先頃、駐日米大使の務めを終えたキャロライン・ケネディ氏は、平成26年9月に、山形県米沢市を訪れている。江戸時代の名君として知られる米沢藩主、上杉鷹山(ようざん)ゆかりの地である。 ▼かつてケネディ氏の父、ケネディ元大統領は、日本人記者から「もっとも尊敬する日本人は?」と聞かれ、鷹山の名前を挙げた。ケネディ氏はそのエピソードを踏まえて、スピーチを日本語で締めくくった。「為(な)せば成る」。鷹山の名言である。 ▼時代小説作家、藤沢周平さんが69歳で亡くなって、今日で20年になる。江戸庶民の哀感をしみじみと、あるいは下級武士の青春をさわやかに描ききって、今も人気は一向に衰えない。その藤沢さんにとって最後の作品となったのが、鷹山の生涯を描いた『漆(うるし)の実のみのる国』だった。 ▼17歳で米沢藩主となった鷹山は、一汁一菜、木綿の質素な生活で、財政立て直しの覚悟を示す。もっとも、守旧派による妨害や