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第14回現代規範理論研究会「シンポジウム:アナリティカル・マルクシズムの可能性」について 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2006年4月4日 1. はじめに 第14回現代規範理論研究会「シンポジウム:アナリティカル・マルクシズムの可能性」を2006年3月16日に一橋大学国立東キャンパスマーキュリータワーにて行った。このシンポには、パネラーとして磯谷明徳氏(九州大学大学院経済学研究科)、佐藤良一氏(法政大学経済学部)、及び橋本 努氏(北海道大学大学院経済学研究科)の3人をお招きし、新刊間もない『マルクスの使いみち』(稲葉振一郎・松尾匡・吉原直毅)について、論じていただいた。また、著者サイドの稲葉、松尾両氏もディスカッサントとしてお招きした。パネラーをお願いした御三方には、公刊後わずか10日ばかりの間で急遽、著作に目を通してコメントを突貫工事的に準備していただき、本当に感謝に絶えない。
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1 『ESP』(内閣府編集協力)2007 年 10 月号 「パネルデータ分析」* 北村行伸 一橋大学経済研究所 1. パネルデータとは何か パネルデータとは同一の対象を継続的に観察し記録したデータのことを指す1 。こ れは例えば、複数の個人に家計簿を継続して記録してもらい、それを集計したデータ であるとか、上場企業が企業業務内容を有価証券報告書として毎年、財務省に提出 するデータを同一企業毎にまとめたデータであるとか、あるいは、多数の同一の労働 者の勤務情報や賃金情報を毎月記録したデータなどのことをいう2 。 パネルデータを用いることの利点は第 1 に、これまでのクロスセクション・データや 時系列データと比べた場合、観察点が格段に増加するので推定精度が上がることに ある。もちろん、経済主体の多様性も増加するので、一概に推定精度が上がるとは言 えない。むしろ、多様性を反映した分散不均一性を考
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『季刊個人金融』2011 年春号 ゆうちょ財団 「我が国の国債管理政策の現状と課題」 北村行伸 一橋大学経済研究所 要旨 本稿は我が国の国債管理政策の現状を概観し、国債発行の多様化と国債市場の発展が国 債管理政策にどのような課題を与えるようになるのかを、海外の実情および研究成果をも とに展望したものである。2008 年のリーマン・ショック以来、先進国が大幅な財政拡大政 策をとった結果、それまで、発展途上国で起こっていた政府債務破綻のリスクがヨーロッ パやアジアの先進国にも広がり、さらには世界経済の本丸である G8 諸国にもその影が忍び 込み始めている。残念ながら、日本政府も債務破綻はあり得ないと言い切れる状況ではな くなってきている。このような認識の下に、国債管理政策もこれまでの伝統的な手法を、 国際的な市場重視の視点から見直し、日本銀行や金融庁との連携の確認や国債に関連した 法的枠組みを
1 デーメニ投票法は日本の少子化対策になるか? 青木玲子 一橋大学・経済研究所・世代間問題研究機構 Rhema Vaithianathan12 Department of Economics University of Auckland 2009 年 7 月 概要 日本の少子化と高齢化が新たな政策を必要としていることは国民の一致した認識 である。さらに、出生率と関係のある育児の応援などの必要性も広く認識されて はいるが、日本の家族援助政策は他の先進国に比べると依然として見劣りする。 この問題認識と実施されている対策の不一致の理由として、少子化・高齢化にと もなう有権者の年齢分布が考えられる。つまり、退職者や退職間近な高齢の有権 者の数の相対的増加にともない、次世代である子供や次世代の代表である子供の 親の政治的影響力の低化である。この状況を変える方策として、親が子供の代わ りに票を投じるデ
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2000 年 10 月 大学の勉強におけるレポートの書き方 大学の勉強におけるレポートの書き方 大学の勉強におけるレポートの書き方 大学の勉強におけるレポートの書き方♣ ♣ ♣ ♣♥ ♥ ♥ ♥ 筑波大学 社会工学系 講師 祝迫得夫 祝迫得夫 祝迫得夫 祝迫得夫 E-mail: iwaisako@shako.sk.tsukuba.ac.jp ♣ Copyright © 2000 Tokuo Iwaisako ( ). ♥ 1 1. 1. 1. 1. はじめに はじめに はじめに はじめに このパンフレットは,筑波大学社会工学類の新入生が初めて受ける授業の一つの中で,大学の 勉強における「文章の書き方」について話をするために用意した教材を,若干一般向けに書き直 したものです.ここで念頭においている読者は,「言葉」や「文章を書く」ということ自体を勉強して いるわけではないが,一方で専門とする分
書評:アマルティア・セン/後藤玲子『福祉と正義』東京大学出版会 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2009年6月29日 本書は民主主義システムを規範的に基礎付ける正義の理論と、福祉的自由を巡る基礎理論及び応用理論に関するアマルティア・センと後藤玲子の近年の諸論文を下に、福祉と正義に関する両者のダイアローグの意図の下、1冊の書籍として再構成したものである。まず序章で、センの経済学について、主に社会的選択理論と合理性の理論、及び広義の自由論と潜在能力理論について、その動機と意義が後藤によって説明される。その後は、「I 個人の権利と公共性」、「II 正義の条件――義務と相互性――」、及び「III 正義の位相」の3部構成となっており、それぞれ最初にセンが問題提起とそれへの自説を展開する章に始まり、続いて、後藤が自身の固有の問題意識に基づいて、センの議論の発展的拡張・応用や独自の理論的整理を行う章が続く
最近思う事: 湯浅誠・堤未果『正社員が没落する--貧困スパイラルを止めろ!』(角川新書)を読んで 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2009年3月15日 1. 湯浅誠・堤未果『正社員が没落する--貧困スパイラルを止めろ!』(角川新書)は今の時勢がまさに必要とする論を展開している。湯浅氏や堤氏の昨年来の優れた新書の公刊なり、そして経済学者においても京大名誉教授の橘木氏の一連の地道な「日本の貧困問題」に関する実証研究もあって、現在ではもはや日本でも貧困問題や経済格差問題が深刻化している旨を否定する論調も見られなくなった。3~4年前までは、80年代以降の日本の所得格差拡大は人口の高齢化によって齎された統計上の見せかけの現象である――人口の高齢化が統計上の所得格差拡大を齎す大きな要因であった事は確かであるが――、そして90年代後半以降の若年層での顕著な格差拡大を伴った所得格差拡大は、90年代長期不況故
都留重人名誉教授は1949年(昭和24年)に初代経済研究所所長として就任 ( 経済研究所沿革 | 大学沿革(100KB) ) し、1956年までの4期及び1965-67年に所長を歴任されました。所長時代に定めた研究所の基本方針は、その後の研究所及び資料室の礎となり、資料室のコレクションとして形成されています。 このような経緯から、2003年秋に都留重人名誉教授から手稿・書簡を含む膨大な資料が研究所に寄贈されました。資料室ではこれらの資料を「都留重人メモリアルコーナー」 ( 地図 | pdf(248KB) ) に常設展示し、広く利用者に公開しております。 本学名誉教授(元・経済研究所所長)都留 重人 氏(93歳)は、 平成18年 2月5日(日)ご逝去されました。 ここに謹んで哀悼の意を表し、心からご冥福をお祈りいたします。
『相続税・贈与税・資本所得税等に関する実証研究(1)』 本講義ではミクロ計量経済学のアプローチを様々な角度から捉えて、解説することを目的としている。1)データに関する調査方法や利用方法、2)統計学的な推定手法、3)ミクロ経済理論に基づく分析仮説の設定、4)統計学的な検定手法、などが中心的なテーマになるが、年度によって焦点を変えている。 本年度はトマ・ピケティが資産分配格差の一つの解消方法として論じた、相続税・贈与税・資本課税等に関して、実際に利用可能な統計データを用いて、どのように実証研究が出来るかを検討する。
ワークフェア(Workfare)とベーシックインカム(Basic Income) 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2007年4月18日 1. ワークフェア ワークフェアとは、生活保護、医療費保護などからなる「福祉」(welfare)の受給者に対して、一定の就労を義務づけ、給付を労働の対価とすることによって、その精神的自立を促すと共に、就労を通じて、招来の経済的自立の基盤たる技術・技能を身に着けさせようという公的扶助に関する改革理念であり,制度である。もともとは米国ニクソン政権下におけるAFDC(要保護児童扶助)改革に際して,造語されたと言われる。代表例として,米国クリントン政権下の96年8月の「個人責任及び労働機会調和法」が挙げられ,AFDCの廃止とTANF(貧困家族一時扶助)の導入を求めた。それによると,各州は2002年までに受給者の5割を週30時間以上就労させなければならず,通
Discussion Paper No.307 Project on Intergenerational Equity Institute of Economic Research, Hitotsubashi University 希望の類型と個人属性 玄田有史 February 2007 PDF format/本文(190KB)
所得分布と初婚行動 関東学園大学 小川 浩 所得分布と初婚行動* 小川 浩** 1. はじめに 徐 々に低下してきていた合計特殊出生率が丙午 (1966 年 ) の数値を下回ったいわゆる 1.57 ショック(1990 年)以来、我が国においては少子化あるいはそれに伴う急速な高齢 化が大きな政策的課題となっている。このような認識を受けて、保育援助を中心とした 「エンゼルプラン」(1994 年、緊急保育対策 5 ヶ年事業)の実施や「新エンゼルプラン」 (1999 年)の策定が行われてきた。しかしながらこの間も図 1に示すように合計特殊出 生率は継続的に低下し続けており、2002 年 6 月に公表された 2001 年の人口動態統計月 報年計によると、我が国の合計特殊出生率はこれまで最低であった 1999 年の 1.34 を下 回る 1.33(過去最低値)を記録している。 このような急
ファイナンスとは何かを知りたいあなたへ Last updated: April 24 April 2001 (c) Tokuo Iwaisako 手始めに何を読むか? ファイナンスについて手っ取り早く知りたいという門外漢は、どうしたらいいのだろうか? 大学生であれば、これこれの授業をとりなさいとアドバイスするところだけれど、それすらまだるっこしいという人、時間が無いという人に対しては、何を手にとって見たらいいだろうか? 新聞や雑誌の紹介記事やテレビ番組は、正直、専門家から見れば酷いものが多い。例えば、しばらく前に放送されて話題になった某国営放送のスペシャル番組は、専門家の間では相当評判が悪い(Black-Scholes式が間違ってたとかの噂)。個人的にはそれなりに楽しめたし、少なくとも、他の番組や記事に比べれば大分マシで、一部の同僚・友人達が言うほど酷いものではないと思う。しかし、逆にあ
文部科学省 共同利用・共同研究拠点 「日本及び世界経済の高度実証分析」 データ・アーカイブの整備と統計分析手法の開発を進展させ、日本及び世界経済に関わる高度実証分析の国際的な共同利用・共同研究拠点として、一層の発展を目指します。公募型の「プロジェクト研究」、「政府匿名データ利用促進プログラム」等の事業を実施しています。 重要なお知らせ 『経済研究』電子版ウェブサイト ミクロデータの利用 [2023/10/02] 『経済研究』は第74巻1・2号より電子ジャーナルとなりました。公式ウェブサイトは[こちら]をご覧ください。 [2023/01/04] 基盤研究(S)「サービス産業の生産性:決定要因と向上策」(2016年~2020年度、研究代表者:深尾京司一橋大学経済研究所特任教授)が、2022年度の検証結果で"A:当初目標に対し、期待どおりの成果があった"という評価を受けました。 [2021/11
Q. いろんなマクロ経済学の教科書がありますが、どれを読んだら良いんでしょう?(学部編) 2001年6月Update [入門編] 一般的な経済学部の教育では,普通,学部生は最初に『経済学入門』(アメリカで言うところのPrinciples)を取らされます.このレベルで,今一番,標準的なテキストは, スティグリッツ『スティグリッツ マクロ経済学』(東洋経済新報社) マンキュー『マンキュー経済学〈2〉マクロ編』(東洋経済新報社) バウモル=ブラインダー『マクロエコノミックス入門―経済原理と経済政策』(HBJ出版局) でしょう.どれもアメリカでは1冊の本を,2-3冊に分けて翻訳していて,そのうち一冊が『マクロ経済学入門』にあてられています.このうち,スティグリッツは第2版の翻訳が出ているようですが,マクロ編だけはまだのようです.マンキューは最近のアメリカのベストセラー.(バウモル=ブラインダーの翻
第15回現代規範理論研究会:後藤玲子「正義と公共的相互性」について 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2006年4月24日 第15回現代規範理論研究会は4月22日土曜日に開催され、立命館大学の後藤玲子さんをお迎えして報告してもらった。この研究会は、毎度、幅広いスタイルの研究者・大学院生が集まってくる。後藤さんの今回の報告は、近年の生活保護制度見直しの動向の中で、老齢加算、母子加算などの段階的廃止が検討されてきているのであるが、そうした動向を規範理論的に批判するものだ。厚生労働省の社会保障審議会福祉部会「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」でそうした議論が為されてきており、後藤さんは委員の一人だった。制度見直しのこうした動向には、近年の高齢化や不況などもあって、生活保護受給者の人数も、またその受給期間も増えており、将来的な財政的負担の懸念という側面もある。また、現在の制度は生活保護受給者の自
文部科学省『科研費NEWS』2007年、第4号、に世代間問題研究プロジェクト関連の記事が掲載されました
「基本所得」政策の規範的経済理論:――「福祉国家」政策の厚生経済学序説―― 後藤玲子 立命館大学大学院先端総合学術研究科 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2004年4月22日 要約 本稿の目的は、「福祉国家」の有り方を巡る近年の論争において提起されている「基本所得」政策の、資源配分メカニズムとしての規範的特性を明らかにする事である。最初に、「基本所得」政策の代表的提唱者であるヴァン・パレース(Van Parijs (1985))に依拠しつつ、「基本所得」制構想の規範理論的基礎付けを与える「リアル・リバータリアン」論を紹介し、それによって明らかにされた「基本所得」政策が満たすべき規範的基準を、公理的資源配分理論の枠組みにおいて定式化する。さらに、「基本所得」政策と整合的な資源配分ルールの理論的構成可能性を探求する。そのようなルールは、労働スキルの格差のない経済環境では、均等便益解として特徴付け
―― ファイナンスと金融工学の間 (c)祝迫得夫 1999年 現在、マスコミなどで頻繁に使われている「金融工学」という用語は、直訳すれば“Financial Engineering”という英語に対応する。しかし、英語の“Financial Engineering”の指す範囲は非常に狭いのに対し、日本語の「金融工学」という言葉は、文脈によっては非常に広い意味、時には(現代的な意味での)ファイナンスとほぼ同義語として使われている。このことが、不必要な混乱を引き起こし、以前からわが国おける「ファイナンス」という学問の発展を担ってきたと自負する学者の、「金融工学」という用語に対する拒否反応を導き出している。この短いエッセイでは、以上の点に関して、「苛立っているファイナンス学者」の立場から、簡単に議論を整理しておく。 I.ファイナンスという学問について 欧米の大学、特にアメリカのビジネス・スクールで
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