仕事で失敗した帰り、もうどうにでもなれと初めて店に足を運んだのは30手前の事だった。そこで俺は彼女に出会った。年齢は俺と同じ、当時はまだ三十手前だった。会話は少なく、行為は不器用で、だが彼女は優しかった。 俺はすっかり満足してしまい、翌週には再び足を向けていた。元々多趣味な方でない。寧ろ無趣味と言って違いない。 足繁く通うようになるのは必然だった。 それから五年。長い時間だ。付き合ってるわけではない。本名も知らない。だけど5年も通い詰めれば自然と距離は縮まり、話すことはたくさんあった。 会社のことや家族のこと、趣味の事や気になっていること。好きな映画や漫画の話から、友達の話まで。何も話さずにただ一緒にいるだけのこともあった。 先日のことだ。いつも通り部屋に通され中に入ると、彼女はベッドの上にぺたんと座っていて、ぽつりと呟いた。 「友だちが結婚するんだって」 話を聞くと同い年の、大学時代から