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衆院選
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今見た夢を再現する、そんな「夢」のような研究はどこまで進んでいるのだろう。ブレイン・デコーディングという方法で夢を再現しようと試みる研究を進める神谷之康さんは、最初にこの着想を得て研究分野を切り拓く。脳や夢は、人の精神や人とは何かという根源的な問いにも関わるテーマで、人びとの関心や期待も大きい。ときには過大な評価や利用もあり得てしまう分野だ。脳研究の現場から、現時点での限界と、その「扱い方」を語る。 ◎脳の動きで、見た夢を再現!? 「他人の夢を見るなんて、そんなことできるわけがない!」 そう自信たっぷりに宣言するのは、あるTVドラマの主人公である「天才科学者」。 「こんなふうに、ちょっと訳知り顔の人が分かったふうに断定するのは止めてほしいんですよね」と渋い表情をするのが、今回紹介する神谷之康さんだ。「知識のある人、専門家やそこに近い存在である人ほど、このような物言いをする。これはタチが悪い
大量の情報を集約し高速で処理して活用するビッグデータ時代。膨大な情報を駆使して、経済や社会の活性化につなげようとする動きが活発だ。しかし、ここには個人の尊厳に関する重大なリスクがあることを忘れてはならない。ビッグデータの活用がもたらす思いもよらないリスクについて、憲法学を専門とする山本龍彦さんに聞いた。 ◎「プロファイリング」で何が起こっているのか? インターネットでのショッピングがもはや日常の一部となっている人も少なくないだろう。インターネットを通じて商品購入を行った世帯は2015年には27.1%となり、全世帯の1/4を超えている。2002年の5.3%からほぼ直線的に増加の一途をたどる。*1 インターネットで商品を検索・購入すると、検索画面上に絶えず関連商品のバナー広告が表示されるようになる。賃貸住宅を検索すると、それ以降は地域や価格帯に焦点が絞られた情報が提供され、スポーツ用品なら関連
貧困・格差、少子化、非正規労働者の増加、貧困の連鎖、超高齢社会。これらの問題は実はすべて関連する。だからこそ広い範囲での多様な対策が求められる。待ったなしの少子高齢社会をむかえ、対応が追いつかない現状とその対策について、解決の新たな切り口を聞いた。 ◎お金だけ出しても、貧困の連鎖は止められない 「経済的な理由で進学できないのなら奨学金などの制度を整えればいいという人がいます。でも、こんな発想はあまりに短絡的。お金を渡すだけで、貧困の連鎖が止まるはずがない」と、政府の対応が一面的であることを駒村さんは批判する。「経済的に困難で進学できないのであれば奨学金を出せばいいというのは、中学から私立の進学校に通い一流大学に進んだような官僚のアイデア。恵まれた環境で育ってきているために、現実に何が問題なのかを想像できていない。そのため、お金があれば学校に行くだろうと考えている」と、ばっさりと言い切った。
◎アイルランド人の98%は、日常的にアイルランド語を話さない アイルランドは、アイルランド島の約80%を占める共和国である。独立戦争を経て1949年に英国からの独立を果たしたが、北部の20%は英国への帰属を主張するプロテスタント系とアイルランドへの帰属を主張するカトリック系との間の激しい対立を経て英国領に残り、80%の地域がアイルランド共和国として独立国となった。 ところで、アイルランドではどんな言語が使われているのだろう。アイルランドは英語とは異なるケルト文化という文化圏にあり、アイルランド語という土地固有の言葉がある。しかし、明海大学でアイルランドの言語に関する研究を続けている嶋田珠巳さんは、「人口の98%が実質的な母語として英語で生活しているのです」と言う。なぜアイルランド語という国の言葉がありながら、アイルランドの人々は主たるコミュニケーション言語として英語を使っているのだろうか。
リフォーム減税を実施すれば、少子化をくい止めることができるだろうか? そんな漠然とした疑問について、クールに考える方法がある。計量社会学という方法で、社会の姿を読み解く立命館大学 筒井淳也教授に、社会の見方や施策に対する視点を聞いた。 ◎三世代同居は、出生率を上げるために有効な施策なのか? キッチン、トイレ、浴室のいずれか2つ以上の増設をするリフォームに対して、減税措置を行うという施策が提示されている。いわゆるリフォーム減税である。三世代同居を促すためのもので、キッチン等の設備を充実させそれぞれの世帯に独立した設備を整えるためのものだ。三世代が共に暮らせば子育てに対する負担が減り、希望する人数の子どもをもうけるようになるというシナリオが描かれている。 所得や住宅事情、また保育環境や労働事情により、夫婦が希望する数の子どもを出産できないというのが少子化の主な要因とされ、結果的に希望出生数を満
ひとたび集団感染が起こったら、多くの命が脅かされ、社会や歴史が変わることもある感染症。そのひとつ、エボラ出血熱のメカニズム解明に取り組む研究者がいる。アフリカの限られた地域での風土病であったエボラ出血熱は、いまや世界を脅かす疾病として知られるようになった。エボラウイルスの振る舞いを解き明かす研究に取り組む、南保明日香さんに聞いた。 ◎感染症との戦いは終わらない 人類は、紀元前の昔からさまざまな感染症と戦ってきた。原因もわからず、治療法も確立されていないだけではなく、公衆衛生の知識も乏しい時代。症状の激しさや死亡率の高さなどから恐れられ、また実際にも歴史を変えるほどの影響を及ぼしてきた。エジプトのミイラからもその痕跡が見つかったという天然痘は人類が根絶した唯一の感染症だが、高い感染力をもち、世界中で国や民族が滅ぶきっかけにもなってきた。 さまざまな感染症に対する病原体や対処法が分かってきたの
就職率100%。産業界は、なぜ高専の教育を評価するのか? 函館工業高等専門学校 副校長 小林淳哉 教授 「高専」のことをご存じだろうか? 実践的な教育を行い、卒業生は産業界からも高い評価を得ている高等専門学校。一般の高校や大学とは異なる教育システムを持つ高専は、何を目指し、どのような教育を行っているのか。 ◎“kosen”という独特のシステム 工学を学ぶ学生たちが、アイデアと技術を駆使してロボット開発に取り組む。それを自ら操作して目的の達成度を競う「ロボットコンテスト」。対戦形式の緊張感と学生たちのひたむきな姿が人気を呼び、「ロボコン」の愛称でも親しまれる。ここには、大学の工学部などと並んで高専の学生たちがたびたび登場する。実は、ものづくりの現場では、数多くの高専出身者が活躍しているのである。 高専とは高等専門学校のことで、中学校卒業後の15歳から20歳までの5年間、一貫教育を行う高等教育
人工知能の研究は、留まるところを知らないとまで言える様相だ。多くの仕事、作業が機械に代替されるという予測は、ますますリアリティを増してきたようである。今後、人工知能の活躍の範囲が広がっていくことは間違いないとしても、ある種の万能観を持って語られるムードには、違和感がつきまとう。機械によってできること、できないことが錯綜してはいないだろうか。できることはどこまでで、その先はなぜ難しいのだろうか。人工知能研究に深く関わる研究者が考える、分岐点と展望はどのようなものなのだろう。東京大学の原田達也教授に聞いた。 ◎「人工知能は、なんでもできるの?」という問い コンピュータが小説を書き、絵画を描き、音楽を作る。機械に取って代わられる職業がリストアップされ、雇用の減少を招くという予測が出る。自分の職業はどうなるのだろう? という思いでその表を見つめた人も少なくなかったはずだ。今年(2016年)3月には
地球の記録である、地質年代が書き換えられるかもしれない。大胆なアイデアと詳細な分析がもたらした新たな知見の根拠は、「地磁気逆転」という地球の壮大な営みが残してくれた地層の中にある。千葉県のある渓谷で見つけた地層とは? 地磁気逆転という現象、そしてそのときに起こる物理環境の変化とともに、地質年代特定の意味について、国立極地研究所の菅沼悠介さんに聞いた。 ◎地層というメディアを読み解き、意味をつける仕事 過去に起こったことを理解しようとするとき、時代をいくつかの共通する出来事で区切って整理する。日本の歴史であれば、縄文時代、弥生時代といったような環境や人の営みの変化、時代が下ると政治体制をもって「時代」として認知する。地球の過去の記録をひもとく際も同じように「時代の区分」を行う。だがそれは、当然のことながら文明が誕生する前の膨大な時間を扱うもの。記録があろうはずもない時代を伝えるメディアはなに
「近大マグロ」に続いて登場した「ウナギ味のナマズ」とはいったいどのようなものなのだろうか。食味をよくするための工夫、既存のウナギ養殖設備で生産する技術、そして販路の開拓。経済学の知見で市場動向を予測し、新しい魚でマーケットを作る、近畿大学 有路昌彦教授に、「ウナギ味のナマズ」の意義と可能性を聞いた。 ◎人々が食べたいのは、本当に「ウナギ」なのだろうか? 「どうすれば、日本の水産業は持続可能となり得るのか。それを、言葉だけではなく数字で明らかにして、実践できるようにするのが博士論文のテーマでした」と語るのが、「ウナギ味のナマズ」の仕掛人である有路昌彦さんだ。近畿大学に着任して8年目。水産経済学を教える研究者であり、3つの会社の役員、そして養殖魚を扱う会社の社長でもある。 ここ数年、ウナギの流通量は減少し、価格は高騰している。ウナギの稚魚であるシラスウナギの個体数が激減し供給量が少なくなってい
単細胞生物である粘菌が、迷路を解く。そして、粘菌が作るネットワークには、実際の鉄道網との共通点が見いだせる。そんな研究が、イグ・ノーベル賞を受賞した。多くの人が「おもしろい」というが、その本当のおもしろさとはいったい何なのだろうか。中垣俊之さんは、粘菌を通してどんな世界を見つめ、何を表現しようとしているのか。 ◎人との「おもしろさ」の共有は、とても難しい イグ・ノーベル賞はノーベル賞のパロディといわれ、毎年ユニークで風変わりな研究を行った研究者に与えられる。「人を笑わせ、次に考えさせる研究成果を称えるものであり、普通でないことを褒め称え、創造的であることに栄誉を与え、科学、医学、技術における人びとの関心を刺激すること」が賞の精神だという。その言葉どおり、歴代の受賞テーマはどれもクスッと笑いが出るとともに、「こんなに身近に、そんなに面白い視点があったのか」と思えるものだ。本家のノーベル賞がそ
東大に、立ち見学生が出るほどの熱気に満ちた授業があるという。しかも文科系の学部生向け数学だ。こんなにも学生を惹きつけるものは何なのだろう? その授業とはどんなものか。講義を行う小林俊行教授に、数学を通して伝えたいものとは何かを聞いた。 ◎準備に授業の10倍の時間をかける 小林俊行さん。根源的な発見や新理論の創始などで、後世に残る重要な業績を挙げ、さらに今後も学問の最先端で活躍し続けることが期待される国際的に著名な研究者に授与される「フンボルト賞」を受賞した数学者である。2015年に国際学術誌に出版した論文12本は延べ300ページを超え、国際会議の招待講演は9回を数える。毎年このペースで成果を挙げながら、学部生の授業にも力を入れる。現在は、大学の制度上の調整により履修者数が制限されているものの、数年前までは立ち見や床座りの学生で、300人収容の大教室が溢れるような熱気につつまれる光景も頻繁に
東北地方太平洋沖地震、そして東京電力福島第一原子力発電所の事故から5年。災害研究・防災研究はどうあるべきなのだろうか? そして原子力災害にどう備えるべきなのか。原子力災害が引き起こす社会への影響を研究するのが、関谷直也東京大学特任准教授だ。原発事故時の避難実態、福島県内外の意識の差、産業や流通の変化、風評被害の実態について幅広く扱う、防災研究者である。 ◎福島県内と県外の人たちの、温度差 東日本大震災、東北地方太平洋沖地震と東京電力福島第一原子力発電所事故は、人々の津波避難、広域避難、行政の対応などさまざまな問題を浮き彫りにしました。被災地から離れたところでも、東京など都市部での物不足や帰宅困難、計画停電、自粛など、私たちの社会が経験したことのない事態がつぎつぎに起こったことは、多くの方が記憶していることと思います。 地震や津波、そして原子力災害によって何が起こるのか、その背景にはどんな課
人の何倍もの力を持ち、瞬時に計算をこなして、高速で作動し、求められた通りの成果を出す。どこまでも正確に、どこまでも緻密に、どこまでも人間に近く……。そんな、ロボットのイメージとは正反対のロボットたちが「いる」。たどたどしく話し思わず助けてあげたくなる、役に立たないのに近くにいないとなんだか寂しい。そんな「弱いロボット」に取り組んでいるのは、豊橋技術科学大学の岡田美智男教授だ。ロボットとはなんなのか? 人はロボットと関わることでなにを得ようとしているのか? researchmap開発者の新井紀子教授が、弱いロボットの奥底にある意味を探る。 出迎えてくれたのは、岡田教授の研究室で生み出されたロボットたちだ。ゆらゆらとおぼつかない動きで近づいてくる〈ゴミ箱ロボット〉は、ゴミを見つけて近寄るものの拾うことはできない。人に近づいてペコと頭を下げるしぐさをする。ゴミを拾って入れてもらうと、またペコリ。
教育学部における、教員養成を目的としない課程。その再編、見直しが迫られている。教員免許取得を目指さない教育学部の存在は、社会の中でどのような役割を担ってきたのだろうか。そして廃止は、社会にどのような影響をもたらすのだろうか。 教育学部の機能を概観し、これまで果たしてきた役割、そしてこれからの社会で果たす役割について勝野正章教授に聞いた。 教育学部には、旧師範学校の流れをくむ教員養成を目的としたコースのほかに、教員免許の取得を卒業要件としない、いわゆる「ゼロ免課程」と呼ばれる課程があります。ゼロ免課程を卒業した人は、地元の一般の企業などに就職して会社員になるといった進路を選択しています。今年6月、文部科学省は人文社会系学部、教育学部の廃止を盛り込んだ通知を出しました*。この中では、ゼロ免課程を廃止することが一つの柱となっています。この背景にあるのは子どもの数の減少ですが、本音は国の財政的な負
国立大学はいま、人文社会科学系の学部・大学院の廃止や他分野への転換を含む大規模な組織改編の時期を迎えている。……そのような中、「基本的には積極的に人文学に意義を出していくしかない」というのは、東欧・ロシアにおけるシオニズム(19世紀末に始まった、ユダヤ人の民族的拠点をパレスチナに作ろうとする思想・運動)を研究する埼玉大学鶴見太郎准教授。数カ国語を駆使して文献を読み込み、「パレスチナ問題になんとか突破口を見つけたい」という強い動機と交叉させる。政治的な偏りに組みしない、社会学的あるいはより広く人文学的なアプローチを持つ日本の文系研究者として「国際的な研究コミュニティをつなぐ役割も果たしていきたい」という鶴見准教授に、埼玉大学の研究室にてお話をうかがった。 大学生の頃もイスラム圏の紛争が活発で、なぜああいう紛争が起きているのか、どうしてああいうことになったのかという関心が最初にありました。パレ
2015年4月から国立研究開発法人となった情報通信研究機構内にある、未来ICT研究所 量子ICT研究室。室長を務める佐々木雅英博士は、量子鍵配送(QKD, quantum key distribution)の研究開発を中心に、長年にわたり次世代の通信技術に関わる研究グループを率いてきた。量子鍵配送とは、1984年のベネット(Charles Bennett)とブラサール(Gilles Brassard)に由来する「BB84」をはじめ、理論的に絶対安全であることが証明された鍵配送方式である。2013年のD-Waveマシン報道以来世界的な注目を集めている量子情報という分野のなかでも、最も早く実現化が期待されてきた量子通信技術だ。実際の回線を利用したフィールド実験を経て、いよいよ実現化のための最終的なテストが進められつつある東京・小金井の研究室を訪ねた。 われわれの研究機構では、情報通信技術に関わ
家族の食卓を定点観測ポイントに選び、18年にわたる極めて詳細な記録・分析を行ってきた岩村暢子氏。食卓と家族にどんな変化が起こってきたのか、調査に裏づけられた歴史的洞察を描く著作でも知られ、最新刊『日本人には二種類いる』では自身の調査データを使わず、公的なオープンデータだけでその変化を描いた。社会調査が定量的方法へと決定的な舵を切る70年代後半から80年代の大学で心理学を学び、以来、対象の本質に迫るために編み出した独自の方法で「定性調査」にこだわる。「この現実をいま調査せずして、いつ調査するのか?」──情熱に導かれた、その軌跡をおうかがいした。 家族の食卓の調査をしようと思ったのは、広告会社時代、全自動洗濯機の新商品を担当したのがきっかけでした。メーカーが掲げる「自由」というコンセプトワードを生活者がどう受け止めるかを調べたら、ある年代以上では「自分がやりたいことを、誰にも妨げられず、好きに
欧米で長い間タブーであった”ヒトを扱う自然科学”として、今西錦司先生以来の豊かな伝統を持つ京都大学の霊長類研究。なかでも山極壽一教授は、そのほとんどが中央アフリカの紛争地帯に生息するゴリラに注目し、ゴリラ研究の第一人者として広く知られる。この分野では、ヒトゲノムの解明をはじめ遺伝子的な知識が整備されてきたことなどを背景に、欧米でもこれまでのタブーを脱してヒト、ゴリラ、チンパンジーをひとつの視野に捉え、人類学、生物学、社会学などさまざまな分野間の対話が拡がりつつあるという。2014年秋からは総長として京都大学を率いる山極教授に、これまでの取り組みや、将来へ向けた研究の意義、魅力などについておうかがいした。 よく「われわれはゴリラといっしょ」と言っているのですが、なぜかというと、ゴリラ、オランウータン、チンパンジーと人間は「ヒト科」という1つのグループに属しているからなんですね。ヒト科、つまり
「年越し派遣村」”村長”をはじめ、社会運動家として知られる湯浅誠氏。これまでの活動を維持しつつ、2014年度からは法政大学現代福祉学部で、週2回の授業を通じて学生の「教育」に取り組む。「まだ半年のつきあい」とは言うものの、学生たちの間では「一風変わった先生の一風変わった授業」と、すでに話題を集めているようだ。「人気の授業」はどんな授業なのか?──法政大学多摩キャンパス(東京都町田市)に、湯浅誠教授を訪ねた。 私も45歳になりましたので、もう若者という存在を自分のことのように語ることはできません(笑)。そんな意味で、今の若い人たちの感覚とか、一般的な日本の若者の考えとしてどうなのか、半分はフィールドワークみたいなつもりで、このポジションをお引き受けしたんです。まだ半年のつきあいですけれども、彼らはたとえばNPOに集まってくるボランティアの学生たちよりは、世論一般に近い。そんな集団にどうメッセ
IoT(Internet of Things)と言われる現代、コンピュータとリアルワールドとの接点から、今までにない発想の「ものづくり」が生まれるチャンスがある──”ユビキタス”の視点から、イノベーションに、魅力的な技術の種を撒く研究を進める、東京大学大学院情報理工学系研究科 川原圭博准教授。家庭用インクジェットプリンタを使って安く手軽に基板をプリントできる新方式や、これを農業に活用した土に還るセンサー、さらには電磁波が行き交う都市環境そのものを電力資源と捉え、うまく電気を取りだそうという「エナジー・ハーベスティング」等の開発を手がける。初秋の本郷に、川原准教授を訪ねた。 私の専門である「ユビキタス・コンピューティング」とは、そもそも1990年頃にアメリカのマーク・ワイザー(Mark Weiser)が考えたコンセプトです。1人100台ぐらいのコンピュータに支えられて生きるとしたら、それはど
「早く結婚したほうがいい」──都議会のセクハラヤジが大きな社会問題になったばかりだが、日本に「セクハラ」という語が登場して、25年になるという。日本での最初の裁判からこの問題に関わり、近著『部長、その恋愛はセクハラです! 』では、セクハラとは何かを改めて広く社会に向けて啓発する、大阪大学大学院 人間科学研究科(社会学)牟田和恵教授を訪ねた。「セクハラ」という問いを立てることで、何が見えてくるのか? 社会学のなかでもジェンダー問題を専門とする牟田教授に、お話をうかがった。 セクハラの問題に着目するようになったのは、研究者として初めて佐賀大学に着任した時に、ちょうど隣の福岡県でセクシャルハラスメントに関する最初の提訴があったのがきっかけです。これは原告個人の問題ではなく働く女性に共通する人権問題だから社会的に訴えていこうというのが、担当弁護士たちの方針でした。女性の労働に関しては、それまでにも
MOOCs(Massive Open Online Course、ムーク)元年とも呼ばれた2012年以来、世界の高等教育の大きな変化が起こりつつある。この世界的な流れを受けて、2014年4月、日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)による日本版MOOCもスタート。コンピュータとインターネットという、まさにグローバルな技術的発達が生み出した変化は、大学や研究機関における伝統ある高等教育にどのような影響を与えていくと考えられるだろうか。ちょうど第50回目にあたるresearchmapつながるコンテンツ、今回はこのMOOCsを巡って、大学評価・学位授与機構 土屋俊教授にお話をうかがった。 アメリカ西海岸を本拠とするUDACITYとCoursera、東海岸のedXという3つのオンラインコース・プラットフォームがスタートし、大学レベルの講義を配信するしくみが"MOOC"という新しい名前とと
佐渡島を横たえた日本海の上を、ゆっくりと太陽が横切っていく──新潟大学教育学部の研究室からの風景だ。東京では決して見られない広い空を仰ぎつつ、「インターネットの発達のおかげで、東京に居ないデメリットは減ってきている」と古田徹也准教授は言う。主たる関心を注ぐルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン(1889 - 1951)を読み、書き、そして一般教養過程をはじめとする講義を受け持って、学生と対話する。そのような活動のさなかからうまれた『それは私がしたことなのか: 行為の哲学入門』を巡りつつ、お話をうかがった。 若い時に多くの人が、たとえば「なぜ世界はあるんだろう?」とか、「自分が見ているこの色は、他人が見ているのとほんとうに同じ色なんだろうか?」といった疑問を持ったことがあると思います。実際、何度か授業で学生にアンケートをとってみたことがあるんですが、早い人では小学生のときにそういう疑問を持った体
脳の発達・発生にかかわる遺伝子「Pax6」などの研究で知られる東北大学の大隅典子教授。「スピード・変化・自由」という3つの言葉を座右の銘として研究に邁進するかたわら、男女共同参画や、理系女子すなわち「リケジョ」育成に力を注ぐ。特に今年は日本で初めて東北大学に女子学生が誕生してから100年という記念の年にあたり、シンポジウムや展示会などのイベントも盛りだくさんとのこと。そこで今回は男女共同参画に関わる取り組みを中心に、大隅教授にお伺いした。 受精卵から赤ちゃんができあがってくるときに、脳がゆっくりと時間をかけてつくられてくるわけですけれども、それがどんなふうなしくみなのか、遺伝的・環境的の両方の側面から知りたいと考えています。また脳の発生・発達において、ほんのちょっとだけボタンが掛け違ってしまったというような非常に軽微な異常が、大人になってから心の病が発症しやすくなる前提条件になっているので
この夏、東京・上野公園にある東京藝術大学美術館で「夏目漱石の美術世界展」のキュレーションを手がけた、古田亮准教授。映画における監督のような役割を果たす「キュレーター」として、専門の近代日本美術史という視座から、宗達を祖とするこれまでの「琳派」の定義変更を迫る2004年「琳派 RIMPA」展をはじめ、数々の話題の展覧会を企画・実現。そのかたわら第32回サントリー学芸賞を受賞した著作『俵屋宗達ー琳派の祖の真実ー』も話題だ。古典美術と私たち、研究と展覧会、絵画と音楽など、さまざまな「つながる」を切り口に、展覧会や本を巡るお話をうかがった。 展覧会はふつう、一般の人たちにどう見てもらうかを意図すると同時に、専門の方々へのある種の発信も行っています。やはりその両方がなければ、展覧会は成立しないだろうと思うんですね。何をテーマに選ぶかは、もちろん自分がおもしろいと思うからなんだけれども、企画する最初の
法の一分野である「憲法学」とはどのような学問なのだろうか?──そこで今回は、フランス憲法学を礎に、憲法から統治機構のあり方を考えるというテーマで研究を続ける、一橋大学法学研究科 只野雅人教授にお話をお伺いした。折しも議論の生じている憲法改正は、憲法学の立場からどのように見ることができるのか。東京・国立にある研究室を訪ねた。 憲法は他の法分野と比べても、条文そのものが簡潔です。他の法律との関係もあるし、テキストだけ見ていてもうまく実質がつかめない面があって、いろいろなところから補助線をおろしてくる必要があると思うんですね。たとえば人権の問題を研究している場合には政治哲学の議論を踏まえて一般的な理論を作り、それに基づいて条文を解釈したり、あるいは判例分析を通じて理論を作り上げるといったように、いろんなアプローチのしかたがある。そしてそれこそが、憲法学のおもしろさだと思います。 私の場合は憲法が
東京大学大学院 情報理工学系研究科 石川・奥研究室でビジョンアーキテクチャ部門のグループリーダを務める渡辺義浩助教。専門である「計測工学」を礎に、高速で移動する物体の三次元形状をリアルタイムで取得・解析する独自の技術で、ロボティクス、検査、映像メディア、ヒューマンインタフェース、デジタルアーカイブなどさまざまな分野への応用を目指す。そんなシステムのひとつ、ぱらぱらめくりでブックスキャンができる「Book Flipping Scanning」が今、注目を集めている。海外メディアがウェブにアップした動画は、視聴数なんと60万回超。さっそく、そのブックスキャンがある実験室を訪ねた。 1秒間に1,000回という、人間の目には見えない超高速なセンシングを軸にして応用技術を開発しています。センシングというのは、世の中の現象を数量に変換する技術ですが、それをいかに速くやるかがテーマですね。人間の目が見る
人はどうことばを処理しているかという情報処理的な視点と、ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)の生成文法というインパクトなどから、1950〜60年代以来、新たな知的潮流を形作ってきた言語学。そのメッカであるMITなどで蓄積した基礎研究の知見を活かし、10年ほど前から言語教育、特に英語教育について意識的に発言し始めたという大津由紀雄教授。4月からは明海大学教授として「言語学ではほとんどの問題にけりがついていない」と、ことばの探求のおもしろさを伝授する。東京・三田にある慶應義塾大学 言語文化研究所に、大津由紀雄教授を訪ねた。 人間の子どもは生まれてから徐々に母語を獲得していきますね。私は、心的なメカニズムと、子どもが外部から取り込む言語経験とが相互作用し、母語が出来上がる過程を明らかにしたいと考えています。ことばはヒトしか身につけることができない。同時に、ヒトなら誰でも母語を身につけ
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