テレビ番組『カンブリア宮殿』で経営者の話を聞く姿を思い浮かべる人もいる一方、私のようなアラフィフは、思春期に作品の性描写に興奮した記憶しかない。「何を言っているのか」と思われるかもしれないが、当時は、インターネットで何でも見られる時代ではなかった。おまけに中学生がエロ本を買うにはハードルが高かった。「文学」の看板がある小説の性描写はありがたかったのだ。それも、芥川賞作家の小説である。情けないことにそれで中学生は満足していたのである。 世代の問題でもないだろう。村上の初期作品は同じ時代に読んだ人のあいだでも、評価は分かれていた。デビュー作『限りなく透明に近いブルー』は、「ポルノみたい」と噂されながらも、学校の先生が生徒に勧める小説でもあった。 作中では、複数の男女が入り乱れ、破れた下着の布が宙を舞う。「ねえ蝶々みたいねえ」。そう口にする女性は、男性の性器にバターを塗っている。正直、よくわから