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米国のインターネットサイトThe Journal of Democracy に2022年2月22日に公開された標記の論文(原題はWhat Putin Fears Most)を翻訳し、日本語版読者の皆さんにお届けする。 ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。ロシアのプーチン大統領は皆さんに、侵攻はNATO(北大西洋条約機構)のせいであると信じてもらいたいと考えている。動員された19万人に上るロシア兵や海兵ではなく、NATOの東方拡大がこの危機の主因であるとしばしば(この侵略が始まった際のロシア国民に向けた演説を含めて)主張してきた。 「ウクライナ危機は西側諸国の過ちにより引き起こされた」と主張する米国の政治学者ジョン・ミアシャイマーの2014年の『フォーリン・アフェアーズ』の挑発的な論考以来、NATO拡大に対するロシアの反動という物語がウクライナでこれまで継続してきた戦争を説明するための(正
最近、腸と脳が頻繁に情報を交換していることが注目されている。腸内細菌の働きも含めてそのバランスが崩れると、心身の健康を損ない、認知症やうつ、自閉症にもつながることが分かってきた。過敏性腸症候群の第一人者で東北大学心療内科教授の福土審さんにそのメカニズムを解説してもらった。 福土 審 FUKUDO Shin 東北大学大学院医学系研究科心療内科学分野教授・東北大学病院心療内科科長。1983年東北大学医学部医学科卒業、医学博士。米デュ-ク大学医学部研究員などを経て、1998年東北大学心療内科助教授、1999年より現職。専攻は心身医学・行動医学。機能性消化管障害国際ローマIII, IV, V委員会委員。著書に『内臓感覚──脳と腸の不思議な関係』(NHKブックス)など。 脳と腸の密接な関係 「腹黒い」「腹の虫が治まらない」「腑に落ちる」「断腸の思い」……。日本語には、内臓にまつわる慣用句が多い。怒り
この4月から成人年齢が「18歳」に引き下げられる。18歳の高校生にはすでに選挙権があるが(2016年改正公職選挙法施行)、「大人」として新たな社会的権利や責任が生じる。コロナ下で新成人となる10代は、どんな社会認識や悩み、将来像を持っているのだろうか。世代特有のメンタリティーを探る。 土井 隆義 DOI Takayoshi 1960年山口県生まれ。社会学者。筑波大学人文社会系教授。著書に『「宿命」を生きる若者たち』『若者の気分―少年犯罪〈減少〉のパラドクス』『友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル』など多数。 減少する少年犯罪 ネット依存やいじめ、経済格差など、若者に関わるさまざまな社会問題の論考で知られる土井隆義教授は、もともと犯罪社会学が専門だ。 「少年刑法犯は1993年頃から急激に増えて2003年に1つのピークを迎え、それ以降は激減しました。決して社会環境が良くなったわけではなく
1972年2月19日、連合赤軍の銃を持った若者5人が「あさま山荘」に人質を取って立てこもった。当時は全共闘運動が勢いを失い、一部の過激派が武装化していく時代だった。あれから半世紀、「あさま山荘事件」とは一体何だったのか──。 「あさま山荘事件」は、今から50年前の1972年2月19日に起きた。銃を携えた5人の若い男が長野県軽井沢の河合楽器の保養施設・あさま山荘に侵入、管理人の妻(31歳)を人質にとり10日間にわたって籠城、包囲する警察・機動隊に対して発砲を繰り返した事件である。10日目の2月28日に警察側が強行突入に踏み切り、人質は無事救出されたものの、警視庁第2機動隊隊長と特科車両隊の中隊長が銃撃され殉職した。さらに4日目の22日に警備の虚をつき山荘の玄関に行った民間人が刑事と見なされて銃弾を受け、入院中の病院で3月1日に死亡、犠牲者は3人に及んだ。 28日の午後6時過ぎ、警察側からの催
インターネットの普及で紙媒体の衰退が著しい。中でも新聞業界の苦境は深刻だ。業界の雄として長年君臨してきた朝日新聞社とて例外ではない。2020年度決算では創業以来最大となる大赤字を記録、早期退職者の応募には数多くの社員が応じるなど、かつてない激震が築地本社を襲っている。一体、朝日新聞社の中で何が起きているのか。同社OBがその内幕を明かす。 デジタル化の波に乗り遅れた朝日 朝日新聞社に「エー・ダッシュ(A’)」という社内報がある。季刊で発行される60ページほどの冊子だ。新規事業の説明や職場の話題などが紹介されている。2021年の夏号は、新聞の電子版など同社が力を入れるデジタル事業の特集を組んでいるが、時代の波に翻弄(ほんろう)される大手プリントメディアの苦悩や窮状が紙背からじわりとにじみ出す内容になっている。 社内報の冒頭は、新社長が21年6月の株主総会に報告した20年度決算や個別の事業報告に
2021年からさかのぼること30年前の12月25日、ソビエト連邦大統領ゴルバチョフの辞任をもって、世界最大の帝国ソ連が崩壊した。その時、何が起こっていたのか? 国民の反応はどうだったのか? 日常生活はどう変わったのか? モスクワに在住し、歴史的転換期の目撃者となった国際関係アナリストの北野幸伯氏が当時を振り返る。 ソ連とは何だったのか? 「ソ連」と言われても、若い世代はイメージできないだろう。そこで、まずソ連について、簡単に触れておく。 1917年、ロシア革命が起こった。そして22年、ソビエト社会主義共和国連邦(略称ソ連)が成立した。ソ連はユダヤ系ドイツ人カール・マルクスの共産主義思想をベースに創られた最初の国である。 共産主義とは、何だろうか。いろいろ説明はあるが、「万民平等で豊かな世界を目指した思想」と言える。こう書くと、いい思想なのか?と思える。 しかし、共産主義は人類歴史を「階級闘
手塚治虫に見いだされ、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、藤子・F・不二雄らと共に、マンガ表現の地平を切り開いてきた水野英子さん。スケールの大きな物語と斬新な描写で人気を誇ったが、70年代以降、激変する業界の中で、働く“シングルマザー”として険しい道のりを歩んできた。その功績がいま再評価されている水野さんに、これまでの軌跡を聞いた。 水野 英子 MIZUNO Hideko 1939年生まれ。少女マンガ家の草分け的存在で、東京・豊島区のトキワ荘で若き日を過ごした日本の代表的マンガ家たちの中の紅一点。55年デビュー。代表作に『星のたてごと』『白いトロイカ』など。1970年『ファイヤー!』で小学館漫画賞、2010年日本漫画家協会賞・文部科学大臣賞。 手塚治虫の『漫画大学』に衝撃 水野さんが生まれたのは漁港の街、山口県下関だ。満州にいた父親は終戦後の混乱で行方不明になり、母親の実家で育った。その母も早く亡く
80年代半ば、レゲエ音楽にデジタル革命をもたらし、“モンスター・リディム”と称される「スレンテン」。その誕生の裏側には、カシオ計算機(本社:東京都渋谷区)の電子キーボードと新卒の女性開発者の存在があった。スレンテンのルーツ・奥田広子さんが、初めてベールを脱ぐ。 スレンテンのルーツはカシオトーンの音源 ジャマイカのシンガー、ウェイン・スミスの『Under Mi Sleng Teng(アンダ・ミ・スレンテン)』は、レゲエの世界に革命をもたらしたと言われる。友人のノエル・デイヴィーと2人で、カシオの電子キーボードを使って作曲したダンスホール・レゲエだ。1985年に大ヒットすると、デジタル音の心地よく、常習性のあるリズムは、またたく間に世界中に広がっていく。 レゲエでは、ドラムとベースのリズム体を「リディム」や「バージョン」、「オケ」などと呼び、これを繰り返すことで曲に鼓動を生む。同じリディムで複
安倍晋三政権に始まり、菅義偉政権へと継承されていた「アベノミクス」。しかし、「新しい資本主義」を標榜(ひょうぼう)する岸田文雄首相の登場により、その看板が下ろされようとしている。そこで、アベノミクスとは何だったのか、日本経済にどんな影響を与えたのか、安倍氏は所期の目標を達成したと言えるのか、経済評論家の加谷珪一氏が総括する。 岸田政権は所得の再分配を重視する「新しい資本主義」を掲げている。岸田氏は自民党総裁選の段階から「小泉改革以来の新自由主義的政策を転換する」と発言しており、安倍政権や菅政権の経済政策とは一線を画す方向性を明確にしてきた。だが、アベノミクスとは、そもそもどのような経済政策だったのか、この部分をはっきりさせなければ、岸田政権の新しい資本主義についても正しく評価することはできないだろう。 初期に打ち出された「3本の矢」の意味 安倍政権の経済政策であるアベノミクスの評価は真っ二
Home トピックス 新たな “越境作家” グレゴリー・ケズナジャット『鴨川ランナー』:「日本語と英語、“2人”の違う自分を生きる」 京都市が2019年、新人作家の発掘を目指して創設した「京都文学賞」は、「海外部門」を設けて留学生をはじめ外国籍の人が日本語で書いた小説にも門戸を開く。21年春、満場一致で「海外部門」のみならず「一般部門」でも最優秀賞に選ばれたのは、米国出身グレゴリー・ケズナジャットさんの「鴨川ランナー」だ。自らの体験を色濃く投影した作品が生まれた背景を聞いた。 グレゴリー・ケズナジャット Gregory KHEZRNEJAT 1984年、米国サウスカロライナ州生まれ。2007年、クレムソン大学を卒業後、外国語指導助手として来日。17年、同志社大学大学院文学研究科国文学専攻博士後期修了。現在は法政大学グローバル教養学部准教授。21年、「鴨川ランナー」で第2回京都文学賞受賞。
これらの即身仏を護持しているのは、いずれも江戸時代に湯殿山信仰の拠点となった寺院である。湯殿山の御宝前(ごほうぜん、明治以降は御神体)は山そのものでなく、温泉の湧き出る巨岩。温泉に含まれる鉱物が固まった「温泉ドーム」と呼ばれるもので、湯殿山は古来より出羽三山の奥の院として崇められてきた。 1641年に羽黒山が天台宗に統一されて以降、出羽三山では天台宗と真言宗の対立が深まった。徳川幕府の公認を得て巨大な勢力となった天台宗に対して、真言宗側は寺社奉行に訴訟を起こして、「三山のうち、羽黒山・月山は天台の山、湯殿山は真言の山」という裁定を得た。 即身仏となったのは一代限りの修行者を意味する一世行人(いっせいぎょうにん)で、門前集落の出身ではなく、外部から来た下層の宗教者である。真言宗側は、湯殿山で一世行人を修行させることで宗教的能力を体得させ、布教の前線で活動させて天台宗に対抗した。江戸時代に庄内
中国語の習得が、今、世界的にホットなトレンドの一つとなっている。米国に次ぐ経済大国として中国の存在感が高まっていることで、ビジネスチャンスに結び付けようという人も少なからずいる。そんな中で、あえて、「台湾華語」と呼ばれる、台湾なまりの中国語を勉強する日本人が増えている。2013年から日本で華語を教える筆者が教え子達とのエピソードからその背景を明かす。 北京語とは異なるアクセントの台湾華語 台湾華語教室で春連(新年を祝う張り紙)を書く学生。2017年撮影 「先生、お疲れさまでした」 授業の最後に、生徒たちが教師に深々と頭を下げるのを見ると、心が温くなる。2013年に中国語を教えるために来日して以来、いつも目にする光景だ。日本人は老若男女を問わず、教えを乞う相手に、常に礼儀正しく接してくれることに、心癒される。 今、中国語の習得が世界的なトレンドとなっているのは周知の通りだが、筆者が東京で教え
最近の傑作香港映画を紹介する「香港映画祭2021」が始まり、関西を皮切りに、名古屋、東京などで未公開作品を含む計4作(東京のみ7作を予定)が上映されている。大規模デモから国家安全維持法の導入まで、政治的な激動を経た香港。映画祭の上映作品の一つで、少年野球チームの伝説的活躍の実話をもとに制作された作品『最初の半歩』(原題:點五步)を紹介したい。 「香港のKANO」と呼ばれた作品 2016年に香港で制作された本作『最初の半歩』は、香港の学校で生まれた野球チームの物語だ。野球の経験がほとんどない落ちこぼれの学生たち10人が、野球を熱愛する校長の指導によって実力をつけ、香港の大会で「野球先進地」の米国人や日本人のチームとも互角に戦いながら、人生の転機をつかんでいく。 舞台は英中交渉で香港の返還が正式に決まった1980年代。大国の都合に翻弄される香港と、大人の都合に悩まされる若者たちの苦しみが重なる
新語・流行語・今年の漢字 コロナに翻弄された2021年、せめて「チルい」年末を : 三省堂の辞書編集者が選ぶ2021年の新語 言語 社会 2021.11.30 『三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2021」』の選考会が11月30日、都内で開催され、気持ちがゆったりした、身心の緊張を解くような心地よさを表す若者言葉「チルい」が大賞に選ばれた。 「ナウい」「エモい」の流れをくむ選び抜かれた外来語 年末に出版社や検索エンジン各社が発表する「今年の新語」や「最も検索された言葉」は、1年の総括として注目される。三省堂では、「辞書に収録するにふさわしい後世まで残る言葉」を選定しており、単なる流行語とは一線を画するのが特徴だ。 chill out(落ち着く)から派生した「チル」は2010年代後半から「チルする」「チルってる」「チルな」「チルい」など若者を中心にさまざまな品詞に活用されて使われてきてい
暗号資産(仮想通貨)市場の伸長が著しい。時価総額は今や3兆ドル(約342兆円)に達し、米国では初めてビットコイン(先物)連動型のETF(上場投資信託)が上場されるなど、存在感を高めている。こうした中、国内最大級の暗号資産取引所の売却交渉が密かに進められていた。売却先の候補には中国資本の企業も含まれており、経済安全保障面で危惧する声が高まっている。 時価総額300兆円を超えた暗号資産 日本最大級の暗号資産取引所「bitFlyer(ビットフライヤー)」が内外企業と売却交渉を進めている。その過程で明らかになったのが、日本の経済安全保障体制の立ち遅れだ。岸田政権は経済安全保障を進め、日本のデータ主権を回復できるかが問われている。 新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界各国の中央銀行の量的緩和政策で、内外の金融市場が活況を呈している。中でもインターネットを通じたデジタル資産である暗号資産は一時の不振を
中央アジア5カ国はそれぞれ、異なった外交アプローチでアフガニスタンを見ている。タジキスタンがタリバンを敵視する一方、ウズベキスタンとトルクメニスタンは「新しい現実」を受け入れ、経済交流の維持・発展を期待する。 国境の向こうの別世界 筆者はアフガニスタンに行ったことはない。しかし2006年にタジキスタンの国境沿いの道から見た風景は衝撃的だった。タジキスタン側も悪路だとはいえ舗装されていて、私が乗せてもらったランドクルーザーを含め、きれいな車が多く走っていた。しかしパンジ川(アム川上流)の向こうのアフガニスタン側には、未舗装の細い道と、日干し煉瓦造りで窓ガラスのない建物が見えた。まるで違う時代の世界が隣り合っているように思えた。 歴史的には、アフガニスタンと中央アジアは明確に区切られてはいなかった。バクトリア、サーマーン朝、ティムール朝など多くの王朝・国家が両方にまたがる領域を持った。しかし中
「ラノベ」の潮流:“無双チート”からスローライフまで「異世界転生」小説がかなえる“親ガチャ”大当たりの願望 文化 社会 暮らし 2021.11.10 若者向けのライトノベルでは、さえない現実を生きる主人公が「異世界」に「転生」して活躍する物語が次から次に生み出されている。その人気の秘密はどこにあるのだろうか。 不遇な主人公が「ナーロッパ」に転生 「ライトノベル」(略して「ラノベ」=軽い文体で書かれた若者向けの娯楽小説。多くがコミック化、アニメ化されている)には、“異世界転生モノ”と呼ばれるジャンルがある。2010年代以降「小説家になろう」という投稿サイトを中心に、次から次に生みだされた。ゆえに「なろう系」と称されることもある。 異世界転生の物語を大ざっぱに、いささか強引に説明すると、こうなる。現実世界で「不遇」な生活(ブラック企業で働いている、無職、“ぼっち”<=ひとりぼっちで友人がいない
よいと思った本だけを並べる書店主に表現者たちが信頼を寄せ、文芸誌が始まった。ここは熊本の内外の表現者がつながる地下水脈だ。 硝子の扉を押し開けると、いつものようにカウンターの内側から店主が振り向いた。「おかえり」と、その人、田尻久子さんがニコッと笑い、店を訪ねることのできなかった時間を思った。 熊本城のふもとに広がる城下町、電車通りから一歩路地に入った古いビルの2階。入り口の左手にはカウンター席。背後のゆったりとした喫茶席は一面の窓から陽の光が差し込む。扉の右手に4000冊ほどの本が並ぶ橙(だいだい)書店は、田尻さんが編集人を務める文芸誌「アルテリ」の編集室でもある。 さまざまな材質の木板を使って天井のかなり高いところまで書棚が組みあげられ、小説、エッセイ、詩集、写真集や画集などが静かに客を待っている。丸い木の椅子も小さな机も、空間にある家具はすべて時間を経ていて、質素だが美しい。 熊本に
Home トピックス 映画『グリーン・ライ~エコの嘘~』:持続可能性がセクシーだって? だまされやすい消費者にならないために 米タイム誌が2019年の「今年の顔」に選んだのは、16歳(当時)の環境活動家、グレタ・トゥーンベリ。気候変動に対する取り組みを先送りし続ける大人たちに、いい加減にお金のことばかり考えるのはやめろと迫った。彼女の問題提起とリンクするのがオーストリア発の本作だ。「環境への配慮」をアピールする企業が、どんな「嘘」をついているかに切り込んでいく。 2009年に世界80カ国以上で上映された『プラスチック・プラネット』で、地球に氾濫するプラスチックの問題を先んじて世に広く提起したオーストリアのドキュメンタリー映像作家、ヴェルナー・ブーテ。 そのスタイルは、予期せぬ出来事を捉える観察型ではなく、書かれたシナリオに沿って取材対象に迫るルポルタージュ型と言える。一人称で語りながら、レ
中国による台湾侵攻に対し、世界的に懸念が高まっているが、かつては台湾も「大陸反攻」を掲げて、大陸への上陸作戦を練り上げていた時代があった。蒋介石総統による共産党政権打倒への思いは強く、作戦発動の寸前までいったこともあった。蒋介石の夢であった大陸反攻を阻んだのは、皮肉なことに、共産党から台湾を守った台湾海峡だった。 日本人が作った「最初の反攻計画」 蒋介石にとって、波乱に満ちた生涯の中で、大陸反攻は最後の夢だった。国共内戦で一敗地に塗(まみ)れた蒋介石は、1949年、中華民国の国家機能をそっくり台湾に遷移させ、台湾を拠点に中国全土の再統一を目指した。蒋介石は大陸反攻を最優先目標として「一年準備、二年反攻、三年掃討、五年成功」とのスローガンを唱えた。 中国共産党も「台湾解放」を目標としていたので、台湾海峡を挟んだ国共両者が相手を打倒する機会を狙っていたことになる。ただ、1950年代から60年代
大学生の性行動は80年代から90年代にかけて活発化した。ところが、2005年をピークにキス経験、性交経験ともにマイナスに転じている。特に、女子でその傾向が強い。 日本性教育協会が2017年に実施した全国調査で、女子大学生の性交経験率が36.7%となり、ピークだった2005年の62.2%からは25.5ポイント低下。約20年前にあたる1999年の50.5%、1993年の43.4%も大きく下回った。「草食男子」が新語・流行語大賞のトップ10入りしたのは2009年。それ以降、「恋愛に奥手な男子」のイメージが強まっているが、調査結果からは女子の方がより性的な行動に慎重になっていることが読み取れる。 調査は日本性教育協会が1974年以降、ほぼ6年おきに実施。2017年は中学生4449人、高校生4282人、大学生4194人を対象に実施した。大学生のデート、キス、性交の経験は2005年までは上昇したが、そ
宮崎徹『猫が30歳まで生きる日』:腎臓病からアルツハイマーまで体内の「ゴミ掃除」で「治せない」病気を治す People 健康・医療 科学 社会 経済・ビジネス 2021.10.21 血液中のタンパク質「AIM」が、体内にたまった「ゴミ」の掃除に大きな役割を果たすことを解明した宮崎徹・東京大学大学院教授。AIMはさまざまな「治せない」病気への活用が可能だ。ヒトだけでなく、ネコの腎臓病にも効果がある。ネコ用の創薬はコロナ禍で一時中断したが、全国の愛猫家たちの支援で、早期実現の可能性が見えてきた。 宮崎 徹 MIYAZAKI Tōru 1962年長崎県生まれ。東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター分子病態医科学教授。1986年東京大学医学部卒。同大病院第三内科に入局。熊本大学大学院を経て、92年より仏ルイ・パスツール大学で研究員、95年よりスイス・バーゼル免疫学研究所で研究室を持ち、20
しぶといと見られていた菅義偉首相が、あっさり政権を投げ出した。その底流を政治ジャーナリストが解説する。 9月3日の昼前、テレビで「首相が総裁選不出馬」の速報が流れた時、筆者は「やはり」としか思えなかった。むしろ、自民党役員会、総務会で党役員人事について順調に「総裁一任」を取り付けていたとしたら、その方が驚くべきニュースだったろう。 自民党総裁選(9月17日告示、29日投票)に向けた首相・菅義偉(72)の策動は、それほど常軌を逸したものであった。 菅の計算 自民党の前政調会長・岸田文雄(64)は総裁選の日程が決まった8月26日、出馬を表明した。「押しが弱い」「優柔不断」の世評にさらされてきた岸田だが、この日の記者会見は違った。「国民政党だったはずの自民党に声が届いていない」「わが国の民主主義が危機に瀕している」と、菅政権下での政治不信をストレートに告発した。 特に権力の集中を防ぐ「自民党改革
『彼岸花が咲く島』で第165回芥川龍之介賞を受賞した李琴峰。台湾出身初の同賞受賞者としても注目を集め、8月27日、帝国ホテル(千代田区)で授賞式が行われた。「生き延びるための奇跡」と題した受賞スピーチで、李琴峰は自らの生い立ちと悩み、文学との関係、台湾に対する思いなどを語り尽くした。洒脱に感謝を述べることが通例の文学賞のスピーチでは異例ともいえる内容に、会場は静まり返り、誰もがその独白に耳を傾けた。受賞決定後、ウェブ上で広がった自らへの「反日」批判に対しては「そのような暴力的で、押し付けがましい解釈は、まさしくこれまで、私が文学を通して、私の文学を通して、一貫して抵抗しようとしてきたもの」だと語った。受賞スピーチの全文をここで掲載する。 生まれてこなければよかった 「生まれてこなければよかった」 いつからそう思うようになったのか、もはや思い出せません。 「生まれて、すみません」ではなく、「
浅野内匠頭長矩(あさの・たくみのかみ・ながのり)、松平容保(まつだいら・かたもり)——二人とも江戸時代の著名な大名だ。長矩は赤穂藩第3代、容保は会津藩第9代の藩主。生きた時代は違うが、二人には「藩主」であるという他にも共通点があった。参勤交代制度によって生母が江戸に留め置かれていたため、江戸で生まれ、江戸で育ったということだ。 浅野内匠頭は「田舎侍」にあらず 長矩と容保二人に限ったことではない。江戸幕藩体制下の藩主たちは、ほぼ例外なく江戸藩邸で生まれ、江戸で成長した。 藩主は参勤交代によって国許と江戸とを往復するが、妻子は江戸に居住することを命じられていたからだ。人質である。世継ぎは江戸で生まれ、江戸で若殿として養育されるのである。 『忠雄義臣録第三』より。吉良に斬りかかる長矩を描いている。なぜこのような暴挙に及んだかについて、長矩は調べに対し「私的に遺恨あり、前後を忘れ、討ち果たそうと及
処女作『シブヤで目覚めて』がチェコでベストセラーになり、邦訳 (河出書房新社)も注目されているアンナ・ツィマさん。いまは東京で研究生活を送るツィマさんに、作品の背景と日本との関わりについて聞いた。 アンナ・ツィマ Anna CIMA 1991年、プラハ生まれ。カレル大学日本研究学科を卒業後、日本に留学。2018年、チェコで刊行した『シブヤで目覚めて』で作家デビュー。同書でチェコ最大の文学賞であるマグネジア・リテラ新人賞、イジー・オルテン賞、「チェコの本」文学賞を受賞。日本文学の翻訳家としても活躍。 プラハのヤナと渋谷のヤナ みずみずしくポップな青春小説であると同時に、時を超えてプラハと東京を結ぶ「二都物語」でもあり、日本文学への招待でもある―そんな斬新で多層的な仕掛けの物語が、アンナ・ツィマさんのデビュー作『シブヤで目覚めて』だ。3年前にチェコで刊行されるや若い読者の支持を得てベストセラー
アニメーション映画監督宮崎駿氏は2021年1月で80歳、傘寿を迎えた。映画『風立ちぬ』完成後の2013年9月、宮崎監督は長編映画制作からの引退会見を行なったものの、2017年に撤回。今は新作長編映画『君たちはどう生きるか』の制作に取り組んでいる。長編アニメーションは集団の分業で制作される。先頭で指揮をしながら自らも徹底的に描いて修正する宮崎監督の演出スタイルは、十数人分の労働を兼務するようなもので、世界的にも極めて異例だ。体力も精神も限界を超えるような過酷な制作現場に、老境を迎えてあえて戻った理由は何なのか。宮崎監督作品研究の第一人者である映像研究家の叶精二氏が『君たちはどう生きるか』に込めた思いを探る。 宮崎作品を支えてきた主力スタッフ達の相次ぐ訃報 2016年11月、宮崎駿監督が引退宣言を覆して新作長編に取り組む準備をしていることが報じられた。翌17年、新作映画『君たちはどう生きるか』
2021年7月16日、筆者は自宅近くの診療所で、1回目のワクチン接種を受けた。アストラゼネカ製のワクチンだ。実は、日本から台湾に提供されたアストラゼネカ製のワクチンは一部の人たちによる風評被害を受けていた。だが筆者を含む1961〜70年に生まれ、黎明期からインターネットに接してきた世代がこれに立ち向かった。このワクチン接種という感染対策の作戦で団結力を発揮したのだ。 再び感染拡大の危機へ 台湾は5月半ば頃まで新型コロナウイルスの抑え込みに成功していた。気を抜くことはできなかったが、1年以上にわたって国内なら自由に移動することができ、外食も可能、コロナ禍前と変わらないような経済活動が行われていたのだ。感染に対し比較的安心できる状況下では、第一線の医療従事者のワクチン接種率さえ高くはなかった。接種率を上げるために、毎日午後2時の定例会見に出席する中央感染症指揮センターのスタッフが率先してワクチ
経済と日米安保を最重視する「吉田路線」から、安倍政権が導入した「価値外交」を経て、日本外交は「人権外交」重視の潮流にどう向き合うべきなのか。 いま、人権外交が注目されている。もちろん人権の重要性への認識は今に始まったわけではなく、1948年12月に採択された世界人権宣言や、日本が79年に批准した国際人権規約などに見られるように、それは戦後のリベラルな国際秩序の基盤として冷戦期から冷戦後の世界に至るまで、国際社会で重要視されてきた規範である。 とはいえ、日本外交を考える上でこの問題がその中核に位置するようになってきたのは、比較的最近のことである。それにはどのような理由と背景があるのか、そしてなぜ現在の国際社会においてこの問題が従来以上に重視されるようになったのか。ここでは、現代国際社会における人権という規範の位置づけの変遷と、日本外交におけるその位置づけを概観することにしたい。 日本外交にお
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