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<映画館すらない国、サウジアラビアで初めて開催されたポップカルチャーの祭典。独自の規制もあったが、拍子抜けするほど「ふつう」で、社会の変化を感じさせた> 2月16日から18日の3日間、サウジアラビア西部の商業都市ジェッダで、サウジアラビアでははじめてのコミコン、「サウジ・コミコン(Saudi Comic Con)」が開かれた(公式Twitterアカウントは@Saudicomiccon、公式ウェブサイトはhttp://saudicomiccon.com/)。コミコン(日本では「コミケ」が一般的)について今さら説明する必要はないと思うが、一言でいえば、「マンガ、アニメーション、ゲーム、SF・ホラー映画などポップカルチャーの祭典」である。 ご存じのかたも多いと思うが、サウジアラビアではこうしたエンターテインメントに関してはかなり規制が多い。そもそもサウジ国内には映画館すらないし、人の姿を映したり
<サンタクロースのモデル、聖ニコラオが活躍したのは小アジアのミュラ(現在のトルコ・アンタルヤ)。赤い服、白いヒゲのイメージが広まったのはコラ・コーラの宣伝から。キリストの誕生日は12月25日とは限らない。そして七面鳥は......> この原稿を書いているのは12月後半。世間はクリスマス・モード一色で、あちこちにクリスマス・ツリーやサンタクロースが飾ってある。いつの間に日本はキリスト教の国になったのか、と見紛うばかりだ。実は今、出張でバハレーンにきているのだが、このイスラームの国にあっても、街のあちこちにクリスマスの飾りつけがあり、日本のことだけを嘆いてはいられない。 その昔、サウジアラビアで面白い経験をした。サウジは厳格なイスラームの国なので、実はクリスマスをお祝いすることが事実上、禁止されている。にもかかわらず、12月になると、あちこちでクリスマス・カードのようなものを売りはじめるのだ。
<政府関係者たちとのラウンドテーブルのためにイランを訪れた際、一番関心をもったのはトイレだった。男子用小便器がない。そして、水の噴き出すホースがあった> (写真はアラブ首長国連邦の空港にて) 11月はじめにテヘランを訪れる機会があった。訪問の目的はイランの政府関係者たちとのラウンドテーブルへの参加だったのだが、こちらがその場で日本・サウジアラビア関係について話をしたもんだから、案の定、出席したイラン人から集中砲火を浴びてしまった。発表が終わったあとも、対アラブ・イスラーム諸国外交を専門とする人に捕まって、別室でコンコンと説教をされた。サウジアラビアのような人権を無視し、アルカイダやイスラーム国のようなテロ組織を支援する国をどうしておまえは支持するようなことをいうのだ、と。 おまえにいわれたくないわ、とも思ったが、大人なのでそんなことはおくびにも出さず、しごく冷静な反論を心がけた(先方がそれ
<北東部でイスラーム国(IS)からモスルを奪還する作戦が進行中のイラクで、アルコール飲料の輸入・製造・販売を禁止する法律が可決された。なぜ今? なんのために?> (写真は2010年、クルド人自治区のアルビルで酒を売る店) イラク国会は10月22日、あらゆる種類のアルコール飲料の輸入・製造・販売を禁止する条項を含む法律を可決した。違反した場合は1000万から2500万イラク・ディーナール(ID)の罰金だそうだ。日本円では90万円から220万円とかなり大きな金額である。 このニュースをみた最初の感想は「イラクよ、おまえもか」だった。わたしは、ほとんどお酒は飲まないので、別にイラクでお酒を飲めなくなること自体を嘆いているわけではない。イラクのような、かつては世俗的な国の代表だったところまでが、わざわざ法律で禁酒を決めなければならないことを残念がっているのである。 【参考記事】よみがえった「サウジ
<米国でヒット中のテレビドラマ『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』のラミ・マレックが、エミー賞主演男優賞を受賞した。マレックはエジプト系米国人。さらには同番組のプロデューサー、サム・エスマイルもエジプト系米国人だ。今年はじめには「白すぎる」オスカーが議論になったが、本作には2011年のエジプトでの革命が投影されている> 先日、米国の優れたテレビ番組やその出演者・制作者を表彰する、テレビ界のアカデミー賞といわれるエミー賞の発表があり、その主演男優賞に、米国でヒット中のテクノスリラー『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』の主演、ラミ・マレックが選ばれた。初ノミネートでの受賞という快挙である。 MR. ROBOTは、日本ではAmazonの動画配信サービス、プライム・ビデオですでに配信されており、また、この文章が公開されるころにはAXNでも放送がはじまっているはずだ。内容はサイバーセキュ
<自国選手団があるのに難民選手団の一員として参加した選手、「イスラーム的」服装で異彩を放ったビーチバレー・チーム、ユニフォームの胸に「アリーよ」と宗教的メッセージが書かれていた選手......。禁止されてはいても、政治的・宗教的な話題はオリンピックには欠かせなかった> (写真:女子ビーチバレーのエジプト対ドイツ戦、8月7日) リオ・オリンピックでの日本人選手の活躍もあり、メディアは連日大騒ぎだったが、リオでは中東諸国の選手たちもいろいろな意味でがんばっていたようだ。さすが中東諸国だけあって、競技そのものよりも、政治的・宗教的な話題で盛り上げてくれた。 オリンピック憲章には、オリンピック競技の行われる場所ではいかなる政治的・宗教的・人種的プロパガンダも許されないと明記されている。とはいえ、オリンピックが国威発揚の場であるのは否定しようがないので、これまでも政治的プロパガンダの場として利用され
<ガザやシリアの胸を打つ写真から、治安面・情報面における各国当局の懸念、ファンたちの熱狂、宗教判断をめぐる混乱まで、まだ公式配信されていない中東地域でも「ポケモンGO」は騒動を巻き起こしている> (写真は、ランボルギーニに乗ってポケモン探しをするドバイの若者。画像を一部修正しています) 前回このコラムで2001年のアラブ世界でのポケモン騒動について書いた。その直後、スマートフォンのゲームアプリ、ポケモンGOが米国等で先行配信され、世界中で大騒ぎになったのは、あちこちで報じられているとおりである。 戦火絶えない中東も例外ではない。この地域ではまだポケモンGOは公式配信されていないにもかかわらず、早くもブームは過熱気味で、メディアでも連日、ポケモン関連の報道が盛りだくさんだ。15年前、ポケモンは、ギャンブルで、シオニズムで、多神教で、進化論支持者として、反イスラームのレッテルを貼られ、一部の国
<「ポケモンはハラーム」との記事が日本のニュースサイトに出たが、そんなはずはない。多神教で進化論的なポケモンを禁止するお触れはもう15年も前に出ている。記事の出元をたどってみると、英語版ニューズウィーク、そしてMEMRIという非営利調査・研究機関のようだが......> (2001年、ヨルダンの新聞の風刺画。剣を持った真ん中のアラブ人のプラカードは「ポケモンを倒せ。ポケモンはシオニストの陰謀だ」) 1か月ほどまえのこと、何の気なしにフェイスブックだかツイッターだかをながめていたら、サウジアラビアでポケモンが禁止されたとのニュースが流れてきた。出所はスプートニク・ニュース(日本語版)で、それによると、「猫と一緒のセルフィや、アニメ「ポケモン」のキャラクターが登場するボードゲームやカードゲームを禁止するファトワ(宗教令)が出された」というではないか。 誤解を招くといけないので、正確に引用しよう
<道路が整備されていてスピードが出しやすく、他に娯楽が少ない湾岸産油国では、道路上での危険行為が昔から社会問題になっていたが、最近は死と隣り合わせの「ドリフト」が流行し、動画も多く出回っている> 最近はほとんど使わなくなってしまったが、研究会や講演会などでサウジアラビアの話をするとき、つかみとして鉄板ネタがあった。10年近くまえにYouTubeに投稿されたSaudi Road Skatingという短い動画である(たとえば、以下の動画)。内容は、サンダル履きの若者たちが道路を疾走する車のドアを開け、そこにつかまりながら、道路上をスケートですべるように走っていくというものだ。若者たちはその間、体をのけぞらせたりして、かなりアクロバティックなこともやっている。文章で説明してもわかりにくいので、くわしくはビデオをみてほしい。サウジアラビアというと、どうしてもイスラームの厳しい戒律などのイメージがつ
サウジアラビアでは「勧善懲悪委員会」、ISでは「ヒスバ」、イランでは「ギャシュテ・エルシャード(道徳パトロール)」と呼ばれる宗教警察があり、礼拝や断食をさぼっていないか、女性がスカーフをきちんと着けているかなどを取締っている(サウジアラビアにあるイスラームの聖地メッカ) Ahmad Masood-REUTERS 少し古い話だが、3月はじめ、たまたまテレビを見ていたら、よくメディアに登場する予備校講師が「イスラム国(IS)はワッハーブ派である」と断言していた。それに対し共演のジャーナリストが「そのとおり。ISの行動は世界史の教科書で理解できる」と相槌を打っていた。 ワッハーブ派というのは、18世紀のアラビア半島に現れたイスラーム法学者、ムハンマド・ビン・アブドゥルワッハーブの名に由来する。彼の考えかたが現代のサウジアラビアの建国理念に強い影響を与えており、それゆえ、サウジアラビアのイスラーム
イスラームの知識体系がデジタル化されたことで、サイバー空間上には、きちんとした宗教教育を受けていない者たちによる怪しげな宗教的言説が氾濫し、テロを使嗾している Mikko Lemola-iStock. 4、5年前のことになるであろうか。サウジアラビア某省の顧問をやっていた、大ベテランのイスラーム法学者と議論する機会があった。何の議論をしたかというと、旧約聖書に登場する最初の人類であるアダムの身長についてである。何でそんな議論をしなければならないのか、その経緯にまで立ち入ることはできないが、そのときは、それが重要なテーマなのであった。 イスラームの神学体系のなかでは、アダム(アラビア語ではアーダム)は最初の人類というだけでなく、最初の預言者(最後の預言者がムハンマド)でもあった。で、そのアダムの身長はいったいどれぐらいであったのか。イスラームの古典資料のなかでは、アダムの身長は60ジラーァだ
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