今の日本の大学に、何より求められているのは何か。現代中国研究の第一人者、中嶋嶺雄さんは、教養教育だという(『学歴革命』KKベストセラーズ)。意外なことに中嶋さんは、東京外国語大学をフランス語で受験している。東大の渡辺一夫教授の愛(まな)弟子だった恩師の影響を受けて、高校時代はフランス文学に夢中だった。 ▼スズキ・メソードの創始者として知られる鈴木鎮一博士からは、直接バイオリンを習っている。後年、文化大革命の最中の中国で、紅衛兵と合奏する機会をもつ。教養がいかに人生を豊かにするのか、中嶋さんの生涯を振り返ればよくわかる。 ▼その中嶋さんにとって、理事長兼学長を務めた秋田市の国際教養大学が、最後の大仕事となった。開校して9年目前を迎えたばかりというのに、入試の難易度はすでにトップクラスの人気を誇る。ただし「入るのは難しいが、出るのは簡単」という、従来の「一流大学」の常識は、ここでは通用しない。