サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
TGS2024
d.hatena.ne.jp/TRiCKFiSH
今月11日に吉田大八監督の映画『桐島、部活やめるってよ』が公開され、25日に拙著『ギャルと不思議ちゃん論』が出版されました。 『桐島、〜』にかんしては既に『WEBRONZA』誌で「“スクールカースト”を精緻に描いた『桐島、部活やめるってよ』」という論考を書いたり、ネットストリーミング番組『WOWOWぷらすと』(これはもしかすると今後YouTubeにアップされるかも?)や、『ニコ生PLANETS・8月号「徹底評論:夏休み映画SP」』で話しました。 『ギャルと不思議ちゃん論』は、発売されて直後にAmazonでは品切れになりましたが(ありがとうございます!)、現在は在庫復活しております(→リンク)。 さて、僕がこの『ギャルと不思議ちゃん論』で唯一残念だったのは、この映画『桐島、部活やめるってよ』について言及できなかったことです。試写状が来なかったのでタイミング的に仕方なかったのですが、本書とこの
お久しぶりです。 拙著『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(原書房)が、8月25日に発売になります。 今回はそのチラシができましたのでご報告します! 目次一欄もこちらから読めますゾ! Amazonでは現在、絶賛予約開始中です! よろしくお願いします!ギャルと不思議ちゃん論: 女の子たちの三十年戦争作者: 松谷創一郎出版社/メーカー: 原書房発売日: 2012/08/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る- - - - - - - - - - - - - - -コギャル、アムラー、ガングロ、age嬢、戸川純、シノラー、裏原系、きゃりーぱみゅぱみゅ……海外からも「カワイイカルチャー」として注目される日本の若い女性たちの文化が、いかにして生まれ、社会と関係してきたかを精緻に描きだす。80年代前半から現在までを、ギャルと不思議ちゃんという視点で切り取って見えてき
湊かなえによるベストセラーのミステリー小説の映画化。とは言え、原作を単純に映像化せず、中島哲也独特の演出によって大幅に原作と印象が異なる出来になった。それは、5年、10年に一本の出来と言ってもいい。 物語は、ある中学校の終業式の日から始まる。1年生を受け持つ若い女性教師・森口悠子(松たか子)は、ホームルームの時間に、学級崩壊のごとく大はしゃぎする生徒たちに、滔々と話し続ける。数ヶ月前、学校のプールで幼い娘を失った彼女は、その死が事故によるものではなく、このクラスの生徒2人・少年A(西井幸人)と少年B(藤原薫)による殺人だと“告白”し、そのプロセスについて説明する。 以降の物語は、少年Bの母親(木村佳乃)、同じクラスの少女(橋本愛)、少年A、それぞれの独白=告白がシャッフルされて描かれていく。原作で言えば、1章はそのままで、2章以降がミックスされて進んでいく。冒頭の30分を除けば、ほとんどは
07年『パッチギ! LOVE&PEACE』以来の、井筒和幸監督の新作。吉本興業の若手芸人コンビ・ジャルジャルを起用したバイオレンス映画だが、不良・ヤンキーを描いた『ガキ帝国』などと異なり、いわゆる“DQN”を題材としている。作中で描かれる出来事も、実際に4年前に起きた事件をモデルとしており、そこでのDQNの論理の描写は、『シガテラ』など、古谷実の一連の作品に匹敵する水準である。 お笑い芸人を目指し上京してきた鈴木ユウキ(福徳秀介/ジャルジャル)は、お笑い養成学校の先輩で、元相方の剛志(桜木涼介)に誘われて、ヒーローショーのアルバイトを始める。しかし、剛志は恋人の美由紀(石井あみ)を同僚で大学生のノボル(松永隼)に寝取られたことに怒り、ショーの最中に大乱闘を起こす。剛志は、友人の鬼丸兄弟(阿部亮平、ジェントル)に頼んで、ノボルとその友人の勉(米原幸佑)を袋叩きにし、100万円を要求する。やら
●Twitter試写会の問題点はなにか? 松竹が配給し、5月29日に公開される『RAILWAYS』という映画がある。『ALWAYS 三丁目の夕日』を制作したプロダクション・ROBOTが創った作品だ。しかし、この作品の宣伝で、かなりまずいことが行われようとしている。それが「リアルツイッター試写会」だ。 これは、一般から募集された60人が、スクリーンで映画を観ながら、携帯電話からTwitterでつぶやくという試写会だ。募集の条件が「フォロアー50人以上」であることから、それなりの波及効果を狙っているものだと推察できる。 この宣伝に対して、既に疑問を呈しているひとは多くいる。代表的なものを以下にふたつ紹介しておく。・「映画監督入江悠 日記 - Twitterをしながら映画を観ること。【RAILWAYSの試写会】」http://blog.livedoor.jp/norainufilm/archiv
これまで幾度も映像化された筒井康隆の中編小説の映画化。と言っても、物語は筒井原作をベースとした外伝的なオリジナル作品。主演の仲里依紗の力によって十分な魅力を持つ作品となったが、原作テーマの把握など、脚本の追い込みが甘い。演出○、脚本×、俳優◎という印象。 大学に合格したばかりの芳山あかり(仲里依紗)だったが、ある日、研究者の母・和子(安田成美)が交通事故で意識不明となる。あかりが病室に赴くと、和子は目を覚まし「1972年の4月、深町一夫に会いに行く」と起き上がろうとする。あかりは病身の和子のかわりにその時代に行くことを決意し、母親の研究室に行って彼女が研究していたタイムリープの薬を入手。しかし、誤って1972年4月ではなく1974年2月に行ってしまう。あかりは、そこで知り合った大学生の涼太のアパートに転がり込み、いっしょに深町一夫を捜すことになる。 『時をかける少女』は、これまで映画では3
●前編目次・日本映画産業全体の推移・シネコン増加が鈍化・劇場の各種割引きサービスについて・『ROOKIES』『ヱヴァ:破』の大ヒット:日本映画ヒット作1位〜5位・『ヤッターマン』『クローズZERO II』のヒット要因:日本映画ヒット作6位〜10位・過去最高のヒットとなった『名探偵コナン』:アニメヒット作・『沈まぬ太陽』『劔岳 点の記』:日本映画ヒット作11〜20位・『サマーウォーズ』『赤い糸』:日本映画ヒット作21〜34位●後編(→リンク)目次・好調を維持する東宝・状況が改善しつつある東映・『おくりびと』がアカデミー賞を受賞した松竹・海外映画会社のローカルプロダクション・他の製作・配給会社の成績・インディペンデント系映画会社の倒産が相次ぐ・各テレビ局の製作作品・今年の見通し 過去3年と同様、今年も日本映画製作者連盟(映連)が先日発表した日本映画産業統計を読み解きながら、日本映画界を分析して
過去3年と同様、今年も日本映画製作者連盟(映連)が先日発表した日本映画産業統計を読み解きながら、日本映画界を分析していく。http://www.eiren.org/toukei/index.html ●日本映画産業全体の推移□2009年(平成21年)全国映画概況[括弧内は前年比]○入場人員/1億6929万7000人(105.5%)○興行収入/全体:2060億3500万円(105.7%)・興行収入/邦画:1173億900万円(101.3%)・興行収入/洋画:887億2600万円(112.3%)・興行収入/シェア=邦画:洋画=56.9%:43.1%○平均入場料金:1,217円(+3円)○公開本数/全体762本(-44本)・公開本数/邦画:448本(+30本)・公開本数/洋画:314本(-74本)○映画館数:3,396スクリーン(+37scr) 興行収入、動員ともに2年ぶりの増加となった。興行収
監督:クリント・イーストウッド/製作:ロリー・マクレアリー、ロバート・ロレンツ、メイス・ニューフェルド、クリント・イーストウッド/製作総指揮:モーガン・フリーマン、ティム・ムーア/原作:ジョン・カーリン/脚本:アンソニー・ペッカム/撮影:トム・スターン/音楽:カイル・イーストウッド、マイケル・スティーヴンス/出演:モーガン・フリーマン、マット・デイモン、トニー・キゴロギ、パトリック・モフォケン、マット・スターン、ジュリアン・ルイス・ジョーンズ、アッジョア・アンドー、マルグリット・ウィートリー、レレティ・クマロ、パトリック・リスター、ペニー・ダウニー/制作プロダクション:Spyglass Entertainment、Revelations Entertainment、Malpaso Productions/日本配給:ワーナー・ブラザーズ/北米配給:ワーナー・ブラザーズ/原題:"Invictu
沖縄戦での集団自決の教科書記載をめぐる問題は、従軍慰安婦問題同様、大きな論争を呼びそうである。 今回、沖縄で2~3万人集めたデモと、それに反対する層との間ではひとつだけメタ合意が発生している。それは「真実(史実)とは何か?」という問題設定をしていることである。 今回は「(文章化された)記録(=史料)はないが、当事者の証言はある」という事態だが、このとき「記録がないから事実はない」とするか、「証言はあるから事実もある」とするか、という対立が生じている。「史実(=真実)」をめぐる争いとは、「客観的事実判断」を基準としそれを採用するフェイズにおいて生じる。 しかしながら、「客観的事実判断」は常に価値判断から自由ではない。「A」と「B」という「客観的事実」が“あった”としても、「A」を描写し、「B」を描写しない時点で「価値判断」を採用している。誰もが納得できる「客観的事実判断」などはありえない。
「2009年・この日本映画が面白い!」に引き続き、昨年の日本映画のまとめ第二弾としてU-30(30歳未満)の俳優に注目をしてみる。 僕はリアルタイムでドラマを観ることがほとんどないので(だいたいDVDでまとめて観る)、上戸彩や相武紗季のように、TVドラマを中心に活動する俳優についてはここでは扱わない。あくまでも、昨年面白い映画に出演した注目すべき俳優のみである。 2000年代になって、人気俳優が積極的に映画へ出演するようになった。たとえば、柴咲コウや小栗旬、蒼井優、松山ケンイチ、妻夫木聡、田中麗奈などがそうだ。 彼らが映画を選ぶ理由のひとつに、制作現場の充実がある。映画はドラマと比較すると時間をかけて作品を創る。予算もかかっているし、スケジュールもタイトではない。逆に、ドラマの現場はテレビ局の経費削減もあって、非常に厳しい状況になっている。仕事でさまざまな俳優にインタビューしていると、TV
先日書いた「2009年・この日本映画が面白い!」に引き続き、2009年の外国映画についてまとめる。対象となる作品は、昨年2009年の1月1日から12月31日までに公開された外国映画だ。 評価基準も日本映画編と同様である。〈1〉プロダクト(作品)としての完成度〈2〉映画(映像)表現としての新規性〈3〉作品テーマの新規性 〈2〉と〈3〉は厳密には分けることはできないが、便宜的に分けている。〈2〉は表現論的な見地からの新規性で、〈3〉はどちらかと言えば社会反映論寄りの評価ということになるだろうか。 とは言え、外国映画の上位20作品ほどは、どれも完成度が高いために甲乙はつけがたい。なので、一応は順位をつけているが、あまりそれには意味がないと思っていただいて結構である。 また、前回の日本映画編のブックマークで、以下のようなコメントをいただいたので、ここで補足しておく。作品の評価基準は大賛成だが、だか
監督・脚本:片渕須直/原作:高樹のぶ子『マイマイ新子』/演出:香月邦夫、室井ふみえ/キャラクターデザイン:辻繁人/作画監督:浦谷千恵、尾崎和孝/美術監督:上原伸一/色彩設計:橋本賢/音楽:村井秀清、Minako "mooki" Obata/主題歌:コトリンゴ/声の出演:福田麻由子、水沢奈子、森迫永依、本上まなみ/制作プロダクション:マッドハウス/製作:エイベックス・エンタテインメント、松竹、マッドハウス、山口放送/配給:松竹/2009年11月21日/93分 そろそろ公開終了。 高樹のぶ子の児童小説を原作としたアニメ映画。映像は優れているし、構成も悪くないが、突き抜けることができなかった作品だ。 舞台は、昭和30年代の山口県防府市国衙。平安時代の遺跡が残るこの町で過ごす、おでこにマイマイ(つむじ)のある小学3年生の新子(福田麻由子)。彼女が通う小学校に、東京から貴伊子(水沢奈子)が転校してき
今年は、いつもの年よりも意識的に映画を多く観た。しかも、珍しく試写や劇場にも足繁く通ったので、今年公開された映画はかなり観た。 というわけで、今年の1月1日から12月31日までに公開された日本映画について、まとめて書いてみる。いわゆるベストテンである。総評やワースト作品については後半触れる(なお、外国映画編については、『アバター』をまだ観ていないので後日)。 僕の評価基準には、いくつかポイントがある。 もっとも重要なのは、プロダクト(製品)としての完成度だ。テーマ(味や思想)はともかく、ひとつの作品として完成しているかどうかという点。 次に重要なのが新しさ。要は、過去に類似作があるかどうか、あるいはジャンルムービーであればそのなかで際立っている点があるかどうか、さらには、俳役が新鮮かどうか等々。 その次に来るのが、テーマの新しさ。いまの時代に合っているかどうか、ひとむかしのテーマではないか
例年どおり、今年も1月末に2008年の日本映画産業統計が発表された。http://www.eiren.org/toukei/index.html 昨年、一昨年に引き続き、今年もこの統計を読み解いていく。●日本映画産業全体の推移□2008年(平成20年)全国映画概況○入場人員:1億6049万1000人(前年比98.3%)○興行収入/全体:1948億3600万円(前年比98.2%)・興行収入/邦画:1158億5900万円(前年比122.4%)・興行収入/洋画: 789億7700万円(前年比76.1%)・興行収入/シェア=邦画:洋画=59.5%:40.5%○平均入場料金:1214円(前年比-2円)○公開本数/全体:806本(前年比-4本)・公開本数/邦画:418本(前年比+11本)・公開本数/洋画:388本(前年比-15本)○映画館数:3359スクリーン(前年比+138scr) 全体の興行収入は
クリスマスイヴ、飯島愛の死去を知ったのは、某映画会社での取材からの帰途、日比谷の路上であった。驚いたものの、意外ではなかったというのが正直な感想だ。 僕は、結局彼女にインタビューをすることはなかった。彼女の評判は、複数のところから聞いていた。面倒見が良く、誰に対しても分け隔てなく接するタイプだったようで、非常に評判は良かった。ただし、「(テレビと同じ)あのまんまの人だよ」という評判は聞かなかった。 彼女の急逝に意外性を感じなかったのは、これまで元AV女優に夭折した人が多いからかもしれない。桃井望や林由美香、里中まりあなど、元AV嬢が変死するのは、これまでにもよくあった。 ただ、それよりも、やっぱり頭のどこかにあったのは、岡崎京子『pink』の主人公のことだろうか。そういった感想を飯島自身が書いた詞を引用しつつ語っているのが、以下のブログだ。すべてではないが、同意する点は多い。 http:/
とりあえずひととおり観たので、僕の今年の日本映画&外国映画ベスト15を発表します。この30本はお薦めできます。 ○日本映画(括弧内は配給会社)1位『歩いても歩いても』監督:是枝裕和(シネカノン)2位『アフタースクール』監督:内田けんじ(クロックワークス)3位『闇の子供たち』監督:阪本順治(ゴー・シネマ)4位『クライマーズ・ハイ』監督:原田眞人(東映/ギャガ)5位『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』監督:塚本連平(ギャガ)6位『ラブファイト』監督:成島出(東映)7位『崖の上のポニョ』監督:宮崎駿(東宝)8位『容疑者Xの献身』監督:西谷弘(東宝)9位『ザ・マジックアワー』監督:三谷幸喜(東宝)10位『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』監督:若松孝二(若松プロダクション)11位『青い鳥』監督:中西健二(日活)12位『人のセックスを笑うな』監督:井口奈己(東京テアトル)13位『イキガミ』監督:瀧
●竹熊健太郎さんの証言とにかく、当時を知る人間として、ここではっきり書いておきますけど、「おたく」という言葉は、最初から「おたく」の間だけで流通していた「自分たちを差別する言葉」だったということです。竹熊健太郎「中森明夫「おたくの研究」をめぐって(2)」(2005年)より これは、もう3年も前の竹熊健太郎さんの証言です。竹熊さんは、当初(宮崎勤事件以前まで)、〈オタク〉という語を頻繁に用いていたのは、〈オタク〉たち自身であったと、これまで幾度もブログや本で言及されています。 しかし、このような証言は、実はそれほど多くはありません。とくに、当事者である〈オタク〉の方々からこうした証言はさほど聞かれません。 その理由として考えられるのは、80年代に〈オタク〉という呼称を用いていたのは、ごく限られたひとだけだったということが、まず考えられます。〈オタク〉第一世代と呼ばれる1960年前後に生まれた
●竹熊健太郎さんの証言とにかく、当時を知る人間として、ここではっきり書いておきますけど、「おたく」という言葉は、最初から「おたく」の間だけで流通していた「自分たちを差別する言葉」だったということです。竹熊健太郎「中森明夫「おたくの研究」をめぐって(2)」(2005年)より これは、もう3年も前の竹熊健太郎さんの証言です。竹熊さんは、当初(宮崎勤事件以前まで)、〈オタク〉という語を頻繁に用いていたのは、〈オタク〉たち自身であったと、これまで幾度もブログや本で言及されています。 しかし、このような証言は、実はそれほど多くはありません。とくに、当事者である〈オタク〉の方々からこうした証言はさほど聞かれません。 その理由として考えられるのは、80年代に〈オタク〉という呼称を用いていたのは、ごく限られたひとだけだったことが、まず考えられます。〈オタク〉第一世代と呼ばれる1960年前後に生まれたひとび
今朝、仕事しながら、NHKで平和祈念式典を観る。意識的ではないのだけど、なぜか毎年この日のこの時間には起きているような気がする。式典そのものは、善くも悪くも年中行事と化していて、例年のごとく小学生が「平和への誓い」を読みあげていた。 今年は、坊ちゃんがりで小太りの背の低い男の子と、将来美人になりそうな背の高い女の子が、「子供代表」だった。男の子は、「原爆詩人」として知られる峠三吉の詩を、とても情感たっぷりに読み上げていた。「兄弟を返せー!」「私を返せー!」と。 正直、そういうのが醒める。 峠三吉の詩がダメだ、ということではない。優等生タイプの子が、大勢の参列者が見守るなかで、“未来に夢を持つ純粋な子供”として、情感たっぷりに原爆の詩を読み上げる姿に、なんとも醒めるのだ。 いまはそんな醒めた自分に冷静になれるけれど、子供の頃は、なんともいえない複雑な気持ちで、その光景を眺めていたような気がす
『夕凪の街 桜の国』は映画も原作もいい作品なのだが、主人公・皆実は基本的に原爆には受け身である。それが誰かによる加害の結果(人災)ではなく、まるで天災のような出来事として捉えられている。正直、こういった作品が現代で強く支持されるという状況には、ちょっと戸惑いを覚えるのもたしかだ。そして、そういった状況招かざるを得ないモニュメントが広島には存在する。 平和公園の原爆慰霊碑に刻まれている文言は「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」というものだ。つまり、原爆を落としたのが、誰か明確ではない。その理由は、1983年に置かれた日本語と英語の説明版に書かれている。「碑文はすべての人びとが原爆犠牲者の冥福を祈り戦争という過ちを再び繰り返さないことを誓う言葉である。過去の悲しみに耐え憎しみを乗り越えて全人類の共存と繁栄を願い真の世界平和の実現を祈念するヒロシマの心がここに刻まれている」。主語は
現代美術グループ・chim↑pomが、広島現代美術館での展覧会に際して、広島市の上空で飛行機の煙を使って「ピカッ」という文字を書いたパフォーマンスをしたところ、被爆者団体から抗議に合って謝罪し、展覧会も自粛する結果にいたった。 広島で生まれ育った僕にとって、こうした即座の謝罪や自粛発表まで含めて、それはヒロシマではありがちな、どこか見た光景でしかなく、正直「ヒロシマ的予定調和またひとつ完成」という感じである。 ゲリラでやる以上は謝罪しては元も子もないし、そんなヒロシマ的予定調和を招きたくなければ、事前に上手く交渉すれば良かっただけの話だ。少なくとも、原爆語りに疑義を呈することがタブーと化している街・ヒロシマで、一朝一夕には問題提起することなんてできるわけがない。60年以上続いているタブー=思考停止の街なのだから。 しかし、その後におこなわれた蔡国強による、原爆ドームそば(厳密には市民球場と
アメリカの高校生を10ヵ月追ったドキュメンタリー。アメリカ青春映画好きにはたまらない一作であり、クオリティも非常に高かった。 監督は、『くたばれハリウッド』のナネット・バースタイン。舞台は、アメリカ・インディアナ州ワルソウ(字幕では「ワルシャワ」)。ここは、白人とクリスチャンと共和党支持者が多い、保守的かつ典型的な中西部の町だ。人口も12,500人ほどの小さな町である。カメラが追うのは、この地区の唯一のハイスクールである、ワルソウ・コミュニティ・ハイスクールに通う5人の学生だ。彼らは、高校生活のラストイヤーを過ごしている。 メーガン・クリズマティックは、生徒会の副会長で父親は外科医。学校ではヒエラルキーのトップに君臨するクイーン・ビー(女王蜂)だ。父親が外科医の彼女は、姉や兄と同様に、自らもノートルダム大学への進学を希望している。 ジェイク・トゥッシーは、マーチングバンド部に所属し、『ゼル
Wiiで今度発売される『プロゴルファー猿』が、『ファミ通』レビューで史上最低点を出したことが話題となっている。http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1183570.html 以下のプロモーション映像を観るかぎりはけっこう面白そうなのだが。 さて、『プロゴルファー猿』のゲーム化は今回がはじめてではない。ファミコンディスクシステムで、バンダイから87年に出たことがある。これは、実は傑作だったのである。 そしてそういえば、僕はこのゲームについてのレビューを10年前に書いていたのであった。そのことを思い出して昨日自分の原稿を読み直したら、まるで今回のWii版を予見しているのかのようで、面白かった。原稿のラスト、24歳の僕からゲーム業界への説教が入ってるのだが、あまり効果はなかったようだ(笑)。 以下、転載する。なお、この原稿を寄せた本はもちろんのこと絶版
もう2ヶ月ほど前になるが、産経新聞に「洋画離れ止まらず 興行収入4割減少」という記事が載った。http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/080822/tnr0808222107010-n1.htm この記事では、業界関係者が外国映画離れの理由を「DVDの低価格化」「若者が字幕を読まなくなった」などと話しているが、もちろんそんなに単純な話ではない。このようなことになったのには、非常に複雑な背景がある。 最近出した拙著『最新コンテンツビジネスのすべてがわかる本』(共著/日本能率協会マネジメントセンター)からデータを引きながら、この理由について解説していく。●日本の映画興行状況 まず、日本の映画状況をおさらいしておこう。 2年前(2006年)、日本映画の興行収入が21年ぶりに外国映画を上回ったことが話題となった。しかし、映画興行の全
『SFマガジン』で連載されていた、若手批評家のデビュー論文。手放しで褒めることはできないが、けっこう面白く読んだ。 「大きな物語(=一元的な社会規範)」が消滅したゆえに、めいめいが任意の立場を取る「決断主義」の乱立でバトルロワイヤル状況になっている現代社会を、サブカルチャー作品を例に挙げながら読み解いていく。軸は社会評論(社会学)だが、例として挙げるドラマやアニメなどサブカルチャー作品批評にもかなりページを割いている。 正直、社会評論(社会学)としても、サブカルチャー批評としても中途半端な印象は否めない(読者ターゲットは後者だと思うのだが)。そこには方法論的にかなり重大な問題も潜んでおり、素朴な(古典的かつ社会反映論的な)文化社会学の粋に留まっている。社会評論としては、宮台真司、東浩紀と、90年代以降に論壇で活躍した学者・批評家を踏まえた読み解きは、概ね妥当性はあるのだが、それをサブカルチ
今週末、23日から公開される人気ギャグマンガの映画化。松山ケンイチが主演だからこそ、十分な仕上がりとなった。 原作は若杉公徳の同名マンガ。主演は松山ケンイチ。他に、松雪泰子、加藤ローサ、細田よしひこ、秋山竜次(ロバート)。監督は『お父さんのバックドロップ』の李闘士男、脚本はドラマ『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』や映画『インストール』の大森美香。製作幹事・配給は東宝。 主人公は、カヒミ・カリィが好きで田舎から上京し、アコースティックギターを持って音楽活動をしていた根岸崇一(松山ケンイチ)。しかし、彼は売り込みをかけた事務所の女社長(松雪泰子)に騙され、気がついたらデスメタルバンド「デトロイト・メタル・シティ(DMC)」のヴォーカル兼ギター・ヨハネ・クラウザーII世になっていた。大学の同級生だった相川さん(加藤ローサ)に恋し、実家の大分では母親(宮崎美子)に暖かく見守れている崇一が、煩悶しながら
大ヒット確実の4年ぶりの宮崎駿監督作品は、良く言えば「不思議な映画」、悪く言えば「変な映画」であった。観ているときの感覚は、不思議な夢を見ているときのそれに近かった。 脚本と原作も宮崎駿。声優は、奈良柚莉愛と土井洋輝の子役を、山口智子、長嶋一茂、天海祐希、所ジョージなどが固める。製作委員会は、徳間書店から独立したスタジオジブリが今回から幹事となり、他が日本テレビ・電通・博報堂DYMP・ディズニー・三菱商事・東宝。公開スクリーン数は日本映画歴代最多の481。 舞台は、海と坂の町。船乗りの父親(長嶋一茂)と老人ホームで働く母親(山口智子)のひとり息子である宗介(土井洋輝)は、5歳の男の子。ある日宗介は、家の崖下の海で、ガラスビンに頭がハマって動けなくなっている小さな赤い魚・ポニョ(奈良柚莉愛)を見つける。宗介はガラスを割ってポニョを助けるが、謎の波に襲われてポニョを連れ去られてしまう。一方、海
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『d.hatena.ne.jp』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く