■ 論考:中央アフリカにおける国家の崩壊 ■ 武内 進一 ■ 『アフリカレポート』2014年 No.52、pp.24-33 (画像をクリックするとPDFをダウンロードします) 要 約 中央アフリカでは、2013年3月、当時のボジゼ政権がムスリムを主体とする武装勢力セレカの攻撃によって瓦解して以降、宗教の差異を基軸とする対立が激化し、暴力に歯止めがかからない状況が続いている。こうした「宗教対立」の根本には、政治秩序の崩壊がある。現在の混乱は、植民地化以前の奴隷狩りをも含む長期の歴史過程において中央アフリカ国家に埋め込まれた矛盾の噴出と解釈できる。フランスをはじめとする国際社会の関与は、人道危機を緩和する効果があった一方で、結果として国土の分断を促した。事態は依然として流動的だが、中央アフリカが政治秩序の確立に失敗すれば、国際安全保障上の著しい脅威となることは避けられない。 はじめに 中央アフ