「円高の今がチャンス! ご予約はお早めに」「円高! 緊急企画」。旅行会社の海外ツアー広告に熱が入ります▼ニューヨーク市場で一時、1ドル=75円台の過去最高値を記録した円相場。たしかに旅行会社への追い風でしょうが、わが国全体への影響を考えると、旅行会社も喜んでばかりではいられないはずです▼大企業が、円高は輸出に不利だから経費を削れと、賃金や下請け単価を引き下げたりすれば、経済は冷え込みます。おちおち旅行に行かれない人が、ふえるかもしれません。震災からの復興の足を引っ張らないか、心配でなりません▼かつては1ドル=360円でした。1971年8月15日、円高にすすむ転機が訪れます。「ダムは決壊した」。当時のボルカー米財務次官がこう表現する、ニクソン大統領の「新経済政策」です。アメリカがドルと金(きん)の交換を止めた、「ニクソン・ショック」です▼ボルカー氏は「決壊」の説明の中で、とくにベトナム戦争の