ペルー北部カハマルカ市から北東に70キロ離れたチョロパンパ村を訪れた。2000年6月、トラックが誤って150キロもの水銀を道路にこぼす事故を起こした村だ。米鉱山会社ニューモントの開発するヤナコチャ金山で「副産物」として産出された水銀を購入業者がリマに運ぶ途中だった。村には今も、頭痛や鼻血、手足の震えを訴え、「筋肉に力が入らない」などと語る住民がいる。 「サインができない。右腕に力がはいらない」。マニュエル・マンティジャさん(52)は2年前から右手が震えるようになった。事故直後、ニューモント社から日当40ソル(約1140円)を受け取り、道路にあふれた水銀を回収する仕事をした。半年後の尿中水銀濃度は正常値上限の7倍近かった。 継母のフェリパ・チャベスさん(78)も03年から手が震え始め、3年前から立てなくなった。医者にはパーキンソン病と診断されている。同じ症状に苦しんだビセンテ・サラテ元村長は