僕は今のところは死刑制度に賛成である。しかしこの賛成は、かなりためらいながらの賛成である。 誰にも人を殺す権利はない――死刑も殺人である――のは明らかだし、死刑を執行された犯人が実は冤罪(えんざい)だったという、決してあってはならない事態の起こる可能性等を思えば、死刑制度に賛成、と大手を振って言うことはとてもできない。 現在は死刑制度に賛成、と表明しなければならないのである。 僕は僕の家族の誰かが理不尽に殺害されたとき、その犯人を赦(ゆる)せるかどうか自信がない。いや多分赦せない。犯人が赦せないのではない。犯人が生きていることが赦せないだろうと思う。したがって終身刑でも納得できない。必ず犯人の死を要求しそうな気がしてならない。 つまり、僕は今のところ、自分の復讐心を制御できないのではないか、と感じるのである。その一点を正直に認めるために、僕はどうしても死刑制度に反対、と主張すること