災害が起きて自宅で眠れなくなっても、誰もが避難所で暮らせるわけではない。熊本地震の被災地では、避難所を3日で出て車中泊を続ける高齢夫婦や、庭先に蚊帳を張って眠る家族がいた。そんな被災者の軒先に、最速1時間で完成する「インスタントハウス」を届けているのが、名古屋工業大学教授の北川啓介さんだ。費用は寄付で賄われ、被災者と自治体の負担はゼロ。なぜ、この小さな家に依頼が殺到しているのか。フリーライターの川内イオさんが現地を取材した――。(前編) 真夏の被災地に現れた「インスタントハウス」 「え、涼しい……!」 インスタントハウスの扉のファスナーを開けてなかに入った女の子が、笑顔で驚いた。 8月9日、熊本県氷川町はギラギラと太陽が照り付ける真夏日で、日なたにいたら熱中症の危険性を感じる午後だった。 許可を得てなかに入れてもらうと、そこは別世界だった。エアコンがしっかり効いていて、外の熱気をまったく感