9年にわたる長期連載を完璧なペース配分で終わらせた『鋼の錬金術師』をつらつら読み返していていくつか考えさせられることがある。(いうまでもなくネタバレ注意。) 主人公が錬金術と引き換えに弟の肉体を取り戻し「ただの人間」として生きていくことを「仲間がいれば平気さ」と笑顔とともに受け入れるという結末は、連載当初から予定されていたらしいが、後知恵としてみればこの結末は確かにそれ以外には考えられない、一歩間違えば「予定調和」とのそしりをまぬかれない、ジュブナイル的お約束を完璧に踏んでいる。 この作品の見事さは要するにその(後から考えれば)自明の結論を、適切なタイミング、すなわち物語の終幕にしてクライマックスに合わせて、最高のタイミングで提示したところにある。決定的な一言を発するのは、早すぎてもいけないし遅すぎてもいけない。 顧みれば『ベルセルク』の失速と混迷の一因は、中盤「断罪の塔」篇においてすでに