『人頭税はなかった』来間泰男著 榕樹書林・900円+税 人頭税はなかった―伝承・事実・真実 (がじゅまるブックス) 「人頭税」とは、担税能力の差に関係なく、各個人に対して一律に同額を課する租税のことである。19世紀末まで、宮古・八重山の先島地域は「過酷な人頭税」に苦しめられてきたとされ、時には「先島差別論」とも重ねて論じられてきた。 本書は、新たな歴史像を提示し、これまでの「人頭税」をめぐる議論に一石を投じている。議論の詳細については、実際に本書を読み解いていただきたいが、近世琉球の租税制度や「人頭税」がどのように論じられてきたかを紹介するとともに、「沖縄県旧慣租税制度」などの一次史料を検証し、近世琉球の王府が「間切・村」単位に租税を賦課していたこと、当時は夫役が中心であったために、先島地域のみならず、沖縄本島地域をも含めて「人頭税的」な租税制度ではあったが、決して「人頭税」では「なかった