思考家、佐々木敦さんによる「ホラー」をめぐる新連載が始まります。ひとはなぜ恐怖するのか、ひとはなぜ恐怖を必要とするのか、そもそも恐怖とは何か。わたしたちの普遍的な、しかしあまりにも個別的な情動を通じての、現代のフィクションをめぐる思索の旅をぜひお楽しみください。 前口上 ホラーと呼ばれるジャンルについて考えてみたい。 とはいうものの、私は特に「こわいもの好き」というわけではない。かといって苦手でもない。「こわいもの」は、得意でも不得意でもない。いわゆるホラーファン/マニアとも、私の関心のあり方は多くの点でおそらくかなり違っている。 いや、実を言えば、なぜ自分が「恐怖表現=ホラー」のことを考えてみたいと思っているのか、今も私はよくわかっていないのだ。むしろそれを明らかにすることこそが本連載の目標ということになるのかもしれない。そしてそれは同時に「ひとはなぜホラーに惹かれるのか?」「ひとはなぜ