タイトルは物欲しげだが、日本の話は前半の100ページだけ。内容は、今年出た原著なき訳書とほぼ同じ楽観論だが、そのリアリティも薄らいだ。前著でも懸念されたように、安倍政権とともに「古い政治」が息を吹き返しているからだ。 特に本書もいうように、農業の改革は重要である。政策としては話題にもならないが、農水省の予算は3兆円で、農業以外のすべての産業を所管する経産省の予算の4倍近い。日本の農業補助金は世界最高(1世帯あたり12万円)で、財政赤字の原因になっているばかりでなく、貿易自由化を阻害して内外価格差の原因になり、労働生産性の低い兼業農家を温存して地方経済の活性化を阻害している。それなのに、安倍内閣の農水相は、なんと「利権の帝王」松岡利勝氏だ。 著者は、『国家の品格』に代表される一知半解の「グローバリズム批判」には容赦しない。藤原氏などが「日本の古い伝統」と錯覚しているものは、たかだか明治以