成を記念する展覧会「始発電車を待ちながら 東京駅と鉄道をめぐる現代アート 9つの物語」では、「東京駅」「鉄道」をテーマに9組のアーティストによる新作を展示する。鉄道を発想源とする、あるいは場所性にこだわる作家の作品を通して、人々の日常生活を支えるインフラであり、歴史的には激動の近代史の舞台となった特別な場所「東京駅」をとらえ直す機
CLASKA Gallery & Shop "DO(ドー)"で開催 トラフ建築設計事務所による「トラフのコローロ展」レポート 東京・目黒にあるCLASKA Gallery & Shop “DO(ドー)”本店(クラスカ2階)にて、トラフ建築設計事務所(以下、トラフ)の個展が開催中だ。もともとトラフは、8年前に鈴野浩一と禿 真哉がホテルクラスカの客室「テンプレート イン クラスカ」の内装を手がけたことがきっかけとなって設立された設計事務所である。それから約5年間、クラスカのレジデンスフロアを拠点に活動してきた。そんな“古巣”での展覧会は、トラフがこれまでに手がけてきたプロダクトを一堂に紹介。建築家ならではのものづくりとアーティストとしてのイマジネーションが絶妙に融合した、楽しい作品を一望することができる。 ▲ Photo by Reiko Imamura 今回メインで展示するのは、化粧板メーカ
みなさんこんにちは、FabLabJapan/FabLabKamakuraの渡辺ゆうかです。今回のタイトルでもある一言をきっかけに、ファブラボ鎌倉でプロジェクトマネージャーをしており、ファブラボと地域とを緩やかにつなげる活動を展開しています。いろいろな試みが同時進行していて、伝えたいことはたくさんありますが、現在鋭意進行中の4つのプロジェクトを軸に、ファブラボ鎌倉らしさをご紹介できればと思います。 プロジェクト01:週1回の実験工房「結のファブ」 FabLabと呼ばれる施設になるためには一定の標準機材と、少なくとも週1回施設をオープンするという規定があります。「オープン」の定義は各ファブラボの裁量で決められています。鎌倉では毎週金曜日午後1時から5時までに限って、街医者スタイルで「結のファブ」という実験工房を実施しています。当日ファブラボ鎌倉にお越しいただき、黒板予約方式で先着順、1組2時間
地球上で最も多い元素は? 答えは「鉄」である。 近年、周期表のカードゲームや元素関連の図鑑や書籍が相次いで出版されるなど、中高生を中心に空前の「元素」ブームだそうだ。そんななか開催されている本展について、企画を担当した理工学研究部理化学グループ長の若林文高さんは、「元素についてたくさんの文字情報が出ているが、実際のものを見る機会は少ない。できるだけ実物を展示することで元素に興味を持ってもらいたい」と話す。 ▲ 会場の冒頭で、超新星爆発によって元素が生まれたことが紹介され、宇宙や地球などの惑星、自然や私たちの身体もまた元素によってできていることが示される ▲ 約90年前のアメリカの周期表(山形大学蔵)。元素とは物質をつくる基本要素であり、古代ギリシア時代から「世界は元素でできている」という考え方が唱えられてきた。その後も研究は進み、19世紀から20世紀初頭にかけて「周期表」が確立された 会場
今、世界的に目を離すことができないアラブ諸国の経済発展や情勢。同様に熱い視線を集めているのがアラブの現代アートだ。各地で次々と設立される大規模な美術館やアートフェアの開催など、アート産業の成熟とともに近年急速にその存在感を世界へ示している。 本展は、森美術館の独自企画。現地調査に基づいて34組の現代美術家による作品を展示し、アラブにおける現代アートの動向を伝えるというものだ。アートを通じ、アラブ社会で今いったい何が起きているのか。また、そこで暮らす人々が何を見つめているのかをリポートする内容にもなっていると言えるだろう。 ▲ 展示風景 手前:ハリーム・アル・カリーム「無題1(「都会の目撃者」シリーズより)」2002 ▲ 展示風景 手前:リーム・アル・ガイス「ドバイ:その地には何が残されているのか?」2008/2011 ドバイの建設工事現場をイメージしたインスタレーション 本展には、作品群の
現在発売中のAXIS157号の表紙インタビューにご登場いただいた、暦本純一さんの講演会を開催します。1990年代半ばより、オーグメンティッド・リアリティ(AR)や実世界指向インターフェースを通じて、デジタルとフィジカルの世界をつなげようとしてきた暦本さん。それは最新のテクノロジーの使い方において、いかに身体性をオーグメント(拡張)できるかという試みでもありました。今、ARを超え、オーグメンティッド・ヒューマン(AH)を提唱する暦本さんに、最新の研究内容や今後のインタラクションデザインが進むべき方向性について語っていただきます。 昔からSFが大好きだったという暦本さん、プレゼンではサイボーグ009やドラえもんの話が飛び出すことも。最近の研究対象でもある、離れた所にいる人にテレプレゼンスして入っていく“ジャックイン”についても語っていただきます。参加申し込みは下記から。 第41回 AXISフォ
シャルロット・ペリアン(1903ー1999)というと、ル・コルビュジエとの共同作業や、金属とガラスを用いた家具、20世紀モダニズムデザインの牽引者のひとりといったイメージが強い。しかし本展では、日本で開催されたペリアンの展覧会を軸に、このフランス人女性デザイナーと日本との密接なつながりに焦点を当てている。 ▲ 展示風景。第一章ではル・コルビュジエとの共同作業や来日までの経緯を振り返る ▲ ペリアンによる写真。火打ち石や流木などの自然物に興味を持ち、積極的に撮影した。ペリアンの娘ペルネットによると「目を扇のように見開いて、ものをよく見なさい」と母に教えられたという 日本で開催されたペリアンの最初の展覧会は、1941年の「ペリアン女史 日本創作品展覧会 2601年住宅内部装備への一示唆」(通称「選擇 傳統 創造」展)。(注:2601年とは皇紀のこと) ペリアンは、ル・コルビュジエ事務所で同僚だ
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