円形が特徴の、バチカン銀行の建物 photo:Reuters バチカンの暗部といわれるのが、法王庁の資産を管理・運用してきた宗教事業協会、通称「バチカン銀行」だ。マフィアなど闇の世界の資金洗浄(マネーロンダリング)に使われているとの疑惑が絶えない。現法王フランシスコは、その改革にも取り組むが、文字どおり「命がけ」だともいわれる。 サンピエトロ広場に一歩足を踏み入れれば、そこはイタリア捜査当局の手の届かない別の国、バチカン市国だ。イタリアのマフィアや保守政治家にとって、税逃れの手段として「うまみ」がある。 バチカン銀行が生まれるきっかけとなったのは、1929年のラテラノ条約だ。独立国の権利を得るのと引き換えに広大な法王領を放棄した。その見返りにイタリア王国から賠償金として支払われた現金7億5000万リラが原資となった。 71年にバチカン銀行総裁となった米国人の大司教ポール・マルチンクスは、伊