サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
インタビュー
natgeo.nikkeibp.co.jp
人間と食塩との関係は複雑だ。私たちの体が機能するためには少量の食塩が必要だが、ほとんどの人は1日の推奨摂取量をはるかに超えた量を摂取している。(Photograph by Jozef Vaclavik, Getty Images) 食塩は、愛すべき、どこにでもある、なくてはならない調味料だ。必要不可欠な栄養素でありながら、取りすぎると深刻な病気を引き起こす。しかし、どれくらいの量を取れば過剰なのかについては、科学者の間でも意見が分かれている。 健康な成人の食塩摂取量について、世界保健機関(WHO)は1日5グラム未満、米国心臓協会(AHA)は1日5.8グラム以下に抑えるよう勧めている。さらにAHAは、高血圧の人には、その約3分の2にあたる3.8グラム以下を推奨している(編注:厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では男性は7.5グラム未満、女性は6.5グラム未満、高血圧および慢
中村教授ら気象の専門家で構成する同検討会によると、2月に入ると上旬と中旬後半から下旬前半にかけて日本付近に強い寒気が流れ込み、北日本から西日本の日本海側を中心に各地で大雪となった。累積降雪量は2月に急速に増加し、全国336の気象台などのうち9地点で年最深積雪記録を更新した。 特に北海道帯広市では2月4日午前9時までの12時間に120センチと国内の観測史上最多の降雪量を記録した。また、2月中旬後半から下旬前半の寒波に伴って、秋田県鷹巣(北秋田市)では2月21日までの72時間に91センチの降雪量を記録した。 こうした大雪をもたらした大気の流れの特徴は、今冬を通じて日本付近で亜寒帯の偏西風と亜熱帯の偏西風がどちらも南に蛇行したこと。そして冬型の気圧配置が持続しやすく、2月上旬と中旬後半から下旬前半にかけて2つの偏西風の南への蛇行が特に強まり、強い寒気が日本付近に南下した。上空約1500メートルで
水深230メートル近い海底で発見された、巨大なカイメンとイソギンチャクの集団。ここはつい最近まで、南極のジョージ6世棚氷の下に隠れていた。 (Photograph by ROV SuBastian / Schmidt Ocean Institute) 1月13日、南極大陸の広大なジョージ6世棚氷から、屋久島ほどの広さの氷山が分離したとき、近くに居合わせた調査船はすぐに現場に向かった。これまで誰も見たことのない、むき出しになった棚氷の下の海底を調査するためだ。ちょうど、世界最大の岩を動かして、その下に潜んでいた生きものたちを観察するように。(参考記事:「南極で巨大氷山の誕生を目撃、山手線内側のほぼ倍」) 太陽の光が降り注ぐ浅瀬から、漆黒の深海、時には海底火山まで、海のなかにはあらゆるところに生命が存在している。米シュミット海洋研究所の調査船ファルコー2号に乗っていた調査団は、氷の下にもきっと
72時間にわたって100万ボルトの電流を絶え間なく浴び続けるというスタントに挑むにあたり、防護スーツを身にまとう奇術師のデビッド・ブレイン氏。こうした種類の痛みを経験する人はほとんどいないが、われわれの多くは日々、何らかの痛みに対処している。(Photograph by Michael Kirby Smith, The New York Times/Redux) 痛みはおそらく、進化上の利点として生まれた現象ではないかと考えられる。痛みは生物が怪我に素早く反応して危険から逃れるうえで役立ち、また将来的に同じような危険を避けることを教えてくれる。現代では、ほとんどの人が多大な努力を払ってまで痛みを避けようとする。しかし一部には、痛みの感覚を克服することに人生を捧げ、一般的な肉体の限界を超えて心身を追い込み、危険かつ恐ろしいほどの偉業を成し遂げる人もいる。 奇術師のように火を使って曲芸をしたり
スーダン、ヌリ遺跡。この王家の墓地に最初に作られた墓は、紀元前7世紀に第25王朝のファラオとしてエジプトを治めたヌビア国王タハルカのものだった。(Design Pics/Alamy/ACI) エジプトの南、ナイル川が蛇行する広大なスーダンの砂漠地帯は、その昔ヌビアと呼ばれていた。古代より、そのヌビアの運命はナイル川にある6カ所の急湍(きゅうたん、流れの速い浅瀬のこと)に大きく影響されてきた。ごつごつとした川底のために急湍の水は渦を巻いて激しく流れ、船での航行を困難にする。長い歴史のなかでヌビアが強力な北の隣国エジプトから独立を保つことができたのはそのためだ。(参考記事:「実はエジプトより多い、スーダンの知られざるピラミッドを巡る 写真13点」) しかし紀元前8世紀ごろ、ヌビア人の王国クシュがエジプトをしばらく支配した時期があった。そして古代エジプトの慣習を復活させ、その後何世紀にもわたって
拡散されたブロブフィッシュの写真。ただ海中では、その姿はまったく異なる。深海から海面へと引き上げられる際に、ブロブフィッシュの皮膚は損傷を受ける。(PHOTOGRAPH BY KERRYN PARKINSON/NORFANZ/CATERS NEWS VIA ZUMA PRESS) 英国の「醜い動物保護協会」によって、ブロブフィッシュが世界一醜い動物に選ばれたのは2013年のことだった。「パンダのように愛らしい」とは言えない生きものにも注目を集めようという活動の一環だ。まさにブロブフィッシュはぴったりだった。多くの人が、溶けているように見える――そして、すでに死んでいる――拡散されたブロブフィッシュの写真しか見たことがなかったからだ。(参考記事:「世界で最も醜い犬は品種改良の産物」) 不思議な巡り合わせがあるものだ。2025年3月、ブロブフィッシュは、生物多様性を奨励するニュージーランドのコ
コンゴ民主共和国のヤンガンビ調査基地で気象データを継続的に記録している地元観測員の一人、ミシェル・アチャンガ・ボンゴムベ。(PHOTOGRAPH BY NICHOLE SOBECKI) 長年にわたって気候変動の研究が進んでいなかったアフリカ中部の広大な多雨林に、この地域で育った新世代の気候科学者たちが注目している。地球を守る方法を探るうえで、彼らの知見は従来の見方を根底から変えつつある。 密林の中で薄れゆく午後の日差しが鋼鉄製の塔に反射して、かすかな光を放つ。 その塔は高さ55メートルで、木々よりも高くそびえ、さまざまな観測機器が取りつけられている。生物学者のファブリス・キムベサは安全ベルトを装着すると、細い金属製のはしごをつかみ、塔のてっぺんにある小さな足場を目指して素早く登り始めた。私はその後に続いた。 この塔はアフリカ中部のコンゴ盆地に初めて設置された「渦相関法フラックス観測タワー」
デュオニクス・ツクトバアタリ(Duonychus tsogtbaatari)の復元図。他のテリジノサウルス類と異なり、指が2本しかなかった。(ILLUSTRATION BY MASATO HATTORI) テリジノサウルス類は、最も変わった恐竜のひとつだ。肉食の祖先から進化した植物食または雑食性の恐竜で、体は羽毛に覆われ、キリンのような長い首には小さな頭があり、その口には小さな歯が生えていた。膨らんだお腹は食べた植物を発酵させる樽のような役割を果たし、手には巨大なかぎ爪が生えていた種も存在した。この体つきとかぎ爪はナマケモノと比較されることもあり、体高が4メートル、体重が5トンを超える種もいた。(参考記事:「新種の恐竜、鋭い鉤ツメに太鼓腹」) そんなテリジノサウルス類でも特に変わった新種が3月25日付けで学術誌「iScience」で発表された。何がそんなに変わっていたのか。指が1本足りなか
オメガ3脂肪酸は必須栄養素であり、腸に数々の有益な効果をもたらすほか、心血管疾患や脳卒中のリスクを下げる。しかし研究によると、魚油などの一般的なオメガ3のサプリメントは、以前考えられていたほど効果的ではない可能性あるという。(Photograph by MirageC, Getty Images) オメガ3脂肪酸(オメガ3)がバランスのとれた食事の中で特に重要な要素でありえることは、科学的に何度も示されてきた。オメガ3が血圧を下げ、免疫を改善し、関節の炎症を抑え、精神的な健康をサポートし、さらには心血管疾患や脳卒中のリスクを下げる可能性などを、数々の研究が示している。 そのため多くの人がサプリメントを利用しており、調査会社IMARCによると、世界のオメガ3サプリメント市場は84億ドル(約1兆2000億円)という驚異的な規模に達している。 しかし専門家によると、オメガ3のサプリメントは特定の
アルツハイマー病は認知症の一般的な原因だ。このCGは、アルツハイマー病患者の脳(左)と正常な脳(右)の断面を比較したもので、アルツハイマー病患者の脳が激しく萎縮しているのがわかる。(Photograph by Alfred Pasieka, Science Photo Library) 2025年1月に医学誌「ネイチャー・メディシン」に掲載された研究報告は、米国で1年間に新たに認知症を発症する人数が2060年までに現在の2倍の100万人に増え、55歳以上の人が生涯に認知症を発症するリスクも従来の見積もりの2倍にあたる42%に増加すると推定している(編注:2020年に医学誌「Neurology」に発表された研究によると、日本人高齢者(60歳以上)の認知症の生涯リスクは55%)。 数字を見て怖くなった人もいるかもしれないが、この結果は、人々が認知症になりやすくなったことを意味しているのではない
新たな研究によって、ハイイロアザラシ(Halichoerus grypus)が血液中の酸素量を感知でき、それに潜る行動を変えていることが示唆された。(PHOTOGRAPH BY GREG LECOEUR, NAT GEO IMAGE COLLECTION) アザラシは、人間にはできないさまざまなことができる。英国のスコットランドで行われた巧妙な実験によって、それがまたひとつ明らかになった。2025年3月20日付けで学術誌「サイエンス」に発表された論文によると、アザラシは血液中の酸素の量を感知して、潜る行動を変えられるという。 すべての動物は呼吸する。呼吸によって取り入れた空気から酸素を取り出し、吐き出す空気とともに血液中の二酸化炭素(CO2)を放出する。しかし、ほとんどの哺乳類は、組織に供給される血液中の酸素の濃度を感知できず、CO2濃度が上昇すると、呼吸が必要だという合図が送られるように
鮮やかな色の野菜や果物:これらの食品には、酸化ストレスを減らし、炎症と闘うのに役立つさまざまな抗酸化物質が含まれていると、米アメリカン大学の栄養神経科学者キャスリーン・ホルトン氏は言う。 特にベリー類、柑橘類、葉物野菜(ほうれん草、ケール、ルッコラなど)を多く摂取することには、「楽観的な気持ちと自己効力感を高め」、心理的な苦痛を減らし、うつ症状を防ぐ効果があることがわかっている。 赤キャベツ、ブロッコリー、パプリカなどの色の濃い野菜にも、抗酸化物質のほか、必須ビタミンやミネラルが多く含まれている。こうしたカラフルな野菜を調理する際には、心臓と脳によい効果があるとされるオリーブオイルを使うのがおすすめだ。(参考記事:「皮を食べないと大損する野菜や果物、キウイやニンジン、柑橘類も」) 豆類:レンズ豆をはじめとする豆類は、ビタミンB群(葉酸など)、ミネラル(カリウム、マグネシウム、鉄など)、抗酸
腸脳相関(腸と脳の双方向的な関連)と腸内のマイクロバイオーム(微生物叢)は、これらのプロセスの多くに影響を及ぼす。「マイクロバイオームは精神衛生にとって非常に重要です。体内のセロトニンの90%は腸で作られるからです」と、米エイメン・クリニックの創設者で精神科医のダニエル・エイメン氏は言う。 マイクロバイオームはまた、ストレス反応やうつ病の症状にも関連がある。 「慢性的なストレスにさらされると、腸内のマイクロバイオームの不調や変化、腸管バリアの機能不全が起こり、それが炎症反応に影響を及ぼします」と、カナダ、オタワ大学栄養科学科および精神衛生研究所の博士研究員キャロライン・ウォレス氏は言う。「そうした炎症反応は、感情やメンタルヘルスの変化を引き起こす可能性があります」(参考記事:「なぜ女性の方が過敏性腸症候群になりやすいのか、男性の約2倍」) さらには、食事は脳由来神経栄養因子(BDNF)のレ
キムチなどの発酵野菜は、マイクロバイオームを改善して気分を向上させると考えられている。発酵野菜は腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌の影響を打ち消すことによって有益な効果をもたらす。(Photograph by Oscar Wong, Getty) 「人は食べたものでできている」という格言を聞いたことがある人は多いだろう。この言葉はどうやら、体の健康だけでなく、脳の健康にも当てはまるらしいことがわかってきた。適切な食品を摂取し、不適切な食品を避ければ、気分や精神的な健康が改善される可能性があるという主張を裏付ける研究は、ますます増えつつある。 「心臓病や糖尿病などで食事が重要な役割を果たしていることが常識とされているのと同じように、脳の機能や気分、そして精神疾患にも、食事の選択が影響を及ぼすことがわかってきたのです」と語るのは、オーストラリア、ディーキン大学フード&ムードセンターの副所長で、国際栄
荒涼という言葉はこの場所のために作られたのかと思うような景色が広がるアルゼンチン、リオネグロ州のソムンクラ高原で、獣医のヘラルド・ロドリゲス氏は静かに草を食む一頭のウマを見つけた。乾ききったこんな陸の孤島にウマがいるだけでも奇妙なうえ、氏がそれまでに見たどのウマとも違っていた。巻き毛だったのだ。 当初ロドリゲス氏は、そのウマは病気になっているか、汗をかいているだけだと考えた。しかし、ガウチョ(南米のカウボーイ)が驚くべきことを教えてくれた。干ばつや火山の噴火などで数が減る前は、このような巻き毛のウマがよく見られたという。(参考記事:「時代を先取り?くるくる巻き毛の動物たち 4選」) このウマに夢中になったロドリゲス氏は、売ろうかと言われてイエスと即答した。妻のアンドレア・セデ氏も同じで、すぐにこのウマと心を通わせた。「この子と会ったときのことは一生忘れません。ずっと一緒にいたかのように、私
米やジャガイモのような炭水化物を調理、冷凍、再加熱すると、炭水化物が変化して、血糖値のコントロールを助ける難消化性でんぷんが作られる。(Photograph by Elzauer, Getty) 炭水化物を多く含んだ昼食をとったあと、午後の半ばにふいにエネルギー切れを感じたり、白米やジャガイモを食べると、いつもより早くお腹がすくように感じたりすることはないだろうか。そうした現象には理由がある。 白いパン、ジャガイモ、白米といったGI値(食後の血糖値の上昇度を示す指標)の高い炭水化物は、急速にブドウ糖(グルコース)に分解されて血糖値の急上昇を引き起こし、それが活力の急激な上昇とその後の急降下につながる。GI値が高い炭水化物を知っておけば血糖値のコントロールがしやすくなるが、ほかにも手がある。冷凍だ。 「米、パスタ、ジャガイモなどの食品は、調理してから冷凍し、その後に再加熱すると、でんぷんの構
17世紀の相撲遊楽図屏風。織田信長に仕えた弥助を描いたとされる。激動の時代の日本史に名を刻む弥助のユニークな物語は人々の興味を引きつけてやまない。(PHOTOGRAPH BY THE PICTURE ART COLLECTION / ALAMY STOCK PHOTO) およそ700年間にわたり、侍は日本の歴史を形作ってきた。彼らの功績や冒険は今も語り継がれている。中でももっとも興味深く、また謎に満ちている一人が弥助だろう。16世紀にアフリカから日本にやって来て織田信長に仕えた人物だ。 そして今、弥助は日本を舞台にした人気ゲームシリーズ「アサシン クリード シャドウズ」のキャラクターになった。これまでにほかのゲームやアニメのキャラクターのモチーフにもなっているが、そもそも弥助とは何者だったのだろうか。この機会に彼について分かっていることをおさらいしてみよう。(参考記事:「中世の暗殺教団「ア
2013年のコンクラーベでは、5回の投票の結果、教皇フランシスコが選出された。コンクラーベの歴史は13世紀まで、教皇自体の歴史はイエス・キリストの時代までさかのぼることができる。(Photograph by Peter Macdiarmid, Getty Images) 2013年にローマ教皇ベネディクト16世が退位したとき、「地上における次の神の代理人」がカトリック信者たちに明かされるまで、2週間という長い時間が必要だった。(参考記事:「バチカンは変わるか? ローマ教皇の挑戦」) バチカンのサン・ピエトロ広場に集まった人々は、投票用紙を燃やす白い煙を目にすると、歓喜の声を上げた。白い煙は枢機卿(すうききょう)団の投票によって新教皇が選ばれた証であり、複雑な教皇の選出手続きの最後の手順だ。こういった伝統は、イエス・キリストの時代までさかのぼるとも言われている。 3月20日公開の映画『教皇選
謎の多い古代文明のあったエルサルバドルのサン・イシドロ遺跡から、5体の「操り人形」を考古学者が発掘した。(PHOTOGRAPH COURTESY JULIA PRZEDWOJEWSKA-SZYMAŃSKA, PASI) エルサルバドルのサン・イシドロ遺跡で、何千年も前に観客にメッセージを送っていた「操り人形」を考古学者が発掘した。2025年3月5日付けの学術誌「Antiquity」に発表された論文によると、人形のいくつかは頭部を動かすことができ、表情も豊かだ。そこにはこの人形を作った謎の人々につながるヒントがある可能性がある。 「本当に見事です」と、ポーランド、ワルシャワ大学の考古学者で、今回の論文の筆頭著者である、ヤン・シマンスキ氏は言う。人形の大きい方の3体は、身長約30センチメートルで、服も髪もない。 2022年、シマンスキ氏のチームは、サン・イシドロにある、サトウキビ畑やコーヒー畑
このイラストに描かれたメガロドンの姿は、正しくない可能性がある。360万年前に絶滅したメガロドンは、現代のホホジロザメと似ていると考えられてきた。しかし、新たな研究では、メガロドンはホホジロザメよりもスリムで細長い体形をしていたことが示唆されている。(Illustration by Jose Antonio Peñas, Science Photo Library) 新たな研究によると、史上最大のサメであるメガロドンは、これまで考えられていたよりも長く、ほっそりとしていた可能性が高いという。米デポール大学の古脊椎動物学者、島田賢舟氏をはじめとする24人以上の専門家が2025年3月10日に学術誌「Palaeontologia Electronica」に発表した論文は、胸板が分厚いホホジロザメと比べると、メガロドンはかなり細長いボディプラン(体の基本的な特徴)を持っていたと提唱している。 「こ
13年以上にわたり土星を観測したNASAの探査機カッシーニが撮影した、土星の自然色画像。(Composite Photograph by NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute) 近年、土星と木星は月の数で競争を繰り広げてきた。2019年には土星の新しい衛星が20個見つかって合計82個となり、首位に立った。2023年に木星が92個に増やして首位に返り咲くと、同年、土星は146個に増やしてその座を奪い返した。現在、木星の衛星数は95個に増えているが、このほど土星に新たに128個の衛星が発見されて合計274個となり、木星を大きく引き離した。(参考記事:「土星に20個の新衛星を発見、太陽系で最多に」) しかし、今回の発表で最も重要なのは、これまでで最多と思われる数の衛星がいちどに発見されたことではない。氷と岩石からなる球体で、軌道が土星の赤道面に沿ってい
最新の研究によれば、ビーガン、ベジタリアン、雑食にかかわらず、腸内微生物叢のバランスを保つには、さまざまな植物性食品を食べることが最も効果的だという。(PHOTOGRAPH BY BRIAN FINKE, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 腸内環境を改善する秘訣の一つは、あなたが考えているよりシンプルかもしれない。さまざまな植物性食品を食べると、腸内微生物叢(そう)(マイクロバイオーム)に多様な善玉菌がすみ着きやすくなることが、学術誌「Nature Microbiology」に2025年1月6日付けで発表された大規模な研究で示された。また、肉は悪玉菌と関連付けられているが、肉をたまに食べる場合も、さまざまな植物性食品を食べれば腸内環境を改善できる。 この研究では、米国、英国、イタリアの2万1000人以上が、日常的に食べているものに関する詳細なアンケートにアプリで回答した。
西暦79年のべスビオ火山噴火で発生した有毒ガスによって死亡した犠牲者の石膏像。有名なこの噴火はポンペイとヘルクラネウムを埋没させ、頭蓋骨の中からガラス質の遺物が発見された。(Photograph by Dorothea Schmid, laif/Redux) 西暦79年のベスビオ火山の噴火で壊滅したイタリア西海岸の古代ローマ都市ヘルクラネウムで、人間の脳がガラス化したという驚くべき論文を研究者が発表したのは2020年だった。このような脳が見つかったのは初めてで、その過程は不明だったが、このたび同じ研究者たちが謎を解き明かした。2025年2月27日付けで学術誌「Scientific Reports」に掲載された論文によると、火砕流の前に襲った高温の「火山灰雲」が、脳をガラスに変える条件を作り出したという。(参考記事:「脳が溶けてガラス化、窯焼きも、新たに浮上したベスビオ噴火の恐るべき死因」)
膣壁に付着する細菌を走査型電子顕微鏡で撮影。善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れると、「細菌性膣症(BV)」などの症状が現れることがある。BVが性感染症である可能性を強く示唆する研究結果が発表された。(MICROGRAPH BY STEVE GSCHMEISSNER, SCIENCE PHOTO LIBRARY) おりものが増えたり、魚が腐ったようなにおい(アミン臭)がしたりする細菌性膣症(細菌性膣炎、BVとも)は、何十年もの間、膣内細菌叢(そう)の乱れによる厄介だがよくある感染症として扱われてきた。だが、BVは実は性感染症(性病)である可能性を強く示唆する画期的な研究結果が3月5日付けで医学誌「The New England Journal of Medicine」に発表された。再発防止の鍵は、患者の女性とともに、パートナーの男性も治療することかもしれない。 成功しなかった男性への治療 BVは
クベット・エル・ハワの墓から出土したワニの頭蓋骨の1つには、歯が良好な状態で保存されていた。(Zuma Press/Cordon Press) 2019年、エジプト南部の、ナイル川をはさんでアスワン市街の対岸に位置するクベット・エル・ハワのネクロポリス(墓地遺跡)の発掘調査を行っていたベルギーとスペインの考古学者のチームが、大量に埋葬されたワニのミイラを発見した。内訳は、ほぼ完全な骨格が残っているものが5体と、頭部のみのものが5体だ。 エジプトの墓でワニのミイラが発見されるのは珍しくない。だが、いちどに10体も発見されることはまれだ。2023年1月に学術誌「PLOS One」に発表されたこの発見に関する論文では、ミイラづくりに用いられた防腐処置の技術だけでなく、ワニが死に至った過程にまで光を当てている。
新たな研究によると、後ろ歩きは関節を強くし、認知機能を高め、消費カロリーもアップさせる可能性がある。(PHOTOGRAPH BY PHIL SCHERMEISTER, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 歩くことはいつでも気安く取り組める簡単な健康法の1つだ。だが、数歩だけでも後ろ向きに歩くことでより高い効果が期待できるという。「レトロウオーキング」とも呼ばれる後ろ歩き。この普段あまりやらない動きは、バランス感覚を向上させ、使われていない筋肉を鍛え、認知機能さえ高めてくれると注目を集めている。 後ろ歩きは何も最新の運動法というわけではない。中国では何世紀も昔から伝統的な運動の一部であったことが記録に残っている。その後、スポーツ選手や指導者たちがパフォーマンス向上のために後ろ歩きを取り入れるようになった。今、このちょっとした動きの変化がどれだけ効果の高いものであるか、研究者に
なぜ眠るのか 現代人のための最新睡眠学入門 脳科学が進歩し睡眠の秘密が明らかになってきた。正しい睡眠を身に付けて、勉強や仕事、運動などで高いパフォーマンスを発揮しよう。〔全国学校図書館協議会選定図書〕 定価:1,540円(税込) amazon 楽天ブックス
ドイツの睡眠研究所で、筋肉と眼球の運動とともに脳波を記録する研究者。睡眠は脳の健康にとって不可欠であり、睡眠薬を使う人も多いが、新しい研究により、ある一般的な睡眠薬が、睡眠中に脳から老廃物を除去するプロセスを妨害する可能性があることが示された。(Photograph by Gregor Lengler, laif/Redux) 私たちは人生の約3分の1を眠って過ごすが、その間、体のスイッチは単純にオフになっているわけではない。なかでも脳は、眠っている間に多くの“家事”をこなさなければならない。その1つは自分自身の掃除だ。脳の「グリンパティックシステム」と呼ばれる複雑なネットワークには、脳内にたまった有害な老廃物(アルツハイマー病などの認知症と関連するアミロイドベータやタウタンパク質など)を洗い流す機能がある。 米ロチェスター大学医療センターの教授で、神経医学応用研究センターの共同ディレクタ
濃い青色の海で、生後1カ月のザトウクジラが母親に甘えている。そのとき、まるで発煙筒のように、黄色の尿が水中に噴き出し、すべてが緑色に染まる。この動画は、健康な海にとって重要なクジラの尿に関する新たな手がかりだ。 科学者たちは長年、クジラが餌場の深海から浮上し、海面付近で排せつする際、クジラの糞に含まれる栄養が浅い海の生物にもたらす恵みについて考えてきた。しかし、もうひとつの重要な栄養源を見落としていた。尿だ。学術誌「Nature Communications」に3月10日付けで、この知識の空白を埋める研究結果が発表された。クジラの尿も海洋生態系の繁栄に不可欠だとわかったのだ。(参考記事:「豊かなサンゴ礁に魚の「尿」が不可欠、漁で打撃も」) 「この研究における大きな驚きは、クジラの尿がほかの窒素源(死骸など)をはるかに上回ると判明したことです」と論文の筆頭著者である米バーモント大学の保全生物
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『ナショナルジオグラフィック日本版サイト』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く