<この国はどこへ行こうとしているのか> ◇倫理の目で「陰」を見よ−−宗教学者・島薗進さん(63) 「言われてみると、そういう感じがありますね」 東日本大震災後、社会のとげとげしさが緩んだ感じがしませんかと問うと、「そういう話はあまり聞いたことがないのですが」と前置きし、宗教学者、島薗進さんはこう続けた。「生活は悪くなり、若者の就職はますます難しく、生活保護が増え、自殺者は減らない。そこに震災、原発事故の被害者がいる。明るいニュースがないけれど、確かに、そんな感じがする」 根にあるものを考えているのか、ゆっくりと言葉をしぼり出す。「原発について言うと、政府も霞が関も経済界もマスメディアも信用できない。そういう人がデモに行ったり、ソーシャルメディアで交流する『新しい民主化』の勢いが増している。逆に言うと、不信感を取り払う力がもはや体制側にないということ。だから散発的に創意ある反応が生まれる。日