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インタビュー
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■要旨 J-REIT市場は昨年まで3年連続で下落していたが、今年に入り、底打ちの機運がみられ、東証REIT指数は一時1700ポイント台を回復した。もっとも、日本銀行の政策金利引き上げに伴う市場金利上昇への警戒感もあり、一進一退の動きとなっている。 市場価格の低迷が長期化する一方、J-REIT市場のファンダメンタルズは着実に改善している。1口当たりNAVは前年比2%増加し、予想1口当たり分配金(DPU)も前年比8%増加し過去最高水準を更新している。 本稿では、現在のJ-REIT市場の収益環境を確認したのち、各種シナリオを想定し、今後5年間のDPU成長率を試算した。 結果、今後5年間のDPU成長率は、財務負担増加が内部成長を上回り▲7%(年率▲1.4%)となった。内訳は、「内部成長」が+7%、「外部成長」が▲3%、「財務戦略」が▲11%。2025年は横ばいを維持するものの、2026年から減益に
経済における生産性は、経済的生産量とその生産に使われた投入量(労働力、資本など)を比較することによって、財やサービスをどれだけ効率的に生産できるかを測定するものである。一般的に生産性の向上は長期的な経済成長と個人の生活水準の実質な向上の最も重要な決定要因となっている。生産性を表す指標には労働時間当たりの実質生産高の比率で定義される労働生産性と、労働や資本といった量的な生産要素の増加以外の質的な成長要因を示す全要素生産性がある。 図表1は、米国の労働生産性の前年同期比の伸びを示している。同指標はコロナ禍の2020年から2022年半ばにかけて変動性が大きくなっており、実態が分かり難くなっているが、2022年後半以降は伸び率の上昇が顕著となっている。特に、2024年7-9月期が+2.0%と2023年7-9月期から5期連続で+2%超となった。これは、コロナ禍前(2015年~2019年)の5年平均で
Jリート(不動産投資信託)市場の低迷が続いている。2024年は国内外の株式、金価格、暗号資産などリスク性資産が幅広く値上がりした一方で、Jリート市場は▲8.5%と3年連続で下落した(図表1)。過去3年間の騰落率(▲20%)を見ると、パフォーマンス格差はさらに広がり、金融市場の中で一人負けの様相を呈している。 現在、多くの銘柄(54社/57社)が理論上の解散価値であるNAV(Net Asset Value)を下回り、市場全体のNAV倍率(株式のPBRに相当)は0.8倍に沈む。NAV1倍割れは、手間と丹精を込めて作り上げた商品が「原価割れ」の値札をぶら下げて店先に並ぶ姿のようで、市場の未来に暗い影を落としている。 それでは、今後の回復に向けてどのような取り組みが必要だろうか。以下では、Jリート市場の下落要因とその対策について考察したい。 一般に、価格下落は(1)市場ファンダメンタルズの悪化、(
■要旨 個人消費は持ち直しているものの、可処分所得の伸び悩みを主因として依然としてコロナ禍前の水準を下回っている。 コロナ禍以降の実質可処分所得減少の主因は物価高であるが、税、社会負担を中心として家計負担が高まっていることも可処分所得の下押し要因となっている。 社会負担比率は1994年の13.5%から2023年の19.7%までほぼ一本調子で増加している。また、税負担比率は1994年の7.6%から2003年に5.8%まで低下した後、上昇傾向となり、2023年は7.4%となった。 家計の所得税額は給与を上回るペースで増えている。「民間給与実態統計調査」によれば、給与総額に占める所得税額の割合は2010年の3.86%から2023年には5.10%まで上昇した。各給与階級の税額割合が上昇していることに加え、税率が高い給与階級の給与所得者数の割合が高まっていることがその理由である。 所得税額が給与収入
歳出の増加や歳入の減少を伴う新たな政策が打ち出されようとすると、必ずといっていいほど出てくるのが財源の裏付けがないという批判だ。最近では、防衛費増額や少子化対策の財源を捻出するため、増税や歳出削減が議論されてきた。現在は「103万円の壁」引き上げに際して財源の確保が大きな問題とされている。 そもそも「財源」とは何だろうか。一般会計の歳入を2024年度当初予算で確認すると、租税及び印紙収入(所得税、法人税、消費税等)が61.8%(69.6兆円)、公債金(国債発行)が31.5%(35.5兆円)、その他収入が6.7%(7.5兆円)となっている。これらは全て財源としてもよさそうなものだが、歳出増や歳入減を伴う政策に対して財源の裏付けがないとする人達は、新たに発行する国債は財源にはならないと考えているようだ。 しかし、そうだとすれば、日本は1965年以降、約60年にわたり財源とはいえない国債を毎年発
9月に公表された厚生労働省「人口動態調査」2023年出生数確定値によって、2013年から2023年の10年間で見た都道府県の出生数の減少率が明らかとなった[図表1]。 まず、直近10年間の全国平均出生減少率(以下、出生減率)は29.4%であり、わずか10年で生まれる子どもの数が3割減という深刻な少子化が発生していることがわかる。 全国平均よりも出生減率が高く、より少子化が進んでいる高少子化エリアは31エリアだった。一方、全国平均より減少率が低かった、比較的緩く少子化が進む低少子化エリアは16エリアで、「子どもが生まれる場所が少ないエリアに偏在化」している傾向もより明確となった。 全国平均では3割減であるが、ワースト11位までの秋田、岩手、福島、青森、静岡、山形、栃木、新潟、北海道、高知、愛媛は10年で約4割減というハイスピードな出生減となっており、極めて深刻な少子化状況にあると断じることが
ニュースやSNSには、毎日のように誰かの不祥事が取り上げられている。知名度や規模によっては炎上し、人気が急落するだけでなく、対象となった人は仕事を失うなどの深刻な事態に至ることも珍しくない。しかし、同じ不祥事にもかかわらず、かえって支持を強める現象が見られることがある。この奇妙な現象には、どのような背景があるのだろうか。 この理由の一つとして、「物語」という観点が挙げられる。この「物語」は、人の感情に大きく作用することが知られており、態度変容や意識の変革に大きく影響を及ぼすことが分かっている。人間の思考には「論理実証モード」と「物語モード」の2つが存在する1。前者はルールや数値的な基準に基づき、「不祥事は許されない行為だ」と判断する思考回路である。一方で後者はストーリーや背景に基づいて判断する。この物語の態度変容への影響を活用したものの一例として「物語広告」がある。物語広告とは、CMなどの
2023年のJリート(不動産投資信託)市場を振り返ると、市場全体の値動きを表わす東証REIT指数(配当除き)は▲5%となり、2年連続で下落した(図表1)。日銀の緩和政策修正を見据えた長期金利の先高観が重くのしかかり、年間を通じて弱含みで推移。平成バブル以来33年ぶりの高値を付けて活況を呈した株式市場とは対照的に、停滞色の強い1年であった。株式市場とのパフォーマンス格差は▲30%に拡大し、過去3番目に悪い水準で1年を終えた1。 市場規模は2年連続で新規上場がなく、2件の合併によって上場銘柄数は61社から58社に、市場時価総額は15.4兆円(前年比▲3%)に減少した(図表2)。一方、不動産取得額はインバウンド需要の回復期待からホテルの取得が大きく伸びて2年ぶりに1兆円の大台を超え、運用資産額(取得額ベース)は22.8兆円(前年比+4%)に拡大した。アセットタイプ別の取得割合は、多い順に、オフィ
日本の名目GDPは季節調整済み年率換算値で2024年第2四半期に607兆5064億円と、初めて600兆円を超え、同第3四半期には610兆2431億円と前期比1.8%(年率)増加している。 一方、2023年のGDPがドイツに抜かれ、世界第3位から第4位に転落したことが話題になったが、アメリカとの差は拡大し続けている。アメリカではカリフォルニア州が人口、経済規模ともに突出しているが、そのカリフォルニア州の直近のGDPは2024年第2四半期時点で4兆0801億ドル余となっている。 2024年第2四半期の円ドルの為替レートは期中平均で155.78円であった。この為替レートでカリフォルニア州のGDPを円換算すると635兆6102億円余と、日本国のGDPを上回る(図表1)。 2024年第2四半期は為替レートが大きく円安・ドル高に振れた時期であり、円安でカリフォルニア州のGDPの円換算額が膨らんだ部分も
■要旨 国民年金の第3号被保険者の中期的な廃止が相次いで提言されているが、軽々には語れない難しい論点である。本稿(前後編)では、制度の概要を確認した上で、「不公平感」「就業抑制」「財源のあり方」の3つの視点に絞って整理を試みる。今回の前編では、制度の概要と不公平感を取りあげる。 ■目次 はじめに 1 ―― 第3号被保険者制度の概要:厚生年金が優先適用され、30年前から一貫して減少 1|誰が該当するか: 厚生年金加入者に扶養される年収130万円未満の配偶者で、厚生年金に加入していない人 2|どの程度の規模か: 30年前のピークから約4割減少しており、女性においては20~59歳人口の約2割が該当 2 ―― 不公平感 :無収入の第3号なら共働きと不公平なし。廃止は第3号世帯への逆進的なペナルティに 1|現行制度の評価(1) なぜ保険料を負担しないのか: 第3号被保険者が受け取る基礎年金は、配偶者
歳出の増加や歳入の減少を伴う新たな政策が打ち出されようとすると、必ずといっていいほど出てくるのが財源の裏付けがないという批判だ。最近では、防衛費増額や少子化対策の財源を捻出するため、増税や歳出削減が議論されてきた。現在は「103万円の壁」引き上げに際して財源の確保が大きな問題とされている。 国民民主党が主張するように、基礎控除、給与所得控除の合計を現在の103万円から178万円に引き上げた場合、政府は国と地方の税収が7.6兆円減少すると試算しており、これを賄うための財源の確保は難しいという見方も少なくない。これに対して、国民民主党は、近年は税収の上振れ、予算の使い残し(不用額)が大きく(2023年度:税収上振れ2.5兆円、不用額6.9兆円)、これを使えば、控除額を103万円から178万円に引き上げることが十分可能としている。 しかし、税収の上振れは財務省の税収見積もりが甘かったことを反映し
韓国も日本も低出生率が続いている。特に韓国の出生率の低下は深刻だ。韓国の出生率は2001年から日本の出生率を下回り始め、最近ではその差がますます広がっており、2023年の日本の出生率は1.20で、韓国の0.72を大きく上回っている。韓国と日本の少子化の原因は似ているにもかかわらず、なぜ日本の出生率は韓国よりも高い水準を維持しているのだろうか。データに基づき、その原因を探ってみたい。 まず、第一の原因として、日本の男性および女性の初婚年齢が韓国より低いことが挙げられる。2022年現在、男性と女性の平均初婚年齢は韓国がそれぞれ33.7歳と31.3歳であるのに対し、日本は31.1歳と29.7歳で、韓国より男性は2.6歳、女性は1.6歳低い。男性については、韓国では兵役の義務があるため、日本より高いと言えるが、兵役の義務がない女性に関しても日本より高くなっている。韓国保健社会研究院などの調査結果に
プロフィール 1995年:日本生命保険相互会社 入社 1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向 ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~) ・【こども家庭庁】内閣府特命担当大臣主宰「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024年度) ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度) ※都道府県委員職は年度最新順 ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~) ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~) ・【高知県】高知県「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度) ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度) ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度)
学生時代に、複雑な算式を図表で表すと、いろんな形の曲線が描かれるのを勉強したと思う。この時には、「へー、そうなんだ」ぐらいの認識でおられた方も多く、むしろ、こうした算式の取扱いに四苦八苦して、結果として得られている曲線が、社会において、あるいは自然界において、どのような形で現れていて、どう役立っているのか、については、あまり説明がなく、殆ど勉強する機会もなかったのではないかと思われる。 ということで、今回の研究員の眼のシリーズでは、「曲線」について、どんな種類があって、それらが実際の社会における、どのような場面で現れてきて、どう社会に役立っているのかについて、報告している。これまでの7回の研究員の眼では、楕円、放物線、双曲線等の「円錐曲線」、「カテナリー曲線」、「クロソイド曲線」、「サイクロイド曲線・トロコイド曲線」について報告した。 今回は、「リサージュ曲線」や「バラ曲線」と呼ばれるもの
マクドナルドの「サラダマックの失敗」をご存じだろうか?マクドナルドは1987年にサラダの提供を開始すると1、2003年にはメインディッシュとしてサラダをメニューに加えたり、2013年以降セットの選択肢にサラダやフルーツも取り入れている2。こうした背景には顧客の「健康志向」があり、マクドナルドが行ったアンケートでは「もっとヘルシーなメニューも増やしてほしい」という声がたくさん挙がったからだそうだ。実際にマクドナルドはサラダやフルーツの他に、卵白を使用したサンドイッチ、グリルチキンラップ、全粒粉を多く含むハンバーガーバンズなど、よりよいメニューバランスを選択肢として提供していたが、サラダ類の売り上げは全体の2~3%に過ぎなかったという3。ファストフードの顧客は確かに健康的な選択肢を求めており、そのニーズが業界全体でサラダやオレンジスライスなどがメニューに追加される流れを生んだが、顧客がメニュー
中国の国家統計局は1月17日、2023年の総人口、出生数が前年に続き減少していることを発表した。2023年の総人口は14億967万人で、2022年から208万人減少し、2年連続の減少となった。また、2023年の出生数は902万人と、こちらも2022年から54万人減少している。 中国における出生数の減少について、国家統計局はその要因を挙げている。それは、(1)出産適齢期の女性人口の減少、(2)結婚や出産年齢などの上昇、(3)養育や教育費用の高騰による若年層の子育てに対する意欲の低下や考え方の変化、(4)新型コロナウイルスの感染拡大による出産控えである。本稿ではその中でも(1)出産適齢期の女性人口の減少、(2)結婚や出産年齢などの上昇に注目し、その様相を概観したい。 中国では1979年に一人っ子政策が開始されたが、その後も労働力として、また伝統的な‘孝’の概念によって男児の出産優先の伝統は残り
■要旨 2023年1月、米国司法省および7州はGoogleを相手方として、競争法違反に関する訴訟を提起した。これはウェブ上の運用型広告サービスを提供するソフトウェアであるアドテクに関するものである。具体的には、ウェブ上の広告枠について入札依頼を行う媒体社向けのサービス(媒体社サービス)、入札依頼のあった広告枠について入札する広告主向けサービス(広告主サービス)および、この二つのサービスのマッチングを行う広告取引所の3つのサービスについてGoogleが独占を確保、維持したことが競争法に違反したとするものである。 Googleは、いずれも自社のサービスであるDFP媒体社サービスとAdX広告取引所との間で、競合する他の広告取引所からの入札情報を共有することにより、DFP媒体社サービスからの広告枠の入札依頼について、AdX広告取引所経由の入札が優先的に落札できる仕組みを構築した。このような仕組みに
国民負担率は、国税や地方税の租税負担と、国民年金や健康保険の保険料などの社会保障負担の合計を、所得で割り算して算出する。所得には、国民所得もしくは国内総生産(GDP)が用いられる。メディアで主に報じられるのは、国民所得を用いた数字だ。 広辞苑(第七版)(岩波書店)によると、国民負担率は、「国・地方租税負担と社会保障負担(社会保険料負担)の合計額の、国民所得に対する比率」を意味する。他の国語辞書も同様だ。所得として国民所得を用いた数字が、国民負担率とされることが一般的と言えるだろう。 国民所得は、個人が労働によって受け取る給与や報酬、預金や有価証券などから生じる利子や配当などに、企業の収入である企業所得を足し算して計算される。 国民所得をベースとする国民負担率の、2022年度の実績は、48.4%だった。2021年度から+0.3ポイント上昇して、過去最高を更新した。過去の推移を見ると、2020
新NISA(少額投資非課税制度)がスタートした。非課税期間の無期限化、非課税投資限度額の大幅拡大で期待が高まる一方、ネット上などでは「毎月定額つみたて投資するのと、1月に一括投資するのではどちらが有利か」で意見が割れているようだ。全世界株式(オールカントリー、略して“オルカン”*)と米S&P500どちらを買うべきかも同様だ。“ 論争”に終止符を打つべく、検証した。
■要旨 1――低迷を続ける中国の不動産市場 中国では不動産不況になかなか歯止めが掛からない。販売面積は直近ピークの6割ほどまで減少し、価格も下落を続けている。中国はこれまで何度も不動産不況を経験している。しかし販売にしても下落幅にしても在庫にしても過去のそれよりはるかに深刻だ。そして不動産業の成長率は2年連続でマイナスとなり、多くの不動産デベロッパーが経営不安に直面する事態となった。こうした不動産不況は、日本が1990年代に経験した不動産バブル崩壊と類似した面が多々ある。 2――日本における不動産バブル「形成」とその「崩壊・後始末」 日本でバブル形成が始まったのは1987年頃だった。「プラザ合意」後の大幅利下げで「財テク」ブームが起きた日本では、不動産デベロッパーや一般企業・個人、さらには金融機関も巻き込んでバブルを謳歌することとなった。それが崩壊したのは1990年前後だった。利上げや総量
■要旨 社会経済活動の正常化に伴い、個人消費は急回復することが期待されていたが、今のところ「リベンジ消費」は顕在化していない。 個人消費は、物価高の逆風を受けながらも、高水準の貯蓄を背景に比較的堅調だったが、足もとでは貯蓄率が平常時の水準に近づき引き下げ余地が少なくなり、物価高の悪影響をより受けやすくなっている。 家計貯蓄率はコロナ禍前の水準を若干上回っていたが、GDP統計の改定によって2023年度入り後はゼロ%台まで低下し、コロナ禍前の水準を下回る可能性が高い。また、コロナ禍で積み上がった累積的な貯蓄により家計の現金・預金残高の増加ペースはコロナ禍前のトレンドを大きく上回っているが、消費者物価で割り引いた実質ベースでみるとトレンドからの乖離幅は大きく縮小する。 リベンジ消費の中でも特に期待が大きかった外食、宿泊などの対面型サービスは高齢者を中心に持ち直しのペースが鈍く、依然としてコロナ禍
1月10日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。 【ユーロ圏失業率(20か国、2023年11月、季節調整値)】 ・失業率は6.4%、市場予想1(6.5%)より下振れ、前月(6.5%)から低下した(図表1) ・失業者は1097.0万人となり、前月(1106.9万人)から9.9万人減少した ユーロ圏(20か国)の11月の失業率は6.4%で、10月からやや低下した。過去データはほとんど改定されず、統計データ公表以来の最低値を記録した(11月のほか6月も6.4%で最低値)。 失業者数は11月の前月差で9.9万人減となり、9・10月は2か月連続で計5.3万人増となったが、11月は減少に転じ、減少幅も大きかった(図表3・4)。主要4か国では、ドイツ(+0.5万人)、フランス(+0.1万人)が小幅増加し、フランス(+0.8万人)、イタリア(▲6.6万
■要旨 いよいよ新NISA(少額投資非課税制度)がスタートする。非課税期間の無期限化、非課税投資限度額の大幅拡大で期待が高まる一方、ネット上などでは「毎月定額つみたて投資するのと、1月にまとめて投資するのではどちらが有利か」で意見が割れているようだ。 全世界株式(オールカントリー、略して“オルカン”)と米S&P500どちらを買うべきかについても同様だ。こうした“論争”に終止符を打つべく、検証してみた。
2023年7-9月期の実質GDP(2次速報値)は、1次速報の前期比▲0.5%(年率▲2.1%)から前期比▲0.7%(年率▲2.9%)に下方修正された。 GDP2次速報の結果を受けて、11月に発表した経済見通しを改定した。実質GDP成長率は2023年度が1.5%、2024年度が1.3%、2025年度が1.1%と予想する。成長率の遡及改定を受けて、2023年度の見通しを0.1%上方修正した。民間消費、設備投資などの国内需要を中心に景気の回復基調は維持されると予想するが、内外需ともに下振れリスクの高い状態が続くだろう。 名目GDPは実質GDPを上回る伸びが続いており、2023年度の名目GDP成長率は5.6%と33年ぶりの高さとなることが見込まれる。名目GDPの水準は、四半期では2024年1-3月期、年度では2024年度に600兆円を超えるだろう。 消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)は、202
経済がウィズコロナに移行するなか、数十年ぶりのインフレに見舞われ、人々や企業がどのような行動をとるのかについては、見極めにくい状況が続いている。今年に入り高インフレはようやくピークアウトしたが依然として物価の上昇率は高く、主要中央銀行も警戒感を崩していない。 主要国の実体経済の状況を見ると、日本や欧州では実質GDP水準はコロナ前トレンドを大きく下回る状態が続く一方、米国は7-9月期に高成長を達成したこともあってほぼコロナ前トレンドの水準まで回復している。 インフレは景気の重しになるとの説明を目にする機会は多く、実際、この高インフレを受けて主要国の消費者景況感は落ち込んでいる。ただし、インフレが実体経済(消費など)にどのように影響するかは単純ではない。そこで、このコラムではインフレと消費の関係について考えてみたい。 物価が高騰すると消費者は消費を増やすだろうか、減らすだろうか。 まず、インフ
■要旨 日本の人口減少問題を科学的に考察するならば、未婚化に関する考察は最優先であることをこれまでのレポートで示してきた。 しかし未婚化というと「女性の問題だろう」と安易に片付けるアンコンシャス・バイアスがいまだに払拭されないという問題がある。 出産を希望する女性が、希望する時期に「希望するような年齢の男性」との出会いを求めていても、男性側が「自分にはまだ先の話」と統計的に見れば「男性の婚期に関する誤解」をもって女性に相対するならば、女性側は望むような相手との結婚を果たしにくくなる。 結果として、婚姻が遅れる、諦める、統計的に見て出生数に対して負の相関を持つ相手を選ばざるを得ない(このことについてはまた別の機会にデータ解説を行いたい)といった人口減につながる状況が生まれるからである。 ここまで読んで「男性の婚期に関する誤解」など、たいしたことはないだろう、と読者の大半は考えるのではないだろ
■要旨 若年層の中には経済状況の苦しさから結婚や子どもを持つことへの不安を抱えている人が少なくない。若年層の抱える経済的不安が少子化の一因となっていると思われる。 近年、20代の実質賃金水準こそ上昇しているものの、国民負担率の上昇や世代内格差の拡大も進んでおり、若年層の経済状況に影を落としている。 若年層の現在の経済状況や将来の見通しは良好とは言い難い。それでも日本の喫緊の課題である少子化問題を解決していくためには、現在進められている子育て世帯への支援に加え、未婚であったり、子どもを持たなかったりしている若年層を経済的に支援することも一考に値するのではないだろうか。 ■目次 1――少子化の一因は若年層の抱える経済的不安 2――こども未来戦略方針の施策は子育て世帯への支援が中心 3――20代の実質賃金水準は増加傾向 4――それでも経済的に苦しい理由 1|国民負担率の上昇 2|世代内格差の拡大
平成27年国勢調査(2015年)、令和2年国勢調査(2020年)ともに、「共働き世帯」の方が「専業主婦世帯」よりも子どもの数が多い、という分析結果が導き出された。2015年の分析結果は主要オンラインメディアにも投稿し、2020年の分析結果も講演会で何度も取り上げてきた。 しかし、この分析結果に対して、シンクタンク研究者、大学教授、大手メディアのディレクターなどから、いまだに「驚愕した」「この結果の調査母体は何でしょうか」といった連絡を定期的にいただく状況が続いている。 このことは、日本は人口減、すなわち出生減が止まらない危機的な状況下にあるにもかかわらず、足元の社会現象に関してデータ分析による仮説検証が行われないまま、誤解に基づく非科学的な対策議論が行われていることの証左と思われる。 本稿では、少子化に関する代表的な誤解の一つである「(共働き世帯よりも)専業主婦世帯の方が子どもが多いのでは
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