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衆院選
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『リヴァイアサン』によれば、設立されたコモンウェルスは自然状態における人びとが互いに契約を交わすことによって成立する。群れのなかの個々人相互の契約によって主権が創設されるという、この驚くべきメカニズムの影に隠れて、ひそかにその群れのなかでは多数決投票が行われている。 コモンウェルスが設立されるのは、誰であれ一人の人かあるいは人びとの合議体に、人びと全ての人格を表す権利、つまり彼らの代表になる権利が、人びとの多数派によって与えられるということに、群れをなした人びと一人ひとり全てが一人ひとり全てと合意し誓約する場合である。賛成投票した人も反対投票した人も、一人ひとり全てが、その一人の人かあるいは人びとの合議体の全行為と判断を権威付ける〔…〕。Leviathan, chap.18. ホッブズはここで、人びとが誰に自分たちを代表させる権利を与えるのかを投票することになる集会――まさに契約のために集
ドイツのZeit紙の大学生版に掲載されたマーサ・ヌスバウムへのインタビュー。政治と情念の関係について、いくつか語っています。ものすごくナイーブに聞こえますが、なかなかうーん。うーん。 感情と法―現代アメリカ社会の政治的リベラリズム 作者: マーサヌスバウム,河野哲也,Martha C. Nussbaum出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会発売日: 2010/03/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 56回この商品を含むブログ (19件) を見るPolitical Emotions: Why Love Matters for Justice 作者: Martha C. Nussbaum出版社/メーカー: Belknap Press: An Imprint of Harvard University Press発売日: 2015/05/04メディア: ペーパーバックこの商品を含む
ケンブリッジ大学の政治学者デイヴィッド・ランシマンの大統領選挙に関するエッセイの翻訳です。 センセーショナルなタイトルですが、これはいわば反語で、ポール・クルーグマンが言うようには、アメリカは失敗国家になったのではないというわけです。ランシマンの見解としては、国家の基本的な制度上の仕組みによって、ブレクジットもトランプも、結果が温和なものとなるだろうというものです。ブレクジット派もトランプ派も、自分たちの選択によって本当に国家を生まれ変わらせるような破滅的な結果になるわけではないと思っているどころか、国家が自分たちの選択の打撃を吸い取ってくれる、その破滅的になったかもしれない帰結から自分たちを守ってくれる、そう思っています。彼らがそうした選択を行ったのは、単に国家を懲らしめてやろうというそのような思いからだけだ、というのです。ブレクジットを選択しようが、トランプを選択しようが、現状は何も変
政治学者ヤン・ヴェルナー・ミュラーの大統領選に関する考察です。 ミュラーさんは、ワイマール体制やカール・シュミットの研究のほかに、近年では『憲法パトリオティズム』という著作があり、最近では『ポピュリズムとは何か』という本を出版しています。 翻訳があるといいのにと思います。 What Is Populism? 作者: Jan-Werner Mueller出版社/メーカー: University of Pennsylvania Press発売日: 2016/09/19メディア: ハードカバーこの商品を含むブログを見るVerfassungspatriotismus 作者: Jan-Werner Mueller出版社/メーカー: Suhrkamp Verlag AG発売日: 2010/08/16メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見る - バラク・オバマが適切に述べているように、ちょう
ドイツの新聞がトランプの当選を受けて、アメリカの知識人に寄稿を求めていました。そのなかからバトラーのものを訳しました。重訳になってしまいましたが。 http://www.sueddeutsche.de/kultur/us-wahl-amerikas-intellektuelle-stehen-unter-schock-1.3243193 中道より左のアメリカの投票者は二つの疑問に駆られている。トランプに投票したのは誰なのか、なぜわたしたちはこの結果に備えていなかったのか。「とんでもない」という言葉は、すでに自分が知っている事柄に関する感情におおよそ近いが、私たちは次のことを知らなかった。エリートに対する怒りがどれほど大きく、フェミニズムと公民権運動に対する白人男性の憤りがどれほど深いものなのか、経済的な強制接収がどれほど多くの人をぼろぼろにするのか、孤立主義や新しい壁の約束、ナショナリステ
ポスト代表制の政治学 ―デモクラシーの危機に抗して― 作者: 山崎望,山本圭出版社/メーカー: ナカニシヤ出版発売日: 2015/03/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る代表制民主主義の危機が叫ばれて久しい。民意と代表の乖離というのが、その最も基本的な問題なのだが、この問題は、次のようにさらに分節化できる。この乖離がどのように生じているのか、どのような意味を持つのか、乖離しているとしてそれがなぜ問題なのか、そもそも代表制とはなんのために必要なのか、既存の代表制が民主主義にとって不都合なものであるとすればそのオルタナティブをいかに考えるのか。 代表と民主主義というのは出自の違う二つの原理であり、その混合であるとしばしば語られるのだが、代表概念自体が――私の見るところ民主主義そのものよりも――多義的であり、どのような観点からアプローチするかで様々に捉えうるために、上記
真理と方法〈1〉哲学的解釈学の要綱 (叢書・ウニベルシタス) 作者: ハンス=ゲオルクガダマー,Hans‐Georg Gadamer,轡田收,大石紀一郎,麻生建,三島憲一,北川東子,我田広之出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 2012/11/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る真理と方法 II 〈新装版〉: 哲学的解釈学の要綱 (叢書・ウニベルシタス) 作者: ハンス=ゲオルクガダマー,Hans‐Georg Gadamer,轡田收,巻田悦郎出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 2015/06/24メディア: 単行本この商品を含むブログを見る真理と方法〈3〉 (叢書・ウニベルシタス) 作者: ハンス=ゲオルクガダマー,Hans‐Georg Gadamer,轡田收,三浦國泰,巻田悦郎出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 2012/1
王の二つの身体〈上〉 (ちくま学芸文庫) 作者: エルンスト・ハルトヴィヒカントーロヴィチ,Ernst Hartwig Kantorowicz,小林公出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2003/05/01メディア: 文庫 クリック: 42回この商品を含むブログ (28件) を見る王の二つの身体〈下〉 (ちくま学芸文庫) 作者: エルンスト・ハルトヴィヒカントーロヴィチ,Ernst Hartwig Kantorowicz,小林公出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2003/05/01メディア: 文庫 クリック: 7回この商品を含むブログ (15件) を見るまさに驚くべき書物。中世の神学と法学の言語が「対位法」や「転位」を通して混ざり合い、「王という単独法人」という神秘めいた驚嘆すべき概念を生み出したことが、中世思想史の全体を網羅するように語り出される。14世紀以降のイングランドの法文書
スラヴォイ・ジジェクの2015年11月16日の論説(抄訳です)。 http://inthesetimes.com/article/18605/breaking-the-taboos-in-the-wake-of-paris-attacks-the-left-must-embrace-its 2015年前半には、ヨーロッパはラディカルな解放運動(シィリザとポデモス)に熱中していたが、後半には注目は難民という「人道的な」トピックに移った。階級闘争は文字通り後退し、文化リベラル的な寛容と連帯というトピックに取って代わられた。11月13日金曜日、パリでテロによる殺戮が起きると、このトピック(いまだ巨大な社会経済的問題と関係している)でさえ今や、テロの脅威との容赦なき戦いに没頭する民主主義的勢力の単純な反対にあって、勢いを削がれている。 次に起きるのが何かを想像するのは容易い。難民のなかにいるはずの
ヘイト・スピーチという危害 作者: ジェレミー・ウォルドロン,谷澤正嗣,川岸令和出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2015/04/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見るヘイト・スピーチを規制する立法については、日本のリベラルのあいだでは意見の相違があるが、アメリカの文脈では合衆国憲法修正第一条のために、ほとんどが反対にまわっているという。本書は、そのような文脈のなか、ヘイトスピーチに対する規制の立法をいかに擁護できるかを考察する論争的な書物である。議論は錯綜しているが、じっくりと腰を据えて読むに足るものである。 はじめて在特会のヘイトスピーチの動画を見たとき、僕は言論の自由を念頭に置きつつ、やはり寛容は非寛容にも寛容であるべきで...と思っていたが、本書の見方には納得させられるところが多い。ウォルドロンによれば、ヘイトスピーチはその対象となるマイノリティから安
オーストリアの新聞でのインタビュー(http://derstandard.at/2000015524661/Das-System-der-Mitte-kollabiert)。 政治学者シャンタル・ムフ「右派ポピュリストが成功したのは、保守政治と社会民主主義政治が融合したからだ」 インタビュアー(イ):中道右派政党と中道左派政党の区別がなくなることを警告されていますね。 ムフ:私はそれをポスト政治的状況と呼んでいます。今日のヨーロッパ社会で優勢なものです。 イ:いつからそれは優勢になったのですか。 ムフ:この傾向は、イギリスでニュー・レイバーによって始められました。理論は社会学者のアンソニー・ギデンズから出てきました。そしてトニー・ブレアがそれを作り替えたのです。考え方は、共産主義の崩壊のあと、対抗勢力はもはやいなくなり、リベラルな資本主義のオルタナティブもなくなった、というものです。 イ:
〈政治的なもの〉の遍歴と帰結 ―新自由主義以後の「政治理論」のために 作者: 森政稔出版社/メーカー: 青土社発売日: 2014/06/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (12件) を見る変貌する民主主義 (ちくま新書) 作者: 森政稔出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/05/01メディア: 新書購入: 10人 クリック: 123回この商品を含むブログ (67件) を見る一部で待望されまくっていた筆者の論文集が刊行された。ちくま新書『変貌する民主主義』がこの時代に民主主義を論じることにつきまとうある種の退屈さ(!)から現代の民主主義をめぐる状況を鋭く論じ、広い読者を得た(に違いない)のに対して、今回の本はあまり一般の方にはおすすめできないかもしれない。むしろ筆者が「政治学の思想系」と呼ぶ――門外漢にはほぼ分からないであろう持って回った感じのする、しかしその曖昧さの表現
主権と自由 (岩波講座 政治哲学 第1巻) 作者: 小野紀明,川崎修,川出良枝,犬塚元,宇野重規,杉田敦,齋藤純一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2014/03/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る岩波講座・政治哲学全巻読書プロジェクトを一人でやってます。amazonなんかでもこのシリーズのどれにもレビューがついてなくて、新聞にも書評も出ていないっぽいし、悲しいですね。大学の政治思想史とか社会思想史の授業を聞いてもうちょっと深く学びたいなと思う人には格好のシリーズなので、もっと売れるといいのになあ。本書のラインナップは以下。 序 論 川出良枝 I 国家像の変容 1 マキァヴェッリ――自由と征服の政治学 鹿子生浩輝 2 ルターとカルヴァン――近代初期における身体性の政治神学 田上雅徳 3 サラマンカ学派――「野蛮人」と政治権力 松森奈津子 II 主権国家の成立
アフリカの日々 (ディネーセン・コレクション 1) 作者: アイザック・ディネーセン,横山貞子出版社/メーカー: 晶文社発売日: 1981/04/25メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 5回この商品を含むブログ (20件) を見る"All sorrows can be borne if you put them into a story or tell a story about them."――どんな悲しみでも、それを物語に変えるか、それについて物語れば、堪えられる。 ハンナ・アーレントが『人間の条件』の「活動」の章のエピグラフに引いた言葉である。アイザック・ディネーセンあるいはカレン・ブリクセン、デンマーク出身で長くアフリカに暮らし、英語で小説を書いた人の言葉だ。『人間の条件』を6年くらい前に読んでから、ずっとこの人の小説を読みたいと思ってきた。原題はOut of Africa
道徳哲学講義 作者: T.W.アドルノ,Theodor W. Adorno,船戸満之出版社/メーカー: 作品社発売日: 2006/08/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (12件) を見る三つのヘーゲル研究 (ちくま学芸文庫) 作者: テオドール・W.アドルノ,Theodor W. Adorno,渡辺祐邦出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/03/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (12件) を見る『三つのヘーゲル研究』が非常に良かったので、アドルノがカントの道徳哲学を講義した『道徳哲学講義』も読んでみた。結論として、非常に良いカント入門書――というかひとわたり入門書を読み終えた人が最後に読むべき入門書――となっていると思う。『啓蒙の弁証法』から入ってアドルノの晦渋さにうんざりした後にこの講義を読めば、
大学院のゼミで、思想史の方法論について、特にクェンティン・スキナー(Quentin Skinner)とジョン・ポーコック(John Pocock)のそれについて発表しました。「思想史の方法論、あるいは思想史は何の役に立つのかというぶしつけな問いについて――ケンブリッジの歴史家を中心に――」というものです。博論をかくにあたって、いろいろ方法について、あるいは書き方、大枠のストーリーについて考えていて、一度方法論――とりわけ僕はスキナーのそれに依拠しようと考えているのですが――についてちゃんとまとめてみるかと思ったのでした。当初は、かなりおおまかにまとめて類型化しようかと思ったのですが、書き始めてみると結構細かくなってしまって、割りとしっかりしたもの(だと自負するにすぎないのですが)になったので、発表した原稿をアップロードしてみようかと思いました。よろしければご覧ください。 https://d
ヨーロッパ政治思想の誕生 作者: 将基面貴巳出版社/メーカー: 名古屋大学出版会発売日: 2013/08/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る262p 本年度のサントリー学芸賞・思想歴史部門の受賞作。中世ヨーロッパの政治思想史の、本邦初と言っても良い本格的な概説書である。欧米の研究動向を網羅しつつ、オリジナルな切り口で「政治思想の誕生」前夜を描き出す。本書は、あとがきによれば、ニュージーランド・オタゴ大学で開講された「ヨーロッパにおける政治思想 1150-1350」という学部四年生向けの講義をもとにしたものであり、叙述の内容は本格的ながら、議論は極めて分かりやすいと言っていい。そして、歴史・神学・政治思想を往還する本書は、知的好奇心を盛大にかきたててくれる。 12世紀から14世紀という期間に、その後のヨーロッパの政治思想の文法が形成されつつあった。それを本書は、「
三つのヘーゲル研究 (ちくま学芸文庫) 作者: テオドール・W.アドルノ,Theodor W. Adorno,渡辺祐邦出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/03/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (12件) を見る303p 残念ながら版切れになってしまっているようだが、本書はヘーゲルをどう読めばいいか、どう読めば面白く読めるかを、アドルノにはありえないほどの分かりやすさで――それは翻訳者の方針(とにかく短く切って訳す)によるところが大きいのだが――示してくれる。はっきり言えば、『啓蒙の弁証法』のあのわけのわからなさに比べて、はるかに読んで益するところの大きい――「益する」という発想こそ本書でアドルノは批判するが――本だと思う。 アドルノのヘーゲル読解の肝は、ヘーゲルの叙述の中にある非同一性に徹底してこだわるということである。弁証法は非同一性を
暗い時代の人々 (ちくま学芸文庫) 作者: ハンナ・アレント,阿部斉出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/09/07メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 12回この商品を含むブログ (31件) を見るリベラル・デモクラシーと神権政治―スピノザからレオ・シュトラウスまで 作者: 柴田寿子出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2009/09/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 4回この商品を含むブログ (13件) を見るお亡くなりになった柴田寿子先生のアレントについて書かれた論文(「政治的公共圏と歴史認識――アーレントにおける「光の物語」と「闇の記憶」」『リベラル・デモクラシーと神権政治:スピノザからレオ・シュトラウスまで』東京大学出版会、2009年所収)を読んでいたら、なぜかすごくぐっときてしまった。アレントにおいて公的領域に属さない事柄は、公的領域が人々が誰
法の窮極に在るもの 作者: 尾高朝雄出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 1956/03メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る285p 昭和二十一年初版、昭和三十年新版。安藤馨さんの功利主義本に取り上げられていたのを見て、この本を読もうと思った。法の究極に在るもの。この表現だけで、分かる人には分かるだろうが、構成的権力(憲法制定権力)の問題、あるいは例外状況における主権の問題が論じられている。法を生み出すあるいは規制するのは理念である。しかしその理念は人間を動かし、法に結実させるような力を持った現実から離れては、法を生み出すことはできない。となれば、法の究極に在るものはこの現実、つまり政治である。自然法と実体法の関係を見たあと、法秩序そのものを作り出す力である憲法制定権力、さらには法秩序そのものを停止させる力としての革命権と国家緊急権(例外状況における主権の決断)の問題に踏
huluの2週間無料サービスにつられて登録してしまったので、どんな映画があるか見ていたら、けっこういいじゃないですか。ただ、監督別とかそういうソートが全然まずいので(というかTSUTAYAに行ってもきっとそう感じるからhuluだけの問題じゃないか)、見たいもの/おすすめなものをリスト化してみました。 この監督が見れる!編 青山真治『サッド・ヴァケイション』 黒澤明『夢』『羅生門』『八月の狂詩曲』 黒沢清『CURE』『アカルイミライ』 今敏『パプリカ』『東京ゴッドファーザーズ』 小津映画はいっぱいあります。 ポール・トーマス・アンダーソン『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 ウェス・アンダーソン『天才マックスの世界』『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『ライフ・アクアティック』 ペドロ・アルモドバル『バッド・エデュケーション』『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール〈帰郷〉』 スタンリー・キューブリック『
自由の秩序―カントの法および国家の哲学 (MINERVA人文・社会科学叢書) 作者: ヴォルフガングケアスティング,Wolfgang Kersting,舟場保之,桐原隆弘,寺田俊郎,御子柴善之,小野原雅夫,石田京子出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2013/01/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る441p 総計7191p カントには哲学があるが、政治哲学はない、あっても老衰の産物(つまり馬鹿げたもの)だ(大意)というショーペンハウアーに端を発する誤解が蔓延して久しい中、彗星のごとく登場した本格的なカンと法哲学の研究書である。『人倫の形而上学・法論』の詳細なコメンタールとなっている本書は、カントの法哲学がまさに批判哲学の作法によって隅から隅まで構築されているということ、それは理性法の観点から自由主義を徹底的に擁護し、しかも同時に革命ではなく改革を統治者に義
社会的なもののために 作者: 市野川容孝,宇城輝人,山森亮,宇野重規,小田川大典,川越修,斎藤光,酒井隆史,中野耕太郎,前川真行,道場親信出版社/メーカー: ナカニシヤ出版発売日: 2013/01/21メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 3人 クリック: 47回この商品を含むブログ (22件) を見る365p 総計3553p 本書には、64-67年生まれの研究者たち(社会学、社会思想史、政治思想史、社会運動論)を中心になされた「社会的なもの」についての討論が収録されている(1-5章は2009年、6章は2011年の討論)。「社会的なもの」とは何か。それに一言で答えるのは大変難しい。本書を読んでもあまり明快な答えは見えてこず、というよりむしろ討論の多くは「社会的なもの」とは何であるか、何でありうるかをめぐって行われているのである。 僕なりに議論されていた「社会的なもの」の共通項を見出して
ヒュームの哲学的政治学 作者: ダンカンフォーブズ,Duncan Forbes,田中秀夫出版社/メーカー: 昭和堂発売日: 2011/03/01メディア: 単行本 クリック: 12回この商品を含むブログ (1件) を見る464p 総計1509p 思想史研究とはかくあるべきか、という瞠目すべき書物。ポーコックやスキナーらが方法論的に意義付けたコンテクスト主義による思想史研究、と言ってもいい。つまり、本書において掲げられるのは、ヒュームを思想史的に理解するためには、ヒューム以前・同時代の著作の思想的ヘゲモニーを明らかにした上で、その異同を見極めねばならない、という立場である。実際、第一章はヒュームと同時代かそれより前の自然法論が詳述され、それとヒュームの関係を見定め、自然法論-抵抗権論とヒュームがどのように隔たっており、あるいはヒュームがそれらと同様の議論をしていたとして、その真の意図はどこに
統治と功利 作者: 安藤馨出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2007/05/30メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 55回この商品を含むブログ (80件) を見る315p 総計616p 「功利主義ルネッサンス」と言われる潮流を巻き起こした中心にある書物である。もちろん、様々な不備はあるだろうし、はっきり言ってリベラルはこの本を読んで激怒すべきである。だが、それにしても、功利主義という魅力を全面的に打ち出そうとした理論的冒険、理論的出発点を明確に位置づけている点、それこそがそうした怒りを引き起こさざるをえないのであり、それは本書の魅力でもあるだろう。僕はこれを院生の友人らと共に読んだ。前半の倫理学の議論の波につぐ波を乗り越えれば、あとは安藤の引く議論についていけるだろう。数式なども出てくるが、それらも何とか乗り越えていくべきだ。そうすれば、安藤が目指す地点の高さ――それは低さでも
カント 第三の思考―法廷モデルと無限判断 作者: 石川文康出版社/メーカー: 名古屋大学出版会発売日: 1996/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見る314p 総計15678p 本書は最近読んだ本の中でももっともスリリングだったものの一つ。テーマは、カントの判断表の中の質の項目に現れる「無限判断」である。カントによれば、判断の形式は量・質・関係・様相の4項目に分けることができ、さらにそれぞれが3つに分類されうる。「Aは非Bである」という形式を持つ無限判断は、この質の項目の中の一つである。ところが、『純粋理性批判』を読んだことのある人ならわかるように、カントのこの部分の説明は極めてわかりにくい。質の項目の残り2つは、肯定判断「AはBである」、否定判断「AはBでない」なのだが、この後者の否定判断と無限判断がどう違うのか、カントの説明では全くわからないのだ。曰く、無限判断は実は「Aは
友達のメイヤン(@nhokuto)の論文「ネット社会をサバイブするアイドル・プラットフォーム」(なんかもうちょっとタイトルどうにかならんかったんかw)を読んだ。3万字を超える大力作で、しかも冗長なところがなく理論的な緊張感に満ちた論文。 情報通信技術(主にインターネット)の進歩によってアイドルを巡る状況が被った変化を整理し、そこからあぶり出されてくるアイドルとファンの関係、あるいはアイドルを愛するということを原理的に考察しており、読後の昂奮には大きなものがあった*1。 インターネットはアイドルにもその身振りに大きな変容を強いることになる。今や大多数のアイドルはブログを書き、twitterをし、google+に参加している。アイドルはテレビメディアに出演しながら、同時にインターネットメディアにも現れる。前者の姿が「表の顔」だとすれば、後者は「裏の顔」を、つまりプライベートな日常を露わにしてい
ジェンダー・トラブル―フェミニズムとアイデンティティの攪乱 作者: ジュディスバトラー,Judith Butler,竹村和子出版社/メーカー: 青土社発売日: 1999/03/01メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 75回この商品を含むブログ (60件) を見るp296 総計20964p やっと読んだ、ジェンダー・トラブル。もはやフェミニズム政治哲学の古典となった本だと言えるだろう。本書は、フェミニズムの理論、特に解放理論と言われるものに対して強力な批判を加えたものだ。禁止-排除だけではなく、むしろ生産的でさえある法によってジェンダーは構築される。いや、それだけではなく、自然的-身体的な性である「セックス」さえ言説の網の目に包囲されている。法の「あとに」構築された主体、これこそがジェンダーに他ならない。こうしたジェンダー理論に対して、打ち立てられてきた理論は解放理論であった。それは
イデオロギーの崇高な対象 作者: スラヴォイジジェク,Slavoj Zizek,鈴木晶出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2001/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 49回この商品を含むブログ (66件) を見る353p 総計5602p タイトルの通り本書の照準は「イデオロギー」論にあるのだが、同時にそれはラカンの理論体系への詳細なコメンタリーにもなり、最終章(ここは非常に難しい)ではヘーゲルの「精神は骨だ」という有名な言葉をめぐる解釈にもなっている。一言で言えば*1ジジェクのテーゼは、必ずや象徴化に抗する現実的なものthe realが存在する、ということに尽きるのだが、このことがどう「イデオロギー」と関係があるのかが重要である。 マルクスが『資本論』のなかで述べた「彼らはそれを知らない、しかしそれをやっている」は、イデオロギーのもっとも基本的な定義である。イデオロギー
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