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<優遇される「高度外国人材」は日本を踏み台にして他国に流出する。一方、それ以外の在日外国人の扱いは永住権を「剥奪」しやすくするなど、ひどくなるばかり> 技能実習制度に代わって外国人材を受け入れるための育成就労制度の創設を柱とした出入国管理法などの改正案が今国会で成立見込みだ。 現在の制度に問題が多いことは、私も承知している。企業や団体が実習生を不当に扱っても転籍(転職)できない、家族を帯同できないなど、国際社会から人権的に多くの問題があると指摘されてきたが、そのとおりだと思う。 だが今回の法改正も、問題がないわけではなさそうだ。実際には転籍のハードルが高いことや、母国の送り出し機関に多額の借金をして来日した労働者の借金負担を減らす具体的な対策が示されていないこと。 加えて、法改正では外国籍住民が故意に税金や社会保険料を払わない場合は永住権を取り消せるようになるという。特に私はこの永住権取り
<子供を産まない最大の理由は「お金」といわれる。政府は巨額を投じ少子化対策を推し進める。でも、ふと思う。子育てに希望を持てていない人が多いのでは?> 子供のいる人みんなに聞いてみたい。「子育ては楽しいですか?」 独身の人、子供のいない夫婦にはこう聞いてみたい。「子育てにどんなイメージを持っていますか?」 5月5日、こどもの日。4人の息子がいるわが家では今年も4匹の鯉(こい)が風になびいていた。だがこの鯉のぼり、一般家庭で目にする機会は年々減っている。 マンション住まいだと鯉のぼりを揚げづらいのかもしれないが、住環境の変化だけが理由ではないだろう。厚生労働省によれば、昨年の出生数は75万8631人(速報値)と、過去最少を更新した。なぜ日本人は子供を産まなくなってしまったのか。 少子化は日本だけの問題ではない。中国でも1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率が過去最低の1.09(20
<容疑者逮捕の場面をテレビで流し、顔写真を新聞や雑誌にそのまま掲載することが冤罪に加担するかもしれないと認識している記者はどれぐらいいるのか> 最近、4歳の次女を殺害した疑いで、父親および母親が逮捕された。逮捕の場面はテレビカメラで撮影され、放送された。何十年にもわたり、日本のテレビや新聞で何度も同じような場面が放送されたり、写真が掲載されたりしているので、多くの視聴者や読者は全く違和感を覚えないかもしれない。でも、私からするとあり得ない報道の仕方だ。 今回も、「無罪の推定」を全く無視するマスコミに対して腹が立った。「『無罪の推定』とは犯罪を行ったと疑われて捜査の対象となった人や刑事裁判を受ける人について、刑事裁判で有罪が確定するまでは『罪を犯していない人』として扱わなければいけないとする原則」と日本弁護士連合会は説明している。 逮捕された人の顔、住んでいる場所の情報や名前を大きく報道する
椎野さん(中央)と今年のミス日本の受賞者たち MISS JAPAN ASSOCIATIONーHANDOUTーREUTERS <どんなに「内面の美」を含めた「総合的な美しさ」を強調しても、最終審査に残る人の中に背の低い人や太った人はいない。いつまで容姿を競って順位をつけるのか?> 今年のミス日本コンテストで、椎野カロリーナさんがグランプリに選ばれて話題となった。 彼女はウクライナ人の両親の元に生まれたので、いわゆる「ハーフ」ではない。見た目は日本人に見えないが、5歳から日本で暮らしてきたので当然日本語はネイティブで、日本国籍も得ている。SNSでは受賞を喜ぶ声の一方で、日本人らしくないなどと攻撃する投稿も見られた。 私も日本国籍を取得しており、いわゆる日本人には見えない日本人だ。私と同じようなマイノリティーの日本人がミス日本になったことは、個人的に喜ばしく思う。CNNなど海外メディアも、移民が
<中国SNSで見られた「汚染水の報いだ」という心ない声は少数派。多くの中国人は、震災のニュースに胸を痛めている> 辰年は「龍が暴れる」、つまり凶事が起こる年だと中国では考えられている。 例えば1976年。1月に周恩来、7月に朱徳、9月には毛沢東と、国の指導者が相次ぎ亡くなり、7月には唐山地震も発生した。北京の東方110キロにある唐山市はマグニチュード7.5の大地震で壊滅状態となり、およそ24万人と公表されている犠牲者数は65万人を超えるとの推計もある。 そんなこともあり、中国では昨年から「2024年には何か起こるのではないか」とささやかれていた。 ところがその何かは、中国ではなく日本で起きてしまった。元日に能登半島を襲ったマグニチュード7.6の大地震である。 このニュースは瞬く間に世界中に伝わり、中国のSNSでは心ない一部の人が「汚染水の報いだ」と書き込んだ。昨年夏に福島第一原発の処理水を
<中国では文革期に仏教がつぶされ、私は日本に来てから仏教の素晴らしさを知った。多くの在日中国人経営者も、読経や写経、座禅を経験している> 詳しくは11月14日号(もしくはウェブサイト)で読んでいただけたらと思うが、前回のコラムで、元従業員に裁判で負けて大金を失った話を書いた。 あまりに理不尽な結果で気がめいっていたため、気持ちを紛らわせようと自宅から程近い圓照寺(えんしょうじ)を訪れた。東京・北新宿にある真言宗豊山派のお寺で、小規模だが素晴らしい日本庭園がある。実は写真家の篠山紀信さんの実家で、これまでも度々訪れていた。
東京・新宿駅前でのイスラエルへの抗議デモ(10月10日)YUSUKE HARADA―NURPHOTO/GETTY IMAGES <イスラエルとハマスの戦争においても当たり前のように欧米追従の日本外交。だがイラン出身の筆者は、中東諸国からの尊敬される日本はもっとできることがあるはずだと説く> イスラエルとハマスの戦いが止まらない。日本にいるとニュースでの扱いも欧米ほどセンセーショナルではなく、遠い地で「またやってるな」というくらいの感想をお持ちの読者もいると思う。 そんななか、芸人のパックンさんが本誌ウェブ版のコラムでイスラエルとパレスチナの問題を扱っていて、アメリカ人からこの問題がどう見えるか、どう語られるかがよく分かって面白かった。だから私は、この問題がイラン人からはどう見えるのかを書いてみたい。 イランは多くの日本人が思い描いている、イスラム国家としての画一的なイメージよりも、実際は複
<不当解雇されたので会社を訴え、大金を勝ち取ったという経験談がネットを賑わせている。似た経験が、私にもある> ブラック企業に不当解雇されたため、裁判に訴え和解金700万円を手にした。その後、勤めた運送会社も解雇され、2年争った末、4000万円を勝ち取った──。そんな記事がネットで話題になっている。紹介されているのは解雇された男性側の経験談。裁判に負けた企業側の「言い分」は不明だ。 実は私にも似た経験がある。といっても私の場合は、企業側としての経験。車ではなく企業相手の「当たり屋」に狙われた。 東京で小さな通訳・翻訳の派遣会社を経営する私は数年前、新規事業の開拓を考え、顧問税理士に相談した。「良い人材を紹介してくれる業者を知っている」。そう言って税理士が連れてきたのが人材紹介業をしているという人物と、自信満々に「億単位のお金を引っ張ってこられる」と語る自称実績豊富な営業マン(以下、Aとする)
<低俗なバラエティーやドラマ、素人起用のワイドショー...日本には見るに堪えないテレビ番組が多い一方、イランでは弾圧されつつも政府批判を放送し、硬派な社会派ドラマも人気だ> 私は日本に住んで22年にもなるが、いまだに慣れないのは、英語で話しかけられることでも、役所で在留カードを見せろと言われることでもない。テレビ番組がどうしようもなく幼稚であることだ。 スイッチを入れれば、食べ歩き番組、たくさんの芸能人が大騒ぎするバラエティー、若いタレントが演じる能天気なドラマ、専門家でもない芸能人や元スポーツ選手が時事問題にコメントするワイドショー。テレビは娯楽だから楽しければいいじゃないかという意見もあるし、硬派な報道番組もあると言う人もいるが、いかんせん幼稚で見るに堪えない番組が多すぎる。 ちまたでは旧ジャニーズ事務所における性加害問題が大きな話題になっているが、結果的にこの問題が長年にわたり放置さ
<日本で高校生たちと率直に議論した仏下院議長。「政治家が学校に行って民主主義の重要性を語るのは欠かせないことだ」と語った> 先日、東京国際フランス学園を訪問した。主にフランスの幼稚園、小学校、中学校、高校のカリキュラムに沿ってフランス語で教育をする学校であり、3~18歳の生徒たちは日仏ハーフが多い。今回は取材が目的で、来日したフランス国民議会(下院)のヤエル・ブロン・ピベー議長に同行した。 国民議会初の女性議長である彼女はその日、高校の2~3年生と対話するためにフランス学園を訪れた。対話のテーマは「選挙および民主主義」。選挙や民主主義とは何かといったことだけでなく、民主主義が機能するためには具体的に何が必要なのかといった話もあった。 ブロン・ピベーは高校生にこう語りかけた。「あなたたちも政治に参加すべきだ。政治は日常生活に関わるのだから、政治家に任せることではない。われわれ政治家がいま決定
<「なぜ誤訳を修正しないのか」──何度も尋ねたが、いつも回答は同じ> 福島第一原子力発電所の事故からそろそろ12年半がたつが、いまだにたびたび一面のニュースになる。最近は、汚染水を多核種除去システム(ALPS)で処理した「処理水の海への放出」についての記事が多い(写真は処理水関連施設と作業員)。私は10回ほど同原発で取材したが毎回、ALPS処理水の課題を取り上げた。 最近の訪問は7月21日で、処理水の放出設備を視察しながら詳しい説明を受けた。大変興味深く、そのときの情報や海外の専門家の見解を聞くと危険性のある仕組みとは思わない。それでも実際にどう運営されるか分からないので、記者として「安全だ」あるいは「安全でない」とは断言できない。ただ、安心できない国民や漁業組合の意見は無視できないだろう。漁業組合に30~40年にわたってお金を配れば「理解を得られる」と政府が思ったら、大間違いだ。 海への
<報道目的であっても戦場に行くことが批判され、行くと「無責任」というイメージに...。パスポートを発給しない国の説明と根拠は?> 私は月に数回、裁判所で取材をしている。最近も驚いた裁判がいくつかあったが、今回はその中の1つについて書きたいと思う。 6月20日に行われた、原告がフリージャーナリストの安田純平さん、被告が国の裁判だ。パスポートの発給を拒否している国に対し、安田さんが訴訟を起こしている。 安田さんは2015年6月~18年10月の3年4カ月、シリア反政府勢力と思われるグループに拘束されていた(写真は18年の帰国後の記者会見での様子)。拘束中にパスポートを奪われたため、19年1月に再発行を申請したが、外務省から発給を断られたのだ。 国との闘いは3年以上続いているが、6月20日はクライマックスだった。なぜかというとその日は安田さんが1時間にわたって自分の弁護団、国の弁護士と裁判官の質問
<性犯罪の知識のない未成年を守るには、性教育をタブーにしないこと。そして被害者が日本のメディアではなく、海外メディアに求めた「信頼」の意味を考えるべき> 今年3月に放送された英BBCのドキュメンタリーのおかげで、多数のアイドルが所属するジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川の性犯罪疑惑が日本の大手マスコミでも報じられるようになった。 ドキュメンタリーを担当したBBCのジャーナリストが日本外国特派員協会で記者会見を開き、その後、被害者の2人も自身のつらい経験を語った。 彼らはジャニー氏のおかげでエンターテインメントの世界に入り、今もジャニー氏を尊敬していると話す。これは不思議なことではなく、性的な目的を隠して大人が未成年を手なずける「グルーミング」の結果だ。 ようやく今、ジャニー氏の「隠れた暗い姿」が見えるようになったが、たとえ証拠が出てきても本人は亡くなっているので、捜査、起訴、裁判とい
<日本には外国人観光客を楽しませる観光地は多い。だが超富裕層が「カネを落とせない」事態に陥っているのが現状だ> 日本もついに「コロナ後」となったせいか、海外ミュージシャンのコンサートの波が押し寄せている。同時に仕事ではなく日本に遊びに来る有名人も多く、京都や有名ラーメン店での写真などがSNSに載っている。有名外国人にとって日本は、仕事の場としての経済大国だけでなく、遊びに来るのにも魅力的な国になってきたのかもしれない。 そんな様子を見ると皆さんは、日本には外国人を楽しませる観光地や遊び場がたくさんあると思われるかもしれない。確かに神社仏閣は見どころが多いし、飲食店のレベルも高く、ショッピングにも困らない。だが、私の知っている外国人観光客の多くは、観光地以外の遊び場が少ないと言う。特に大人が遊びに行く場所がない。 少し前まで日本人の海外旅行はパッケージ旅行が中心で、朝から分単位で予定が詰め込
<温暖化につながるメタンガス。稲作が世界のメタン排出量の12%を占め、日本のメタン排出量の約42%が水田によるもの。お米への世界の厳しい視線について> アメリカ人の友達が日本に来たので、レストランへ連れて行くことにした。 初来日ということで、ユネスコ無形文化遺産に登録された和食がいいと思い、「お寿司はどう?」。でもその提案は蹴られた。どうしたのかな。「生ものが嫌い?」。 そうではない。もしかして、回転寿司チェーンで撮影されたあの迷惑動画が気になってる? 少年が醤油さしや湯のみに唾液を擦り付けて騒動になったのは記憶に新しく、海外でも「寿司テロ」などと報じられていた。 しかし友達が寿司を拒んだのは、むしろ栄養が理由だった。え、栄養? 寿司は健康食なのでは? カロリーは比較的控えめで、魚や貝などのネタによってはオメガ3脂肪酸がたくさん含まれている。タンパク質やカルシウム、鉄、マグネシウムも摂取で
<LINEなど文字中心のコミュニケーションは日本の「白黒つけない」気遣いの文化を変えるかもしれないが、必要以上の同調圧力や忖度を求める風潮も改めるなら嘆かわしくないのでは?> 日本は「ハイコンテクスト文化」だと言われることがある。日本語のコミュニケーションでは言語外の情報、すなわちその場の状況や相手の立場から意味を理解する必要が多い。だからハッキリと言わず「におわせる」ことができる、という趣旨だ。 実はこの考えは学術的に実証されておらず反論も多いのだが、例えとして挙げられる事例はなんとなく納得させられてしまう。近所の住民同士が交わす「いい天気ですね、今日はどちらまで?」「ちょっとそこまで」といった会話はまさに日本的だと思う。 これが欧米なら「どちらまで?」と聞くと「Itʼs none of your business(あなたには関係ない)」と言われかねないが、日本では意味深な表情で「ちょっ
<マスク着用がこのまま定着してしまったら、若者たちが担う未来の日本社会は一体どうなってしまうのか> 日本政府の新たな方針発表により、3月13日からついに正々堂々とマスクを着用せずに生活できる日々が戻ってきた。私は混み合った電車や病院など感染リスクの高い場所以外では、マスクをしないで過ごしている。 ところが、予想を上回る数の人々がマスク生活を続けている(13日の品川駅では約9割の人がマスクを着けていたという)。感染リスクのある場所だけでなく、周りに誰もいない道路を一人で歩いている人までマスクをしている。花粉症のせいかとも思ったが、どうやらそれだけが理由ではない。日本で花粉症を持つ人は人口の約半分だし、花粉の飛ばない雨の日まで皆マスクをしているのだから。外国人の目には、日本だけがコロナ感染の真っ最中のように見えるだろう。非常に奇異だ。一体どうしてまだマスクを着けているのか? 私は周囲の人々に、
<中国人にとって、学費が安く、学費免除の可能性もある日本への留学はコスパがいい。だから「優遇するな」という声はもっともな指摘だが、でもちょっと待ってほしい> 観光客より一足先に、中国から留学生たちが日本に戻り始めている。コロナ禍前、日本は中国人にとって人気の留学先だった。条件は変わっていないから、きっとまた日本留学ブームになるだろう。 新宿区の高田馬場駅周辺には「中国人による中国人のための」大学進学予備校がいくつもある(写真)が、早くも盛況を取り戻しているようだ。 ここで言う条件とは、コストパフォーマンスのこと。中国人にとって日本留学はコスパがいい。 アメリカの大学なら学費だけで年間約300万~500万円は軽くかかる上、米中対立のあおりを受け、中国人は入学しづらくなった。イギリスなども同様だ。例えば私立大学(文系)でも学費が80万円を切る日本は、欧米の大学に比べ断然お得だ。 学費が安いだけ
<G7広島サミットの前に「LGBT理解増進法案」を成立させることを目指す、岸田首相。しかし、なんとなく意見交換するだけの「議論」が続いている。本気度はどれほど?> 昨年6月28日に開催されたG7サミットの首脳コミュニケにはこう書いてあった。 「われわれは女性と男性、トランスジェンダーおよびノンバイナリーの人々の平等の実現に持続的に焦点を当て、性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、誰もが同じ機会を得て、差別や暴力から保護されることに全面的に取り組むことを再確認する」 もちろん、日本の岸田文雄首相もこの声明に署名した。ただ残念ながら、この約束は現実になっていない。 私の母国であるフランスでもLGBTQ(性的少数者)への差別が全くないとは言えないし、実際のところたくさんある。しかし法律では、性的指向を理由とした差別的な表現や暴言、暴力が禁じられている。 日本はG7で唯一、そうした差別を禁止す
<「〇〇についてお尋ねがありました」という、聞き飽きた常套句。官僚が用意する答弁を読み上げるだけの「討論」。追及しないメディアにも責任がある> 1月25日から、衆議院の代表質問が始まった。興味があってオンラインで見たが、改めてがっかりしたし、完全に無駄な時間だと思った。なぜなら、効果が期待できる作業に全くなっていないから。 各党の代表は演説を読みながら、岸田首相にいくつかのトピックについて質問する。さまざまな問題や政策をめぐる各党の意見を聞く良い機会ではあるけれど、首相の回答にはがっかり。質問は事前に政府に通告されるから、回答は官僚たちが用意する。つまり首相はその文章を読み上げるだけだ。 ほぼ全ての代表が同じ項目について質問した。すなわち防衛費増額、賃上げ、原発政策、そして教育政策。結果的に、首相は「〇〇についてお尋ねがありました」という決まった表現で始め、それぞれの項目について何度も同じ
<日本にはまだまだ世界一の技術がある。一方で欠けているのは「強気なアピール」> この冬は北日本を中心に、ドカ雪が話題だ。数年前もそうだったが、大雪による車の立ち往生も既に何度か報道されている。立ち往生の現場を画面越しに見るたび、私は当分、電気自動車(EV)にはしたくないなと思う。大雪で車内に何時間も閉じ込められてエアコンが使えず、走るための電力もなくなるなんて、考えただけでゾッとする。ガソリン車もマフラーが詰まった場合の一酸化炭素中毒などに注意しなければいけないが、今のEVの技術では、氷点下の気温ではガソリン車が優位ではないかと感じる。 皆さんも、真冬に携帯電話の電池の減りがとても速いのを経験したことがあるだろう。EVも同じ理屈で、バッテリー残量がどんどん減る。各EVメーカーが公表している航続距離は、極寒の環境では当てにならない。車内に電気毛布を常備しておいて、立ち往生のときにはそれでしの
<昨年11月にユネスコの無形文化遺産に登録された「バゲット」。湿度の高い日本では難しいパンにもかかわらず、その美味しさは在日フランス人のお墨付き。食の交流が示す、文化の発展について> フランスと言えば、ワイン、チーズとバゲット。食卓には欠かせないそのバゲットが昨年11月末にユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。 申請は大変なプロセスだったようで、必要な文書を集めるのに6年かかったという。正確に言えば、バゲットそのものよりもバゲットの専門技術と文化が登録された。 フランス人からすると大変うれしいことだが、実際には、最近のフランスで販売されているバゲットがどれもおいしいかといえばそんなこともない。むしろ工場で作られたバゲットが多く、言うまでもなく、それらの味や食感は良くない。 もちろん伝統と技術を守るパン屋のバゲットもある。おいしいバゲットを買うと、家に着くのを待たずに帰
<「何か起こった時に考える」とはならない日本では、新しい技術は生まれづらい。しかし、自動運転の車にひかれることも、暗号資産が突然消えることもない。人に優しい社会とは?> 暗号資産交換所大手の米FTXトレーディング社が経営破綻した。暗号資産は日本語でいまだに「仮想通貨」と呼ばれているせいか、仮想=実体がない=信用できない、というイメージを持つ人が日本には大勢いる。 だから、FTX破綻のニュースを見て、「それ見たことか」と思った人もいるだろう。だが意外なことに、世界中に約130あるFTXの関連会社のうち、日本法人では顧客の資産が守られていると報道され、鈴木財務相もそれを確認している。 FTXの破綻は、同社が顧客から預かった資産を使ってハイリスクな運用を行い、多額の損失を出したことが原因だと現時点では報じられている。 だが日本の金融庁は、アメリカに比べて非常に厳格な法令を敷いていて、日本の暗号資
<外国人観光客の受け入れが再開し始めたが、ツアーをサポートしてみて感じたのは、コロナ後の日本が「おもてなしの心」を失った悲しい現実> コロナ禍で止まっていた外国人観光客の受け入れが本格的に再開し始めている。観光地や都市部のサービス業の皆さんにとって待ちに待った再開だと、メディアは報じている。私も日本は国を挙げて観光客を待ち望んでいるのだと、最近まで思っていた。 先日、初めて外国人観光客ツアーのサポートをした。私は日本を旅行するようになる前に日本語ができるようになったので、言葉ができない観光客として日本を眺めたことがなかった。だからよく言われるように、日本は親切な「おもてなしの国」なのだろうと思っていたのだが、今回とんでもない間違いだと気が付いた。制度やサービス精神の面でも、外国人観光客はあまり歓迎されていないと思い知らされたのである。 まず、日本に到着する時点でガッカリさせられる。入国者の
<あれこれ調べても、納得がいかない。なぜ日本の保守政治家たちは、韓国の「反日」宗教団体と手を結んだのか。誰か教えてほしい> 外国人として、第三者として、どうにも解せないことがある。いま世間を騒がせている旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と日本の政治家との関係だ。 これは私だけでなく、多くの人が首をかしげていることだと思うが、日本の「嫌韓」保守政治家たちはなぜ韓国の「反日」宗教団体と手を結んだのか(それも、9月8日の自民党の発表によれば179人も!)。 自分たちの支持者である保守派がこれを知ったらどう思うか。そうしたことに考えが及ばなかったのだろうか。中国のネット上にまで「なぜなんだ? 誰か教えてくれ!」という声が噴出している。 テレビ朝日の『朝まで生テレビ!』で、田原総一朗さんが公明党議員に「統一教会と創価学会はどこが違うんだ?」と直球の質問を投げ付けているのを目にした。追及を受けた議員は
<フランスなどでは「気候変動を原因とする若年層の不安症」が社会問題化しているが、日本ではまだまったく話題になっていない> 最近、フランスのメディアによく出る新しい単語がある。Éco-anxiétéといい、気候変動による不安、気候不安症、エコ不安症などと訳せるだろう。はっきりとした定義はないけれど、要するに「気候変動による災害や環境問題が原因で不安、絶望、ストレス、無力感を感じる症状」だ。特に子供や若年層が感じることが多い。 調べてみたところ多くの国で同じような現象が起きているが、日本ではあまり話題になっていないようだ。例えば、日本経済新聞の記事のデータベースで探せば、「気候変動」の文字が出てくる記事は8348件あったが、「気候不安」は0件だった。「エコ不安」も0件。東京新聞の記事データベースにもなかった。朝日新聞のデータベースには1件あったが、それはアメリカで起きている現象を紹介する記事だ
<欧米では電化製品などを「自分で修理する権利」が制度化へ動きだしているが、この分野について日本はまだまだ後進国> 「これ、例の宝物」。長い間会っていなかった京都の友達がカフェのテーブルに真結びしてある風呂敷包みをポンと置いた。裁縫師をやっているということもあって、彼女は風呂敷がよく似合う。結びを解いてみると、布の切り端がたくさん詰まっていた。色とりどりで素朴な美しさもあるが、ボロいとも言える。......これが宝物? 切り端はある年配の女性に丸ごと譲ってもらったものらしい。戦後を日本の雪国で過ごしてきた方。 衣服やその材料が手に入りにくい状況下で、女性たちは使い古した着物や羽織、掛け布団などを米のとぎ汁に漬け置いた後、分解してはその切り端を使って継ぎはぎすることで、あらゆる布製のものを直したり、また新たに作り上げたりしてきた。その風呂敷に包まれていたのは、そういう大切にされてきた「ボロ布」
<「言葉の壁」を恐れる気持ちもわかるが、できるようになるのを待っていては一生無理。コロナ後は留学で世界の扉を開こう> 音楽に取り組む高校生から、「私、留学したほうがいいと思う?」と聞かれた。「イエス」と即答しかけた。世界で活躍できるチャンスがあるなら、そのチャンスをつかんだほうがいい。留学がそのチャンスをつかむきっかけになるかもしれない。ただ、「したほうがいいかどうか」よりも「したいかどうか」のほうが大切な質問だ。 コロナ前の2019年6月に発表されたある調査を思い出した。高校生の留学に関する意識調査で、日本、アメリカ、中国、韓国を比較したもの。日本の高校生は、「外国へ留学したいと思わない」と回答した人が5割弱いて、4カ国中で最も多かった。日本の若者は「内向き志向」だとよくいわれるが、その傾向を示す調査結果だと思う。 意識調査で挙げられた理由はいろいろある。「母国のほうが暮らしやすいから」
<日本独自の文化に憧れ、ついに茶道のお稽古に通い始めた。その歴史を知ると、真面目でナイーブな印象の強い日本人の違った側面が見えてきた> こう見えて、私は日本好きの日本びいきだ。あと2年で還暦を迎えるという年齢になり、日本文化を深く知りたいという気持ちも一層強まってきた。 もちろん中国にも歴史のある文化がたくさんあるが、「わびさび」といった日本独自の文化に憧れるのだ。 とりわけ興味があったのが、茶道である。仕事に追われ、なかなか余裕がなかったが、ついにこの春からお稽古に通い始めた。 そのおかげで日本人の意外な一面も知ることになったのだが、その前にまず、昨年11月に東京タワーの近くの増上寺で開かれた展示会の話をしたい。年に数回行われる、京都の業者が茶道具などを展示即売する催しだ。 興味半分で行ったのだが、偶然にもある掛け軸が私の目に飛び込んできた。「無一物」と書かれたそれは、江戸後期の臨済宗の
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