「失われた20年」。バブル崩壊以降、低成長を続ける日本経済は、このようにネガティブに表現されることがほとんどだ。だが、あたかも既成事実のようにこの言葉が先行した結果、評価されるべき事実を見落としている可能性はないのだろうか。スイスのチューリッヒ大学で日本研究を専門とするステファニア・ロッタンティ博士とゲオルグ・ブリント博士は、この時期を日本の「失われなかった20年」と評して我々の意表を突く。本連載では、立命館大学の琴坂准教授との対話を通して、日本の常識を覆す新たな視座が提供される。連載は全4回。(翻訳協力/我妻佑美) 非正規雇用増加の背景には ポジティブな理由がある 琴坂 さて、前回の対談では、バブル経済前の1988年と東日本大震災直前の2010年の雇用統計を比較すれば、非正規雇用の比率が増加したのは、非正規雇用の大幅な増加が原因であるといえる、という指摘がありました。絶対数に関しても、非