あけましておめでとうございます。 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。 57回目の新年である。 よく、ここまで死病にも取りつかれず、事故にも遭わず、戦乱や暴動にも遭遇せず、飢餓も悪疫も避けて、生き延びてこられたものである。 地球上60億人類同胞の中で、私のような平坦な人生を生きられた幸運な個体はおそらく全体の5%にも満たないであろう。 いまこの瞬間も世界のあちこちで戦争は続いており、飢餓や病で苦しむ人、貧困や圧制に苦しむ人は数億人を超える。 自分が今こうして屋根のある家で、暖かい布団にくるまって、満ち足りた眠りを享受できること、朝起きると温かい食事が供されることがどれほど貴重なことか、私たちはそのことを忘れがちだ。 そんなことを考えたのは、柴五郎が少年時代を回想した『ある明治人の記録』(石光真人、中公新書、1971/2006)を読んだせいである。 柴五郎のことには『街場の中国論』で少し