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ECOマネジメントサイト終了のお知らせ 当サイトは、3月31日をもちまして終了することになりました。ご愛読いただきました皆様に感謝いたします。当サイト連載中の主要コラムにつきましては、4月以降、日経BP社の環境ポータルサイトであるECO JAPANで引き継ぎ公開いたします。
3月11日に発生した東日本大震災により被災された方に衷心よりお見舞いを申し上げます。震災からの一刻も早い復興を祈っております。 今回の地震と津波により東北電力と東京電力の発電設備に大きな被害が生じた。日本では、燃料を輸入することが必要なために、多くの発電所は海岸沿いに立地されている。特に茨城県から青森県にかけては新地、常陸那珂、原町などの火力発電所、女川、東通などの原子力発電所が数多くあり、すべての発電所が大きな被害を受けた。このため、東北電力と東京電力では十分な電力供給ができない事態になった。 富士川を境にサイクルが異なることから、西側から東電管内に送電可能な電力量は限られている。今回のように隣接する電力会社の設備も被害を受けると、十分な電力量を確保することが困難になる。 日本の電力業界の送電の質は世界一と言われているが、日本列島の地理的な問題から送配電の柔軟性が制限されている。米国、欧
「環境分野への投資による雇用創出」から、「輸出振興による雇用創出」へと、米オバマ大統領の軸足が移っているようだ。1月25日、オバマ大統領は1年間の施政方針を上下両院に表明する 一般教書演説 を行った。環境・エネルギー政策に関しては、2035年までに発電の80%を「クリーンエネルギー」で賄う目標と、バイオ燃料により石油への依存度を下げ、さらに2015年までに100万台の電気自動車を導入する目標を述べたが、昨年の演説では触れた気候変動に関する法案についての言及はなかった。 さらに、クリーンエネルギー技術への投資とそれが作り出す雇用については言及があったものの、投資額と雇用に関して具体的な数字が語られることはなかった。環境分野では具体的な話として、ミシガン州で小規模の屋根材の会社を経営している兄弟が経営難に陥った後、政府からローンを得て太陽光発電用の屋根材を全国で販売するまでになった話を紹介した
前回 はエジプトで勃発した長期政権の転覆の実情を考察しながら、イスラム世界の人口問題に目を向けた。 では、米ワシントンに本拠を置く 米調査機関・宗教と国民生活に関するピューフォーラム(The Pew Forum on Religion & Public Life) が1月末に発表した報告書、「 世界におけるイスラム人口の将来(The Future of the Global Muslim Population) 」では、イスラム社会についてどのような「将来の人口の形」が予想されているのか。 日本における「将来の人口の形」と言えば当面は“人口減少”である。この戦後初めての傾向が、日本の経済、社会、政治にいかに大きな影響を及ぼしているかを考えれば、ある国にとって「人口の問題」の持つ意味がいかに大きいかが分かる。戦後の日本がそうだったが、若者があふれると(若者人口が増えると)、街には若者が多く出
「何とかならへんかな」 青井宏和は、独り言を漏らしていた。きっと、この日も考え続けていたためだろう。ホチキス針を使わずに、紙をとじることのできるステープラーについて。 2008年3月の、春めいてきた日の午後。大阪市東成区にあるコクヨグループの本社ビルでは、いつもと変わらない午後の光景が繰り広げられていた。 青井はコクヨS&T開発第1グループに属する開発担当者だ。 珍しいことに、何日か自分のデスクに張り付いている。新商品について、思いを巡らす時、会社で着想することなどないのを、青井自身は一番よく知っていたのにだ。 後輩の営業担当が、フロアの遠くから青井を認め小さく会釈しながら通り過ぎる。青井は、緩慢な動作で右手を挙げて応える。窓から差し込む太陽の光が、少しまぶしい。 と、その瞬間だった。青井の脳裏で、“2つの要素”が結びつく。同時に電流が通じ、目の前が開けたのだ。 「これや!」 前年の秋から
土曜日の朝、パリの街をタクシーが滑るように走っていく。大通りは静まり返り、軒を連ねる店もまだ開いていない。パン屋からは焼き立てパンの香りが漂う。信号で停車していた時のことだ。何かが動く気配がした。よく見ると、青色のカバーオールを着た男性が歩道のマンホールから姿を現したのだ。頭にはランプを着けている。後から、ランタンを持った女性が出てきた。二人ともゴム長靴を履き、全身に泥を浴びている。男性はマンホールの蓋(ふた)を元に戻すと、女性の手を取って、笑いながら通りを駆けていった。 世界中を探しても、パリほど地下と密接な関係をもつ都市はほかにないだろう。しかも、この街の下には驚くべき世界が広がっている。長い歴史と密集度を誇るメトロと下水道はまだ序の口。運河や貯水池、地下墓地に銀行の金庫室、ナイトクラブやギャラリーに変貌(へんぼう)したワインセラーなど、パリの地下にはあらゆる空間が存在している。なかで
2011年1月10日の日本経済新聞朝刊は、「マグネシウム合金、『世界一の強度』開発、電通大、レアアース不要」との見出しで、結晶粒を加工してマグネシウム合金の強度の向上に成功した電気通信大学の試みを紹介した。また、2010年1月27日の日経産業新聞では、産業技術総合研究所などが低コスト化につながるマグネシウム合金の圧延材を開発したという話題を紹介した。 アルミニウムよりも軽いマグネシウムは、自動車などの高燃費化に貢献する軽量素材として注目されており、より高い強度や低コスト化を狙った研究が精力的に進められている。これらが実を結び、工業製品などへの普及が拡大すれば、省エネ型の社会を支える重要な素材になることは間違いないだろう。 省エネ型の社会を支える、大きな要素の一つが軽量材料である。マグネシウムは比重(1cm3当たりの重さ)が1.74とアルミニウムの約3分の2で、工業的に利用している金属のなか
まだまだこの連載におけるベトナムについての考察は続くのだが、チュニジアに続いてエジプトが激しく動揺し、今後もほかのアラブ諸国で同様の問題が起きそうなので、2回ほどお休みをいただいてアラブ諸国の多くが入るイスラム世界、その世界が抱えている根本問題である“人口問題の深刻さ”を取り上げようと思う。チュニジアで起きたこと、そしてエジプトで起きつつあることを、きっとより理解できるようになっていただけると思う。 ベトナムの可能性と抱える問題については、また次々回以降に書く。このコラムをタイムリーなものにするためで、ベトナムのその後を期待していた方々にはご勘弁いただきたい。 「読者がこの文章を読む時点で、エジプトの指導者がどうなっているのか、同国が世俗国家を続けているのか、それともイスラム教に基づく政治を行うことになっているのか」が全く予想できないほど、このアラブ世界で1番人口の多い国・エジプト(外務省
ベトナムに関して日本で一番知られていないことは、「実はベトナムは日本に顔を向けている」「少なくとも向けたがっている」ということである。「顔を向けている」ということの意味合いは、「日本を技術や資本で頼りにし、日本を(ベトナムにとっての)重要な市場と考えている」ということだ。 そう強く思ったのは、ベトナムであるコンピューター・ソフトウエアの会社を訪れた時だ。2008年のことである。日本ではあまり知られていないが、ベトナムは世界各国の工場を受け入れて「中国に次ぐ製造業の国」を目指しながらも、インドがコンピューター、特にソフトウエアや、コンピューター関連の入力業務で興隆した様子を見ていることもあって、コンピューター関連業務の充実にも大きな力を入れている。中国(製造)とインド(ソフト)の中間の道をうまく歩んで、国を成長させようと考えているのである。今は「中国+one」(中国のほかにもう1つ製造拠点を
国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)の交渉の焦点は、温室効果ガス排出削減を巡る先進国と途上国との考え方の溝が埋まるか、また2012年で第一約束期間が終了する京都議定書に替わる新たな枠組みに道筋がつくのか――ということだった。 「京都議定書では途上国に法的な削減義務が課されておらず、米国も脱退していて、世界全体の排出量の27%をカバーするに過ぎない。途上国からの排出増加が急増する将来を考えれば、地球温暖化問題の真の解決策とはならない」──。会議冒頭から、日本政府はこうした論理で、第二約束期間での削減義務の設定(いわゆる「京都議定書延長論」)を強く拒否する発言を行った。日本政府の断定的なトーンに対して、発言直後には京都議定書延長論を唱える途上国や環境NGO(非政府組織)は強く反発。EU(欧州連合)も、日本は最終的には折れると踏んでいたこともあってか、驚きのあまり、会議を壊すの
国際的な海運と航空から排出される温室効果ガスは、経済のグローバル化に伴って近年、増加を続けている。ところがいずれも、京都議定書のうえでは各国の排出数量の対象とはなっておらず、それぞれを監督する国際機関を通じて排出の抑制、削減に努めることになっている。これは、山口光恒・東京大学特任教授の最近の連載コラムでも触れているとおりだ(山口光恒「地球温暖化 日本の戦略」国際海運におけるセクトラルアプローチ[ 前編 ][ 後編 ])。 そんななか、EU(欧州連合)が航空機からの温室効果ガス排出抑制を進めようとしている。その方法を巡り、米国の主要航空会社が欧州で訴訟を行う事態になっている。 EUが進めようとしている政策を分析すると、航空業界の温室効果ガス排出抑制という大義名分をテコに自地域が進める欧州排出量取引制度(EU ETS)を世界、特に米国に広め、グローバルスタンダードにしたいとの野望が見えてくる。
「Good discipline(規律ができているね)」 社長のカルロス・ゴーンが発した言葉に、門田英稔は自分が率いている開発チームに確かな自信を覚えた。 門田がEV(電気自動車)の開発責任者であるCVE(車両開発主管)に就いて、半年が過ぎた2008年3月。厚木のテクニカルセンターにやって来たゴーンは、開発技術者たちを激励する。 最後に、「せっかくだから、みんなで記念写真を撮ろう」とゴーンが提案した時だった。居合わせた約30人は、誰かに指示を受けるわけでもないのに、すぐに3列を形成して整然と並んだのである。 ゴーンは1999年に経営危機に直面していた日産自動車にやってきてから、工場やディーラーの店頭はもとより、研究開発の拠点にも頻繁に訪れている。というのも、日本企業である日産の強さの源泉は、「現場のパワーにある」ということを、来日してから早い段階で理解しためだ。 現場で働く人たちに、ゴーン
年も改まった。2011年にこのコーナーで最初に取り上げるのはベトナムである。昨年末にはベトナムに関するニュースが数多くあった。インフレが厳しくなっているという報道もあったし、国家債務が膨らんで国際融資機関が警戒を強めているという報道もあった。ともに事実だが、一方で、後で記述するように世界銀行など国際機関からベムナムは「中所得国」に認定された。確実に言えることは、問題を抱えていてもベトナムはもう1970年代まで続いたベトナム戦争の後遺症を引きずる後発途上国ではない、ということだ。昨年末には、日本の商社もベトナムに対する関心を深めているとのニュースがあった。良いニュースと悪いニュースが入り交じって出てくるベトナムだが、一連の記事を書くに当たって日本人が見落としがちないくつかの点をまず指摘しておきたい。 ベトナムについてまず読者に知っていただきたいことは、この東南アジアの細長い国が恐ろしく若い国
2010年12月1日の日刊工業新聞は、「東大など、電流発生菌の増殖法発見」との見出しで、東京大学橋本和仁教授らのグループが、水田の土から「電流発生菌」を選択的に増加させる培養技術を発見したと報じた。現在は基礎研究の段階だが、今後こうした技術が「水田発電」に発展していく可能性を秘めている。 このニュースを筆頭に、低炭素社会の実現に貢献するべく「有機ラジカル電池」「振動発電」などの聞き慣れない試みが、研究室レベルで進められている。これらの貢献度は未知数だが、新しい技術がつぎつぎと登場している状況は、わが国にとって好ましいものと評価できる。 今回は、電気に関係する興味深い、もしくは遊び心を刺激するような技術を取り上げたい。ここでは、二酸化炭素(CO2)排出量の削減に確実に役立つと思われる技術もあるし、効果のほどは疑問だという技術もある。それはともかく、新しい技術がつぎつぎと生まれてくる状況は、社
自由民主党からから民主党へと政権が交代し、鳩山由紀夫前首相は2009年9月の国連気候変動首脳会合で日本の2020年までの温室効果ガス削減目標(中期目標)について25%削減(1990年比)構想を前面に出した。「鳩山イニシアチブ」は国際公約ではないものの、ポスト京都議定書の日本のひとつの方向感として、いかなる先進国よりも温室効果ガスの排出削減に積極的な目標を掲げて動いた。 その後、環境・エネルギー戦略が明らかになり、局面は、ビジョンを語ることから、実行に向けて動き始めている。現在私は、経済産業省産業構造審議会環境部会の地球環境小委員会政策手法ワーキンググループで座長を務め、温暖化対策に関する政策手法に関して検討を行い、9月にこれまでの議論の 中間整理 を行った。 温室効果ガスの排出に関しては、とかく主要産業である電力会社や鉄鋼メーカーなどがどのような責任を負うかという議論になりがちであった。
前回の最後に、「予想されるインド経済の成長率やインフレなどはどうなるのか。次回はこの問題を取り上げる」と書いた。それを念頭に置いて書くが、今回を一連のインド・シリーズの当面最後の回としたい。ほかに取り上げたい国はいくらでもあるからだ。そもそも過去4回のこのインド・シリーズは、英連邦競技大会を巡る同国国内でのごたごた発生が端緒だった。それをきっかけにインドを様々な角度から見てきた。インドには強さも、一方のもろさもある。しかし私は全体としてインドの先行きには極めて強気の見方をしており、インド経済はしばらく力強い成長軌道を続けると考えている。ただたんに「(成長やインフレなどの)率の通し」や「セクター別の分析」などではない、私のこの国に対する大枠の、そしてベースの見方も書きたい。 「インドには強気」と私が判断するその理由の第一は、経済や金融の仕組みが成長を加速する方向に整ってきたことだ。今でも鮮明
前回、再生可能エネルギーの導入・普及は、「気象条件や土地利用の目的など、その地域の特性とニーズを生かした選択が望ましい」と述べた。 将来、再生可能エネルギーの導入が進んでも、全国一律のエネルギーポートフォリオはあり得ない。できる限り多様なエネルギーを準備し、各地域が地元の特性を生かして適切なポートフォリオを組むのがよい。日本では、再生可能エネルギーのなかでも太陽光発電(PV)と風力発電が、将来の主力になることに疑いの余地はないだろう。 日本では特にPVに対する期待が大きい。PVは大規模集中発電だけでなく、小規模の分散発電にも利用可能で、住宅の屋根などにも設置できるので、国土が狭い日本にとっては導入のハードルが比較的低い。補助金制度や再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)がPVの普及を後押しし、2009年度には国内出荷量の9割近くを住宅用が占めるまでになった。近ごろでは屋根の上に太陽
「2020年には自動車専用電池で30〜40%のシェアを取りたい」 パナソニックグループである三洋電機の本間充副社長は話す。三洋は、リチウムイオン電池の世界トップである。 スマートグリッド(次世代送電網)が実用化に向け動き出し、電気自動車(EV)が本格的な量産を向かえている今、繰り返し使える二次電池としてのリチウムイオン電池の需要は旺盛だ。 パナソニックがかかわる二次電池メーカーには、三洋があり、パナソニックとトヨタ自動車の合弁であるプライムアースEVエナジー(PEVE、本社・静岡県湖西市、旧パナソニックEVエナジー)があり、そしてパナソニックと3社がある。 ここで言うパナソニックは、社内カンパニーの「エナジー社」を指す。2008年10月に、松下電器産業からパナソニックへの社名変更に伴い吸収合併された旧松下電池工業である。 今回の主役は、エナジー社が開発したニッケル系を正極に使ったリチウムイ
現在、国会に提出されている地球温暖化対策基本法案には、排出量取引制度、地球温暖化対策税、全量固定価格買取制度のいわゆる「3点セット」の導入が規定されている。3点セットという言い方自体、全部導入すべきというニュアンスを持っているが、実はこれらはすべて問題が大きい制度であり、特に排出量取引制度については、日本の経済社会状況から見て最悪の選択肢である。地球温暖化対策税についての問題点は、前々回のこのコラムで検討したが、逆進性による所得分配格差や地域格差拡大などの悪影響は、排出量取引制度にも同じように当てはまる。それだけではなく、さらに別の大きな問題、すなわち行政による市場かく乱・経済統制というデメリットが存在する。以下、排出量取引制度という用語は、その本質をより正確に表すため、「排出枠割当・取引制度」と表記する。 尖閣諸島沖での巡視船に対する中国漁船の衝突ビデオが流出したことが、大きな話題になっ
米モンタナ州グレイシャー国立公園のシロイワヤギは、1日に数百メートルの標高差を移動する。写真のヤギは、岩壁を下りながら表面の塩やミネラル分をなめている。餌の少ない冬は、こうやって栄養補給するようだ (c)2010 Joel Sartore / National Geographic カナダ西部の大草原地帯(グレートプレーンズ)でガラガラヘビが繰り広げる大移動は、特異だが、動物の移動を理解するうえで参考になる。現在、世界自然保護基金に勤務するカナダ人の若い生物学者デニス・ヨルゲンセンは、アルバータ州メディシンハット近郊に生息するガラガラヘビの動きを研究し、このヘビが毎年春と秋に移動することをつきとめた。彼が確認したヘビの、平均の移動距離は往復で約8キロだった。しかし、カナダのガラガラヘビに関する研究では、最長で53キロの距離を移動する個体も見つかっている。 一方、米国南部アリゾナ州に生息する
前回「インドには日本人や日本の企業が刮目(かつもく)して良い成長余力がたっぷりあると思っている」と書き、項目として4つの要因を挙げた。今回はその1つひとつについて解説したい。 まず指摘できることは、インドという大きな国の「経済のスタート台」がまだ依然として低く、それだけ成長余力があるということだ。実際に行くと驚くような格差のある国なので「平均」を出すことが良いとは必ずしも思わないが、外務省の資料によるとインドの国民1人当たりのGDP(国内総生産)は2009年度の資料では1031.7ドルになっている。これは3000ドルを超えた中国の3分の1に過ぎない。 中国の上海や北京のように、インドにも繁栄している都市はある。例えばニューデリー空港から車で混んでいなければ40分ぐらいのところにあるグルガオンだ。スズキのインドにおける自動車生産販売子会社であるマルチ・スズキ・インディアが自動車関連の一連の施
前回の原稿を書いて以降、インドと日本との間で極めて重要な取り決めが交わされた。将来の両国関係が大きく深化する可能性を秘めたものだ。具体的には、貿易のみならず投資や人的交流などを日本とインドの二国間で自由化する経済連携協定(EPA)の締結である。来日したインドのシン首相と日本の菅首相の間で交わされた。韓国に比べて自由貿易協定(FTA)やEPAで遅れていると言われる日本だが、久々に締結した大型EPAとなった。筆者がこの連載でちょうどインドを取り上げている間の締結合意で、大いに歓迎したい。 実は日本、インド両国にとって、貿易相手国の1番は中国である。しかしその中国は両国にとって頭痛の種でもある。日本にとっては尖閣列島の領有権を一方的に主張し始め、レアアースなどの輸出に実質的にストップをかけるといった無法な態度を平気で取る困った隣国だし、一方インドにとっても、中国は過去もそして現在も、国境を接して
夜明け前、ハワイ・ホノルル湾のそばにある卸売会社の倉庫で、“魚介類の国際会議”が幕を開ける。やってきた20人ほどの仲買人は、屋内の冷気に備えてアロハシャツの上に冬物のパーカーを羽織っている。彼らは携帯電話を取り出すと、東京やロサンゼルス、ホノルルなどを呼び出した。高価な魚がお目当ての世界中のクライアントから指示を待つのだ。 ほどなく海に面した巨大な扉が開き、パレットに乗った魚のパレードが始まる。胴体が車のタイヤほどもありそうなマグロ。とがった口先を切り落とされ、ずらりと並んだカジキ。金色に縁取られた目と厚い唇をもつアカマンボウ。それぞれが、倉庫の一角を陣取っていく。 競り人が魚の肉を筒状にえぐり出し、生気のなくなった白い腹に乗せる。仲買人はその肉を手に取り、色、つや、脂肪の具合から品質を占う。携帯電話から指示が入ると、仲買人は不可解な手の動きで、競り人に値を伝える。暗号のような文字を手書き
本コラムでは、これまで地球温暖化対策基本法案全体について、さまざまな問題点を指摘し、現時点でそのような法案は不要である旨明確に述べてきた。特に同法案の基本的な問題点として、日本の中期目標(削減義務といった方が正確)が前提としてきた「公平かつ実効的な国際枠組み」や「主要国による意欲的な目標の合意」という条件の基準が示されず、さらに国際交渉上もいまだ満たされていないという点がある。中期目標が確定していないうちに、政策手段である排出枠割当・取引制度や、いわゆる環境税(地球温暖化対策税)の導入だけを先行させようとするこうした法案は、理念に欠けているばかりでなく、説明もなしに国民生活に対して実質的な損害を与える有害無益な政策である。本法案は前回の通常国会で与党は強行採決までしたうえ、いったん廃案となったが、今臨時国会に再度提出されている。何か裏の目的でもあるのだろうか。 来年度の税制改正要望として、
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)については昨年11月以降、大量の電子メール漏出に端を発したクライメートゲート事件や、ヒマラヤの氷河が2035年までに消失するとの誤った記述などいくつか問題があり、これまでに英国議会やオランダ政府、情報漏れを起こした英イースト・アングリア大学などによる調査報告が公にされている。それらはいずれも、IPCC報告書の核心部分は信頼性に揺るぎがないとしつつ、細部についてはいくつか問題点を指摘している。 その後、今年8月30日、IPCC(およびIPCC設立の母体である国際連合)から委嘱を受けた第三者であるインターアカデミーカウンシル(IAC)の調査委員会による、IPCC報告のプロセスと手続きについての調査結果が公表された(以下、 IAC報告 )。さらに、IAC報告の1カ月後となる9月30日には、IPCCに関係してきた日本の科学者有志10名による「IPCC報告の科
私たち人間は、自分たちこそが地球の主だと思いがちだが、実のところ、この惑星は昆虫たちのものだ。私たちが知っている昆虫はまだほんの一部で、試しに朽木を裏返せば、新種の昆虫が見つかるだろう。その姿かたちは種によってさまざまで、人間の目には、あたかも地球外生命体のように異様に映るが、数の点から考えれば、私たち人間こそが稀(まれ)な存在といえよう。太古の昔から、巨大な脊椎動物が出現しては滅んだ一方で、昆虫は交尾をしては卵を産み、あらゆる場所で繁栄を続けてきた。“恐竜の時代”や“哺乳類の時代”とは、私たちがよく使う言葉だが、冷静に考えれば、あらゆる時代が“昆虫の時代”でもあったのだ。 チャイロドクチョウ(DRYAS IULI) トケイソウの巻きひげの上に鎮座したチャイロドクチョウの卵。これなら、アリに食べられることもないだろう。チャイロドクチョウはたいてい、このような巻きひげに卵を産む (c)2
日本経済新聞朝刊では、「住商、中国で水事業参入」(2010年9月17日)、「原油確保へ、産油国に水」(2010年9月19日)との見出しで、日本の水ビジネスの動向を相次いで紹介した。現在、新興国では、経済発展に伴う深刻な水不足に悩んでおり、「水メジャー」と呼ばれる海外企業などが中心となって、積極的にビジネスを展開している。冒頭のニュースは、それに追従する日本の動きを紹介したものだ。 企業にとっては、大きなビジネスチャンスとなっているが、別の見方としては、水問題の解決が世界の安定化に寄与する重要な要素となっているため、ビジネスの成功に大きな期待が寄せられている。 「原油確保へ、産油国に水」という見出しの記事を掲載したのは、2010年9月19日の日本経済新聞朝刊であった。また、その数日前となる2010年9月17日の日経新聞朝刊では「住商、中国で水事業参入」と報じた。 前者の内容は、下水処理水や工
この原稿を書いている段階で、私には2つのBRICsの国が気になっている。その1つは大統領選挙が進行するブラジル。もう1つは英連邦競技大会を開催中のインド。ブラジルの大統領選挙は9人もの候補者が立った激戦で、最初の投票の結果は与党・労働党のルセフ前官房長官とセラ前サンパウロ州知事の決選投票となった。それはそれで面白いが、ブラジルを取り上げるのは結果が出てからとして、今回はたった1つの“競技大会”の開催問題で国の評判を著しく落としたかけたインドを取り上げる。今の分析対象としてははるかに興味深いからだ。 問題意識は、「インドは中国と並ぶBRICsの盟主として、いつかオリンピックを開催できるのか」という点だ。これはインドという国の将来の統治能力にも通じる問題だろう。「準備」と「開催」と「運営」には、それぞれ国の継続的発展にも必要なノウハウが隠されていると思うからだ。 日本では英連邦競技大会(the
日本のエネルギー供給において、中東の存在がいかに重いかは、多くを語る必要もないだろう。2009年の統計では、化石燃料のうち石油の89.9%(経済産業省:資源・エネルギー統計)、天然ガスの23.9%(財務省:貿易統計)を中東の国々に依存している。 1973年の第一次石油危機の時でさえ、日本の中東に対する石油の依存度は、約7割であったのに、いつの間にか中東に対する石油の依存度を高めてしまった。 それは、なぜか。 あらゆる商品の取り引きと価格形成は、グローバル化や市場化の中にあり、1セントでも安い石油を、効率的に市場から調達し入手した方がいいという流れに任せていたからだ。 今、日本が石油を調達する最も安易な方法は、タンカーを大型化し、数珠繋ぎにして、中東から運んでくることだ。 石油に限らず、エネルギー資源は、長期的な投資と戦略がなければ開発に取り組めない。だが、努力して自主開発原油を調達し、その
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