東京スカイツリーの天望回廊から東京の街並みをご覧になる天皇、皇后両陛下=26日午前、東京都墨田区(代表撮影) 先帝(昭和天皇)陛下は昭和24年、佐賀県に行幸(ぎょうこう)された。敗戦で虚脱した国民を励まされる全国御巡幸(ごじゅんこう)の一環で、ご希望により因通寺という寺に足を運ばれた。地元の友人から聞いたその際の逸話に、陛下が背負い続けた深い悲しみと苦しみが滲(にじ)む。住職・調寛雅(しらべ・かんが)氏の著書「天皇さまが泣いてござった」(教育社)に詳しいが、そのお姿は「刻苦」を正面から引き受ける修行僧のようでもある。 寺では境内に孤児院を造り、戦災孤児40人を養っていた。陛下は部屋ごとに足を止められ、子供たちに笑みをたたえながら腰をかがめて会釈し、声を掛けて回られた。 ところが、最後の部屋では身じろぎもせず、厳しい尊顔になる。一点を凝視し、お尋ねになった。 「お父さん、お母さん?」 少女は