カント以来の近代哲学では事実判断と価値判断をわけて考えるが、これは最近の脳科学や心理学が明らかにしたように間違いである。ヒュームが指摘したように、理性は感情の奴隷であり、人は感情にもとづいて行動し、それを理性で正当化するのだ。 だから大衆を煽動するには、遺伝的にそなわった応報感情を刺激することが効果的だ。原発事故を起こした東電は文句なしの悪役だから、小倉秀夫弁護士のように、論理やデータで追い詰められると「おまえらは東電様を守る悪者の味方だ」と反撃する。反原発派は、理性ではなく感情に訴えるのだ。 このような感情と理性の関係を、本書は象とそれに乗る人にたとえる。脳の情報処理の90%以上は進化の初期に発達した<象>の部分で行なわれており、反応も速い。<乗り手>の部分は処理が遅くコストがかかり、教育しないと発達しない。政治的な議論が、政策の中身より「右か左か」というイデオロギー論争になるのも、人々
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