福島第一原発の冷却作業は落ち着き、東電も工程表を発表したが、「放射能の恐怖」をあおる言説が跡を絶たない。これは日本社会の病である過剰コンプライアンスの一種で、行動経済学的なバイアスとして説明できるが、合理的行動として説明することも可能だ。 ブログでも書いたように、マイクロシーベルトのレベルの放射線は人体に無害だが、政府は微量の放射線も人体に影響するという前提で避難勧告などを出している。これは行政の行動としては合理的である。避難させないで事故が起きた場合は行政が批判を浴びるが、過剰に避難させて何も起きなくても、経済的な損害を賠償するのは東京電力だからである。 このように行動の利益とコストが非対称になっていて「表が出たら私の勝ち、裏が出たらあなたの負け」という構造になっていると行動がゆがむのは、金融や保険でおなじみのモラル・ハザードである。BSEのときも、たった1頭のアメリカ牛が汚染されていた