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アメリカ大統領選
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アート・文化助成金の停止と税率引き上げオランダの9月第3火曜日、プリンシェスダーグ(Prinsjesdag、王子の日)は、新しい議会年度の幕開けとなる重要な日だ。この日、オランダ国王は玉座から演説を行い、その年の政府の主要政策や計画を発表する。国王の演説には、その年の政府の重要政策や計画が盛り込まれ、経済や社会、文化に対する政府の方針が明らかにされる。この演説は予算編成に大きく関連しており、予算案を含むその年の政府の重要な計画が含まれていることから「Budget Day(予算の日)」と呼ばれている。今年度は多くのアート文化機関や関係者、そして市民がこの日を不安とともに迎えた。というのも、これまで14年間リベラル派の自由民主国民党(VVD)が率いて来た連立政権が崩壊し、7月2日より極右政権が発足したためである。 新連立政権は4つの政党からなり、ディック・スホーフが率いることとなった。連立政権
ヴェネチア・ビエンナーレとはヴェネチア・ビエンナーレは、イタリアのヴェネチアで1895年より2年に1度開かれる世界でもっとも有名な芸術祭のひとつ。一部では「美術界のオリンピック」とも呼ばれ、国別のパビリオン、テーマを設けた大規模な企画展がヴェネチアの街の各所で開催されるアート一色の7ヶ月間となる。今年は11月24日まで開催中だ。 日本は1952年の第26回から国として公式に参加を始め、56年にジャルディーニ内に日本館を建設し、以降美術展に継続して参加。91年からは建築展への公式参加も行ってきた。日本の美術展・建築展を主催するのは、日本の外務省が所管する独立行政法人のひとつ、国際交流基金だ。 国際交流基金は総合的に国際文化交流を実施する日本で唯一の専門機関(*1)であり、文化芸術交流、海外における日本語教育、日本研究と国際対話という3つの軸で活動を展開。 ヴェネチア・ビエンナーレには1976
序 現在、西洋美術史を必要としているのは誰か。日本では洋楽離れや洋画離れが指摘されて久しいが、美術も同様の状況にあるように思われる。かつて社会現象を巻き起こすほどの影響力を持つロックバンドが姿を消したように、多くの美大生たちに強い影響を与えるような世界的なアーティストはもうない。映画や音楽などの文化・芸術の産業や市場でグローバリズムが進行している状況と解釈できる。 グローバリズムの浸透に伴い、西洋中心主義や植民地主義が強く批判されるなかで、文化多元主義や脱植民地主義の思想や運動が強まり、これまで学んできた西洋美術史がその前提から批判され、美術史の相対化が進行し、歴史を単線的な物語として語ることは難しくなってきている。しかし、西洋美術史を解体することで負の側面が解消され、問題は本当に解決するのだろうか。また、これまでの美術史が持っていた社会的意義を考えれば、単純な解体や忘却はむしろ悪影響をも
私が山田尚子作品と聞いて思い出すのは映画『リズと青い鳥』(2018)に代表される女性間の強烈な愛にまつわるような作品だ。近作のテレビシリーズ『平家物語』(2021)でも、権力者に使われることに倦んだ祇王と仏御前というふたりの女性が最後には出家しともに祈るようになるまでの人生の歩みを、短いながらも濃厚に描いていた。 そんな山田監督による8月30日に公開された最新作『きみの色』は本編が始まった瞬間から息を止めたくなるほどに脆く見える世界を提示する。それは女性間の親密さを描くとともに、その先にあるものを描き出そうとする作品でもあった。 『きみの色』予告編 沈黙と緊張『リズと青い鳥』で山田監督は「彼女たちの尊厳を守りたいというか、彼女たちにぐいぐいカメラを向けないように気を使いました」(*1)と語っていたが、『きみの色』では同作以上にカメラが映す場面は制限されている。 キャラクターたちが抱える葛藤
ユーザーの声を集めて「ベスト展覧会」を決定2004年にスタートしたTokyo Art Beat(TAB)は、2024年で20周年を迎えます。 いつも応援してくださる皆様、誠にありがとうございます。おかげ様で全国の展覧会情報を常時1000件公開し、アートシーンのいまに迫る記事も毎日更新。月間PV600万を誇る国内最大規模のアートメディアとして、TABは成長することができました。 この記念すべきアニバーサリー・イヤーをユーザー・読者の皆様とともに祝うべく、この度「Tokyo Art Beat 20周年アワード」を実施しました。 本アワードは、TABが創立した2004年から今年6月までの約20年間に開幕した展覧会から、ユーザー・読者の皆さんにとっての”ベスト展覧会”を投票で募り、表彰するもの。 今回ついに、このアワードの結果を発表いたします! 【選考プロセス】 ①推薦アンケート実施:7月1日〜7
梅沢和木×布施琳太郎×GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAEインタビュー:「スーパーフラット」以降の日本現代アートの20年【Tokyo Art Beat 20周年特集】 Tokyo Art Beat設立20周年を記念する特集シリーズ「これまでの20年 これからの20年」。1980〜90年代生まれのアーティスト3名が「スーパーフラット」以降の日本現代アートや、いまのアートシーンの実感について語る(構成:今野綾花) Tokyo Art Beat設立20周年を記念する特集シリーズ。「これまでの20年 これからの20年」と題して、6つのテーマで日本のアートシーンの過去・現在・未来を語る。 第2弾となる本稿では、アーティストの梅沢和木、布施琳太郎、GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAE(ギロチンドックスギロチンディ)の3名が「『スーパーフラット』以降の日本現代アート」のテーマ
実際に「おじさん」ばかりだが…?8月21日、自由民主党が9月12日~27日に実施する総裁選挙に向けて、歴代総裁が登場する総裁選挙のポスターとウェブ動画を公開した。同日にTBS系の報道番組「news23」で、タレントのトラウデン直美氏が「おじさんの詰め合わせって感じがする」とポスターの印象を述べたところ、ネットを中心に賛否両論が起きている。 実際にポスターにいるのは「おじさん」や「おじいさん」と言っても良さそうな高齢男性ばかりだ。そして、そうした人々だけが自民党総裁を務めてきたことを端的に示すこのポスターは、日本の政治の男性中心主義とジェンダー不平等を反映している。タレントの「おじさんの詰め合わせ」発言を「男性差別」だと批判するなら、そもそも中高年男性だけが自民党の総裁や日本の首相という権力の座に就き続けてきた状況を下支えする、圧倒的な女性差別(加えてLGBTQをはじめとする様々なマイノリテ
東京国立博物館で内藤礼にインタビュー国内外で環境と対話する空間作品を手がける美術家の内藤礼が、上野の東京国立博物館の建築空間と収蔵作品に向き合って作り上げた展覧会「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」が、9月23日まで開催されている。同館とエルメス財団との共同企画。9月7日から銀座メゾンエルメス フォーラムで連携する個展も行われる(会期は2025年1月13日まで)。 内藤礼は1961年広島県に生まれ、現在は東京を拠点に活動する。「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」をテーマに、光や水、空気などの自然事象と、糸やビーズ、布といった日常のささやかな物を用いて、生の光景を見出す作品を追求してきた。本展は、東京国立博物館の3つの場所(平成館企画展示室、本館特別5室、本館1階ラウンジ)で構成され、鑑賞者は回遊しながら同館が所蔵する縄文時代の土製品と内藤による作品が混ざり合い、時空を超え
「家族」を描くドラマとしてまさか、自分が朝ドラを毎日観見るようになるとは思わなかった。でも面白いから見てしまう、NHKプラスで。みなさんも、ですよね。 みなさんもご存じのとおり、2024年4月から朝の連続テレビ小説として放映されている『虎に翼』は、日本では最初の女性弁護士のひとりをモデルにした猪爪(佐田)寅子(ともこ)の物語である。 このドラマをフェミニズムに関係ない、という人はいないと思う。法律、憲法、人権といった多様な視点から語ることができるから、私よりよほどうまく語れる人はいくらでもいると思う。ただ、私はこの物語がもっとも中心的に描こうとしているものとして「法」のほかに「家族」があるのではないかと思う。だがその前に、少し本ドラマの根底にある姿勢のようなものについて書いてみたい。
表現の現場調査団が発表表現分野におけるハラスメントの問題がたびたび表面化していることを受け、2020年11月に設立された「表現の現場調査団」。6月24日に記者会見を開き、「ハラスメント量的調査白書2024」を発表した。 これまで調査や啓蒙活動を行い「表現の現場ハラスメント白書 2021」、「ジェンダーバランス白書2022」を公開してきた同団体だが、今回はハラスメントに関する量的調査の結果報告となる。 本調査は、「表現の現場」で活動した経験のある人を対象にハラスメントの実態や、キャリアにおけるジェンダーギャップを明らかにすることを目的としたもの。対象は「美術」、「演劇・パフォーマンス・ダンス」「映像・動画・映画」「デザイン」「音楽」「文芸・ジャーナリズム」「写真」「アニメーション」「ゲーム」「マンガ・イラスト」「建築」「服飾」「お笑い」「工芸・伝統芸能・伝統文化」の
日本美術の近現代史の歪みが生んだ、村上隆の「嫌われる理由」村上:今日はありがとうございます。山田さんのYouTube番組は、ずっと拝見していました。 山田:「村上隆 もののけ 京都」は、お世辞抜きで期待以上に良かったですよ。《お花の親子》(2020)が東山を借景にした日本庭園の池にじつによくフィットしていましたし、《風神図》《雷神図》(ともに2023〜24)にしても、《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》(2023〜24)にしても、力作ですよ。 京都で開催する必然性のある展覧会になっているところがすばらしいと思いました。 村上:今日は山田さんに、クリティカルに忌憚(きたん)のない解説をいただけるという期待をしています。じつは、2020年オリンピックの東京開催が決定した2013年9月7日(日本時間8日)の、その5分後に、「村上隆だけにはキャラクターを作らせたくない」という言葉がTwitter(現
『虎に翼』に女性画家の絵が登場朝ドラ『虎に翼』が大人気だ。基本的には法曹界を舞台にしながら、 “職業婦人”として、また主婦として忙しく働く女性たちにスポットを当てた本作は、現代の視聴者に気づきや驚き、共感などを持って受け止められている。 ドラマが進展するなか、物語はすでに戦後に入った。主人公・寅子と親しかった花岡悟判事が亡くなり、その未亡人として再登場した奈津子がじつは洋画家で個展を開催したことが判明(52話)。そして55話では、それまでのエピソードを回収するかたちで奈津子が描いた絵画が印象的に登場し、視聴者の涙を誘った。 様々な時代考証がなされ、歴史的な事実に基づき制作されている本作だが、当時における女性の画家の有り様や奈津子の絵画の描写には、どれほどリアリティがあるのか。戦前から戦後にかけての女性画家をジェンダーの観点から研究する美術史家の吉良智子さんに話を聞いた。
首里城から名護市庁舎、貴重な伝統的木造民家まで、沖縄を知るうえで重要な10の琉球・沖縄建築を建築家が解説する。 年間約1000万もの人が訪れる国内屈指の観光地の沖縄。透き通った青い海と雄大な自然の景観、琉球王国時代の旧跡や第二次世界大戦の戦跡など訪れたい場所は数多いが、優れた建築にも注目したい。独自の長い歴史を持ち、亜熱帯に属する沖縄は、日本の文化と風土の多様性を改めて教えてくれる名建築や歴史的遺産の宝庫だからだ。 本稿では那覇在住の建築家・福村俊治に、ぜひ訪れたい10の琉球・沖縄建築を挙げて解説してもらった。福村は1953年滋賀県生まれ。沖縄の自然と歴史に魅せられ約30年前に東京から移り住み、沖縄戦の犠牲者を慰霊し資料を展示する沖縄県平和祈念資料館(糸満市)の設計で知られる。公共建築や土地に根ざす住宅を手がけ、旧日本軍が首里城の地下に造った司令部濠など歴史的建造物の保存活動にも携わってい
フェミニズム・スペクタクルとしての「マッドマックス」『マッドマックス 怒りのデスロード』(以下、『怒りのデスロード』)は女性たちが無言で助け合う映画だった。女性たちを取り囲むのは家父長制の象徴のような支配者イモータン・ジョー、そして不毛な大地だ。 そこから逃げ出し希望を叶えるため、巨大な戦闘車両"ウォーリグ"を操るフュリオサ、ジョーの奴隷である女性たち、彼女たちを世話していた老女、大地で生きる集団"鉄馬の女"、たくさんの女たちが命懸けでともに助け合い、戦う。 スクリーンで見たことがあまりなかったそんなフェミニズム・スペクタクルに、私は心を揺さぶられた。 5月31日から公開となった『マッドマックス:フュリオサ』(以下、『フュリオサ』)は『怒りのデスロード』の続編であり、前作の主人公のひとりフュリオサの過去を描く映画だ。 しかし女性を主人公に据えたはずのこの映画には、女性同士が助け合うような描
アニャ・テイラー=ジョイ演じる若き日のフュリオサや、クリス・ヘムズワースによる敵役のディメンタスなど俳優陣の熱演、前作からさらにパワーアップした強烈かつアイデア満載のアクションシーン、そして崩壊した後の過酷な世界の描写など、本作の見どころは枚挙にいとまがない。そして何より、あのフュリオサが主人公として戻ってくるということで、前作で叩きつけられた新しい女性表象やそこに見られたフェミニズム的メッセージが、本作でどうアップデートされるのか、期待する人も多いのではないだろうか。私はまさにそのひとりだ。 ひと足早く試写で見る機会を得、手に汗握りながら見ていたところ、なんと見覚えのある絵画が登場して意表をつかれた。その絵は、19世紀後半から20世紀初頭に活躍したイギリスの画家、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(1849〜1917)の《ヒュラスとニンフたち》(1896)だ。
1960年代の日本において、「イラストレーション」「イラストレーター」という言葉を広め、時代を牽引してきた宇野亞喜良(1934〜)。その初期から最新作までの全仕事を網羅する、過去最大規模の展覧会「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」が、東京オペラシティ アートギャラリーにて開催中だ。会期は4月11日〜6月16日。 本展を機に、宇野のオフィスにてインタビューをする機会を得た。横尾忠則や和田誠らとともに「イラストレーション」の時代を作った1960年代から現在までの仕事の歩み、そして社会との向き合い方など、話題は多方向に及んだ。【Tokyo Art Beat】 *レポートはこちら
コレクション活かし研究機能強化──大原芸術研究所が4月に誕生しました。公益財団名は「大原美術館」から「大原芸術財団」に変わり、別法人だった倉敷考古館と合併しました。大原美術館は1930年に開館した日本初の西洋美術中心の私立美術館、1950年に開館した倉敷考古館は遺跡が多い吉備地方の発掘調査も行う博物館です。大きな組織改編となりますが、芸術研究所はどのような役割を担うのでしょうか? 大原芸術研究所が財団の中心となり、大原美術館と倉敷考古館を運営します。先日の会見で代表理事の大原あかねさんが言われましたが、異分野の2館がタッグを組むことで展示活動や社会との連携、学術交流の幅を広げることができます。これまで以上にミュージアム活動を活発にして、いっそう地元に貢献できればと思います。両館併せて7人いる学芸員は研究員として活動してもらい、今後体制を増強していく方針です。 研究所設立のもうひとつの大きな
イスラエル人歴史家の言葉から1954年にイスラエルで生まれたユダヤ系イスラエル人歴史家のイラン・パぺは、2006年に『パレスチナの民族浄化——イスラエル建国の暴力』を著した。2017年に邦訳が出た同書は、パレスチナ人がアラビア語で「ナクバ(大災厄)」と呼ぶ1948年前後の出来事を詳細に描く。その年にイスラエルが建国されたとき、そこに先住していたパレスチナ住民は計画的に追放され、さらには組織的な虐殺さえ被った。「シオニスト」はパレスチナにユダヤ人の民族的拠点を創設することを悲願とする人々を指すが(「シオニズム」は、そのイデオロギー)、戦後、こうした人々はそこにあった元々のパレスチナ社会を不可逆的に破壊した。パぺの本は、このナクバを一貫して「民族浄化(エスニック・クレンジング)」として解析している。 そこでパぺは読者に、こう問いかける。 「こういうことを想像してほしい。あなたのよく知る国で、少
今回標的にされたバルフォア卿(アーサー・バルフォア、イギリス元首相)は、 パレスチナで後に民族浄化を引き起こす原因のひとつとなった1917年のバルフォア宣言に外相としてサインをした人物である。当時イギリスの領土でもない、かつ当時先住のアラブ人・キリスト教徒などが人口の90%を占めていたパレスチナに、シオニストの「郷土」を建てることへの支持を約束するその宣言は、中東におけるイギリスの戦争責任を問うものとして、現在でも国際社会で物議を醸している(*4)。こうした入植行為はセトラー・コロニアリズムと呼ばれ、植民者が特定の土地を永久的に占領し、すでに存在する社会を植民者のもので置き換える行為のことを指す。 今回絵画への攻撃を通して抗議を行ったパレスチナ・アクションは、こうしたイギリスの戦争責任を追及するとともに、イスラエル最大の武器会社であるエルビット社と、エルビット社に出資をするイギリスの共犯関
ヴェネチア・ビエンナーレではパレスチナは過去にナショナル・パビリオンを設置したことがないが、2022年にはパレスチナミュージアムUSが公式の関連イベントを主催した。サンパウロ美術館の芸術監督アドリアーノ・ペドロサによってキュレーションされる2024年のビエンナーレのメイン展示では、331人の中に、ダナ・アワルタニとサミア・ハラビを含むふたりのパレスチナ人アーティストが参加する。 また、過去には2003年のビエンナーレのキューレーターを務めたフランチェスコ・ボナミはその年のフェスティバルにパレスチナ・パビリオンの展示を提案。しかし、反ユダヤ主義だと批判を受けて、パレスチナ・パビリオンの展示は行われなかった。ただし、ボナミはメインの展示にアーティストカップルであるパレスチナ人のサンディ・ヒラールとイタリア人のアレッサンドロ・ペッティによる作品を含めた。
エルヴィス・プレスリーとプリシラ・プレスリーとの出会いから結婚・離婚までを、プリシラが1985年に出版した自伝をもとにソフィア・コッポラが映画化した『プリシラ』。シェイクスピア、舞台芸術史、フェミニスト批評を専門とする批評家の北村紗衣がレビューする。4月12日、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
その「声」は誰のためにあるのか?このエッセイは、初めて自分から「掲載してほしい」と申し出たものだ。掲載を許可してくれた、編集部の福島夏子さんに謝辞を申し上げる。また、このエッセイを書くにあたり重要な情報を提供してくれた多くの友人——とくに、滝朝子さん——に感謝の意を伝える。 2023年3月11日、「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?——国立西洋美術館65年目の自問 | 現代美術家たちへの問いかけ」の内覧会が開催された。参加作家の飯山由貴と遠藤麻衣、美術家の百瀬文らが抗議のアクションを実施した。今回の報に接し、ぼく自身、恥ずかしさを覚える。この問題に対し、自分なりに知ろうとしてこなかったことについて。現代アートの領域で、「脱植民地化」を語ってきた研究者であるにもかかわらず。いまガザで起きていることに対して声をあげることは、まぎれもなく脱植民地化の問題だ(その関連性は、次
ヴェネチア・ビエンナーレやドクメンタにも参加。クスノキを素材に大理石の目をはめ込んだ、内省的で静謐な半身像で知られ、2005年からは半人半獣・両性具有の「スフィンクス・シリーズ」を手がけた
大きな特徴として、これまでの「現代アート界」の主流を占めてきた”白人・欧米・男性”という属性を持つアーティストはほぼ選ばれておらず、アジアやアフリカ、南米出身のアーティストが多数を占め、それぞれの地政学的状況やアイデンティティと深く関係する政治的な作品が数多く並んでいる。それらは既存のシステムや体制、支配に対し批判的な目を向け、時に反逆し、のらりくらりとすり抜け、オルタナティヴな自治や個人の生き方を探るような作品たちだ。現代アートに通じた人でも、本展で初めて見る作家はかなり多いのではないだろうか。 また、約3年にわたる大規模改修工事を経てリニューアルオープンした横浜美術館に足を運ぶことができるのも、本展の大きな楽しみだ。 丹下健三によるポストモダン建築である横浜美術館だが、そこに使われている御影石から抽出されたサーモンピンク系統の看板が新たに美術館周辺に設置され、「横浜トリエンナーレ202
ホーム / ニュース・記事 / 美術館はこれまでも抗議活動の場であった。国立西洋美術館で起きた抗議を機に、海外の事例や理論的な積み重ねを解説(文:五野井郁夫)
ホーム / ニュース・記事 / 国立西洋美術館で飯山由貴らアーティストがパレスチナ侵攻に抗議、美術館パートナーの川崎重工に訴え。遠藤麻衣と百瀬文の抗議パフォーマンスも
東日本大震災がターニングポイント──現在開催中の「奈良美智 The Beginning Place ここから」展は、奈良さんの創作の原点を様々な角度から浮かび上がらせる展覧会です。奈良さんは、この展覧会は同じ青森出身の高橋さんが担当だったからこそできたものだとおっしゃっています。故郷が大きな鍵となるこの企画を、高橋さんはどのように発想されたのでしょうか。 青森県立美術館では、2012年から翌年にかけて奈良さんの個展「君や 僕に ちょっと似ている」が巡回開催されました。当時、10年後にまた個展を行うとしたら、ほかからの巡回企画ではなく、自分たちの企画でやれたらいいなと夢想していました。 奈良さんは、2000年のドイツからの帰国後、出身地の弘前市を会場にした展覧会を何度か行っていますが、自作への故郷の地の影響のようなことはご自身では積極的には口にしてこなかったし、周囲の人々によるそのような語り
強い父が不在のエディプス・コンプレックスフロイトの精神分析的な主体化の構図が現在では変わってしまっていることを寓意的に描く神経症コメディであり、おそらくはユダヤ民族の歴史と深く関わる寓話であろう。 フロイトの図式では、男の子は母を独占する父と対決し、象徴的に殺すことで一人前の大人として主体化する、とされてきた。その過程で、男の子は、父からの近親相姦の禁止を内面化し、法や倫理の命令の源泉として個人の中に「超自我」が形成されるとした。そこには、母親との近親相姦の欲望と、それへの懲罰としての去勢という脅迫が関わっている。これらが複合した葛藤を「エディプス・コンプレックス」と呼ぶが、本作は、まさにそのようなコンプレックスを映像化したような作品である。ただし、もはや強い父はおらず、強大な母がおり、息子も反抗や対立もしない(現代人も、そうなってきているように)。
相次ぐ「大吉原展」への批判ここ数日、「大吉原展 江戸アメイヂング」(以下、本展)がSNSを賑わせている。本展は、かつて江戸/東京にあった公娼街・吉原遊廓を取り上げたもので、今年3月から東京・上野の東京藝術大学大学美術館で開催される美術展である。本展公式サイトのステートメントには「『江戸吉原』の約250年にわたる文化・芸術を美術を通して検証(改行)仕掛けられた虚構の世界を約250件の作品で紹介する」とある。 マンガ家・瀧波ユカリ氏のX(旧Twitter)では、前述のステートメントに続く序文を指して、「ここで女性たちが何をさせられていたかがこれでもかとぼやかされた序文と概要。遊園地みたい。」と非難するコメントをポスト。ここを起点にSNS上での意見対立を生んでいたようだ。 筆者の私は遊廓を専門に扱う書店・カストリ書房を経営しているが、同店は吉原遊廓が戦後に何度か看板を掛け替えて現在は吉原ソープ街
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