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GWの過ごし方
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英語圏の学術出版の奇妙な点の1つは、題材がどれほど難解であろうと、本のカバーにイラストを載せたがることだ(フランス語圏やドイツ語圏ではこうはならない)。これは恐らくビジネスのためにやっているのではなく、単なる慣習に過ぎない。表紙を絵にしたところで学術書の売上が伸びるなどとは思えないからだ。いずれにせよ、こうして哲学者は苦境に立たされることになる。若手のデザイナーに「結局この本は何についての本なんですか?」と聞かれるはめになるのだ。 そんな事情もあり、大学院生の頃、私の学位論文の指導教員だったトマス・マッカーシーが、フランシスコ・デ・ゴヤのとある絵を見つけてきたときの興奮は、今でもありありと思い出せる。それは、「理性の眠りは怪物を生む」という文言が刻まれたエッチングの絵だった。マッカーシーは、長年にわたりアメリカにおけるハーバーマスの右腕として活躍し、ハーバーマスの記念碑的著作『コミュニケー
進歩的な社会変革を実現するのが難しい理由の1つは、社会の仕組みがよく分かっていないことである。私たちは、エイリアンのテクノロジーの断片を、内部機構もよく分からないままいじくっているようなものだ。私たちに観察できるのは、その内部機構へのインプットと、それが生み出すアウトプットだけである。実際、マルクスの仕事が未だに魅力を持ち続けている理由の1つは、歴史的発展の基本法則を発見したと謳っていることだ。そうすることでマルクスは、社会主義に「科学的」地位を与えようとした。もう、過去の「空想的」社会主義者たちのようにあてずっぽうで行動を起こす必要はない、というわけだ。マルクスの理論によって、人間に課された制約が正確に突き止められ、どんな介入を行えば解放的な帰結がもたらされるか(あるいはもたらされないか)を事前に知ることができる、とされた。 マルクスの提示した具体的な理論は間違っていることが明らかとなっ
この独特な国についてつらつら考えてみると ひょっとしてこの何年かで初めてかもしれない.先日,X で間違いなく興味深いことが起きた.X で日本語ツイートが英語に自動翻訳されて,英語圏ユーザーのおすすめに表示されはじめたんだ.他国に比べて,日本の人たちの X 利用率はずっと高い.その理由の大半は,X では本名を明かさずに投稿できるおかげで素性を知られないまま私的な生活について公開で発言できることにある.たいていの人は私生活でこのプラットフォームを利用しているので,もっぱら政治論議に利用されている英語圏の X に比べて,日本語の X はずっと毒性が低い. だから,〔日本語ツイートの〕正気と健全性が流れ込んできて英語圏の X ユーザーが歓喜したのも,ムリはなかった.風変わりな日本のネット文化のいろんな楽しみに喜んだのは,言うまでもない.ぼくの予想では,このハネムーン期は短期しか続かず,やがて英語圏
Photo by Dōmei Tsushin via Wikimedia Commons それぞれの同盟関係は強まりつつあるし,兵器は配置されつつある 上に載せた写真は,1939年におきた「ノモンハンの戦い」(ノモンハン事件)の一コマだ.この戦いは4ヶ月続いた.実のところ,これは1935年に宣戦布告なしで事実上はじまった大日本帝国とソビエト連邦の戦争のなかの大きな局面でしかない.開始から4年後の1939年に,第二次世界大戦がはじまる.この戦いの勝者はソ連だった.戦車をよりよく用いたその勝利は,のちにおとずれた第二次世界大戦の帰結を予示していた. この事例にありありと現れているのは,こんなことだ――公式には第二次世界大戦はドイツのポーランド侵攻で始まったけれど,最終的な大戦の勃発を予示していた紛争や,やがて世界大戦と合流していった紛争は,それより数年前,1930年代中盤にはじまっていた.第二
「ゲーム・オブ・スローンズ」という人気ドラマの序盤にこんなシーンがある。ピーター・「リトルフィンガー」・ベイリッシュが、女王のサーセイ・ラニスターと話している最中、偉そうな口調で「知は力なり」と語った。するとラニスターはしばらく彼を見つめ、護衛たちに対して、彼を捕らえて喉を掻き切るよう冷酷に指示した。 命令が実行に移される寸前で、ラニスターは護衛たちに動きを止めるよう指示した。そして、少し笑いながら、取り乱し不安に怯えるベイリッシュに向かって、「力こそが力なのだ(power is power)」、そのことを覚えておくのが身のためである、と言い放った。 このシーンの根底にあるテーマは、もちろん昔ながらのものだ。すなわち、権力(power)はどんな性質を持つのか、それは何に存するのか、という問いである。ラニスターは、伝統的な「ハード・パワー(hard power)」の立場をとっている。「ハード
Art by Nano Banana Pro AI がモノになるとしても,そして,すごく急速に採用がすすんだとしても,利益はうまないかもしれない 実は,AIバブルとその崩壊の可能性についてはすでにたくさん記事を書いてきた.8月には,データーセンターの資金調達をプライベートクレジットで行うと,いざバブルが崩壊したときに金融危機につながりかねないおそれがあるんじゃないかと論じた.続いて,収益性についての記事を書いて,AI 業界はみんなの予想よりもずっと競争が激しいかもしれないという考えを投げかけてみた.10月には,AI がアメリカ経済を下支えしている状況について書いた. それでもさらに記事を書こうかなって思い立ったのは,ほぼすべての AI バブルに関する論議で,決定的に重要なシナリオが取り上げられずにいるのを目にしているからだ. 一連の記事を書いてから,「いまの AI はバブルだ,もうじき弾け
2026年1月、イランでの抗議活動とそれに続く血なまぐさい弾圧が展開される中、私はオーディオブックやポッドキャスト『The Rest is History』シリーズを聴きながら、1979年のイラン革命への知見を深めていた。 [1]原注:ジェームズ・クラベルの1986年の〔イラン革命を題材とした〕叙事詩的小説『旋風』を強くお勧めする。 また同時に、デジリー・A・デシエルトとの共著論文『市民社会の力』の校正作業も進めていた。論文は現在、『Journal of Comparative Economics』誌に掲載されている。 論文では「いかなる状況下で、抗議活動が独裁政権を打倒できるのか?」という問いを扱っている。 昨年12月から今年1月にかけて、イランでの急騰するインフレ、通貨リアルの暴落、経済的失政を受けて始まった抗議行動は、現体制を完全変革する要求へと集約していったが、いまだ中・長期的な帰
Image via Kareem Rifai 新しいイラン戦争について考えたことを少々 さらに AI について記事を書いて公開するつもりだったんだけど,そこにアメリカとイスラエルによるイラン攻撃が起きた.なので,今回はそっちを取り上げようか. 昨年6月,イスラエルはイランに対して一連の攻撃を実施し,大した抵抗も受けなかった.トランプは短い間ながらこれに加わってイランの核施設に2回ほど空爆を行った.その後,ホワイトハウスはこんな声明を意気揚々と出した――「イランの核施設は壊滅した――そんなことはないという主張はフェイクニュースだ.」 これは明らかに事実とちがっていた.かくして,あれから8ヶ月後のいま,トランプは壊滅したはずのイラン核施設を一掃するという名目でさらなる攻撃を命じている. 6月のときはイラン攻撃について記事を書かないことにした.なぜって,単純に,そんなに重要そうに思えなかったから
高市首相の大勝利で,日本のポップカルチャーはどうなるだろう? 総理大臣就任からわずか3ヶ月後,高市早苗首相はあやうい賭けに出た――議会での自民党の力を堅固にすべく,「電撃解散総選挙」を実施するという賭けだ.その結果は,日曜に出た.高市は大勝利を収め,自分の掲げる政策に国民の信任を確保した(というより,正確には,信任を確保したと彼女は信じている――これについては末尾でさらに触れよう.) ぼくは政治評論家じゃない.なので,高市が掲げている各種の政策を詳しく分析する任は,Observing Japan のような専門家たちに委ねたい.ただ,高市が賛否を大きく分ける人物である点は,異論がないはずだ.高市は日本ではじめての女性首相でありつつ,「女性の平等に反対姿勢をとっている」と広く目されている.高市は「歯に衣着せず」発言する姿勢が称賛されているけれど,同時に,自民党の大きな金銭スキャンダルはいまも終
ポールからこんな質問をもらった.「2025年選挙でなにが起きたの?」 私の説明――「民主党と『ニューヨークタイムズ』は2024年に間違った教訓を学んでしまったんだよ」 週末にどうもどうも. うれしいことに,この木曜にポール・クルーグマンといっしょに,2025年選挙やその結果からわかることについてお喋りする機会をもらえた.まずは最近の大きな話題を取り上げて――バージニア・ニュージャージ-・ペンシルヴァニア・ジョージアその他で民主党が予想以上に健闘した件――それから深掘りして,どの集団がいちばん大きく支持を変えたのか,そして,そこから2026年にどんなことが起こりそうか語り合った. 今回のおしゃべりで出てきた話題からめぼしいのを選りすぐってみると: 第一に,〔最近の〕投票結果から,それまで何ヶ月もずっと世論調査が物語っていたことが確認された:トランプはひどく不人気だし,彼の政策アジェンダも不人
エージェント型コーディングアプリに世間が驚嘆しているところで,そろそろ「AI はまだみんなの仕事を奪っていないの?」をまた取り上げよう.このところ,世間の注目は,もっぱら若い大卒者たちに注がれている.これまでの図式はこんな具合だ――「AI は主に知識労働を自動化する.ソフトウェア開発・法務サービスなどがその対象だ.だから,AI は他のどの職種よりもホワイトカラー初級職の雇用に大きく影響する.」 これが,Brynjolfsson et al. (2025) の説だった.そして,マイク・コンツァルの新しい投稿の話題でもある: Source: Mike Konczal〔点線が歴史的パターンから予想される水準を示すのに対して,実線は実際の水準を示している.オレンジの点線・実線が大卒新卒者の失業率〕 コンツァルはこう述べている: ここに見てとれるように,22歳~27歳の非大卒者たちは,労働市場が減速
from a photo by the Cabinet Public Affairs Office of Japan, CC BY 4.0. 日本は平和主義から脱却しつつある.これにともなって,興味深い経済的な機会があれこれと生まれそうだ. 日本は議院内閣制の国だ.大統領はいなくて,総理大臣がいる.なので,高市早苗が去年の10月に首相になったのは党内の総裁選で勝ったからであって,国民からの信任を得たからじゃなかった.これは彼女にとって問題だった.というのも,彼女が所属する自由民主党(略して「自民党」)は,だいたいいつも与党の座にいるけれど,実は議会で強固な多数派を制していなかった.高市政権が出来た後に長く連立パートナーだった小政党の公明党が自民党との連立を解消したとき,こう考える人たちもいた.「これで高市政権は短命に終わるかもしれない」「議席不足で政権が身動きとれなくなるんじゃないか」 そ
進化をめぐって最も長く続いている論争の一つが、当初「集団淘汰」と呼ばれていたものについてだ。しかし、以下で説明するように、これはマルチレベル(多階層)淘汰(multilevel selection:MLS)と呼ぶほうが適切である。 元来の集団淘汰は、自然淘汰が(個体や遺伝子に対してではなく)集団に作用し得るという考えのことだった。この考え方は、個体にとって不利益であっても、集団にとって有利な形質がどのようにして進化的に選好されるかを説明するために用いられた。特に重要な問題となっていたのは、協力の進化を理解することにあった。初期の定式化(特に有名なのがV.C.ウィン=エドワーズよるもの)は、非常に素朴なもので、集団(あるいは種全体)にとっての協力の利益を単に仮定するだけで、個体が協力のコストを負担せず協力の成果から利益を得るというフリーライド(ただ乗り)の利益を考慮していなかった。 その後、
〔本エントリは、政治学者のヤシャ・モンク(Yascha Mounk)氏が創設したオンライン・マガジンPersuasionに掲載されたものであり、ジョセフ・ヒース教授の許可に基づいて翻訳・公開している(元記事はこちら)。〕 編集部 本エントリを、私たち〔Persuasion〕の新シリーズ「リベラルな徳と価値(Liberal Virtues and Values)」の記事の1つとして掲載できることを嬉しく思います。 リベラリズムが脅威に晒されている、というのは今やクリシェになっています。ですが、そうした決まり文句が反リベラリズムの世界的な復活になんら太刀打ちできていないのも事実です。その一因は、リベラリズムが、市民の支持を取り付けるにはあまりにも「薄い」思想と見なされがちであること、そして、リベラル自身が道徳的な語彙で物事を語るのを恐れすぎていることです。対照的に、リベラリズムの敵対者たちは、
フェイクニュースへの曝露から因果効果を測定することは決して容易ではない。単純な相関関係だけでは、反エスタブリッシュメント政党を支持することへの影響を測定するのは不十分だからだ。実際、人はフェイクニュースに曝露して投票行動を変化させるのか、それともあらかじめ抱いていた政治信念から「誤情報のバブル」に流入するかを判別するのは難しい。 「フェイクニュース」が、ポピュリスト政党や反エスタブリッシュメント政党に有利になるように偏向していることは否定しがたい事実だ。政治色が強く誤情報がネット上で拡散し続けている状況において、フェイクニュースの拡散が最近の選挙結果に影響を与え、ポピュリスト政党の台頭の原因になっているのではないかと多くの人が疑問を抱くのも当然である。本稿は、イタリアで行われた自然実験の証拠を検証し、2018年の総選挙において、フェイクニュースが2018年の総選挙における政治的選好に、分か
ちょうど1年前の今週、ドナルド・トランプが第47代アメリカ大統領に就任した。FiftyPlusOne.newsの調査によれば、就任時のトランプの純支持率〔支持率から不支持率を引いた差し引きの値〕は+5だった。波乱に満ちた第1期(2021年1月6日の議事堂襲撃事件の後、過去最低の支持率を叩き出して終わった)にもかかわらず、有権者たちは彼に再びチャンスを与えようとした。 だが、アメリカの有権者たちはもはや彼にチャンスを与えようとしていない。現在の調査では、純支持率は平均で-16となっており、就任当初の+5に比べ大きく落ち込んでいる。この21ポイントの下落は、就任1年目の成績に対する世論の評価として、少なくとも1948年以来最低の記録である。再選を果たした歴代大統領の2期目の支持率と比較しても、第2次トランプ政権の1年目の成績は、調査史上ほぼ最低である。唯一の例外はリチャード・ニクソンだ(当時ニ
ここ数か月、日本の長期国債利回りは急上昇している。この状況を、英国で長期国債利回りが同様に急騰した「不運な」リズ・トラス政権になぞらえる声もある。以下はブルームバーグの報道だ。 今回の暴落により利回りは記録的な水準に達し、日本が「リズ・トラス・モーメント」に向かっているのではないかという懸念が高まり、スコット・ベッセント米国財務長官は、日本国債の値動きを6標準偏差の動き〔100万分の3ほどの確率〕と表現し、説明と安心材料を求めた。 こうした日英の比較がなされる理由は明白で、日本の新しい政権が拡張的な財政政策を推進しているからだ。 主要な原因については、あまり異論がない。日本はインフレ率の上昇に対応し、それが金利を押し上げ、市場に長年続いてきた安定を揺るがしている。さらに、高市早苗首相が来月の解散総選挙を前に支持を固める狙いで、食料品の消費税を一時的にゼロにする計画を示していることも、財政政
イギリス、ロンドンでレザ・パフラヴィーの写真を掲げる人々。(写真:マーティン・ポープ/SOPA Images/LightRocket via Getty Images) イラン政府はその権威に対するかつてない挑戦を受けている。イラン政府が完全な情報遮断を実施した数日後にイランから出国したジャーナリスト兼哲学者のルーホラ・ラメザニによるこの記事を掲載できることを、我々編集部は喜ばしく思う。イラン国内で起きている蜂起を直接目撃したルーホラによる、街頭で広まっている新しい抵抗イデオロギーを分析したものだ。 —編集部 何十年ものあいだ、世界はイランを、ステロタイプ、つまり非常に時代遅れになりつつある色眼鏡で見てきた。「文明の衝突」、「改革のための闘い」、感動的な修辞「女性・生命・自由」といったものだ。欧米の観察者たちは、自らの政治的分法に当てはまるナラティブをイランに求めてきた。 しかし今、イスラ
アメリカ政府によるニコラス・マドゥロの誘拐劇の中で生まれた珍場面の1つは、トランプ大統領がトゥルース・ソーシャル〔トランプ自身が立ち上げたソーシャルメディア〕に慌ただしく大量の画像を投稿したことだ。私はこれを見ていて、春休み中に撮った写真のうちどれが一番かわいく映っているかを決めきれず、全部アップロードしてしまう学生を見ているような気分になった。 恐らく、オサマ・ビンラディン殺害作戦の経過を見守るホワイトハウス戦況報告室を思い起こさせるような象徴的なイメージを作りたかったのだろう。冷静沈着な男たちが集まって(女人禁制!)、画像の外にあるスクリーンを険しい表情で見つめている。メッセージは明白だ。「見てくれ、俺たちはめちゃくちゃ真剣で重要な仕事をしてるんだぜ」。だがこうした写真は、わざとらしさのせいで狙った効果をかえって損なっている。そのため、歴史が今まさに動いている瞬間というより、素人劇団に
過去10年の社会正義を巡る議論の中でとりわけ疑問の余地あるものの1つは、人種的・民族的統合を達成する戦略としての「カラーブラインドネス」には何かしら間違った点がある、という主張だ [1] … Continue reading 。実際、厳密にカラーブラインドな(あるいは「アイデンティティ・ブラインド」な)制度的手続きを求めることはそれ自体がレイシズムの一種だ、という主張が一時期は大流行りだった。もちろん、厳密なカラーブラインドネスが正義に関する広く共有された直観と衝突してしまうような、極端な事例を考え出すことは可能である。このために不幸にも多くの人は忘れてしまっているが、圧倒的大多数のケースにおいて、個人間の平等を達成する最良の方法は、本人に選択できない特徴に基づく不当な比較をやめさせることである(そしてそのための最良の方法は、不当な比較の基盤として利用できる情報に意思決定者がアクセスできな
血まみれになって、屈辱を受けた政権はさらに悪辣になるかもしれない。 2026年1月3日の米国による攻撃後のベネズエラ最大の軍事施設での火災。(写真提供:AFP via Getty Images) まず最初に言うべきことは、ニコラス・マドゥロとその妻をベネズエラから拉致した驚嘆すべき大胆な襲撃は、ドナルド・トランプにとって真に歴史的な勝利である。アメリカは一人の犠牲者も出すことなく、特異なまでに破壊的な存在――記録的な犯罪と失政によって、何百万人ものベネズエラ国民人生を荒廃させ、西半球全体の政治を不安定化させた独裁者を捕縛したのだ。 18ヶ月前、ニコラス・マドゥロは、大差で敗北したことが明らかだった選挙を不器用に盗んでから、ベネズエラ国家を巨大な犯罪シンジケートとして運営し続けていた。 マドゥロは、隠然たる権力を握っている妻シリア・フロレスと共に、私が思いつくどんな人物にも劣らず刑務所の独房
気候変動は、将来世代を含む私たち人類に深刻な影響を及ぼすでしょう。私たちは、将来世代から地球を「借りている」に過ぎず、地球環境を汚さずに子どもたちやその孫たちへと受け渡す義務を負っているのでしょうか? こうした問題に答えるために、トロント大学のジョセフ・ヒース教授は、バイロイト大学(University of Bayreuth)にて5日間にわたる講義を行ってくださいました。テーマは「気候変動と将来世代への義務」。この講義で、地球環境変動生態学コースの学生たちは、気候変動政策の失敗やイノベーション、「成長の限界」運動の背景にある誤った前提、炭素税の割引率、そして、私たち全員が気候変動を抑制するために行為しなければならない理由について、ヒース教授と議論する機会を得ました。 なぜ気候変動政策を扱い始めたのか 素晴らしい講義をしていただきありがとうございました。まず、ヒース教授がなぜ気候変動問題を
多くの人と同様、オンタリオ州政府がついに腰を上げ、気候変動問題へのアクションを起こした様子を私は注意深く観察していた。だが、オンタリオ州が炭素税ではなくキャップ・アンド・トレードを選んだことには大変がっかりさせられた。昨日までは、カナダには2つのモデルが存在した。ブリティッシュ・コロンビア州の炭素税制度と、ケベック州のキャップ・アンド・トレード制度だ。オンタリオがケベック側についたことで、カナダ全体がキャップ・アンド・トレードの方向へ向かうティッピング・ポイントとなってしまった。私の考えでは、これは最善の結果ではない。次善の結果だ。 どうしてこうなったのか? この事態は、過去20年のカナダで起こってきた最も重要な政治的変化(と私が見なしているもの)のもたらした帰結だ。すなわち、穏健保守のほぼ完全なる崩壊である。実際、カナダにおける中道右派の代表的論客たち(アンドリュー・コインやタシャ・ケイ
だいたい10年に1回くらい,中国によるレアアース独占について騒ぐ言論が出てくる.前回は,2010年にポール・クルーグマンが書いた文章がそれだった: なんとも不思議なことに,こういうことが起きてるのに国家安全保証の面ですら誰も警鐘を鳴らしていない.政策担当者たちときたら,アメリカのレアアース産業が閉業していくなか,ただ手をこまねいている(…).その結果,中東の石油国家の暴君たちすら夢見ることのない独占の立場が生じている. (…)この事態で,アメリカの政策担当者たちの無為無策ぶりが浮き彫りになっている.信頼できない体制が重要な物資を完全に掌握しているさなかに,彼らはなにもしなかった. この文章が出て数年後に,この危機が誇張されているとぼくは指摘した: 中国政府は,一時的な独占力を利用したがっているかもしれないし,そうではないかもしれない.ただ,中国の生産者たちは合法・非合法どちらの面でも輸出禁
木々の葉が色を変え始め、朝の空気はますます張りつめている。秋がやってきたのだ。そうなると、男の考えが自然と向かうところと言えば……そう、狩りである。私はというと、少々ひねくれているところがあるので、狩りについて考えることはあまりない。かわりに考えるのは銃規制のことだ。 私たちカナダ人は、アメリカ人と違って何世紀も前の憲法に縛り付けられてはいないので、カナダ社会において銃の所有を認める確立した権利は存在しない。さらに、政治家も裁判官も、銃の所有権を認めるべきだと考えてはこなかった。実際、銃器法(Firearms Act)に関する最高裁判決は、銃の「権利」を巡る議論にはっきりととどめを刺した。現在の連邦政府〔スティーヴン・ハーパー政権〕は、想定し得る範囲で最も銃に友好的な部類に入る [1] … Continue reading 。 だが一部の人々は、まだこのことに気づいていないようだ(特に西部
私は現在、本業の哲学の仕事で、費用便益分析に関する非常に長い論文を書いている真っ最中だ [1]訳注:Joseph Heath, The Machinery of Government, Chapter. 5: Cost-Benefit Analysis as an Expression of Liberal Neutrality. 。関連する文献を読み込む中で、キャス・サンスティーンによる次の一節に感銘を受けた。この一節は、サンスティーンが政府の仕事を辞めてアカデミアに戻ってから書いたたくさんの興味深い文章の中の1つ(「規制当局:神話と実態(The Office of Regulatory Affairs: Myths and Realities)」)に出てくる [2]訳注:ヒースは恐らく、Cass R. Sunstein “White House Review of Regulation
どんなにダサい分野でも、「批判的(critical)」という語をつければ少なくとも多少はかっこよくなる、というのは学術の世界において語られざる前提となっているように思われる。そのため、時を経るごとに、「批判法学」や「批判的人種理論」だけでなく、「批判的コード研究」だとか「批判的大学研究」まで現れだす始末だ。私のお気に入りは「批判的ジェノサイド研究」である。従来のジェノサイド研究は、ジェノサイドという現象にあまりに甘かったという含みを持たせているのだ。 実際、私たちは「過剰批判(overcritique)」の時代を生きている。その大きな帰結の1つは、アカデミアの中で「批判それ自体への批判」という動きが活発になっていることだ。雰囲気を掴んでもらうために、トム・ボーランド(Tom Boland)の著書『批判のスペクタクル(The Spectacle of Critique)』の冒頭に位置する印象
ジェームズ・カーヴィルは政治コンサルタントで、アメリカ民主党に最も影響力を持っている戦略家の一人だ。1992年の大統領選挙時に主任選挙参謀を務め、「経済だよバカモノ」というキャッチフレーズでビル・クリントンを当選に導いたことで有名だ。 ジェームズ・カーヴィル、写真提供:JD Lasica/Socialmedia.biz カーヴィルは定期的にニューヨーク・タイムズ紙に寄稿していてるが、どれも傾聴に値する記事だ。何十年も民主党の戦略階層に深く関与してきたことから、彼の著述から、民主党の党内力学がどうなっているのか、あるいいはどんな影響を与えようとしてるのかを見て取ることができる。 例えば、2025年2月25日寄稿「民主党は政治的大戦略で蛮勇に踏み切るべき時だ」では、民主党に向けて「ひっくり返って、死んだふりをしろ」とアドバイスしている。この「戦略」提案から、民主党は2024年11月の壊滅的な敗
カリフォルニア大学サンディエゴ校の入学に関する評議会レポートで,数学と読解で学生の技能が急激に低下しているのが記録されている――前から危ぶまれていた件だけど,今回は大学内部から警報が響いている. 本学は真に憂慮すべき状況にある.2020年から2025年にかけて,数学の〔習熟度別〕クラス分け試験の結果で中学校レベルの基準に満たない新入生の数が30倍近く増加している.カリフォルニア大学本部が定める最低限の数学カリキュラムを超える範囲を,そうした学生のほぼ全員が履修済みであり,多くが高い成績評価を与えられていたにも関わらず,そうした水準に留まっているのである.2025年度新入生クラスでは,この集団が全体のおよそ 8分の1を占めている.同程度の割合の学生が,高校卒業レベルの達するために追加の作文コースを受講しなくてはならないが,同じ2020年~2025年の期間にこちらの割合は大きく変わっていない.
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