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AI研究者がノーベル物理学賞・化学賞を受賞したことについてのコメント2024年10月10日 一般社団法人 人工知能学会 会長 栗原 聡 今回のノーベル物理学賞において,ジョン・ホップフィールド,ジェフリー・ヒントン両先生が受賞され,翌日の化学賞においてデミス・ハサビス氏が受賞したことについて,まずはAIコミュニティにとってとても喜ばしく,この流れが今後も続くことが期待されることは,基礎研究の重要性の今更の再認識においても強い説得力がある出来事であったことは間違いない.ホップフィールド氏、ヒントン氏、お二人の物理学賞受賞を知った時は正直驚いた,というか意表を突かれた感覚であった.自然科学や宇宙についての発見やその人類への貢献に対する物理学賞というのが一般的な認識である中,情報処理に関する研究が受賞したのであるから驚いたのは当然であろう.確かに,我々の脳の機能をコンピュータ上で再現した,すなわ
人工知能学会としての大規模生成モデルに対してのメッセージ 2023年4月25日 一般社団法人 人工知能学会 会長 津本周作/倫理委員会 ChatGPTをはじめとする大規模生成モデル(Foundation Model:生成AIの基盤となる技術)は、将来において実現されるであろう高い自律性と汎用性を持つ、より完成された「人工的な知能」としてのAIに近づく大きな技術的進歩であり、可能性は極めて大きいと考えます。 一方、本学会倫理委員会にて2017年2月に公開した「人工知能学会倫理指針」においては、高度に自律的なAIにはその第9条で「人類の平和、安全、福祉、公共の利益に貢献し、基本的人権と尊厳を守り、文化の多様性を尊重し、誠実に振る舞うことの遵守」を求めており、大規模生成モデルにおいてもこの点を踏まえた発展を求めます。 そして、大規模生成モデルの問題や限界を社会に伝えることも人工知能学会の重要な社
折田 奈甫(早稲田大学理工学術院) 1.はじめに 深層学習の発展は素晴らしいが,第一言語獲得を研究する言語学者としては「ちょっと待った!」と言いたくなる瞬間がある.例えば,以下のような発言や記述を研究発表や論文などで見聞きすることが増えた. 深層学習のように人間も大量のデータから統計的に学習しているのではないか.刺激の貧困は存在せず,生得的知識など必要ない.子供は白紙の状態から,あるいは最小限の非言語的知識・能力を使って,言葉を大量に聞いて覚えて話せるようになる.脳についてはわかっていないことが多いので,深層学習を使ったリバースエンジニアリング的な認知科学の研究があってもいいのでは.ニューラルネットワークは神経科学的に妥当なモデルである.そのうえ,人間が行うような情報処理タスクにおいて高い汎用性と学習能力を示している.ニューラルネットワークは人間の認知メカニズムとして妥当な仮説なのではない
2022年6月14日、2022年度人工知能学会全国大会「AIによるクリエイティビティと著作権」を一般公開企画として開催しました。 最初に倫理委員会の武田委員長から開会の挨拶と企画説明がありました。深層学習等のAI研究の発展によってAIの社会適用の可能性は大きく広がりました。当初は未知な技術としてシンギュラリティといった脅威の面が強調されることもありましたが、現在は技術の価値と限界もより正確に認識され、社会適用もより現実的な方向性が見えてきています。本企画では、再び社会の中でAIをどう使うかに関する可能性・期待・限界について多様な視点から議論しました。 話題提供 松原仁氏 最初に小説、俳句、漫画、映画の脚本など様々な分野でAIによるコンテンツ創作を試みられている松原仁氏(東京大学・教授)が、いくつかのプロジェクトを紹介されました。AIの創作への関与度合いはプロジェクトによって幅はありますが、
神嶌 敏弘(産業技術総合研究所) 1.は じ め に ここでは,人工知能,特に機械学習の公平性に関する情報を紹介する.こうした分野は公平性配慮型機械学習(Fairness-aware Machine Learning)などと呼ばれている.人工知能倫理(Artificial Intelligence and Ethics)や公平性配慮型機械学習では,公平性,差別,中立性,独立性などの潜在的な問題を考慮しつつデータ分析を行う. アメリカで公民権法が 1964年に成立して以来,公平性の検証に統計学は幅広く活用されてきた.これらは主に検定を用いて,人間による過去の決定が公平であったかを検証するもので,裁判などでも利用されてきた.その後,検証ではなく予測を行う機械学習も,与信・採用・入試などに利用されるようになったことをふまえ,2010年頃から予測の公平性の研究も始まった.そして,2016年の欧州で
徳久 良子((株)豊田中央研究所) 1.は じ め に 対話コーパスの規模の拡大や,深層学習などの技術の進化により,ここ数年で対話システムの応答生成の精度は大きく向上した.音声処理や画像処理などと同様に,対話システムにおいても「end-to-end 深層学習(end-to-end deep learning)」が全盛だ.「end-to-end 深層学習」とは,入力と出力のペアを学習器が“よしなに” 学習する方法で,大規模なコーパスと強力な学習器を用いることで,多くの分野で従来より高い性能が実現されている.対話システムでは,Facebook AI ResearchのBlenderbot や,MicrosoftのDialoGPTがオープンソース化されており,大規模な対話コーパスを用意すれば独自の発話生成モデルを学習することも可能となった. 一方,「会話分析(Conversation Analy
Home » リソース » 私のブックマーク » 【記事更新】私のブックマーク「擬人化メディアとHuman-Agent Interaction:「情熱」のあるやり取りを目指して」 米澤 朋子(関西大学総合情報学部,(株)国際電気通信基礎技術研究所深層インタラクション総合研究所) 目次はじめに擬人化メディアとは <導入>擬人化メディアの位置付けと現状 <夢・社会的影響>擬人化擬人化の起源としくみの理論志向姿勢アニマシー知覚と不気味の谷心の知覚と身体(生理)共感と擬人化擬人化システムの構成身体性としての外観(表出機構)知能(内部/AIデザイン)フィールド応用と発展、製品HAIにおける状況他分野との相互作用、およびHAI研究の体系化の難しさHAIにおける課題HAIに関連する学術コミュニティ会議系その他国内会議や研究会などローカル系研究プロジェクト・組織系研究室など(高校生・受験生向け)おわりに謝
巻頭言 JSAI 2021 を終えて …………………………………………………………………………………………………………………… 松下 光範 541 アーティクル 長尾 真先生を追悼する ─研究者,そして研究コミュニティの鑑として─ ………………………………………………………………………… 野田 五十樹 542 長尾 真先生を偲ぶ ………………………………………………………………………………………………………………… 安西 祐一郎 543 ふあっと包み込む知性の人 ………………………………………………………………………………………………………… 金出 武雄 544 長尾先生と言語処理 ………………………………………………………………………………………………………………… 辻井 潤一 545 人工知能の未来を見通していたパイオニアとしての長尾先生 ……………………………………………………………
坂東 宜昭(産業技術総合研究所, https://ybando.jp/) 1.は じ め に 非線形写像を効率的に学習できる深層学習は,音声認識・音イベント検出や音響信号処理でも圧倒的な性能を達成している.特に,雑踏下での読上げ音声認識やホームパーティでの口語音声認識,日常・市街地での音イベント検出などは,国際技術評価会も開催され活発に研究されている.また信号処理においても,不要な雑音を除去する音声強調や,複数話者の同時発話から個別の音声を抽出する音声分離,多種多様な音イベントの分離などで,目覚ましい発展を遂げている. 多くの深層学習に基づく枠組みでは,非線形写像の入力と出力を定義するために教師付きデータを必要とする.そのため,“教師データに含まれない未知環境では性能が劣化 ”したり,“十分な量の教師データを収集するには膨大なコストが必要 ”だったりといった課題が存在する.特に,日常環境の
井上 創造(九州工業大学) 1.センサ行動認識の研究論文は190 万件以上! 近年,スマートフォンをはじめとする携帯デバイスが爆発的に普及しましたが,スマートフォンの中には,半導体集積技術を使ってセンサなどの機械部品をつくるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術の実用化のおかげで,すでにいろいろなセンサが搭載されています.例えば,ばねの変化を測る三軸加速度センサや,振動する物体が回転するときにかかるコリオリ力を測る角速度センサ(ジャイロセンサともいう)といったものです.このように簡単に誰もが使うようになった,身につけることができる(ウェアラブル)センサ,または環境に設置されたセンサから,「歩いている」,「自転車に乗っている」といった人間の行動を認識する技術が,“ センサ行動認識技術” であり,IoT(Internet of Things)時代に活用
Home » リソース » 私のブックマーク » 【記事更新】私のブックマーク「自然言語処理による文法誤り訂正 (Grammatical Error Correction based on NLP)」 水本智也 はじめに依頼を受けた時のテーマは「言語学習・教育支援」ということなのだが、このあたりのテーマについては甲南大学永田亮氏の著書「[語学学習支援のための言語処理]」やLeacockらの「[Automated Grammatical Error Detection for Language Learners]」にも詳しく書かれているため、広く知りたい方はそちらの本を読んでもらいたい。今回は特に「自然言語処理による英語の文法誤り訂正」に絞って最近の研究の動向やデータ・ツールを紹介し、すぐにでも文法誤り訂正を試してもらえる形で紹介したい。 あらためて説明する必要はないかもしれないが、念のため
私のブックマーク 情報推薦システム(Recommender Systems)奥 健太(立命館大学) はじめに 「この商品を買った人はこんな商品も買っています」. このようなフレーズは今やあらゆるオンラインショッピングサイトで目にするようになった. 情報推薦システムは,膨大な情報の中からユーザの嗜好にあった情報を提供するシステムである. 基本的な実現方式としては,大きく,内容に基づくフィルタリングと協調フィルタリングがある. 内容に基づくフィルタリングでは,購入履歴や閲覧履歴などからユーザのプロファイルを構築し, そのプロファイルに合致するアイテムを推薦する. 協調フィルタリングでは, 嗜好が類似するユーザが高く評価しているアイテムを対象ユーザにも推薦したり, 対象ユーザが興味を示しているアイテムと類似するアイテムを推薦したりする. 本稿では,情報推薦システムについて研究を遂行していくにあた
Home » リソース » 私のブックマーク » 【記事更新】私のブックマーク「反実仮想機械学習」(Counterfactual Machine Learning, CFML) 反実仮想機械学習(Counterfactual Machine Learning, CFML)齋藤 優太(東京工業大学) はじめに機械学習の応用において,反実仮想(Counterfactual)─起こり得たけれども実際には起こらなかった状況─についての情報が得られるとうれしい場面が多くある.例えば,「今動いている推薦アルゴリズムを仮に別のアルゴリズムに変えたときにコンバージョン率はどれくらいになるだろうか?」や「あるユーザに仮にクーポンを与えた場合に離反率はどれくらい減少するだろうか?」などの実務現場でよくある問いに答えるためには,反実仮想についての情報を知る必要がある. 反実仮想機械学習(CFML)とは,因果効果
チュートリアル講演1 6月10日(水) 9:00~10:40 A会場(4F 5F 6F メインホール@熊本城ホール) チュートリアル:AI系トップカンファレンスでの日本のプレゼンス向上を目指して ~最新カンファレンスの動向と論文採択に向けて~ 世界的なAIブームの中で,人工知能関連のトップカンファレンスへの注目が高まってます.トップカンファレンスへの論文採録は,特に若手研究者にとって明確な業績となるだけでなく,その後の大きなジャンプアップに繋がります.その一方で,近年のトップカンファレンスは急激な投稿数の増加により採録へのハードルが非常に高くなっています.本講演では,トップカンファレンスへの論文投稿の敷居を下げ,若手研究者の挑戦を促進すること,および,日本からの投稿数/採録数を増やすことを目的として,近年のトップカンファレンスの動向まとめや英語論文を書く際のノウハウやテクニックについて紹介
AI Map English Download AI Map Beta 2.0 English (Sep. 1, 2021) Read more » AIマップβ2.0 AI研究初学者と異分野研究者・実務者のための課題と技術の俯瞰図 AI(Artificial Intelligence)研究は拡大し、全体を俯瞰的に捉えることが難しくなっている。また、AI研究の成果を用いた多数のシステム(AIシステム)が実社会で活用され始めており、AIシステムとAI技術との対応も把握が難しくなっている。そこで、これから活躍するAI研究の初学者、およびAI活用を狙う異分野の研究者・実務者をターゲットとしたガイドとして、AIマップβ2.0を作成した。本AIマップβ2.0は、2019年に発刊したAIマップβの発展版であり、AI課題マップと、AI技術マップの2種から構成される。概要を以下に示す。 【AI課題マップ】
AIトレンド・トップカンファレンス報告(NeurIPS2019)の無料オンライン公開について人工知能学会 企画委員会 全体概要 人工知能に関する最新の研究開発動向をお届けすべく、AIトップカンファレンス報告会を継続的に開催してきました。今回、NeurIPS 2019 (Thirty-third Conference on Neural Information Processing Systems、2019年12月8日 – 14日、バンクーバー) にレポータを派遣し、3月に報告会を開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症に関わる事情から、報告会を中止しました。一方、報告内容に関する関心は高く、多数の問い合わせを頂いておりました。この度、3件の講演に関して、オンライン公開の準備が整いましたので、スライド資料と、報告者による音声付きスライド映像を、無料で公開いたします。 公開終了日:6月23日
佐藤 元紀 (株式会社Preferred Networks) はじめにニューラルネットワークは、時として僅かな入力の違いによって大きく異なる挙動になることが知られています。 図1 画像分野におけるAdversarial Example の(出典 : [Goodfellow et al.]より抜粋) 有名な例に [Goodfellow et al.] の図1があります。 左側の画像 x に対して、微小なノイズ(Adversarial Perturbation; 敵対的摂動)を足し合わせた結果が、右側の画像になっています。 左側の画像をCNNによる画像認識器に入力した時には正しく「パンダ (“panda”)」と予測されるものの、右側の画像を入力すると「テナガザル (“gibbon”)」と予測されています。 同じ見た目の画像にもかかわらず、ニューラルネットワークが誤認識するこのような事例は Ad
説明可能AI(Explainable AI)原 聡(大阪大学産業科学研究所) はじめに2018年に本誌5 月号(Vol. 33, No. 3, pp. 366-369)の”私のブックマーク”に「機械学習における解釈性」という記事を書いた。前記事の執筆から1年が経ち、機械学習モデルの解釈・説明技術を取り巻く社会的な情勢の変化や新たな研究の発展など、数多くの進展があった。本記事はこれら近年の変化・進展についてまとめた、上記の”私のブックマーク”の続編である。本記事を読む前に、まずは上記の前記事をご一読いただきたい。 用語について本記事では、機械学習モデルの出力に加えて、その出力を補助する追加の情報(モデルの解釈、判断根拠の説明、など)を出力する技術一般および研究分野全体を指す用語としてXAI(Explainable AI, 説明可能AI)を用いる。XAIはアメリカの国防高等研究計画局(DARP
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浦本 直彦 氏 (人工知能学会 会長 / 三菱ケミカルホールディングス 先端技術・事業開発室 デジタルトランスフォーメーショングループ Chief Digital Technology Scientist) 現在の人工知能の研究開発とその活用の広がりは、過去に例をみないスピードで社会に浸透しつつあります。様々な産業分野に人工知能技術とサービスが適用され、社会そのものを変革しようとしています。一方で、人工知能が、より複雑でクリティカルな場面で活用されるようになることで、技術的な課題だけではなく、社会的、倫理的な課題について向き合う必要があります。日本が、そして世界が、人工知能によって健全に成長していくために、議論すべき点が明らかになりつつある今、本講演では、人工知能による社会変革の現在過去未来を概観すると共に、我々が、そして人工知能学会が進むべき道を議論します。 [ 講演資料PDFダウンロー
今回、人工知能学会の学会誌名の変更と表紙デザインの変更に関し、さまざまなご意見や議論がウェブ上で展開され、ご批判も多く寄せられました。不快な思いをされた方々、また人工知能学会を日頃から支援して頂いている関係者の方々に深くお詫び申し上げます。 数多くいただいたご意見の中でも、最も多かった批判は「女性蔑視ではないか」「女性差別ではないか」というものでした。今回の表紙デザインに、女性を差別するような意図はありません。しかしながら、「ロボットが女性型をしている」「それが掃除をしている」「ケーブルでつながれている」等の要素が相まって、女性が掃除をしているという印象(さらには女性が掃除をすべきだという解釈の余地)を与えたことについては、公共性の高い学術団体としての配慮が行き届かず、深く反省するところです。 また、このデザインの技術的な背景に関するご批判もいただきました。デザイナーがデザインに込めた意図
中村拓磨(ZOZO Research) はじめにKDDやICCVといった名だたる国際会議において,ファッション関連技術を扱うワークショップが開催されるようになりました.ここ数年でファッションに対する認識技術への関心は大きくなっていることが伺えます. ファッションというドメインは,研究対象としては敬遠されてきたかと思います.多様性や主観を多分に含むことは原因のひとつですが,最近は状況が変わりつつあります.深層学習ブーム以降の他のドメインと同様,認識技術の高度化・データセットの充実・産業界の需要の増加などの要因で研究事例の数も増加傾向にあります. 環境の変化もさることながら,ファッションという現象自体も実に多様な研究テーマを内包しています.例えば,以下のように分解してみました. – 視覚的な印象やデザイン: 画像認識– 特定の衣服の流行・トレンド: 時系列解析– 衣服のコーディネート: 組合せ
Home » リソース » 私のブックマーク » 【記事更新】私のブックマーク「ウェブ検索と信憑性」(Web Search and Information Credibility) ウェブ検索と信憑性(Web Search and Information Credibility)山本 祐輔(静岡大学) はじめにウェブは私たちの生活を支える重要な知識基盤となっています。一方で,フェイクニュースに代表されるように,ウェブ情報の信憑性が社会問題となりつつあります。本ブックマークでは,信憑性指向のウェブ情報アクセスシステムの実現する上で重要と思われる下記項目に関して,関連情報を整理・紹介いたします: 情報信憑性の構成要素とユーザ側の意識情報信憑性の評価アルゴリズムウェブ情報の信憑性の判断支援システム信憑性判断と認知バイアス研究トピック信憑性の構成要素情報の信憑性に関する研究は,1950年代から社会
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