東京大学経済学部は、現在、経済学の理論・実証・政策のどの分野でも、日本の学界のトップに君臨している。だが、Z世代の若者のほとんどは、東大経済学部が法科大学から独立した1919年から今日に至るまで、様々な苦難や試練を乗り越えてきたことを知らないと言ってよい。 だが苦難や試練というだけでは、Z世代にはなかなか伝わらない。評者が学生の頃は、経済学は一つではなく、マルクス経済学と近代経済学に分かれていた(というよりマル経が旧帝大系では優勢であった)時代に当たるが、Z世代と話す時は、本書に書かれていることをいちいち説明してあげなければならなかった。 すなわち、もともとドイツ歴史学派の流れをくむ学者が多かった初期を過ぎて、やがて労農派や講座派などのマルクス経済学が勃興するようになったこと。戦時下では思想弾圧によってマル経が学部から一掃された時期があったこと。戦後のGHQの方針によりマル経学者や自由主義