はじめに 電気回路を学び始めると、抵抗、コイル、コンデンサーという三つの素子が、ごく自然なものとして現れます。高校でも大学でも、これらは「回路の基本素子」として導入されます。しかし、改めて考えてみると、これは少し不思議です。 そもそも、電流を流すだけなら、導線と電池があれば十分そうに見えます。にもかかわらず、人類はなぜわざわざ、電場をためるコンデンサーや、磁場をためるコイルを回路に持ち込んだのでしょうか。なぜ「ためる」「遅らせる」「戻る」「振動する」といった、いかにも面倒そうな性質を、回路の中に組み込む必要があったのでしょうか。 この問いは、単なる部品の使い方の話ではありません。むしろ、エネルギーがどのように保存され、どのように行き来し、どのようなときに振動が生まれるのか、という物理学の根本に触れる問いです。コイルとコンデンサーは、電気回路の中に、力学でいう「慣性」と「復元」を持ち込んだ素