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物価高に賃金上昇が追いつかず家計は火の車で、消費は低迷。円安の下で海外観光客が大量に押し寄せる一方、日本人は海外旅行を控え、パスポートの取得率は過去最低。なぜこんなことになったのか。『日本経済の死角―収奪的システムを解き明かす』(ちくま新書)を上梓したBNPパリバ証券のチーフエコノミスト・河野龍太郎氏に話を聞いた。(聞き手:大崎明子、ジャーナリスト) 【前編】この25年で生産性は3割上昇したのに実質賃金はまさかの据え置き、日本人が貧しくなった本当の理由 ──コーポレートガバナンス改革により、従業員よりも株主が重視されるようになったことも問題だと指摘しています。 河野:米英では1970年代から、企業は株主の利益を最大化すべきだという考え方が広がっていたわけですが、最近は、従業員や地域社会など全てのステークホルダーに分配すべきだという方向へ揺り戻しが起きています。 ところが、日本は、かつては株
ダイソーと蜜月関係だったのに…「つぶれない会社」で有名だった100均グッズメーカーは、なぜ突然破綻したのか 中小・零細企業の倒産が増加している。コロナ対策として実施された金融支援の縮小・終了により資金繰りが悪化し、さらに物価高や円安といった市場環境の変化も重なり、取引先が予期せず経営破綻するケースが相次いでいる。大企業にとっても、こうしたリスクの兆候を見逃さないことが重要だ。本連載では『なぜ倒産 運命の分かれ道』(帝国データバンク情報統括部/講談社)から内容の一部を抜粋・再編集。大企業と取引のあった2社の事例から浮かび上がる“倒産のリアル”に迫る。 今回は、100円ショップ向けの日用雑貨品を企画製造し、2023年9月に民事再生法の適用を申請したメーカーのケースを紹介する。 100円ショップ向け日用雑貨企画製造、卸 近畿用品製造 ■ ダイソーの親密先「優良企業」はなぜ破綻したのか 【負債】
1930年代から40年代にかけて、アジアの某帝国が石油や鉄鉱石などの資源を得るために戦争をしたことがある。 しかし今回、資源をよこせと言っているのは、なんと、その帝国を圧倒的物量と経済力で叩き潰した天下のアメリカ合衆国なのだ。 太平洋戦争の経緯を思い起こすと、日本人として大変複雑な感情を抱かざるを得ない。 米国の資源の豊かさは、世界有数である。 石油もガスもある。米国では白金族、モリブデン、ベリリウム、ジルコニウム、レアアースとレアメタルも採掘されている。 皮肉なことに、米国のレアアース資源は中国には劣るものの、ウクライナと比べれば圧倒的に巨大である。 どうして、あの豊かな米国が、哀れなほどの資源貧国の大日本帝国みたいな真似をするのか。筆者にはさっぱり分からない。 しかし、それより先に筆者の頭を最初に過った疑問があった。「あれ? ウクライナにレアアースなんてあったっけ?」というものだ。 ウ
物価高に賃金上昇が追いつかず家計は火の車で、消費は低迷。円安の下で海外観光客が大量に押し寄せる一方、日本人は海外旅行を控え、パスポートの取得率は過去最低。なぜこんなことになったのか。『日本経済の死角―収奪的システムを解き明かす』(ちくま新書)を上梓したBNPパリバ証券のチーフエコノミスト・河野龍太郎氏に話を聞いた。(聞き手:大崎明子、ジャーナリスト) 生産性が上昇したのに賃金が上がらなかった先進国は日本だけ ──日本は「収奪的な社会である」とはショッキングなタイトルです。しかも、民主国家でありながら、選択を誤ってきた結果で、深刻だと思いました。 河野龍太郎氏(以下、河野):『成長の臨界』(慶應義塾出版会)で、「儲かっても溜め込んで実質賃金を引き上げず、国内の人的投資に消極的な大企業が長期停滞の元凶ではないか」と書きました。今回は、その日本の長期停滞の構造にフォーカスしました。 「日本はイノ
ホワイトハウスで行われた米国とウクライナのトップ会談(2月28日撮影、ウクライナ大統領府のサイトより) 「今日では自由と独立が世界中で危険にさらされている。もし征服者に対する抵抗が功を奏さず、こちらが敗れてしまったら、いずれの国の自由も独立も、さらには自由を得る機会もなくなる」 米国のフランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領は英国のウィンストン・チャーチル首相と1941年8月14日に合意した大西洋憲章の1周年をこのように称えた。 その半世紀後にソビエト連邦が崩壊したことで、この理想が世界の大半で実現されるよう望むことは少なくとも無理のないことになっていた。 だが、実現はしなかった。 今では独裁国家がますます自信をつけているだけでなく、米国もそちらの側に付こうとしている。それが2月半ばの2週間で得られた教訓だ。 自由はまだ、1942年当時ほどの危険にはさらされていない。しかし、いまの危険は非
「日本のバカげたデジタル化を憤る高齢者の会」が2月21日に第1回フォーラムを開催した。誤解無きよう最初に断っておくが、デジタルに弱い高齢者たちが「デジタル化に反対!」と言っているわけではない。むしろその逆であり、なぜもっとマイナンバーや個人情報を積極的に使ってデジタル化を進めないのかと憤っている。当日はオンライン含め100人以上が参加し、高齢者たちは日頃のうっぷんを晴らした。 この会はもともと所属する組織や立場を離れ、我が国のあるべきデジタル化について自由闊達に議論しようという趣旨で始まった。当時は憤るどころかデジタル化推進に燃え、参加者はいずれも高齢者ではなかった。「5年以内に世界最先端のIT国家を目指す」という目標を掲げた政府のe-Japan戦略(2001年1月)を熱烈に支持したのだ。 ところが、それから四半世紀、参加者は高齢者と呼ばれる年齢になり、日本のデジタル化の現状を見るに暗澹た
インタビューの前編では、日本が失われた30年から脱却し、インフレに突入していったプロセスについて、渡辺努氏(東京大学大学院経済学研究科教授)に話を聞いた。とはいえ、買い物に行くたびに値札を見ては腰を抜かしそうになっている人は少なくない。結局のところ「値上げは嫌だ」というのが消費者の本音である。 しかし、渡辺氏は「ある程度のインフレは正常な状態である」と言う。どの程度のインフレであれば許容範囲内なのか、私たち消費者はインフレに対してどのような姿勢をとるべきなのか──。『物価を考える デフレの謎、インフレの謎』(日本経済新聞出版)を上梓した渡辺氏に、話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター) 【前編】なぜ日本は30年にわたるデフレからインフレ基調に転換したのか?構造変化を促した二つの理由 ──日本銀行のマイナス金利政策について、多くの研究者はネガティブな考えを持っているようで
ウクライナ停戦、対中政策、関税など、トランプ氏の外交政策についての報道は多いが、国内政策についての報道は外交政策に比べると少ない。トランプ氏の勢いのある発言からは順調のようにも見える。しかし、その実態、特に内政は相当に厳しいアゲンストの風が吹いているというのが現地を歩いた実感だ。(山中 俊之:著述家/コラムニスト) ブランドショップが多く立ち並ぶニューヨーク5番街。その中でひときわ目立つトランプタワーは、言わずと知れた、トランプ大統領が共同所有するニューヨークを象徴する商業ビルだ。 おそらくテロを恐れているのであろう。入り口には多くの警察、警備の人がいた。さすがに入るだけでは持ち物チェックはなかったものの、ものものしい雰囲気はあった。 開いている店舗の表示を見て、笑いを禁じ得なかった。Trump Café、Trump Sweets、Trump Grillとすべての店の名称にTrumpが頭に
利上げに踏み切った日銀の植田総裁。「主流派経済学では、物価が上がれば金利を上げる、物価が下がれば金利を下げるというテンプレートがある」と中野氏は語る(写真:ロイター/アフロ) インタビュー前編では、主流派経済学の矛盾点について、哲学的な観点から評論家の中野剛志氏が解説した。ただ、致命的な欠点がありながらも、主流派経済学は経済学の中で長らく主役の座に居座り続けている。主流派経済学はなぜ「主流」で居続けられるのか、異端派経済学が主流派経済学にとって代わる可能性はあるのか──。『政策の哲学』(集英社)を上梓した中野氏に、引き続き話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター) 【前編】主流派経済学には「哲学」がない!『政策の哲学』の中野剛志氏が矛盾だらけの主流派経済学を斬る ──主流派経済学に対して、いわゆる異端派経済学はどのような学問なのですか。 中野剛志氏(以下、中野):異端派経
高校授業料無償化などで正式に合意し、写真に納まる(左から)日本維新の会の吉村代表、自民党総裁の石破首相、公明党の斉藤代表=2月25日午後、国会(写真:共同通信) 2025年度政府予算案の修正協議で与党の自民、公明両党と野党第2党の日本維新の会が「教育無償化」に合意した。高校の授業料を公立・私立を問わず一律に、所得制限なしで支援するなどの内容は、子育て世帯の負担軽減になる一方で、教育格差の拡大につながることも懸念されている。教育無償化を党の看板政策にしてきた維新の本拠地・大阪に隣接する兵庫県尼崎市の市長で、文部科学省出身の松本眞氏が、教育無償化の議論から抜け落ちている論点を指摘する。(JBpress編集部) (松本 眞:兵庫県尼崎市長) 与野党合意で保護者負担は大きく減る 自民党・公明党と日本維新の会が2月25日に高校無償化などについて合意したことが報じられた。教育費などの保護者負担を実質的
30年にわたるデフレからインフレ基調に転換した日本経済。写真は日銀の植田総裁(写真:ロイター/アフロ) 約30年にわたり、日本はデフレに悩まされてきた。ただ、頭を抱えていたのは政府関係者や学者であり、私たち生活者にとって、それはとても居心地の良い社会だったのは事実である。賃金は上がらずとも、いつでもどこでも安くモノを買うことができた。 ところが、2022年から、そんな居心地の良い社会の崩壊が始まった。インフレである。日本はなぜ慢性デフレに陥ったのか、なぜそれが終焉を迎えつつあるのか──。『物価を考える デフレの謎、インフレの謎』(日本経済新聞出版)を上梓した渡辺努氏(東京大学大学院経済学研究科教授)に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター) ──なぜ日本では、約30年にわたり物価も賃金も据え置きという状態が続いたのでしょうか。 渡辺努氏(以下、渡辺):いわゆる「失われた
いま日本では多くの会社がマネジメント不足に悩んでいる。だが、大中小、さまざまな規模の組織をうまく回しながら、算盤を弾いてきっちり採算をとる。そんなマネジメント人材を大量に輩出している会社がある。リクルートだ。「元リクに任せれば大丈夫」――。特に、ネット業界やITベンチャーではそう言われる。 リクルート出身者はなぜ仕事が「できる」のか。彼ら、彼女らは、リクルートでどう育てられ、何を学び、その後のキャリアでそれをどう活かしているのか。ベストセラー『起業の天才! 江副浩正8兆円企業リクルートをつくった男』の著者・大西康之氏が、各界で活躍する「元リク」をインタビュー、その秘密に迫る2回目のゲストは、DAZNジャパン社長の笹本裕さん。 ※このインタビューは『起業の天才 江副浩正 8兆円企業リクルートを作った男』文庫版(新潮社)の出版を記念して行われたトークショーをもとに作成した。 「社長をやってくれ
経済学には多様な学派が存在している。その中で、現在多くの支持を集めているのは主流派経済学である。主流派経済学は、国家の経済政策立案の際にも用いられる非常にメジャーな学問である。 一方で主流派経済学は現実の社会に即していないと指摘するのは評論家の中野剛志氏である。主流派経済学の何が正しくないのか、経済学のあるべき姿とは何か──。『政策の哲学』(集英社)を上梓した中野氏に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター) ──政策立案において、経済学、特に主流派経済学はどのような役割を果たしているのですか。 中野剛志氏(以下、中野):政策の立案にあたって、主流派経済学が大きな影響力を持っていることは間違いありません。 GDP成長率、自由貿易協定を締結した場合の経済効果の予測などは、主流派経済学の理論に則ったモデルで算出されています。そのような意味で、主流派経済学は政策の基盤になってい
人間に「心」があるのだとしたら、ほかの動物に「心」があっても不思議ではない。そう考えている人は少なくはないが、多くの場合「ほかの動物」を「比較的高等な哺乳類」と思っているかもしれない。 実は、魚にも心がある。そして魚の心を研究する「魚類心理学」なる学問が存在していると聞いたら驚く人は多いのではないか。魚類心理学では何を研究するのか、その学問は何の役に立つのか──。魚類心理学者の高橋宏司氏(新潟大学創生学部准教授)に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター) ──「魚類心理学」の研究では、具体的に何を調べているのでしょうか。 高橋宏司氏(以下、高橋):私の場合は特に、魚類の学習能力にフォーカスした研究をしています。 「学習の研究がなぜ心に関係するのか?」と思うかもしれませんが、実は心ができていく過程では、学習はとても重要です。一般的に学習というと、勉強をして知識を得ることや
特に、米国北西部ワシントン州のシアトルは、世界有数のテクノロジー都市であり、多くのエンジニアが新しい技術を取り入れることで生産性を向上させるようになりました。 その中でも、ChatGPT(チャットGPT)やワシントン州に本社を置くマイクロソフトのCopilot(コパイロット)などのAIツールがどのように活用され、エンジニアのキャリアや市場価値にどのような影響を与えているのかは、重要な関心事となっています。 今回は、シアトル在住の長野弘子さんにお話を伺い、AIの発展がエンジニアにどのような影響を与えているのかを探りました。 長野さんについては本文の最後に詳しくご紹介しています。現在、ワシントン州にある大手IT企業の多くでセラピストとして活躍されています。 木寺 チャットGPTの登場により、シアトルのエンジニアの考えは変わったのでしょうか? 長野 シアトルは、世界でも有数のテクノロジー都市とし
1月下旬、囲碁の日本棋院と関西棋院が2024年の賞金・対局料ランキングを発表した。1位は当サイトでもインタビュー記事を掲載した一力遼四冠(棋聖・名人・天元・本因坊)の1億2181万円で2年連続のトップ。世界戦(応氏杯)も制した一力氏の活躍は誰もが認めるところだろう。今回は囲碁界の知られざる賞金事情と厳しい勝負の世界について、囲碁ライターの内藤由起子氏に解説してもらった。(JBpress編集部) >>【表】10代の若手棋士もランクインする「賞金・対局料ランキング TOP10」 「黄金の椅子」と呼ばれる名人戦の挑戦者決定リーグ戦 プロ棋士の収入には、主に対局料とタイトル料がある。 棋戦は予選も本選もトーナメント戦だけで優勝が決まるものもあるし、予選トーナメント戦を勝ち抜いた棋士がリーグ戦に参加し、さらにリーグ戦で優勝すると挑戦手合に進める、という長丁場のものもある。 トーナメント戦は、勝ち負け
米国訪問中に半導体研究開発支援機関ニューヨーククリエイツを訪れ、ASMLの半導体製造装置が置かれたクリーンルームを見学するオランダ国王夫妻(資料写真、2024年6月12日、写真:代表撮影/ANP Photo/アフロ) (湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長) AIが牽引して半導体と装置市場が過去最高を更新 2022年11月30日、米OpenAI社がChatGPTを公開して以来、世界的な生成AIブームが巻き起こった。さらに、今年2025年1月20日には、中国の新興AI企業ディープシーク(DeepSeek)が、米OpenAIの「GPT-4」に匹敵する大規模言語モデル(LLM)「DeepSeek-R1」を公開し、生成AIの熱狂は一層加速した。 LLMおよび生成AIの開発には、米エヌビディア(NVIDIA)のGPUをはじめとするAI半導体が不可欠である。このAI半導体の需要拡大に
(川島 博之:ベトナム・ビングループ Martial Research & Management 主席経済顧問、元東京大学大学院農学生命科学研究科准教授) 米価格が高騰している。スーパーなどの店頭において2023年には5kgが2500円前後だったが、2024年の夏頃から4000円前後になった。ブランド米は5000円程度にまで値上がりしている。ここに来て政府は備蓄米を21万トン放出し、かつ輸入量を年間2万トン増やすと言い出したが、半年遅いと批判を浴びている。 高騰の原因ははっきりしない。2024年夏に米の不足が伝えられたが、実際には不足していなかった。そして秋の収穫量は平年並みだった。 多くの場合に食糧価格の急激な上昇は噂の拡散によって生じる。食糧は生命に関わるために、人々はその不足に敏感に反応する。日本人は特に米不足に敏感である。
今夏の参院選での比例投票先を聞いた朝日新聞と時事通信の2月世論調査で、国民民主党が野党トップとなる結果が出た。昨秋の衆院選でキャスティングボートを握り、今国会でも「103万円の壁」引き上げをめぐる議論をリードして目立っている。国民民主が掲げる「手取りを増やす。」に象徴される現役世代向けの主張が、なぜいま支持を集めているのか? 政治学者であり、現在は国会議員秘書として永田町の内部から政治を見つめる大井赤亥氏が解説する。 (大井 赤亥:衆議院議員政策担当秘書・広島工業大学非常勤講師) 「税金を払う側に立った政治」がなぜ流行っているのか? 今年1月から始まった第216回通常国会。本会議場に響く各党の演説を聞いていると、主として国民や維新など野党側から、いわゆる現役世代に視線をあわせた「減税主義・税還元主義・手取り主義」とでもいうべき趨勢が生じている。 昨年の衆院選で躍進した国民民主党は、これまで
政府は2025年8月より高額療養費制度の自己負担限度額を引き上げる方針を決めた。高額療養費制度とは、治療が高額となった際に年齢や収入に応じてひと月あたりの自己負担に上限を設ける仕組みで、3割負担で支払った金額のうち、限度額を超えた部分が、後から支給される*1。 たとえば70歳未満で年収370〜770万円の人に100万円/月の医療費が発生すると、自己負担上限額は8万7430円。この場合、3割に当たる30万円を窓口でいったん支払っても、手続をすれば上限額との差額は払い戻される。急な大病や事故に遭っても最善の治療が受けられるように、その後に困窮してしまわないようにつくられたセーフティネットなのだ。 厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会は、高齢化や高額な薬剤や治療が普及したことで高額療養費が増加し、現役世代を中心に保険料が増加し生活を圧迫しているという理由で、すべての所得区分で自己負担限度額を引
もともとの政府の方針は、 〈高額療養費について、高齢化や高額薬剤の普及等によりその総額は年々増加しており、結果として現役世代を中心とした保険料が増加してきた。そこで、セーフティネットとしての高額療養費の役割を維持しつつ、健康な方を含め全ての世代の被保険者の保険料負担の軽減を図る観点から、以下の方向で見直す。 具体的には、下表のとおり、負担能力に応じたきめ細かい制度設計を行う観点から、①各所得区分ごとの自己負担限度額を引き上げる(低所得者に配慮)とともに、②住民税非課税区分を除く各所得区分の細分化を実施する。 併せて、年齢ではなく能力に応じた全世代の支え合いの観点から、低所得高齢者への影響を極力抑制しつつ、70歳以上固有の制度である外来特例の見直しを行うことにより、全ての世代の被保険者の保険料負担の軽減を図る。〉 というものだ。 「負担能力に応じた全世代」とあるが、その内実は各個人・世帯によ
(堀内 勉:多摩大学大学院教授 多摩大学サステナビリティ経営研究所所長) もはや哲学を欠いたビジネスはあり得ない 「哲学はビジネスの役に立つのか?」という問いがあります。 哲学の側からは「もっと役立てるべきだ」というべき論が、逆にビジネスの側からは「どのように役に立つのか分からない」という回答が多いのではないでしょうか。 社会人になってからずっとビジネスの世界に身を置き、後半はビジネススクールの実務家教員としてアカデミックな世界でも活動してきた私なりの結論は、「哲学を抜きにビジネスをすることは、もはやあり得ない」ということです。 広義の哲学を、古代ギリシアのプラトン以来の古典的分類に従って「真・善・美」の3つに分けてみると、そのどれもが「ビジネスに役に立つのか?」どころか、「これらと真剣に向き合わずして、本当にビジネスをやっていると言えるのか? そうでないなら、単なる『金儲け』をやっている
毎年6月、国民健康保険の支払い通知書が届くと、見てはいけないものを見てしまったような気持ちに襲われる。2、3日触らず、半ば心の準備をして中を開くと、「うおっ」と思わず唸り、内臓のどこかがぎゅっと縮まる。 「なぜこんなに高いのか」「これ計算間違ってるだろぉ……」と言葉が空しく頭の中を駆けめぐる。はたして本当に、この許しがたい金額を払い続けるしかないのか。『国民健康保険料が高すぎる! 保険料を下げる10のこと』(中央公論新社)を上梓したジャーナリストの笹井恵里子氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト) 医療費が圧倒的に高い国保 ──どんな思いがあって、本書をお書きになったのでしょうか? 笹井恵里子氏(以下、笹井):とにかく「国民健康保険料が高すぎる」という怒りの気持ちがあり、この本を書きました。令和3年度の私の国保料が、所得600万円に対して、88万円でした(この料金は個々の加入者
貧困に留まる人は仕事も努力もしない。貧困に陥るのは、個人の努力が不足しているからだと思っている人も多いのではないだろうか。その考えに「待った」をかけるのは、長年、貧困層を取材してきた鈴木大介氏(文筆家)である。鈴木氏によると、人が貧困に陥る要因は多々あれど、その多くが「脳の問題」に起因するという。貧困と脳にはどのような関係があるのか──。『貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」』を上梓した鈴木氏に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター) ──鈴木さんはこれまで、社会の底辺で生きる人々を取材し『最貧困シングルマザー』(朝日新聞出版)や『最貧困女子』(幻冬舎)などの書籍を発表してきました。貧困層の人たちに取材をしていく過程で、彼らに対し違和感を覚えたと今回の書籍に書かれています。 鈴木大介氏(以下、鈴木):青年層の貧困当事者は、困ったパーソナリティの人が多いということ
(ジャーナリスト:横田増生) 私の質問は「二次加害」だったのか フジメディアホールディングスが1月27日に開いた記者会見で、私に質問の順番が回ってきたのは、午後9時前後のこと。記者会見が始まって5時間近くがたっていた。 私が問うたことで、ネット上の炎上につながるのは次の質問。 元タレントの中居正広氏とフジテレビの当該女性との間で、トラブルが起こったとされる2023年6月、2人の間に「認識の一致、あるいは不一致」があったのかという点だった。 私の質問内容や、その立ち居振る舞いをめぐって、炎上となった最大の争点は、その発言内容が「二次加害」にあたるのか否かということだった、と考える。
2018年2月、てんかん発作のホイールローダーにはねられ死亡した井出安優香さん(当時11)。民事裁判では、生まれつき聴覚障害のあった安優香さんの逸失利益をめぐって争いが続いていたが、2025年1月20日、大阪高裁は「全労働者の平均賃金の85%」とした一審の大阪地裁判決を変更し、100%を算出基準とする判決を下した。障害児の逸失利益を健常児と同じとする判断は今回が初となる。事故から7年、なぜこれほど長い闘いが続いたのか、そして、両親はいま何を思うのか。本件裁判の取材を続けてきたジャーナリスト・柳原三佳氏が話を聞いた。 (柳原 三佳・ノンフィクション作家) これまでは「聴覚障害者の能力は健常者に及ばない」が“常識”だった裁判所の判断 これまでの交通事故判例を大きく覆す画期的な判決が、2月5日に確定しました。 大阪高裁の徳岡由美子裁判長は、7年前の事故で亡くなった聴覚障害女児が将来得られるはずだ
昨年(2024年)の秋から続く「令和のコメ騒動」について、約91万トン(2024年6月時点)の在庫がある政府の備蓄米がようやく放出される見通しとなった。当初、農水省は「新米が流通すれば価格は一定の価格水準に落ち着く」との見通しを示していたが、コメ価格は2025年1月以降も「5kg4000円台」という高値が続いていたため、政府はやむなく方針転換した。だが、こんな対症療法的な手法や補助金漬けの農政では本格的な食糧危機は乗り切れない。ジャーナリストの山田稔氏がレポートする。 >>【図】投機目的の事業者が関与?コメの流通経路と備蓄米放出の流れ コメ価格は1年前と比べて72%上昇、庶民生活は苦しい状況に 東京23区郊外の住宅街。1km四方に食品スーパーが4軒ある激戦区だ。昨年秋のコメ不足のときも、4件のスーパーは独自のルートを駆使してコメの確保に努め、「棚が空っぽ」の異常事態は数日で収まり、5kg3
会社の提訴と同日、元相談役を刑事告発した京都新聞の日比野記者(中央)と曺記者(右)=2022年6月29日、京都地裁 創刊145年を超す有力地方紙、京都新聞。だが、その経営体制は長年、オーナー家の専横という“闇”を抱え込んできた。これを払拭するため、持ち株会社「京都新聞ホールディングス」は2022年、大株主だった元相談役の白石浩子氏に報酬の返還を求めて京都地裁に提訴。今年1月23日、全額返還を命じる判決が出た(元相談役側は控訴)。40年にわたるオーナー家の呪縛を断ち切るため、経営陣や現場の記者たちはどう動いたか。そして、「女帝」が法廷で語ったこととは──。 【最初から読む】 ◎京都新聞に巣食ったオーナー家「女帝」と古都に暗躍するフィクサーたち 【前回から読む】 ◎京都新聞オーナー家「女帝」の地位保証と巨額報酬を確約していた決定的文書 (西岡 研介:ノンフィクションライター) 第三者委から返還
創刊145年を超す有力地方紙、京都新聞。だが、その経営体制は長年、オーナー家の専横という“闇”を抱え込んできた。これを払拭するため、持ち株会社「京都新聞ホールディングス」は2022年、大株主だった元相談役の白石浩子氏に報酬の返還を求めて京都地裁に提訴。今年1月23日、全額返還を命じる判決が出た(元相談役側は控訴)。40年にわたるオーナー家の呪縛には根拠となる「確約書」が存在した。当時の社長との間に交わされた、その中身とは──。 【前編から読む】 ◎京都新聞に巣食ったオーナー家「女帝」と古都に暗躍するフィクサーたち (西岡 研介:ノンフィクションライター) 内紛処理に女帝自ら〈反社会的勢力〉を引き入れる イトマン事件などで服役後、韓国に永住し、再び実業家としての活動を始めた許永中氏が、2019年に著した自叙伝『海峡に立つ——泥と血の我が半生』(小学館)にこんなくだりが出てくる。少々長いが、京
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