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ブックマーク / shinichiroinaba.hatenablog.com (18)

  • をめぐるとりとめのない感想 - shinichiroinaba's blog

    9年にわたる長期連載を完璧なペース配分で終わらせた『鋼の錬金術師』をつらつら読み返していていくつか考えさせられることがある。(いうまでもなくネタバレ注意。) 主人公が錬金術と引き換えに弟の肉体を取り戻し「ただの人間」として生きていくことを「仲間がいれば平気さ」と笑顔とともに受け入れるという結末は、連載当初から予定されていたらしいが、後知恵としてみればこの結末は確かにそれ以外には考えられない、一歩間違えば「予定調和」とのそしりをまぬかれない、ジュブナイル的お約束を完璧に踏んでいる。 この作品の見事さは要するにその(後から考えれば)自明の結論を、適切なタイミング、すなわち物語の終幕にしてクライマックスに合わせて、最高のタイミングで提示したところにある。決定的な一言を発するのは、早すぎてもいけないし遅すぎてもいけない。 顧みれば『ベルセルク』の失速と混迷の一因は、中盤「断罪の塔」篇においてすでに

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  • 基本に立ち返り - shinichiroinaba's blog

    不況について今さらのメモ。間違ってたらご教示ください。 1929年大恐慌に続く長期不況について。 かつての論争構図; ・古典的ケインジアン(旧テーミン含む) 20年代における株式市場バブルとその崩壊が大恐慌であり、長期不況はその負の遺産としての過剰生産力によるものだった。(ことにマルクス主義者によれば)ニューディールはこの過剰生産力を財政金融的な拡張政策で吸収しようとしたが不十分で、アメリカ経済の完全な回復は大戦なくしてはあり得なかった。 ・マネタリスト(フリードマン=シュウォーツ) 長期不況の主因は金融政策の失敗、つまりは銀行破たんおよびそれへの適切な対処の欠如と、何よりも不適切なマクロ金融政策、マネーサプライの不足による。株式バブル崩壊後も金融システムならびに金融政策が適切に行われていれば、長期不況はなかった。(ニューディールについての評価は?) ・ポスト・(新)テーミン(『大恐慌の教

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  • 卒業生へのメッセージ - shinichiroinaba's blog

    2010年度、明治学院大学社会学部、社会学科卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。 卒業式が直前に中止となったことにつきましては、お詫びの言葉もありません。私たち教員も、皆さんの門出をいつも通りにお祝いすることができなくて、とても悔しく、情けなく思っております。 思えば皆さんは、去るリーマンショック以降の世界不況、そこからの日経済の回復の立ち遅れをもろにい、就職戦線において未曾有の苦戦を強いられました。今また先般の東日大震災を体験し、先の見えない未来の前に不安でいっぱいかと存じます。「なんて運が悪いんだ。」そう思われても無理はありません。 しかし、これをストレートな「幸運」と呼ぶのははばかられるのですが、単純に不幸とばかり言えない、ある巡り合わせの下にあなた方があることを、私はお伝えしたいと思います。 大体において勉強、学問のありがたみというやつは、学校において生徒として学んで

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  • 入試問題をめぐって徒然に - shinichiroinaba's blog

    インサイダーなので(入試関連業務の管理レベルのところで格的な仕事をした経験はないが大学教員である以上末端レベルの仕事なら毎年やっているので)具体的な話をするのには差しさわりがあるのだが、大学入試というのはなかなかに頭の痛い事業であることは言うまでもない。 言うまでもないことだが、入試問題というものは、十年ほど前に話題になった「外注」のケースを別とすれば、基的には大学教員が作っている(はずだ)。(そういえばその昔この「外注」のことを「盗人に鍵を作らせるようなもの」と評した方がおられたが、好むと好まざるとにかかわらず、大手予備校が大学に対して入試にかかわるコンサルティングを主要業務のひとつとするようになって久しいということは厳然たる事実。) そして大学入試における学科試験の問題は、通常は高等学校までのカリキュラムに則ったかたちで、つまりは高校における授業科目に対応した形で行っている。しかし

  • 「リバタリアニズム」概念について - shinichiroinaba's blog

    リベラリズム理論の文脈においては、前章で見たようなひ弱な/他律的リベラリズム、あるいはその法的・政策的側面を重視する保守的自由主義の場合には、安定性の方が重視されます。人間を取り巻く環境は多層的であるわけですが、保守的自由主義者は人を取り巻く人工環境、そして社会的制度・慣行に対しても、どちらかと言えば安定的であること、固定していること――「伝統」が確立していること――を求めます。それに対して、政治的側面を重視する逞しき/自律的リベラリズムの場合には、社会的制度・慣行のレベルでは安定性よりも可塑性を重視します。社会的な制度、慣行、ヒューム流に言えば「コンヴェンション」は、短期的には、また個人にとって、つまりミクロ的には安定して不変でなければならないが、長期的、多くの人々を含む社会のレベルでは、つまりマクロ的には可変的でなければならない、と考えます。ちなみにいわゆるリバタリアニズムの特徴は、伝

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  • はだか祭りあとの祭り - shinichiroinaba's blog

    とゆうことでレジュメを晒します。 ================================ 松尾匡『はだかの王様の経済学』コメント               2009.7.11 稲葉振一郎 評者の松尾へのいまだ満たされざる期待――旧著『近代の復権』以来の――はむしろ以下の二点にかかわっている。 1.「疎外」(ならびに「物象化」)を「不完全情報」という視角から分析するとどうなるのか? マルクス的ミクロ経済学についてはおおむね二つのレベルが考えられる。ひとつは情報の完全性を前提とした非貨幣経済のモデルを用いたものであり、これはたとえばジョン・ローマーの80年代ころまでの仕事で代表される。そこでは搾取は問題とされる(が、ともすればリダンダントな概念とされる)のに対して、疎外は普通は問題とされない。(たとえばローマーは「労働疎外」を雇用労働における支配関係と解釈したうえで、疎外と搾取の相

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  • 稲葉振一郎『社会学入門』(NHKブックス)あとがきに書き忘れた・書けなかったこと(承前) - shinichiroinaba's blog

    社会学入門 〈多元化する時代〉をどう捉えるか (NHKブックス) 作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2009/06/26メディア: 単行(ソフトカバー)購入: 18人 クリック: 224回この商品を含むブログ (121件) を見る 売るため、読んでもらうための戦略について。 こちらも器用ではないため書けるもの、書きたいものを書くしかないのだが、それでもそれなりに売り込みの工夫は考えないでもなかった。 まず版元とレーベルについて。 なぜNHKブックスか。 伝のあるちくま、中公の両新書には、既に社会学入門書が存在しているので企画が通りにくい。ちくまの内田隆三のものははっきり言ってひとりよがりのダメな(「東大で俺様が社会学を学ぶ」とはよくいったもの)である一方、中公の富永健一のものはオーソドックスな良書であるが、どちらにせよかぶってしまう。内田であれば正直勝てる自信

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  • 稲葉振一郎『社会学入門』(NHKブックス)あとがきに書き忘れた・書けなかったこと - shinichiroinaba's blog

    社会学入門 〈多元化する時代〉をどう捉えるか (NHKブックス) 作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2009/06/26メディア: 単行(ソフトカバー)購入: 18人 クリック: 224回この商品を含むブログ (121件) を見る 何でこんなを書こうと思ったのか、書いているうちに忘れてしまっていたのだが、最近思い出した。 まず一つ。 このを書いたのは、何も1年生向け講義を受け持つ羽目になったからではない。むしろ逆だ。 うちの職場では、1年生向け社会学入門講義の担当自体は別に純然たる強制ではなく、いやだったら代わりに1年生向けの基礎演習をやれば済む話であり、ずっとそうしてきた。ただ、社会学科で専任として給料をもらっている人間が、社会学入門の講義を「やりたくない」ならともかく「できない」などというのは通るまい、とは思っていた。 そんな風に思っていたから、カリキュラ

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  • 2005-11-11

    今回はおすすめできません。つーかダメだろこれ。特に書き下ろし部分。 小田中先生のおっしゃることが基的に正しいと思います! http://d.hatena.ne.jp/odanakanaoki/20051111#1131631802 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480062718/interactivedn-22 http://www.bk1.co.jp/product/2610043?partnerid=p-inaba3302385 まあ「しろはた」を読んでいれば分かることだが、普通の読者向けの文章も書けるのですね。安心。 「萌えは正しい(少なくとも邪悪ではない)」というご主旨はごもっともですが、「ちょっとこれは……」というところも多々あり。 「脳内恋愛」は当に無害かというと、必ずしもそうとはいえないのではないかと。だって花沢健吾

    2005-11-11
    lakehill
    lakehill 2009/01/29
    この大人のしゃべり場はもっと読まれるべき
  • なんだか大人げないことをしている人たちがいるようだが - shinichiroinaba's blog

    東さんは煽った。常野さんは乗った。実際に乗られてみて東さんは「煽りが軽率だった」と反省して小役人的対応をとった。東さんの対応には手続き的なレベルではさしたる問題はないが、度量の狭さを批判されてもおかしくはない。 しかしこんなことをしたところで常野さんの名が上がるわけではないし、もちろんこんなことはどちらにとっても「いらん苦労」で「勉強」「芸の肥やし」にはならないことは明らか。 何より常野さんはまず最初にやるべきこと、つまり東さんの議論とデリダの議論を突き合わせてきちんと検討する、ということを自分でしていない。「卑怯」とはいわない。その呼びかけに応じてそれっぽいことをやってくれてる人が少しは出てきたからだ。しかしせっかくそういうものが出てきたのであるから、自分でデリダと東をきちんと読みこまないまでも、援軍の人たちの議論をきちんと咀嚼して、自分なりに何かまとまったことを言うべきであった。 常野

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    lakehill
    lakehill 2008/12/14
    「東さんの授業に押し掛けるのは、応援とは言わないよ」>いやいや、今回は常野さんを応援するために東工大に行ったわけではございませんから。ただ、東さんが挑発したからそれに乗って行っただけで
  • 大学院進学を考えている君たちに - shinichiroinaba's blog

    まあもちろん分野によって事情は違うので、ここでは人文社会系の研究者志望の方を念頭において、さるお方のとてもとてもありがたい箴言をご紹介します。 「東大で大学院に入るのは自殺行為、それ以外の大学で大学院に入れるのは殺人。」 (c)飯田泰之 特に地方旧帝大の君、要注意。先生は責任とってくれへん。指導教官だっていつ東京か関西の私大に逃げるかわからんぞ。

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  • リジェクト - shinichiroinaba's blog

    えげれす某めじゃー誌への投稿がrejectされました。 "Unfortunately, although your paper is undoubtedly of interest, it is not appropriate for consideration for our journal." この表現は便利だ。

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    lakehill
    lakehill 2008/11/21
    が非常に興味深い。
  • この流れなら言える……じゃなくて言っておかないと。 - shinichiroinaba's blog

    雑誌『POSSE』が高いとか安いとか盛り上がってるけど。 JILのサイトに行けば、税金使って行われた調査研究の報告書があって、タダでいくらでも読めるんだけど。 問題は専門家向けで難しいことかな。しかし一般向けの広報誌『ビジネス・レーバー・トレンド』のバックナンバーも無料公開がある。4月号の特集は「若年の自立支援 フリーター・ニート対策のこれから」なんだけどな。 ハードな政策研究ができない、評論家ワナビーにだって、できることはいくらでもあると思うんだ。例えばこういうソースを探してきて、わかりやすく噛み砕いて紹介すること。 これに限らず、昨今では税金が投入されている政策関連調査研究の文献やデータは、たいがいネットでタダで読めるんだから、もっと活用しないと。ふた昔ほど前までは、役所の「白表紙」といえば値段が付いていないから逆にインフォーマルにしか流通していなくて、適切なコネがなければ拝むこともで

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  • ひょっとして - shinichiroinaba's blog

    今どき「左翼」を自認する人は、かつてのマルクス的共産主義の理念を旗印そしてあるいはアリバイにした中央指令型計画経済(まともな「計画」なんか実はなかったから「指令経済」なる呼称の方がふさわしい、との塩川伸明先生のご指摘は示唆深いがとりあえず)は、そしてまたユーゴ型自主管理協議体制も、そもそも基的に駄目である(たまたま運が悪かったとか、努力不足だったとかいうわけではない)という認識は当然に持っていて、ただ社会的公平や弱者支援のための市場への介入や再分配を要求する広義の社会民主主義者なんだと思っていたのだが、違うんでしょうか。 ひょっとしてまだ世間には「社会主義経済は可能だ」と思っている人が残っている、あるいは昔をよく知らない若い世代が出てきたんでしょうか。 しつこいですが 現存した社会主義―リヴァイアサンの素顔 作者: 塩川伸明出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 1999/09/01メディ

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    lakehill
    lakehill 2008/09/09
    今の左翼の主流って(広義の)「社会民主主義」であっていると思うけど
  • アメコミ論争再訪 - shinichiroinaba's blog

    堺三保さんのmixi記事転載の許可は得られませんでした(田中ブログでのコメント以上の論点は出していないので再掲は無駄、とのこと。ちなみに堺さんは山さんの「と学会誌」原稿についてはまったく関知していなかったそうです)ので、了承の得られた海法、柳下、そして稲葉の発言のみを整理して再掲します。(「garth」とあるのが柳下さんです。いったん掲載した山さんのコメントは、ご要望により再消去しました。論脈を追うにはそれでも問題ありません。) これに伴い、元記事と海法さんによるコピーを削除します。 関係者は「無駄」「消耗」とのご感想が多いようですが、それなりに面白いと思う私には当事者意識が欠けているのでしょうか。 この議論の流れに似たものを最近見かけたような気がするんですよ、ほれ、あのqwertyの話とか。(あれは荒れませんでしたけど。) −−−−−−−−−−−−−−− 2006年05月21日 11

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  • ニューヨーク着 - shinichiroinaba's blog

    20日11時(日時間)に成田を出て、20日11時(東部標準時)にJFKに着きました。愛想のない空港ですね。荷物は重かったけど、お金がもったいないので地下鉄でえっちらおっちらマンハッタンまで来ました。NYCの地下鉄は薄汚れてごつごつしてなんだか70年代の営団地下鉄を思い出させます。でも冷暖房は完備で24時間運行はナイス。 現在ミッドタウンのアパートメントホテルで一人、シリアルにヨーグルトかけてってます。スーパーでいろいろ買いこんで、レンティルのスープを作ろうと思ったが、だしを買うのを忘れたことに気がついた。 明日から不動産屋回り。家族とお客のためにほどほどの部屋を借りねばならん。円高と戦後最悪の不動産不況は個人的にはまたとない幸運であった。あとは不況で治安が悪化しないことを祈る。バーナンキ先生すみません。 民主党の皆さんはもっと頑張って、日銀を機能停止にして、日経済をまたどん底に叩き込

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    lakehill
    lakehill 2008/03/21
  • アイマスって何?  - shinichiroinaba's blog

    って俺が通りますよ、っと。 いや http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20071109/p1 http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20060629/p3 の続きなんですが、初音ミク否定派(というと乱暴ですが「単なるDTMの新機軸に過ぎん」というお立場?)の鈴木謙介君に、ミク台風の前提として「アイドルマスター」というものがある、というお話は聞いていたのだが、ちょいと調べるとたしかにこのアイドルマスターはミク同様、というかそれ以上に大変なことになっている。来この「アイドルマスター」とは育成系ギャルゲーにして音ゲーであるわけだが、そもそも現在のブームはゲーム体ではなく、ニコニコ動画を主戦場、Youtubeを副戦場として展開されている、ファンがつくるMADビデオの方が主体となっている(ゲームに触ったこともない「見る

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  • 敗戦、というより失敗の弁 - shinichiroinaba's blog

    (以下の話はとりあえず田さんのことは除外して考えています。今何を考え、どうしてらっしゃるか存じませんので。) 「勝ち負けの問題ではない」とは思ってはいますが、失敗ではありますなあ。相手(少なくとも内藤さん)がもはやこちらの言い分に聞く耳持たないようになっちゃったんだもの。飯田君や濱口さんはぼくほどの全面否定の対象じゃないけど、結局彼らの意見を内在的に検討して自省する作業も、ぜんぜんなされてないじゃない。内藤さんがなさっていることは、派手な立ち回りと語り口で論点をすりかえているだけ。 繰り返しますが、これはまったく勝ち負けの問題じゃありません。内藤さんのところのトラックバックを見ただけでも、そしてあちこちのブログを見てみればいっそう、この問題については「稲葉に理がある」もあれば「内藤が正しい」もあるし、その中間でそれぞれの理を測るものもある。「勝ち負け」を基準にする限りは、どっちの解釈だっ

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    lakehill
    lakehill 2006/09/03
    web上だろうがそうでなかろうが、人間は人から何かを言われたからといって簡単に考えを変えたりしません。親しい間柄な人間から何か言われても簡単に変わりません。批判や忠告が正しく的を射ていてもそうなのです。
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