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この記事では,私と堀田昌寛先生との「ボルン則の証明」に関する一連の議論について,私の視点でまとめています。議論の概要と,実際にいただいた質問(および読者が疑問に思うであろうこと)を,質疑応答形式で説明します。読者の方がこの記事を読めば,私と堀田先生がこれまでに書いた膨大な記事を読まなくても主要な部分を理解できることをめざしました。 「なぜ問題なの?」の節(直リンク)までを読んだ後は,興味のある箇所のみを読んでいただいても構いません(ただし,用語の定義はその箇所より前で述べられている可能性があります)。もし,今後特筆すべきことがあったり,重要と思われる質問をいただいたりした場合には,追記するかもしれません。 これまで長期にわたり議論をさせていただいた堀田先生に,感謝いたします。 補足:本件に関して多数の記事を公開したため,これらを理解したいと思われる読者のみなさまにとっては大変な労力だったの
堀田先生の書籍『入門 現代の量子力学』のまえがきでは,「情報理論の観点からの最小限の実験事実に基づいた論理展開で、確率解釈のボルン則や量子重ね合わせ状態の存在などを証明する」と書かれています。堀田先生が提示された前提から量子論の数学的構造がただ一つに定まることを演繹的に導けるとのことです。私は,その主張には致命的な誤りがあることをいくつかの記事で述べてきました。 ほかの人が私の記事と堀田先生の記事の両方を読んで内容を理解することはきっと大変な作業であるため,結局どちらの主張が正しいのかがよくわからなかった人が少なからずいらっしゃったのではないかと思います。そこで,この記事では,堀田先生が提示されている前提のみからは量子論の数学的構造を演繹的に導くことは不可能であることを,量子論の基礎知識があればこの記事のみからほぼ完全に理解できるように,ていねいに説明します。 補足:今回の記事の主張は,こ
連載の記事一覧: #1 量子論の数学的構造 #2 CP写像の基礎 #3 確率論としての古典論・量子論(前編) #4 確率論としての古典論・量子論(後編) #5 プロセスの表現 番外編 2準位系から多準位系への演繹による拡張は難しい 番外編その2 堀田先生の書籍(中略)演繹的に導けていない 番外編その3 量子もつれ状態と非局所相関について 番外編その4 堀田先生からの『最終回答』へのコメント 堀田先生の書籍『入門 現代の量子力学』のまえがきでは,「情報理論の観点からの最小限の実験事実に基づいた論理展開で、確率解釈のボルン則や量子重ね合わせ状態の存在などを証明する」と書かれています。この「証明する」は「演繹的に導く」の意味であり,堀田先生が提示された前提から量子論の数学的構造がただ一つに定まることを演繹的に導けるとのことです。 この主張に対して2022年8月に私が誤りであることを指摘して,堀田
量子論について理解するためには,線形代数に関する知識が少なからず必要になるはずです。その理由は,量子論では線形写像を考えることが実質的に不可欠であるためといえるでしょう。そもそも,なぜ量子論では線形写像が現れるのでしょうか?その理由を,量子論の専門家ではない人にできるだけわかりやすく説明します。 量子論では,大別すると2種類の線形写像が現れます。これらを区別できれば,量子論に関する理解が大幅に深まることと思います。 準備:線形写像とはまず,線形写像についてざっくりと説明しておきます。ある集合$${X}$$からある集合$${Y}$$への写像$${f}$$が線形であるとは,任意の$${x_1,\dots,x_k \in X}$$と$${a_1,\dots,a_k \in \R}$$($${\R}$$は実数全体)に対して $$ f \left( \sum_{i=1}^k a_i x_i \rig
量子基礎論の初学者や専門家ではないと思われる方が事実であると誤解しやすい(かもしれない)五つのことがらを挙げてみたいと思います。 はじめに:誤解とは何か?この記事では,「事実とはいえないことを事実であると解釈すること」を『誤解』とよぶことにします。明らかに事実ではないことや現時点では事実であるか否かがわかっていないことを事実だと捉えることは,誤解といえるでしょう。また,物理学としての量子論に限定し,事実であるか否かを物理的な立場から考えることにします。各用語の定義として,できるだけ一般的と思われるものを採用することにします。 誤解1:量子論に『観測問題』は存在しない『観測問題』の定義によりますが,一般的には量子論の測定に関する各種の基礎的な(かつ未解決の)問題のことを意味するようです。たとえば,以下のような問題が考えられます。 測定は『誰』が行えるのか?(例:無生物は測定できるのか?) 測
連載の記事一覧: #1 量子論の数学的構造 #2 CP写像の基礎 #3 確率論としての古典論・量子論(前編) #4 確率論としての古典論・量子論(後編) #5 プロセスの表現 番外編 2準位系から多準位系への演繹による拡張は難しい 番外編その2 堀田先生の書籍(中略)演繹的に導けていない 番外編その3 量子もつれ状態と非局所相関について 番外編その4 堀田先生からの『最終回答』へのコメント この記事は,ひと言で述べると,堀田昌寛先生の書籍「入門 現代の量子力学 ~量子情報・量子測定を中心として~」の主要な部分に間違いがある(かつその間違いを修正することは恐らく容易ではない)という話です。下記のAmazonのレビューに要点をまとめていますので,よろしければご覧ください。 なお,この記事の内容は「図式で学ぶ量子論」の本編とは大きく異なります。興味のない方は読み飛ばしてください。 ※ 前回と今回
連載の記事一覧: #1 図式の基礎と線形代数の基礎 #2 スペクトル分解と特異値分解 #3 テンソル積およびトレース・転置・内積 #4 行列が作るヒルベルト空間 番外編 列ベクトルや行列での微分 番外編その2 ベクトル解析 はじめに書籍「図式と操作的確率論による量子論」を22年10月に出版する予定です。本書の紹介を兼ねて,量子論を学ぶ際に役立つ線形代数の基礎を数回に分けて紹介したいと思います。線形代数に対して広く使える内容になっていますので,量子論に興味がない人にも役立つと思います。 この連載では,図式を活用することで線形代数の基礎のいくつかをわかりやすく説明することを目的とします。図式とは,数式の代わりに図形を用いて表現した式のことです。線形代数に関する多くの数式は図式により厳密に表すことができ,しばしば数式よりも直観的に理解しやすく楽に計算できるという利点があります(数式のほうがわかり
図式を活用することで線形代数の基礎のいくつかをわかりやすく説明することを目的としています。量子論を学ぶ際に役立ちそうな話題を中心に説明します。ただし,線形代数に対して広く使える内… もっとみる
連載の記事一覧: #1 量子論の数学的構造 #2 CP写像の基礎 #3 確率論としての古典論・量子論(前編) #4 確率論としての古典論・量子論(後編) #5 プロセスの表現 番外編 2準位系から多準位系への演繹による拡張は難しい 番外編その2 堀田先生の書籍(中略)演繹的に導けていない 番外編その3 量子もつれ状態と非局所相関について 番外編その4 堀田先生からの『最終回答』へのコメント 書籍「図式と操作的確率論による量子論」を22年10月に出版する予定です。本書の紹介を兼ねて,有限次元系の量子論の基礎を数回に分けて紹介したいと思います。 はじめに量子論を理解するためには,その「数学的構造」と「操作的・確率的な性質」の両方を理解することが重要かと思います。操作的・確率的な性質のうち直観的に理解しやすいものから出発して,量子論の数学的構造や他の性質を素直に導ければ都合がよいのですが,今のと
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