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ニュージーランドでは、南アフリカ原産のカマキリのメスが、在来種のオスをおびき寄せて食べている可能性がある。(CAVAN IMAGES, ALAMY) 在来種にさまざまな害をなす侵略的外来種だが、求愛の鳴き声をかき消したり、ときには交尾の相手を食べたりして、在来種の繁殖を妨げることがある。「外来種がそこにいるだけで、在来種の繁殖が妨げられることもあります」と話すのは、その隠れた脅威について調べたレビュー論文を、2025年9月に学術誌「Trends in Ecology & Evolution」に発表した筆頭著者のモレリア・カマチョ・セルバンテス氏だ。 この現象は「繁殖干渉」と呼ばれている。研究チームは、論文のなかで6つの生物グループのなかから11の独立した繁殖干渉の例を特定した。これらは実験的または観測的に実証されたわずかな例にすぎず、実際に野生ではもっと多くの外来種による繁殖干渉が起こって
角膜の修復に不可欠な幹細胞を移植して視力を回復させる手術から18カ月後の状態。(Ula Jurkunas, Mass Eye and Ear) つらさをこらえつつ目を開いたら、「何も見えませんでした」と、54歳のフィル・ダーストさんは振り返った。 米アラバマ州ホームウッドにある「ジョニーズ・レストラン」で、ダーストさんは業務用食洗機の排水のボタンを押した。そのとき、ホースが勢いよく外れて、顔面に業務用の洗剤が噴きかかった。 ダーストさんは悪態をつき、シンクまで走って行って目を洗い始めたが、目が焼ける感覚はますます強くなるばかりだった。だから、「だれかレモンを持ってきてくれ」と言った。角膜を溶かしている水酸化ナトリウム溶液はアルカリ性であり、酸性の果汁で中和できるのではないかと考えたのだ。しかし、絞り尽くした果汁にはなんの効果もなかった。 ダーストさんと同じように、虹彩を覆う角膜が傷ついて、
オーストラリア、クイーンズランド州のエッティ・ベイの海岸に佇むヒクイドリ(Casuarius casuarius)。絶滅の危機にあるこの鳥の寿命は、最長で50年にも及ぶ。(CHRISTIAN ZIEGLER, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 体高は約1.7メートル、時速約50キロメートルで疾走し、地上から約2メートルも跳躍する。ヒクイドリ(Casuarius casuarius)はまさに伝説的な存在だ。世界で3番目に大きな鳥で、体重は80キロにも達する。長さ10センチメートルを超える鋭い爪を持ち、捕食者から身を守るために繰り出す強力なキックは、相手の骨を折り、内臓を損傷させ、死に至らしめることさえある。 「ヒクイドリは、ベロキラプトル、エミュー、そして巨大なシチメンチョウを掛け合わせたような威圧的な姿をしています」。児童書『ヒクイドリのお父さん(Cassowary Da
食物繊維を多く取ることは、さまざまな慢性疾患のリスクの低下と関連している。研究によれば、食物繊維を取るタイミングも重要だという。(ADDICTIVE STOCK CREATIVES, ALAMY STOCK PHOTO) 食物繊維が健康にいいということは、すでに多くの人が知っている。消化器系や腸内微生物叢(そう)の健康、コレステロール値の管理、血糖値の調整、さらには長期的な病気の予防にも役立つ。心臓病や2型糖尿病をはじめ、さまざまな慢性疾患のリスクの低下とも関連している。 しかし、いま多くの研究で示されつつあるのは、食物繊維をいつ取るかが重要だということだ。適切なタイミングで摂取すると、その後何時間にもわたって体の働きに良い影響を及ぼす可能性がある。 上に挙げた以外にも恩恵はあると、米タフツ大学ジーン・メイヤーUSDA加齢人間栄養研究センターの科学者ジェニファー・リー氏は言う。炭水化物中心
前回のスーパーエルニーニョでは、太平洋中部のハリケーン発生域で16個の熱帯低気圧が発生または通過した。このときは画像のように、太平洋中部と東部にカテゴリー4のハリケーンが同時に3つ発生するという前代未聞の現象も見られた。(NASA EARTH OBSERVATORY/JESSE ALLEN) エルニーニョがこの春から夏にかけて始まる可能性が高まっているという米海洋大気局(NOAA)の予測を受けて、2026年は強力な「スーパーエルニーニョ」が発生する可能性があるとの見方が予報担当者のあいだで強まっている。このエルニーニョは、少なくとも過去10年間で最も勢力の強いものとなり、一部地域では過酷な干ばつを、また別の地域では激しい嵐を引き起こし、さらには地球の気温を上昇させる恐れがある。 NOAAの4月9日付けの発表によると、太平洋の表面の海水温が平年より少なくとも2℃以上高くなる「非常に強い」エル
米ニューヨーク州のダッサイ・ブルー・サケ・ブリュワリーでは、日本酒の試飲のほかに、日本文化にまつわるイベントも実施している。(AMY SIMS) 丈夫な高いデニムから、ありとあらゆる必需品がそろうコンビニエンスストアまで、日本は米国発の商品やサービスを取り入れ、磨き上げて自分たちのものにしてしまうのが得意だ。そして今、米国は流れを逆転させようと、最も日本らしいアルコール飲料である日本酒に挑んでいる。 2025年3月、ニューヨーク市のブルックリン・クラは、米国から日本へ日本酒を輸出した初めて酒蔵となった。清酒「八海山」などを製造する八海醸造(新潟県魚沼市)の米国法人と業務資本提携しており、日本全国のバーやレストラン、酒販店で入手可能だ。(参考記事:「400周年を迎えるニューヨーク ナショジオで振り返る100年」) 「これは理にかなった動きです」。ブルックリン・クラの「サケ・スタディ・センター
宇宙での食事には、おいしさと栄養に加え、散らばりにくいこと、長期保存できることも求められる。トルティーヤやマカロニチーズ、ブリスケット(牛胸肉)、レッドキャベツなどはいずれもその条件を満たす。(Photo: Chris Gunn) 米航空宇宙局(NASA)ジョンソン宇宙センターのキッチンで、シューレイ・ウー氏が記者のためにコース料理を用意してくれていた。バーベキュー風ブリスケット(牛胸肉)、チキンのサルサソース添え、サイドにはトルティーヤ。クリーミーなマカロニチーズとレッドキャベツの蒸し煮。デザートはチェリーとブルーベリーのコブラー(焼き菓子)、そしてホットコーヒー。 料理は、NASAのロゴが入った皿に美しく盛り付けられている。食欲をそそるごちそうが並んでいるが、この光景はウー氏が本来想定しているものとは少し違う。「微小重力では、そもそも皿は使えませんからね」とウー氏は言う。 これが21世
短時間で大量飲酒(むちゃ飲み)をした数時間後には、小腸の保護膜に変化が生じ始めることがマウスを用いた新たな研究で示唆されている。この損傷は炎症反応を引き起こす恐れがある。(DAVID SAWYER, GETTY IMAGES) たまにお酒を飲み過ぎるとしても、飲み放題付きのブランチや仕事帰りに数杯おかわりするくらいは無害だと思われるかもしれない。しかし、短時間で大量に飲酒(「ビンジ飲酒」「むちゃ飲み」とも)した数時間後には、小腸の構造に変化が生じ始めることが、マウスを用いた最新の研究で示唆されている。 2025年11月に医学誌「Alcohol, Clinical and Experimental Research」に発表された研究によると、むちゃ飲みをさせたマウスでは、小腸の表面にある指状の突起である絨毛(じゅうもう)の短縮や、炎症性免疫細胞の急増が観察された。24時間が経過しても、炎症マ
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ狭い水域だ。英オックスフォード大学ウースター・カレッジで地球科学を教えているマイク・サール教授によると、地質学的にもたいへん貴重な場所だという。(J MARSHALL - TRIBALEYE IMAGES, ALAMY STOCK PHOTO) 世界で海上輸送される石油のおよそ4分の1が通過するホルムズ海峡。およそ50kmの幅でペルシャ湾とオマーン湾を結び、交通量が極めて多く、何かあれば世界経済に甚大な影響を及ぼす重要な「チョーク(窒息)ポイント」のひとつだ。そして、2026年2月下旬から始まった紛争で、危機は現実のものとなりつつある。 ホルムズ海峡は2つの大陸が衝突した場所でもあり、地質学的にもたいへん貴重な場所だと言うのは、英オックスフォード大学で地球科学を教えるマイク・サール教授だ。 黒く険しい岩壁と複雑な海岸線は、海面上昇で谷が水没してで
運動をしても常にカロリー計算モデルの予測通りに体重が減るわけではないことがわかってきた。(DAVID PETRUS IBARS, GETTY IMAGES) より多く動けば、より多くのカロリーが消費され、体重が減る。この理屈は盤石に思える。しかし多くの場合、計算通りの結果が出るわけではない。 比較試験をしてみると、運動してもカロリー計算モデルの予測より体重が減らないケースが少なくない。ウオーキングやジョギング、サイクリングといった有酸素運動を取り入れたとしても、6カ月で平均約1.6キロの減量にとどまるというレビュー論文もある。 かなりの時間と労力を費やすわりには見返りが少ないというこの問題には、研究者たちも長年にわたって頭を悩ませてきた。(参考記事:「減量が難しい科学的理由 やせにくい4つのタイプ、対処法は」) 原因の一つはよく知られている。運動をすると空腹感が高まるため、つい食べてしまい
水中ドローンで近距離から撮影したヒラチズガメのメス。求愛するオスを背に泳ぎ去っていくところ。(VIDEO BY GRÉGORY BULTÉ) 毎年春が来ると、生物学者のグレゴリー・ビュルテ氏はカナダのオンタリオ州にあるオピニコン湖で冬眠していたカメに標識を付けている。正確な数を把握するためにもう20年以上続けている活動だが、2022年4月に見たこともない光景を目にした。甲羅が壊れ、手足を失ったカメの無惨ななきがらだった。 ビュルテ氏はウェットスーツを取りにいったん自宅に帰ってから、水中を調べてみた。すると、死んだカメが次々に見つかった。それを回収していくと、いくつかのバケツがいっぱいになった。 「最初はぞっとしました」とビュルテ氏は言う。「『いったいいつまで続くんだ?』とつぶやきながら、拾い続けていました」
アルテミス2打ち上げの7.5秒間を66分の1の速度で再生した超スローモーション映像(字幕は英語です)。 米航空宇宙局(NASA)の有人月周回飛行「アルテミス2」の打ち上げ成功を祝うべく、ナショナル ジオグラフィックのチームは超スローモーション映像を撮影した。Freefly Systems社のEmber S2.5Kという高速度カメラを使い、毎秒2000フレームという驚異的なフレームレートを採用した。 Ember S2.5Kを設置したのは発射台から約457メートルの位置。ロケット打ち上げ時の炎からとても近いため、直接カメラを操作するのは危険だった。 そこでチームはカメラを重さ約27キロの鉛蓄電池につなぎ、NASAのカウントダウンの時計と同期して撮影が始まるようにプログラムした。打ち上げの騒音がおさまると撮影が止まるように設定した。 「スペース・ローンチ・システム(SLS)」は、NASAがこれま
この狭さゆえ、10日間の月旅行の間、クルーたちは壁か機器のそばで寝なければならない。しかし宇宙船の中央部には、ドッキングトンネルへ続く開けた空間がある。ここは比較的散らかっておらず、間違いなく最高の寝場所だ。(参考記事:「アルテミス2打ち上げ延期の原因、なぜ燃料漏れが起こるのか?」) その証拠に、宇宙飛行士たちは皆、この寝場所の取り合いをしている。もちろん冗談を交わしながら。 「ここは私のための特等席です」とコック氏は言う。「わがままを言っているように聞こえるかもしれませんが、このスペースに入れるのは、いちばん背が低い私だけなのです。そうよね? みんな?」 「いや、宇宙では背が伸びるんだよ」と、アルテミス2のパイロットであるビクター・グローバー氏が口をはさむ。「彼女でも入れなくなるんじゃないかな」 これが、コック氏やグローバー氏、そして同じくアルテミス2のクルーであるリード・ワイズマン船長
ドーパミンは動機づけと報酬の両方において重要な役割を果たしている。現代社会の誘惑に屈することなく、ドーパミンの放出を自然に促す方法は多い。(NICK FANCHER, NATIONAL GEOGRAPHIC) 皆さんには、スマートフォンが震えて胸が高鳴ったり、駐車スペースが空いて喜びを感じたり、よい知らせを待っているときにワクワクしたりといった経験があるだろうか。もしあるなら、それはドーパミンが働いている証拠だ。 「ドーパミンは、報酬が得られそうなときに覚える心地よい感覚に関係しています」と、米カリフォルニア州立大学イーストベイ校の名誉教授ロレッタ・グラツィアーノ・ブルーニング氏は説明する。 期待だけでなく、食事をする、他者とつながる、目標を達成するといった有益な行動をとった「後」にも、ドーパミンは報酬を得るのを助ける役割を担っている。「ドーパミンはわれわれが行動を起こす動機に大きく貢献し
「プロジェクトCETI」は、機械学習ソフトを使ってマッコウクジラの出産映像を分析した。クジラたちは協力して母クジラと子クジラを支えていた。この動画には、出産したラウンダー(Rounder)の親族であるアクラ(Accra)、レディー・オラクル(Lady Oracle)、オーロラ(Aurora)と、親族ではないが出産に協力的だったアトウッド(Atwood)とアリエル(Ariel)が映っている。(PROJECT CETI) 船乗りや科学者がマッコウクジラの習性を研究するようになって約半世紀になるが、この数十年間で、マッコウクジラの出産に関する科学的な報告は遠くから観察した1例にすぎない。しかし今、出産に臨んだマッコウクジラたちがコミュニケーションを取り、協力する驚きの様子が3月26日付けで学術誌「Science」と「Scientific Reports」で報告された。 2本の論文は、マッコウクジ
長崎大学水産学部の山口敦子教授(魚類学・水産資源学)は、エイの生態を長く研究してきた。有明海にはアカエイとシロエイが生息していて、両者は体表の手触りや裏側の色などが異なる。20年ほど前、両者の中間的な特徴を持つエイの存在に気づいたという。 山口教授は当初、このエイはアカエイとシロエイが交雑したものだと考えていた。ただ、体内の酵素を詳しく分析したところ、交雑種とは明らかに違っていたことなどから、「これは雑種ではないのでは」と思うようになった。 ただ、エイには分類の目印となる特徴が少なく、専門家でも判別が難しい。山口教授が「アカエイの分類を調べている」とベテランの研究者に話したところ、「難しいから手を出さない方がいい」とアドバイスされたほどだ。それでも研究室に配属された学生とともに研究を続け、アカエイとは異なる特徴を持つエイが有明海にいることが分かった。2010年、これに「アリアケアカエイ」と
クロアチア第2の都市スプリト近郊にあるペルン山上空に昇る4月の満月「ピンクムーン」。2024年に撮影。ピンクムーンの名前は北米で春に咲く野花に由来しており、月がピンクに染まるわけではない。(ZVONIMIR BARISIN, PIXSELL/SIPA/AP IMAGES) 4月の夜は空を見上げたくなる理由がたくさんある。見事な銀河の眺めのほか、複数の惑星が並ぶパレード、4月こと座流星群といったすばらしい天体ショーも楽しめる。 アラスカなどのオーロラ観察のシーズンは4月までだが、完全に消えてしまうわけではない。条件が整えばアラスカよりもずっと南の五大湖周辺でも夜空に波打つオーロラを観察できるかもしれない。 惑星を観察する人であれ、見つかったばかりの新しい彗星の出現を心待ちにしている人であれ、絶対に見逃せない4月の天文イベントを紹介しよう。 4月2日:満月(ピンクムーン) 4月は明るい満月で始
岩手県一関市にあるジャズ喫茶「ベイシー」の店主、菅原正二。ジャズ喫茶という日本生まれの文化は、彼のようなジャズを心から愛する人たちが大切に育ててきた。(PHOTOGRAPH BY TIM DAVIS) 温かな雰囲気に満ちた日本のジャズ喫茶。そこでは、レコードを心から愛する人々が音楽を一緒に聴くという文化が大切に守られてきたし、騒がしい現代社会が忘れてしまった五感の喜ぶ奥深い体験に浸ることもできる。 土曜日の午後、私(ライターのジョー・ヘイガン)たちは東京・下北沢の狭い通りを歩いていた。年代物のTシャツを探す買い物客や店頭で口紅の色を試す女性をやり過ごし、カレー屋から漂うスパイスの香りに包まれながら、インスタグラムで目にした、ある看板を探していたのだ。 ついに見つけた。なんとも控えめな看板だ。私たちは狭い階段を上り、窓のないドアの前に立った。静かにノックし、居心地の良さそうな空間に踏み込む。
ルビーに真珠、エメラルドがあしらわれた黄金のベルトのバックルの修復前(左)と後。クロアチアのムリエト島沖の海底から発掘された、多くの遺物のうちの一つだ。(PHOTOGRAPH BY ARNE HODALIČ AND KATJA BIDOVEC) クロアチア沖で1000年以上前に沈んだ1隻の船から、膨大な量のビザンチン帝国時代の遺物が発見された。そこから浮かび上がってきたのは従来の中世に対するイメージを覆す可能性があるいくつもの不可思議な疑問だった。 アドリア海に浮かぶムリエト島。クロアチア最南端の島々の一つであるこの島の沖に古い難破船が沈んでいる。その朽ちかけた残骸の中に中世の青銅製の大釜が見えた。 文化財保護を担う国の機関、クロアチア文化財修復研究所の水中考古学部門で部門長を務めているイゴール・ミホルイェクは、その大釜に興味をそそられた。2014年当時、ミホルイェクは少人数のチームを率い
ニューゲート監獄に投獄されたジャック・シェパード。1724年のサー・ジェームス・ソーンヒルによるスケッチを基にした版画絵。(BRIDGEMAN/ACI) 1724年11月16日、英ロンドンのタイバーンにある絞首台の周りに20万人もの群衆が詰めかけた。ジョン・“ジャック”・シェパードの処刑を見物するためだ。歴史家のピーター・ラインボー氏によれば、厳しさを増す刑事司法制度に労働者階級の人々が苦しめられていた18世紀のイングランドで、元大工見習のシェパードは驚くほど大胆な脱獄で広くその名を知られるようになったという。 シェパードは1702年、現在はイーストロンドンの一部になっているスピタルフィールズで、貧しい大工の息子として生まれた。4歳のときに父親が亡くなり、母親は3人の子どもを一人で育てなければならなくなった。 シェパードは、年頃になると父親と同じ道を目指し、大工の見習として働き始めた。体は
尾椎に骨折痕の残るオロロティタンの化石は恐竜の交尾に関する説を再浮上させた。(STOCKTREK IMAGES, ALAMY) そのハドロサウルス類に何があったにせよ、想像を絶するような痛みだっただろう。尾椎骨から伸びる突起の多くが折れていたのだ。オロロティタン(Olorotitan)として知られるその恐竜が単に愚鈍だったからだろうと考えるには、あまりにも多くの骨が折れていた。 骨折は尾の付け根部分に強い下向きの圧力がかかったせいだと考えられる。もしも体長約8メートル、体重約3トンにもなるもう1頭のオロロティタンであれば、こんなケガを負わせられたかもしれない。 ベルギー王立自然史博物館の古生物学者フィリッポ・ベルトッツォ氏は、2019年にロシアのブラゴベシチェンスクにある古生物学博物館にオロロティタンの骨を研究しに来ていたときに、こうした奇妙な骨折に気が付いた。 「自分の目の前にあるものが
インドネシアのスラウェシ島の洞窟で壁画を調べるシナトリア・アディティヤタマ氏。このほど考古学者たちは、スラウェシ州のムナ島のリアン・メタンドゥノ洞窟で世界最古の岩絵を発見した。(MAXIME AUBERT) インドネシア、スラウェシ州ムナ島の洞窟に描かれた2点の手形ステンシルのひとつが、少なくとも6万7800年前のものであることが判明した。つまり、これまでに見つかっている現生人類による洞窟壁画としては最古のものになる。この論文は1月21日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された。 先史時代の絵で飾られたその洞窟は、地元の人々から「リアン・メタンドゥノ」と呼ばれている。彼らはこの古代の美術館を訪れては、赤や茶色、ときに黒の顔料で描かれた、飛んでいる人、人が乗った舟、ウマに乗った戦士などの描写に驚かされてきた。 2015年、数千年前の鳥やブタやウマの絵よりもっと古い時代の人類の芸術表現を探そうと
希少なネアンデルタール人の胎児から抽出された古代のDNAは、より初期の進化系統に関する発見をもたらし、絶滅の前に起こった大規模な人口減少の経緯を解明する助けとなった。(ALICE WALCZER BALDINAZZO) 約5万5000年前に亡くなったネアンデルタール人の胎児のDNAを分析したところ、彼らが絶滅する数万年前に、遺伝的多様性を大きく失う深刻な人口の激減が起こっていたことが明らかになった。胎児が属していたのは約4万年前に絶滅した最後の系統ではなく、より古い系統だった。その希少なDNAのおかげで、古い系統の実態をより明確に把握できた。この論文は3月23日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。 「ネアンデルタール人のごく幼い子どもの骨は、出生前であれ出生後であれ、非常にめずらしいものです」と、ポルトガル、アルガルベ大学の考古学者および地球科学者で、論文の共著
デッキブラシをくわえて体をかくベロニカ。(VIDEO BY A.J. OSUNA- MASCARÓ & A.M.I. AUERSPERG) オーストリアののどかな山あいの村に暮らすウシのベロニカは、何年もかけて、棒や熊手、デッキブラシなどを使って自分の体をかく技術を磨き上げてきた。その存在が科学者に発見され、ベロニカはこのたび正式に「道具を使うことが確認された初めてのウシ(Bos taurus)」として、1月19日付けで学術誌「Current Biology」で報告された。 ベロニカは舌を使って道具を持ち上げ、それをしっかりと口にくわえ込み、自分がかきたい箇所へと先端を向ける。道具がデッキブラシの場合、皮膚が分厚くて広い背中をかくときにはブラシ側を、柔らかく敏感な腹側には滑らかな棒状の持ち手側を使うなどして、柔軟に使いこなしていた。 ベロニカの行動を分析したオーストリア、ウィーン獣医大学の
銛を分析するクリスタ・マグラス氏。現代のブラジルにかつて住んでいた古代の人々は、この銛を使ってクジラやサメ、アシカを捕っていた可能性がある。(ERC TRADITION) ブラジルの博物館にしまい込まれたままほぼ忘れられていた古代の「棒」が、実はクジラやアシカ、サメなどを捕る5000年前の銛(もり)だった可能性が最新の研究で明らかになった。もし証明されれば、この発見は、それまで考えられていたより1000年以上も前から捕鯨が行われていたことを示す最古の直接的な証拠になる。論文は1月9日付けで学術誌「Nature Communications」に発表された。 この研究結果は、先史時代に北極圏に近い冷たい海だけでなく、南米の温かい沿岸でも捕鯨が行われていた可能性も示唆する。クジラの骨から作られた銛は、現代のブラジルにその昔住んでいた漁師たちが、危険を冒して多くの食料を持ち帰っていたことを示してい
2022年、米国ニューヨーク市の再生医療企業「3Dバイオ・セラピューティクス」で、3D印刷された耳介のインプラントを検査する研究者たち。患者自身の細胞から作られたこのインプラントは、軟骨を再生し、徐々に体と一体化するように設計されている。以前は不可能と思われていた軟骨組織の再生に取り組む研究者が増え、進展が見られるようになっている。(ANDRES KUDACKI, THE NEW YORK TIMES/REDUX) 私たちは関節に痛みが出るようになって初めて軟骨のことを意識する。 何十年もの間、関節炎の患者は同じことを言われてきた――軟骨は、いちどすり減ってしまったら、二度と再生しないのだと。体内の多くの組織とは違い、軟骨には血液の供給がほとんどないため、損傷した後に自己修復する能力が限られる。 軟骨が徐々に壊れて引き起こされる「変形性関節症」が、世界的に障害の主な原因であり続けている理由
花粉症に悩まされる人は2人に1人との報告もあり、今や「国民病」とも言われる。そうした中、大気汚染物質である微小粒子状物質「PM2.5」に含まれるスズがスギ花粉症などのアレルギー性鼻炎の症状を悪化させる可能性があると名古屋大学などの研究グループが発表した。花粉症の人の鼻の中のスズの濃度は症状のない人の約3~4倍高く、スズが鼻腔(びくう)内に滞留することが症状悪化に関係している可能性があるという。 名古屋大学大学院医学系研究科の加藤昌志教授、田崎啓講師のほか、福井大学、名古屋市立大学も参加した研究グループによると、直径2.5マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以下のPM2.5にはスズが含まれる。加藤教授らは既に、同じく大気汚染物質である鉛がアレルギー性鼻炎の症状を悪化させると発表している。今回研究グループは、スズとの関係を明らかにするために、スギ花粉の飛散期に症状を訴えた44人と症状が
最近、欧州生物リズム学会(European Biological Rhythms Society)からある「光害」問題に反対する声明に賛同してほしいとの依頼メールが送られてきた。 何に反対しているのかと読んでみると、Reflect Orbitalという米国の新興企業が提案中のある宇宙開発計画に対してであった。この計画では、大型の鏡面衛星を打ち上げて夜間に太陽光を地球に反射させ、太陽光発電所や工業地帯などを昼間と同じ程度の強い光で照らすのだという。この賛同依頼メールでは、イーロン・マスク氏率いるSpaceXが軌道上のデータセンターとして機能する100万個もの衛星を打ち上げようとしている計画に対しても懸念を表明している。 どちらも壮大な計画でその実現性には疑問を持つ向きもあるものの、SpaceXの人工衛星打ち上げ能力や米国のスタートアップ企業の技術革新力を考えると、その達成時期はともかく全くの
アルコールがもたらす健康リスクと運動の関係が研究によって明らかにされつつある。(ELIZABETH WEINBERG, THE NEW YORK TIMES/REDUX) 近年、アルコール摂取について公衆衛生当局が発するメッセージは急激に変わってきている。多くの人は何十年もの間、寝る前に飲むグラス1杯の赤ワインには心臓を守る効果があるのではないかと思い続けてきた。しかし今では、世界保健機関(WHO)も米国の医務総監も、どんな量でも飲酒にはリスクがあるという立場を明確にしている。 一方で、祝い事や社交、くつろぎの場面にお酒が深く根付いていることに変わりはない。今もなお多くの人たちが、リスクがあるにせよ、少なくともたまに飲むお酒には価値があるだろうと考えている。(参考記事:「酒と人類 9000年の恋物語 定住も農耕も酒のためだった?」) 「近年のガイドラインは、アルコールは100%避けるのが最
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