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衆院選
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1. ノーベル賞とフィールズ賞 科学においてもっとも権威ある賞の1つとして「ノーベル賞」を挙げることができる。この賞について改めてここで詳しい説明をする必要はないと思うが、ノーベル賞の対象分野に数学が入っていないことをご存知だろうか。一説によると、ある数学者とアルフレッド・ノーベルの仲が悪かったことが原因だといわれている。一方で、「数学のノーベル賞」といわれる「フィールズ賞」という賞がある。フィールズ賞は4年に1度開催される国際数学者会議(ICM)において、顕著な業績を上げた原則40歳以下の数学者(2名以上4名以下)に授与される。日本人のフィールズ賞受賞者は小平邦彦先生、広中平祐先生、森重文先生の3名である。この3名の専門分野がタイトルにある「代数幾何学」である。すべての日本人フィールズ賞受賞者の専門分野が代数幾何学であることか
東京・渋谷区にある17の公衆トイレを、著名な建築家やデザイナーの手で、誰にでも使いやすいものに生まれ変わらせた「THE TOKYO TOILET」(TTT)は、日本が本当に誇れるものを問い、かたちにしたプロジェクトだ。その意義について、発案者であり資金提供者でもある柳井康治さんがゲストと語り合う「きづきのきづき」の今回のお相手は、作家の川上未映子さん。プロジェクトの一環として製作された映画「PERFECT DAYS」(ヴィム・ヴェンダース監督、12月22日全国公開)を一足先に見た川上さんは、その内容について「ずっと考え続けている」という。 映画「PERFECT DAYS」が描くのは、役所広司さんが演じるトイレ清掃員・平山の日常。今年5月のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で世界初上映され、役所さんが男優賞に輝いた。その後も世界の映画祭で注目を集め続けており、米アカデミー賞の国際長編映画部
「PERFECT DAYS」は、TTTの一環として、柳井さんの企画・プロデュースによって生まれた映画だ。主人公の平山は、東京・押上のアパートで一人、簡素に暮らしながら、毎日、渋谷の公共トイレへ仕事に出かける。同じことを繰り返しているようだが、ひとつとして同じ日はない。 Wim Wenders ヴィム・ヴェンダース 1945年、ドイツ・デュッセルドルフ生まれ。現代映画界を代表する映画監督。「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」などの数々の名作で映画ファンを魅了。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」「Pina/ピナ・バウシュ踊り続けるいのち」などドキュメンタリーでも名高い。プロデューサー、写真家、作家としても活動。 ヴェンダース 平山さんは、我々の多くがかなえられずにいる夢を思い出させる存在だと思います。彼は、多くを持っていなくても幸せです。余計なものを持たず、持っているもの、自分にとって本
本コーナーは、「PR TIMES」から提供を受けた企業・団体などのニュースリリース(報道機関向け発表資料)を、原文のまま掲載しています。読売新聞社が、 掲載している製品やサービス等の購入や利用を推奨したり、その品質・内容を保証したりするものではありません。本コーナーの内容や削除に関するお問い合わせは「PR TIMES」まで、直接ご連絡ください。 合同会社リュミエールデスポワール お得なスマホ情報や、最新の通信キャリア情報を発信するメディア「happy iPhone」が、約300人を対象に折りたたみスマホ(フォルダブルスマホ)の購入動向を調査。 インターネットメディアを利用した広告宣伝・サイトの収益化・事業拡大や売り上げ向上を行う合同会社リュミエール デスポワール(東京都渋谷区、代表取締役社長:土島志麻)が運営するスマホの最新情報メディア「happy iPhone」は、約300人を対象に折り
日本はデフレ経済ではなかった? 近廣 昌志(ちかひろ まさし)/中央大学経済学部准教授 専門分野 金融論・貨幣供給理論 研究の根底、「常識との闘い」 企業や個人による資金需要を起点とする銀行融資の実行によって一国の貨幣量が増大する。このような論理に基づく貨幣金融論を内生的貨幣供給理論と呼び、私はこの理論に基づいて金融経済を分析している。中央銀行はいつでも貨幣量自体を恣意的に増大させるコントローラビリティは有していないし、貨幣量増大が物価上昇を実現させるという論理自体、実は正確ではない。現行の貨幣制度では、貨幣は市場の内側から内生的に供給されるものであり、外生的貨幣供給理論に立脚した量的金融緩和政策やMMTは、因果関係が逆転している。注目度が高まる論議は、一見してわかりやすい説明に見えるし、それらは時に常識になっていく。しかし事象の真相は常識では説けないことが多い。 (出所)拙稿(2021)
新作長編『街とその不確かな壁』が描くもの ――村上春樹作品の変化と不変と―― 宇佐美 毅(うさみ たけし)/中央大学文学部教授 専門分野 日本近現代文学/現代文化論 1. 村上春樹の作風の変化 村上春樹作品は1990年代途中から変化したといわれる。「デタッチメントからコミットメント」への変化ともいわれ、孤独な若者たちの自閉的な内面を描く作風から、震災や宗教など広く社会問題を扱う作風へ変化したという構図で語られる。一方で、村上春樹作品はデビュー当時から近年に至るまで、変わらないといわれることもある。妻や恋人の死あるいは喪失という話型が一定している、比喩を多用した独特の文体が以前から変わらない、といった指摘である。 一見対照的な指摘だが、それらはどちらも正しい。村上春樹の作風の最大の特徴は、個々の作品の内容が別の作品の内容へと継続していることである。ひとつの作品で描いた課題が次の作品へと引き継
日本における刑法犯認知件数は、1996(平成8)年に246万5,503件と戦後最多を記録すると、その後は毎年、戦後最多を更新し続け、2002(平成14)年には369万3,928件と増加のピークに達する。この時期、新聞やテレビ等のメディアでは、日本の安全神話の崩壊が喧伝され、市民の犯罪への不安感も急速に高まった。 しかし実は、その後、メディアではあまり報道されないが、日本の犯罪は減りだした。刑法犯認知件数は、2002(平成14)年をピークとして、以後、毎年減少を続け、2012(平成24)年(犯罪白書でデータが得られる最新年)には201万5,347件にまで減った。この10年間で、日本の犯罪は、45.4パーセント減少したことになる。 ジェットコースターの如き、日本の犯罪件数 犯罪白書の図が示すように、2002(平成14)年を頂点とする、その前後の急激な上り下りのさまは、まさに遊園地のジェットコー
森 達哉(もり・たつや)/早稲田大学 基幹理工学部 教授 博士(情報科学) 2021.10.25 2021年8月から9月にかけて、東京2020オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪)が開催されました。オリンピックのような世界的に注目が集まるイベントでは、大規模なサイバー攻撃の脅威が懸念されますので、その対策に向けた準備も時間をかけて入念に行われてきました。幸い、目立った攻撃被害は報告されませんでしたので、関係者は一安心といったところかと思います。 表舞台では大きな事件はおきませんでしたが、裏舞台では、東京五輪の「ドメイン名」に関して、様々な動きがありました。特に今回の五輪は会期を1年間延期するという未曾有の事態となりましたが、五輪ドメイン名事情にも影響が及びました。ドメイン名とは、インターネット上で提供されるサービス、例えばウェブにアクセスする際の識別名として使われるものです。東京五
産業保健から栄養療法へ 産業保健を専門としていた私が栄養療法に舵を切ったのは6年前のことです。医学部卒業以来、予防医学を志し、病気になってから病院で治療をするのではなく、病院に行く前の段階での健康増進を目指していた私は、当時大きな壁に直面していました。それまで「正しい生活習慣で病気を防ぐ」という予防医学の理念の下、生活習慣改善の指導をしていましたが、健康的な生活を心掛けていた人から「なぜ、こんなに気を付けていたのにがんになってしまったのでしょう?」というような切実な声が寄せられるようになっていたのです。 また、産業医として働く人の健康管理に携わる中、メンタルの調子を崩す人も増えつつありました。そんなとき、大学教員として不安や悩みを抱える学生の相談を受ける中で気付いたのが、食生活の乱れでした。これはうつ病の社員にも共通しており、特に1人暮らしの学生や社員の食事は、コンビニ弁当やファストフード
変化はゆるやかに? 突然に? 私がその変化に気づいたのは、2020年3月のことでした。研究者にとって馴染み深いGoogle Scholarの検索ボックスの下に「COVID-19に関する記事」という見出しと、12のリンクが表示されていたのです。 Google Scholarとは、インターネットに掲載された情報のうち、研究論文や図書などの学術情報に特化して検索できる学術情報検索サイトです。これを使って日々の研究活動を進めている研究者は少なくないでしょう。 私も含め、市民がよく目にする検索サイトGoogleには、先の見出しとリンクは紹介されていません。その名称をここに並べてみましょう。CDC、NEJM、JAMA、Lancet、Cell、BMJ、Nature、Science、Elsevier、Oxford、Wiley、medRxivの12個です。これらは医学や健康科学、保健衛生学の研究者や専門家、
2013年にテコットの会長職に就いた私、島耕作は今後、企業の枠を超え財界人として国益のために尽くす決意を固めた。戦後、長く日本経済をリードしてきた「経済連」のメンバーとして、まず取り組んだのが農業分野だ。カロリーベースで38%という食料自給率の低さに危惧を抱くと同時に、成長分野として雇用の拡大に期待ができると感じたからだ。わが国でも、最新のICTを駆使した取り組みが農業分野で実践されている。さっそく、その現場に足を運んでみた。 初秋のある1日、埼玉県吉川市の郊外の田んぼに、地元の農業関係者約50人が集った。農業用ドローンのデモンストレーションが行われるというのだ。ドローンの農業活用については、報道でも耳にする機会が増えてきた。そうした中、この日のデモは、ドローンによる「完全自動運転」が披露されるということで、より注目を集めたわけだ。 静かなプロペラ音をたてながら、ゆっくりとドローンが浮上す
日本人は「排外的」? -現代日本の排外主義と移民政策 田辺 俊介/早稲田大学文学学術院教授 2018.10.29 2000年に約178万人であった日本の在留外国人数は、2009年には約219万人、その8年後の17年末には約256万人となり総人口の2%を突破した。その8年間の増加率は17%と、ちょうど09年から人口減少社会となった日本において、その強力な緩和要因となっている。 2018年6月、新たな在留資格を設けることで、原則「認めない」としてきた単純労働にも門戸を開く方針が打ち出された。1990年の入管法改正による日系人受入や技能実習制度により、とうの昔から日本社会は外国人の単純労働に依存している。とはいえ、正面からの受入方針が表明されたことは、政策的大転換であることは間違いない。 しかし事ここに至っても、安倍首相が「移民政策ではない」と主張し続けることに象徴されるように、日本政府は外国籍
トミヤマユキコ/早稲田大学文化構想学部助教 2018.5.7 「大学でマンガに関する授業を持っている」と言うと「マンガの描き方を教えてるんですか?」と訊かれがちだ。でも、わたしはマンガ家ではない。むしろめちゃくちゃ絵が下手である。 「描き方を教えるわけではなくて、少女マンガや成人女性向けマンガに描かれた女性の労働について分析・考察する授業なんですよ」と説明すると、不思議そうな顔をされる。まあ、そんな表情になってしまうのも無理はない。「そんなものが大学の授業として認められるのか?」と思うのも「え、少女マンガって、基本恋愛マンガでしょ? 労働関係ある?」と思うのも、よくかわるから。ごくたまに、目を爛々と輝かせお仕事マンガへの愛を語ってくれる人もいるけれど、それはかなりの少数派。 ……というわけで、わたしは「労働系女子マンガ」という、かなりマイナーなジャンルを研究している。研究をスタートさせるき
アレルギーは皮膚から始まる? ―最近の研究より― 折原 芳波/早稲田大学高等研究所助教 私は、アレルギーの研究に携わっています。 アレルギーは、いまや全年齢層にわたって身近と言える病気の1つとなりました。食物やダニ、花粉などのタンパク質に対する免疫反応の1種で、鼻、気管支などの呼吸器系、皮膚、消化器系で症状が現れ、時に激しい全身性の症状を引き起こすこともあります。多くの人たちの研究によって、それぞれの症状に合わせた治療法が開発され、現在では、生物学的製剤や免疫療法も含めた様々な薬の組み合わせで多くの症状を軽減できるようになりました。 アレルギーとは? アレルギーは免疫システムの過剰な反応だと言われます。免疫システムは、私たちの身体を細菌やウィルスなとの外敵から守るためのシステムです。皮膚や毛髪、汗、涙、唾液や胃酸なども列記とした免疫におけるバリアシステムです。外敵がこれら物理的、化学的な1
なぜ輸出企業や多国籍企業は高い賃金を払うのか 田中 鮎夢/中央大学商学部准教授 専門分野 国際経済学 (国際貿易・外国直接投資) 1.輸出企業や多国籍企業は高い賃金を支払う 国際市場に参入している企業は高い賃金を払う傾向がある。諸外国においては多くの実証研究が国際市場に参入している企業が従業員に高い賃金を支払う傾向にあることを明らかにしている(Schank et al. 2007他)。こうした賃金の上乗せは「賃金プレミアム」と呼ばれている。本稿は、筆者自身の研究に基づき、日本においても国際市場に参入している企業は高い賃金を払う傾向があることを明らかにし、なぜ賃金プレミアムが生じるのかを考察する。 2.日本における賃金プレミアム 筆者の研究は、日本の製造業のデータを用いて、輸出企業・日系多国籍企業・外資系企業の賃金プレミアムを分析している。分析に用いたデータは、『賃金構造基本統計調査』(厚生
北原 美那/「早稲田文学」編集部員 略歴はこちらから 1891年坪内逍遥によって創刊、以来休復刊を繰り返しながら刊行を続けてきた文芸誌「早稲田文学」では2017年9月、増刊「女性号」を刊行した。 82名が参加した全556ページの一冊は、その厚みと重さから、手にした読者に「宝箱」とも、「鈍器」とも称された。 この「女性号」について、担当編集による紹介と、刊行からその後におよぶささやかな顛末記を試みる。 何と言ってもこの号の特徴は、参加者82名全員が女性であること。文学史に名を残す女性作家から気鋭の若手まで、国内外、100年以上にわたる女性たちの言葉がこの一冊に集っている。 参加者のなかでもっとも早く生まれた書き手は、1872年生まれの樋口一葉。代表作「大つごもり」を現代語訳で掲載した。ついで1882年に生まれた、イギリスの小説家ヴァージニア・ウルフ。掲載作「ロンドン散策――ある冒険」は本邦初
永井 保成/早稲田大学理工学術院教授 2018.2.26 数学の研究に関することが報道にのることはほとんどない中で、近年ABC予想にまつわる話題が新聞紙面に掲載されるなどしたことは記憶に新しい。2012年に望月氏のプレプリント(暫定版の論文)が出て以来、その正しさを確かめる査読に5年もの月日が費やされてきたことは、確かに数学者業界の標準から見ても普通のことではなく、また、漏れ聞こえてくるところ、大部な論文で構築された新理論構想の壮大さなど、破格なことづくめであることは確かだと思う。しかし、筆者はその筋の専門ではないので、残念ながらその程度の感想以上にこの件について特に何か述べる見識を持たない。 しかし、気になるのは、この件にまつわる新聞報道などの書かれ方である。ABC予想がどれほどの難問であるのか、望月氏の論文がいかに難解であるのか、また、望月氏がいかに天才数学者らしい経歴やエピソードの持
草原 真知子/早稲田大学文学学術院教授 2018.2.13 この時期は恵比寿映像祭、メディアアンビション東京 (六本木ヒルズ)など、メディアアートの展示が集中的に開催されて評判を呼んでいる。今、なぜ、メディアアートなのか? 今日、ディジタル映像は私達の生活の中に溢れている。街頭の巨大スクリーンやトレインビジョンなどのディジタルサイネージ(電子広告)、人気のプロジェクションマッピング、スマホの画面やゲーム。見るだけではない。誰でも作詞作曲やアニメーション制作に加われるバーチャル歌手「初音ミク」は、アマチュアがプロになる門戸を開いた。「インスタ映え」が昨年の流行語になる程、誰もが「作品」を作ってインターネットで公開できる時代、アーティストは何をすべきなのか、ディジタル時代のアートの役割とは何なのだろうか。 私は1980年代初めからCGとメディアアートの展示企画や解説や教育に携わってきた。テレビ
新型コロナウイルス感染症の拡大が続くなか、熱が出ると「感染したのでは?」と不安になる人が多いのではないでしょうか。これからの季節、風邪やインフルエンザなど熱の出る機会が増えてきます。愛知医科大学大学院医学研究科臨床感染症学主任教授の三鴨廣繁先生は「体調が悪いときは無理をせず、休む勇気を持ってほしい。熱が出たら、地域の感染症の流行状況をみて、受診前にはかかりつけ医に電話で相談を」と呼びかけます。 熱が出た場合、どんな原因が考えられますか? 症状で見分けることは困難 発熱の原因の半分以上は風邪やインフルエンザなどの感染症ですが、膠原病(こうげんびょう)や関節リウマチでも熱が出ます。ただ、今年は新型コロナウイルスという新しい感染症が出てきて、「熱が出たらコロナかもしれない」と思わざるを得ない状況です。自覚症状から判断できればよいのですが、発熱の程度や症状などから、原因を見分けることは困難です。
年号と時の重み 「昭和33年、栄光の……」から始まる長嶋茂雄の引退スピーチ、まだ耳に焼きついている人は少なくないでしょう。もしこれが「西暦1958年、栄光の……」だったら、間延びして感動が相当そがれるような気がするのは、偏見でしょうか。西暦1958年も昭和33年も物理的時間量としては同一ですが、それぞれが与える印象には大きな隔たりがあります。 西暦には起点があって終点が想定されていないのに対して、年号には起点も終点もあります。平安時代以降、天皇の即位式には「万歳」の文字を記した「万歳旛(ばん)」が紫宸殿の前に立てられるのが習いでしたが、「万歳」が希望に過ぎないことは自明です。つまり、年号はいずれ改められることを前提として制定され、使われてきました。日本の年号の持続期間は平均すると5年程度であり、この限られた時間枠一つ一つが「時代」という認識を定められた年号を使う社会に暮らす人々にもたらし、
真辺 将之/早稲田大学文学学術院教授 「猫の歴史」に欠けているもの 空前の「猫ブーム」と言われて早十数年、もはやブームとは言えないほどに、巷には猫関連の記事やらグッズやらがあふれている。書籍の世界も例外ではなく、毎年かなりの量の猫本が出版されている。その波は歴史書の世界にも押し寄せており、ここ最近、猫の歴史に関する本が次々に出版されている。 しかし、これまで出ている猫の歴史に関する書物は、有名人に愛された猫を取り上げたものか、前近代までで記述が終わり近現代についてはあまり深く記述されていないものかのどちらかが中心となっている。有名人とは比較的上流階級の人々であり、それだけでは「普通の猫」がどのように生きていたのかはわからない。また猫の生活にとってもっとも変化が激しかったのは近現代という時代である。近現代史のなかでの猫のあり方を追わなければ、現在の人間と猫の関係がどのような歴史的経緯のもとで
仮名語と漢字語の親近性 日野 泰志/早稲田大学文学学術院教授 日本語は、仮名・漢字という性質の異なる複数の表記からなる言語です。仮名と漢字で表記された語は、どのような特徴を持ち、それらを読んだり聞いたりする際、頭の中でどんな作業が行われているのでしょうか。ここでは、最近の私の研究をもとに、仮名語と漢字語の性質に関して、新たに明らかになってきた事柄を紹介します。 仮名語は漢字語よりも親近性が高い? 下にカタカナ語と漢字語のペアをいくつか記します。これらの語ペアについて、自分にとって親しみの程度(親近性)が高いのはどちらの語か判断してみて下さい。 恐らく、ほとんどのペアで、カタカナ語の方が漢字語よりも親しみの程度が高いと判断されたのではないでしょうか。しかし、これらはどれも、出現頻度が等しい2語をペアにしてあります。語の出現頻度とは、新聞など、日常、目にする文の中で、個々の語がどのくらい使われ
大学ランキングの見方 松永 康/早稲田大学研究戦略センター教授 教育市場の国際化 昨今、世界大学ランキングがメディアで話題となっている。国内では、各出版社や予備校による大学ランキングが古くから存在するが、国際比較をした大学ランキングは存在しなかった。国際的な企業の格付けは、経済誌や投資ジャーナルで普及してきたが、それが日本の教育市場にも入ってきたわけで、世界大学ランキングは、教育の国際ビジネス化の流れと捉えて考えるべきである。 本学は、国際研究大学への躍進を標榜しており、私が所属する研究戦略センターは大学の研究力向上を任務としているため、世界大学ランキングの動向に注目せざるを得ない。もちろん、大学ランキングはひとつの見方であるから、順位自体を上げることが大学の研究教育活動の目的となることはない。しかし、早稲田大学が世界の研究大学と比較してどの点に優位性がありどの点が劣っているかを把握するに
加計学園報道から見えてきたマスメディア政治部の弊害 瀬川 至朗/早稲田大学政治経済学術院教授 誠実さと透明性に欠けた政府の説明 <新学部「総理の意向」 加計学園計画 文科省に記録文書 内閣府、早期対応求める>(2017年5月17日『朝日新聞』朝刊) 学校法人加計学園の獣医学部新設をめぐる問題は、朝日新聞が文部科学省内の文書の存在を報道して動き始めた。その後の報道から見えてきたのは、マスメディア(ここでは在京の新聞・テレビ・通信社を指す)における政治部と社会部の報道姿勢の違いであり、在京紙における朝日・毎日・東京と読売・産経の間の報道姿勢の二極化であった。本稿では、「権力とメディア」という視点からマスメディアの内部構造、とくに政治部と社会部の問題を読み解いてみる。 加計学園問題では、安倍首相の長年の友人が理事長を務める加計学園などから国家戦略特区諮問会議(安倍首相が議長)に対して出された獣医
台頭する権威主義的ポピュリズム ドナルド・トランプ氏はなぜ大統領になれたのか ティモシー・スール (Timothy Seul)/早稲田大学国際学術院教授 ドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ合衆国大統領に選ばれた理由は、さまざまな角度から考察することができますが、恐らく最も分かりやすい理由は、過去数十年間に及ぶ新自由主義政策の失敗――すなわち、規制緩和と緊縮財政――でしょう。結果として、これらの政策の推進者に富が集中してしまったからです。富が少数派の手に集中していることを示す統計情報は、広く出回っています。例えば、「上位8人の億万長者が、世界人口の下位半分と同額の資産を持っている」という事実は有名です。端的に言って、新自由主義的経済政策庇護下のグローバル化礼賛は、勝ち組と負け組が存在するという事実を隠蔽(いんぺい)したのです。負け組が、その不満を代弁してくれる指導者を見いだすのは、時間の
写真という西洋のアクシデント――新しい写真史の構築に向けて 橋本 一径/早稲田大学文学学術院准教授 写真を初めて見る人に、それはどのようなものに見えただろうか 写真は私たちの日常にあまりにも深く浸透しすぎていて、それがなかった時代を想像することすら難しい。家族や友人の姿が写真に写し出されるのを生まれて初めて目にした19世紀の人々の驚きは、いかほどのものだったであろうか。 幸いにもその様子を垣間見せてくれる史料が、私たちのもとには残されている。19世紀後半のベルギーで労働者としてつつましく暮らしていたガスパール・マルネット(Gaspard Marnette)の残した手記である。 20歳になってから1903年に亡くなるまでの日常が記載された、2000ページ以上に及ぶこの手記の中には、マルネットが両親のポートレートを写真館で初めて撮影してもらった際の顛末も記されている。年老いた両親の姿を写真に残
最強?人形ホラーとしての『アンパンマン』 菊地 浩平/早稲田大学文学学術院助教 世界初?の人形専門講義誕生 わたしが2014年4月に文化構想学部で立ち上げた「人形メディア学概論」(春期)と「人形とホラー」(秋期)は、一年かけてあらゆる「人形」について学術的検討を試みる他に類を見ない(おそらく世界唯一の)講義だ。 講義で扱う対象は人形劇やぬいぐるみ、蝋人形、わら人形、腹話術、ロボット、ラブドールなど多岐にわたるが、一貫しているのは「人形」というメディア(=媒体、媒介)を通じて「われわれ」について考察するという点である。われわれは、呪術、芸術、科学技術、コミュニケーションなど様々な用途で、絶えず人形を生み出し続けてきた。ならば、あらゆる人形について考察することは畢竟、多様な観点からわれわれを見つめ直すことに他ならない。そこでわたしはこうした営みを「人形メディア学」と名付け、様々な時代、場所の人
変わりつつあるメキシコ・アメリカの国境最前線 新コミュニティ “メックスアメリカ(MexAmerica)” 山﨑 眞次/早稲田大学政治経済学術院教授 メキシコの国境都市ティファナからフェンス越しにアメリカ側が見える。このフェンスは地上だけに建設されているだけではない。フェンスを伝いながら海岸に出ると、フェンスが海上まで延び、海からの越境者も拒んでいる。メキシコ側から見る風景はさながら“嘆きの壁”である。北に目を向けると近代的なビルが立ち並ぶサンディエゴが遠望できる。サンディエゴからメキシコへは簡単に入国できる。同じ太平洋に面しながら、フェンスの存在によって、両市はお互いに背を向けているように見える。フェンスをよく観察すると、鉄パイプと金網で仕切られていて、金網越しに南北に引き裂かれた夫婦、親子、恋人、親戚が会話できるようになっている。この金網はアメリカ側の温情と理解できないことはない。アメ
昭和42年にタオルと造船を地場産業とする愛媛県今治市(県庁所在地を除けば四国で最大の都市)で生まれ、中央大学に進学することで地元を離れたものの、平成8年に司法試験に合格した後、平成11年から地元今治にて弁護士業を営むことになった。 同年即独に近い形で開業し、現在、「弁護士法人しまなみ法律事務所」の代表として地元今治に密着している。 田舎弁護士の誕生 平成11年と言えば、しまなみ海道が全面開通した年である。その年に開業することができる、その幸運に、「当事務所がしまなみ海道の美しい橋のように、地域の法律との美しい架け橋になれたら」との想いが強まり、「しまなみ法律事務所」と命名することにした。弁護士の名前を冠する事務所が多い中、珍しいと覚えられることも多く、またなにより、愛媛弁護士会、今治白門会、裁判所、地域の皆様に支えられ、当初から事務所の経営を軌道にのせることに成功した。 当時は今治支部にお
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